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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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船と風



港を出た船は速度を上げて、海の上を滑るように進む。

「はっやーい!」

「すっごいのです! 大きなお船なのに!」

「ええ。これもみーんなアスカちゃんのおかげなのよ?」

「ママすげー!」

「リズのお母様は凄いのです!」

「そうなのよ?本人は無自覚だからもっと言ってあげて」

恥ずかしいからやめてください王妃様! (えー…ママはすごいのに)



ひとしきり王妃様に持ち上げられた後、

「そうだわ、船長を紹介しておくわね」

王妃様にそう言われて、船の後方にあるキャビンの上、舵輪のある場所に案内された。


「船長、最新鋭の船は動かしてみてどう?」

「王妃様かい。 最初はどうなるかと思ったが、気持ちよく疾走るから舵輪を握るのも楽しくてな」

そう笑うのは、真っ黒に日焼けをした髭面のガタイのいいおじさん。


「発案者はこの子なのよ? 高貴な身分の子だから気をつけなさいね」

「それは王妃様もだろう? だが、俺達はこんな感じだからな、口のきき方もなっちゃいねぇだろうが許してくれ」

「全くもう! ごめんなさいね、アスカちゃん…」

「いえ! 私は気にしないので普通に接してください。 アスカといいます。魔道具に不明なことや改善点とかありましたら言ってくださいね」

「丁寧にありがとな! 俺はこの船の船長を任されているウインドラスってんだ。ドラスとでも呼んでくれ!」


船長は初め、魔道具の風を受けて船が進むというのが意味がわからなかったらしい。

しかも船を走らせていても風を感じないから違和感がすごかったと…。

これは私が船を操縦なんてしたことが無いからだな。申し訳ないことをしてしまった。

それでも操船にはすぐ慣れたそうで、天候や風向きに左右されずに行きたい方向へ真っ直ぐに動かせるのなら有り難いって言ってくれた。

柔軟な対応をしてくれて感謝しかないね。



それでもやっぱり要望はあった。


「なんとか走ってると実感できる程度に風を感じられないか? 船乗りにとって風はとても大切でな」

「そうですね…擬似的ではダメだということですよね?」

「ああ。風からわかる事もあるからな」

となると、部分的に風を通すしかないな…。


「アスカちゃん、なんとかなりそう? 私も言われたのだけどさっぱりで…。だってこれにつける魔道具を作るだけで精一杯だったんだもの」

「甲板周辺…つまり船員さんの乗っている部分へ風だけは通すようにするしか無いですね」

「そんな事できる?」

「あれを使います」

「あれ…?」

手持ちにまだ一つだけあるプロトタイプのスモーク発生装置を見せる。


「これのスモーク部分を無くして、少し改造したものを船の舳先に取り付けます」

「その中を通った風だけは通り抜けてくるのね?」

「はい。嵐などで危ないようならエアインテークのフィンを閉めてしまえばいいですし」

船長にも説明しながら、舳先へ仮付け。魔法防壁の外へエアインテーク部分を出す。

入ってきた風は上下左右へワイドに広がり、甲板全体へ流れる。改造したのはこの部分。

もともと魔法防壁内は、空気の循環がされていて、中から外へ空気は抜けるからこれで問題ない。



「おぉ! これだよ! 走ってると実感できるな!」

「大丈夫そうならこのまま取り付けますが、デザインに希望とかありますか?」

「そうだな…翼を広げたドラゴンの形にできるか?新年の時に見たのがカッコよかったからな! それになんと言ってもこの船の造船を指揮した王妃様はドラゴンだからぴったりだろう」

「わかりました」

確かに王妃様はドラゴンとして覚醒してるし、新年の編隊飛行はすごかったもんなぁ…。 (また見たい!)

ドラゴンの里へ行けばみんな飛んでない? (今はボードに乗ってるし…)

そうだったね…。



船飾りとして、編隊飛行をしていたドラゴンの飛んでいる姿をイメージ。

角をくれたウインドドラゴンをモチーフにして作った物を取り付け。

エアインテーク代わりの翼を広げたら、甲板を風が吹き抜ける。


「いいな…。これでこそ船だ!」

「良かったわね。これで文句はない?」

「文句って…そんなつもりではなかったんだが…。 でもこれで仲間たちも満足するだろうからありがとうな!」

「いえ…」

元はといえば私の知識不足による設計ミスみたいなものだし。



実際、甲板にいる船乗りの人や、うちの子達の髪や服が風でなびく姿は船に乗ってる! と実感させてくれるもので…。

船長さんの言いたい事を身を持って実感した。



うちの子たちとも合流し、風を感じながら船に乗る。

うん、気持ちいい…。船に風は大切。覚えた。 (ママ達はスカート気をつけてね)

そうね。長いからよほど大丈夫かと思うけど。こっちはあまり短いのとかないし。 (それでも!)

わかったよ。そこそこ風が強いもんね。 (うん)

過去に風で痛い目を見てるし、気をつける…。


そういったのだけど、心配してくれてるのかティーが私のスカートを掴んでる。 (危ないの)

お手数かけます。



実際、風を感じて気持ちよくなったのか、船長が速度を上げたから危なかった…。 (やっぱりー)

未亜達は慣れてるのか、しっかりと押さえてるのは、なんでだろう。 (慣れ?)

そう言われたらその通りかもね…。私は自分が男だと思って生きてきた期間のが圧倒的に長いし。

まだスカートに慣れないのもあるかも知れない。



速度を出し過ぎだと王妃様に叱られて、渋々速度を落とした船長は、港へ向かい舵を切った。

ちょっとした船旅だったけど、楽しかったね。 (うん! また乗りたい!)

私では約束できないけど、また乗れたらいいね。 (夕波王国まで船旅ー)









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