親友の家
最近、よくバスに乗ってるな…。 (これは市営バス)
よく知ってるね。 (うちの近くにもバス停あるし!)
あぁ、あるね。ティアとのデートで乗ったのもそこからじゃないかな。 (うん! お散歩で近くを通るから)
あぁね。
うーん…よく考えたら私、奈々の自宅へお邪魔するのは初めてな気がする。
麻帆、奈々の家族と一緒にバスに揺られながら、記憶をたどるも、ティーに貰った記憶にもないから…。 (そうかも)
ちょっと緊張してきた…。
「奈々、アスカちゃんを呼べるほど部屋を片付けてあるの?」
「……大丈夫だけど! アスカ、麻帆の家で少しだけ待ってて!」
片付けられてないって言ってるようなものよね。 (いつも服とか漫画本とか散らばってる)
奈々らしいわ。 なんか緊張もほぐれたよ。
「うちはいいけど…初めてよね、アスカちゃんがうちに来てくれるの」
「うん、そうだね。突然だけどいいの?」
「お母さんしかいないし大丈夫よ」
麻帆ってお父様いないの!? (たんしんぷりんー)
単身赴任か…。それは寂しいだろうなぁ。 (それそれ!)
空港から最寄りまでバスに乗った後は歩きになる。
奈々の荷物が重そうだから、持ってあげようとしたのだけど断られてしまった。
トランクにキャスターがついてるから大丈夫らしい。
奈々のご一家と別れて、数件隣の麻帆の自宅へ。
「本当に近所なんだね」
「ええ。前にも話したけど、小さい頃からの腐れ縁なのよ。でも、まさか同じ人を好きになって、同じ人と付き合うなんて思いもしなかったわ」
それは…まぁ、うん…。一度に複数と〜なんて普通ではないし。 (異世界では普通)
こっちだと修羅場案件だろうけどね…。
麻帆の自宅ではお母様に挨拶をして、部屋にお邪魔した。
さすが麻帆の部屋はキレイに整理整頓されてる。性格が出るなぁ…。
「奈々の片付けは直ぐに終わらないでしょうからゆっくりしましょ」
お茶を持ってきてくれた麻帆にお礼を言って受け取る。
「そんなにひどいの…?」
「奈々よ?」
「なんというか、すごい説得力だね」
確かに奈々って大雑把だし、細かい事をあまり気にしない子だけど。
「いい加減で、あまり物事に執着しない奈々が、アスカちゃんに対してだけここまで変わるとは思わなかったわ」
「そっかぁ、どうするのがいいのかな…。私は何ができるんだろう」
「難しいわね。私も恋愛経験なんてないし…」
「私も…」
「そうなの!? アスカちゃんは意外だわ」
「え…? 私って遊んでそうに見えるの!?」
「違うわよ。間違いなくモテるから、異世界で恋人の一人や二人いたんじゃないかって」
「うーん…。勇者って立場的に婚約させられそうになったり…とかはあったけど断ったし。そもそも役目を果たすと送還されてたからね」
どちらかというと戦いに明け暮れてた気がする。
内政をしてた魔王時代のが戦わなかったくらいだからな…。 (部下がいっぱいいたし)
まぁね。現場には行かせてもらえなかったし。 (トップが行ったらダメなの!)
同じ事をファリスやロウに言われたよ。
「勝手によびよせて戦わせて、用が済んだらもういらないって、酷い話よね?」
「まぁ…そう言われたら…」
慣れてしまって、そういうものだと思ってたけど…改めて言われると確かに酷いな。 (確かに! 許せねぇ!)
もう今更だから。 (むー!)
それに、喚ばれたりしなかったら出会えなかった人達ばかりだからね。ティーだってそうでしょう? (うん!)
だからいいの。 (はーい!)
麻帆と、これからどうしたらいいのか…とか、奈々への対応を相談したけど、良案は出ず…。
当の奈々からのメールで話し合いも中断。
麻帆と奈々の家に移動する事に。
自宅の玄関で待ち構えてた奈々に案内されて、二階の部屋へ通された。
「奈々、短時間で頑張ったわね…。 アスカちゃん、間違ってもクローゼットを開けたらだめよ」
「わかった。なんとなく予想ができたよ」 (開けたらどさーーって)
うん。多分大惨事だよ。
まぁ、勝手に人のクローゼットとか開けたりなんてしないからいいけどね。
そんな話をしてる間も奈々が傍にきてくっついたまま離れない。
「奈々、本当にどうしたの?」
「どうもしないよ! くっついてたい気分なだけ」
「前はそんなことなかったよね?ふざけて〜とかくらいはあったけど…」
「それは…恋人ではなかったし」
確かにそう言われたらそうだけど…。
「そんな事でこれからどうするのよ?学校とかもあるのよ?」
「え?くっついてるけど?」
それは困るというか、色々不味いのではなかろうか…。
「ファンクラブになんて報告するのよ…」
「事実をそのまま伝えるよ!」
「大騒ぎになるわよ! それに…アスカちゃんは私の恋人でもあるのよ!」
「むー…」
異世界だと、アキナさんみたいに奥様がたくさんいるのは当たり前に見てきたけど…こっちでそれはおおっぴらにしたら大変な事になりそうだよなぁ…。 (こっちでも女好きって噂に…)
私は別に性別で選んでる訳では無いのだけどね? (寄ってくるのがみんな女の人)
なんでだろうね? (なにか見えない力が働いてる…)
怖いからやめてよ…。
麻帆と、駄々をこねる奈々をなんとか説得して、学校では今までどおりに接するって話で落ち着いた。
これから上手く付き合っていくためにも、それが一番いいからと麻帆も言ってくれたし。
奈々が納得したのかは微妙なラインだけど…。
泊まっていって欲しいと言ってくれたけど、家の子達に何も言ってきてないし…。
多分というか間違いなくみんなが許さないよね。 (リズが泣くの)
そればダメだ。
「リズとティーが待ってるからごめんね…」
「子持ちだものね、アスカちゃん」
「じゃあ私がアスカの家に行く!」
今日海外から帰ったばかりでしょう!? (元気やなぁ!)
ほんとよ…。
「今日はゆっくり休んで。その代わり、また一緒に異世界に行こう?船旅の予定があるから」
「マジで!? むーそれならわかった…」
「私もいいの?」
「うん。許可は取ってあるからね」
ストレリチア様達も誘ったのだけど、流石に何があるかわからない未知の航路を行く船旅だから、グリシア王国の陛下から許可が出なかった。
ストレリチア様が来ないのに、サラセニアとモルチアナが来るはずもなく…。
王妃様はがっかりしてたけど…。 (シルフィー様も乗れないから同じ)
まぁね。多分、親戚に当たるストレリチア様に会いたかったんだと思うよ。
二人と夕方まで過ごして、お互いお土産の交換もしたりとのんびりすごした。
近いうちに異世界へ行くから、その時には連絡すると約束をして帰宅。
帰るなり、遅かったと未亜とリアに怒られて、怒る二人をシエルとリズが止めてくれたりと、帰ってからも騒がしかった。
最近はこの騒がしさが当たり前になってるなぁ…。
それを心地よく感じてる私がいるし。




