船旅 出港
私達がドラツーに乗り込んでしばらく後、疲れた様子の王妃様がアリアさん達を伴って乗り込んできた。
「あの子達にも困ったものね…。 お待たせ。アスカちゃん、すぐに出発してもらえる?」
「わかりました。王宮魔術師の方達はいいのですか?」
「ミルフィー達なら物資の護衛をしながら先に港へ行ってるわ」
そういう事ね。 じゃあティー、お願いね。 (ほーい!)
リズもまだコクピット? (うんっ! 隣にいるよ)
わかった、見ててあげてね。 (らじゃー)
ドラツーはすぐに飛び立ち、港へ向かう。
リビングのソファーに疲れた様子で座る王妃様。
「お二人を説得できたのですか?」
「大変だったわ…。それでね?一つアスカちゃんにお願いがあるのだけどいいかしら」
「私にできる事なら大丈夫です」
「今回、船は新しい航路を決めながら、夕波王国まで行くのだけど、あちらに着いたら二人を転移で運んでもらえるかしら」
「それはもちろん大丈夫です」
「助かるわ。諦める条件が”夕波王国へ行きたい”だったのよ。あちらへ到着したら私は公式な訪問として謁見があるから、その時に許可を貰えるようにするわ」
「了解です」
シルフィー様は前回も我慢したから…。 (今回は譲らなかったのー)
許可がもらえ次第迎えに行かなきゃね。
「ドラツーは港上空に到着したのー。すぐに着陸しまーす!」
もうついたのね。 (今回はふつーに飛んだから)
早かったね。
ドラツーはドッグのすぐ側に着陸。
近くにはミルフィーさんが待っていてくれてた。
「お姉様、いつでも出港できます」
「ありがとうミルフィー。予定より遅くなってしまったし、すぐに出発しましょう」
「二人はやっぱりゴネましたか?」
「ええ、それはもう…」
王妃様とミルフィーさんは出発前のシルフィー様達の話をしながらドッグへ向かうから、私達もついていく。
船には前回は見かけなかった船員の人達が甲板に集まってて、王妃様のお出迎え。
「いつでも出港できますぜ」
「船長! 言葉遣いに気をつけなさいと何度言えば…」
「あぁ…すまん。こういうのはどうも苦手でな」
「すみません! うちの旦那が…」
「いいのよ。もう慣れたわ。 しばらく一緒に船旅をするのだから、気楽にしてて。船を動かす方に集中してくれればいいわ。戦闘とかになったらこっちでも手を貸すから」
「ありがとうございます。航路は私が責任を持って管理します!」
船長の奥様も乗ってるのね。しかも水先案内人か…。 (船長と何が違うの?)
船長は船全体のトップ。水先案内は航路とか、操船の指示を出す人だね。 (ほえー)
大体は船長に次いでナンバー2くらいの立場になる筈。 (夫婦でえらいひと!)
そうなるね。
私達も挨拶をして、いよいよ出港。
船長の奥様とも少し話をした。
「礼儀のなってない者ばかりですが、気のいい連中なので許してやってください」
「私達はお世話になる立場ですから。よろしくお願いします。危ない事などしてしまったら遠慮なく注意してください」
「そう言ってもらえると助かるわ。船という限られた空間ではどうしても指揮系統が第一になるから」
ある意味船が小さな国みたいなものだもんね。
みんなにもちゃんと周知しておこう。
私達が使っていいとあてがわれたのは、船の内部にいくつかある、結構大きな船室。
男女で分けられるから、スピネルもこっちにいる。
「ユウキのとこ行きたい…」
「ごめんね、部屋はどうしても無理だから。 二人になりたかったらドラツーに送ってあげるよ」
「わかった…」
不安そうにソワソワしてるから見てられないな。 (とらうま?)
かもしれないね…。
みんなには注意事項や船のルールを知っている限り伝えて、甲板へ戻る。
ユウキも寂しかったのか再会するなりくっついてる。 (リア獣め!)
リア充ね? (そうともいう?)
「よしっ! 出港だ!!」
船長の一声で船はドッグを出て、大海原へ。
「うわぁ…すっご!! こんな大きな帆船が…」
「順風満帆ってやつね。帆が風を受けて膨らんでるわ」
「奈々と麻帆は船酔いとか経験ある?」
「私は船が初めてだよ!」
「私もね」
「そっか、私のあげたアクセサリーで状態異常は無効化されるから、外さないようにね」
「取らないよ!」
「そうよね」
ならいいけど…。
奈々は船のへりから身を乗り出してる。
「海がめっちゃくちゃきれい!」
「落ちるわよ!」
魔法防壁があるから大丈夫だけど、見てると不安になるな…。
気をつけるように言っておこう。
「これがお嬢様の作られた船ですか…」
「私が作ったわけではないけどね」
「何言ってるのよ。設計から関わってたじゃない」
「お姉ちゃんが資材の強化したの凄かったよね」
「はいなのです! あんな大きな魔力が動いたのは初めて見たのです!」
「見たかったですね…」
ピナさんが残念そうにしてる。 (ドラツー追尾させるのー)
うん、お願い。隠蔽しておいてね。 (あーい!)
王妃様と船長、水先案内人は地図を広げながら相談してる。
海図っていうんだっけ…よくそんなのあったな。
初めての航路なんだよね? (アキナさんの指示で飛んだドラゴンがカメプロつけて飛んだから)
それを元にしたの? (そうそう。アキナさんが作ってくれてた)
なるほどなぁ…。さすが女王様。 (ドラツーもろくがちゅー)
わかったよ。 もし何かあったら教えてね。 (はーい!)




