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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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航路の安全



嵐から一夜明け、今日は朝から快晴。

海竜の子供達が付き添ってくれてるからか、船の行く手を阻むような魔獣も現れず。

探索で見ていても逃げていくのがわかる。


「それでねーママと海竜がぴかーってなってー」

「大きな卵が五つも産まれてたわ〜」

昨夜、寝ていて詳細を知らない子達にティーとキャンディが説明してくれてる。

起こさなかったのを少しだけ責められたけど、あんなことになるとは思わなかったし。


「ねぇティー、その海竜の子供があの子達なのよね?」

「そうー。船の護衛!」

「まさか私達が寝てる間にそんな大事件があったなんてねー。嵐だったことすら知らなかったよー」

「ますたぁ発案の魔道具に守られてるのだから当然よ〜」

「わう、さすが主様!」

「じゃああの子達はお姉様のお友達みたいなものなの…?」

「そんな感じー」

契約した海竜の子供たちだから、似たようなものかもしれない。



ピナさんも戻ってきたんだけど、後日改めてアキナさんに私自身が報告するようにと言われた。

「陛下は驚きすぎて目を丸くしておられましたよ」

「手間かけちゃったね」

「いえ、仕事ですから」

メイドさんの仕事って大変だな。 いや、これは忍びとしての方になるのかな?



ファミリンで呼ばれて、ユウキとスピネルもドラツーへ迎えに行った。

ドラツー内で昨夜の事をある程度の説明はしたけど、ユウキには大きなため息をつかれてしまった。

呆れてるのか諦めか…。

多分両方だろうなぁ。



王妃様も陛下に報告した後の話を聞かせてくれた。

「航海の安全が保証されるのは有り難いけど、無理しないようにって陛下が心配してたわよ」

「ご心配おかけしました」

「助かったからいいのよ。ただ、アスカちゃんは私達にももう娘のようなものなんだからね?」

「ありがとうございます」

称号が”婚約者”になってるしなぁ…。

”嫁”のがまだ現実味が薄かったのに。 

急に現実を突き付けられたようですごいプレッシャー。

…しっかりしなくちゃ。


「王妃様! 航路の事でご相談が…」

「今行くわ。 アスカちゃんはのんびりしててね」

そう言うと王妃様は船長達と海図とにらめっこ。


「ママ、おはなしすんだー?」

「うん。どうしたの?」

「リズが甘えたそうだから」

「そっか、ありがと」

ティーと一緒に見上げてくるリズはどこか寂しそうな表情で…。

二人を抱き上げて海を見せてあげる。


「おーたかーい!」

「お母様…大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫だよ。ほら見て?近くを泳いでる海竜の子達と仲良くなってきたんだよ」

「さすがお母様なのです! 怖くないのです…?」

「大丈夫だよ。船旅を見守ってくれるからね」 

海竜が怖かったのだろうか…。 (船員のみんなが怯えてたから)

あー、つられちゃったのか。

恐怖心とかは伝播しちゃうからね。


抱いてたら寝てしまったな…。 (ママの傍が一番安心するからー)

そうなれてるのならいいのだけどね。

「アスカちゃんは本当にお母さんみたいね。安心したんだと思うわよ」

「私には全然懐いてくれない…」

「奈々は落ち着きがないからよ」

「むー!」

「麻帆と奈々は大丈夫だった?」

「ええ。話を聞いてびっくりはしたけど」

「寝ててわからなかったし、泳いでる子達は可愛いから大丈夫!」

相変わらず奈々は怖いもの知らずだな…。 


「お話中すみません、アスカ様。王妃様がお呼びです」

「私ですか?わかりました」

迎えに来てくれたアリアさんと王妃様達の元へ。

どうしたんだろう…。 (海図みてるけどー)


「ごめんね、アスカちゃん。ゆっくりしててって言ったのに」

「いえ、どうかされたんですか?」

「航路についてなんだけど、本当に海竜の縄張りを通り抜けていいのかって船長が心配するのよ」

「相手は海竜だからな…慎重にもなる」

「どう話したら安心していただけるのかはわかりませんが…まずこの船は海竜から攻撃されてもびくともしません。それに、並走してくれているあの子達が証明になりませんか?」

「それは…な。 だが、今はアンタが乗ってるからってだけじゃないのか?」

「船長! 口の聞き方に気をつけなさいと何度言ったらわかるの! 相手は王族の方なのよ?」

奥様に叱られてるのは申し訳ないな…。心配するのは船長だからこそだろうし。

「私は気にしないので…」

「ありがとうございます。でも、これから国同士の交易を任される船になりますから…」

あぁ、そっか。私達は平気でも夕波王国ではわからないものね。


「何か目に見えて保証が欲しいって事ですね?」

「あぁ…船員の皆が納得するようなものがあると助かるんだが」

ふむ…。昔の上乗りみたいな感じか。 (何それ?)

海賊のいる海域を船が通るときに、前もってお金を払っておくと、海賊が乗船して旗を掲げて守ってくれるってやつだね。

他の海賊への牽制にもなるとかなんとか…。 (ほぇー)

戦って奪うような危険を侵さずにお金を得られるからね。 (でも、元々海賊しなきゃいいのに)

全くそのとおりなんだけどね?まぁ、そういうのもあったって事よ。 (ふむふむ)


「キャンディ、いるよね?」

「ええ〜。ラムネに聞いてみるわ〜」

「お願い」

「い、今のは…」

「私の家族です。正確には召喚獣ですけどね」

何かいい方法があればいいけど…。



しばらくしたらキャンディと、小さくなったラムネが戻ってきた。

「ますたぁ〜。これ、預かってきたわ〜」

渡されたのは割れた海竜の鱗を何枚か。

「ますたぁならそれでなにか作れない?」

「そういう事ね。ありがと」


「アスカちゃん、どういう事か説明してくれる?」

「えっと、剥がれた鱗とはいえ、海竜達にはわかるんです。この船もドラゴンの素材を混ぜ込んであるので、並の魔獣が寄り付かないのと同じで…」

「そうだったの!?」

「説明してませんでした…?」

「聞いてないわよー!」

「すみません…」

私の中では常識レベルだったからしまったな…。


「海竜から預かったこの鱗を加工して、そうですね…旗でも作り、掲げておけば海竜達には伝わります」

「それ、逆に敵対しないのか?」

「どういう事ですか?」

「倒して使った素材だと思われたら、敵視されるだろ?」

「あぁ! それはないですね。倒して奪った素材と渡してもらった素材っていうのは根本的に違うんです」

「意味がわからん…」

「それは私も初耳だわ、アスカちゃん説明してくれる?」

「えっと…倒して奪った素材というのは魔力の波長が途切れます。本人が倒れてますから当然ですよね?」

「ええ…。って事は渡してもらった素材っていうのは…」

「はい。この船の動力になってる角を見てもらえば分かるように、剥がれ落ちた鱗でも、生え変わった角でも力を失いません。当然ある程度減衰はしていますが、本人が健在な限り完全に力を失うという事はありません」

「知らなかったわ…」

「持ってみてください。魔力を感じると思いますよ」

割れた鱗を王妃様と、船長夫婦にも持ってもらう。


「本当だわ。そういう理由だったのね」

「倒してしまうと単に素材としての強度とか、それだけのものになりますね。例えば…」

過去に倒したドラゴンの鱗を出してみせる。以前未亜にも見せた大きなやつ。


「な、何これ…アスカちゃん!?」

「私が過去に倒したドラゴンの鱗です。街を荒らしまわっていたので退治したのですが、魔力感じますか?」

「…何も感じないわね。比べるとよくわかるわ。貴方達も分かりにくかったら比べてみなさい」

船長夫婦も触って比べた事で違いを理解したらしい。


「ですから、この渡してもらった鱗を織り込んで旗などを作り、船に掲げておけば海竜達にはハッキリとわかります」

「申し訳ないけど、それお願いしていい?」

「はい、少しだけお時間いただきますね」

「ええ。何旗か用意してもらえると助かるわ。夕波王国の船にも必要でしょうし」

「わかりました。デザインにご希望はありますか?」

「うちのは国の紋章でお願い。覚えてるわよね?」

「はい」

シエルにも手伝ってもらおうかな。 (ティーもみにいくの!)

わかったよ。



シエルに協力を頼みに行ったら、みんな興味を示したから、一緒にドラツーのアトリエへ行って制作する事になった。









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