帰国、そして…
夕波王国での役目を終えて、一足先に帰る許可も貰った。
私が帰ると知った魔族の人たちが悲しそうにしてたけど、ハルナさんは私の叔母だから、此方での仕事を頑張ってほしいとお願いしたら張り切ってた。
ドルチェさん達も魔道具の生産を勧めてくれているから、きっと良いものが出来上がる。
アキナさんはピナさんを護衛に、もう一日は此方で話し合いとかがあるらしい。
一緒に帰るかと確認したお祖母ちゃんとお祖父ちゃんは、リゾートが気に入ったからと、暫くハルナさんのところに滞在するって。
「じゃあ私達は帰ろうか」
まずはみんなをドラゴライナ王国へ連れて帰った。
私はお土産や、雫の小瓶を渡すためにあちこちへと転移して、ドラゴライナ王国へと帰ってきたのは夜になってからだった。
「ママお疲れ!」
「ティーと、リズもついて来てくれてありがとね」
「お母様と離れたくないのです…」
リズが甘えたさんになってるから、二人を抱き上げてみんなの待ついつもの部屋へ。
今は責任者代理になってる母さんにも報告した後、私達は地球に帰るつもりだったのだけど…。
「アスカー助けて!!」
「母さん!? どうしたの…」
部屋へ駆け込んでくるなり、すがりついて助けを求められるとかよっぽどだよね。 (トラブルかな)
かな…ティーは知らない? (街のほうが騒がしいから今見に行ってる!)
ありがとね。 (あい!)
アキナさんに責任者として国の事を任されてた母さんは、奥様達の協力もあり、特にトラブルもなく纏めていたらしい。
それが、ついさっき警報が鳴ったと。
「ワイバーンとハルピュイアの同時襲撃が起こってるの! 耐性のない兵士がハルピュイアの声で混乱になってて、ワイバーンへの対処が上手くいかないの!」
それ一大事じゃない! (混乱した兵士で同士討ちが…)
ケガ人は!? (結構な数)
急がなきゃ…。
「それなら私達の出番かしら」
「僕たちは姉ちゃんの魔道具で状態異常も無効化されてるからね」
「…私も手伝う」
リアにユウキとスピネルも手を貸してくれるなら有り難い。
うちの子達もみんな手を貸してくれるというから、先ずはチョコ達を庭に召喚、チョコ、クッキーには先行してもらった。
「この中で治療できるのはお姉ちゃんだけだから、戦いは私達に任せて」
「…レウィちゃんもボタンもいるから大丈夫なの」
「じゃあティーとリズ、プリンは治療するママの護衛!」
「なのです!」
「わかったよ、ありがとね」
襲われた方角は西側、一回目の狩猟大会で行った方角だから記憶にも新しい。
「母さんは責任者なんだから、本営にいてね」
「わかったよ…夕夜も行ってるから手を貸してあげて」
父さんが…。
うちの子達を連れて、西の門の外へ転移。
キャンディには混乱している兵士の気絶、ラムネにはクッキー達の援護を頼む。
「気絶させたら集めておくわ〜」
「お願いするよ。魔力ドームで安全地帯を作るからそこへお願い。 飛べるリアはクッキーたちの援護をお願い。先ずはハルピュイアを落として」
「わかったわ!」
現場は混乱した兵士との同士討ちがあちこちで起こり、かと言って仲間に本気で攻撃できない正気の兵士が防戦一方で、ケガ人も凄い数。
上空にはワイバーンとハルピュイアが数えられないほど飛び交ってて、チョコ達と激しい空中戦が…。
味方が知り合いだけなら威圧で全部落とせるけど…ここでそれをしたらうちの子達以外全てに被害が出ちゃう…。地道にやるしかない。
民間人の避難は警報により済んでるようで、探索で見る限り武装してる人しか見当たらない。
「キャンディ! お願い、急いで!」
「任されたわ〜」
拡声魔法を使い、混乱者を気絶させ、ケガ人の治療を始めるからと通達。
霧化したキャンディが混乱した兵士を一気に制圧してくれて、手の空いた兵士にも気絶者を魔力ドームへ移動させてもらう。
私はティー達に背中を任せ、ケガ人を治療して移動させる…。そんな事を何度も繰り返しながら、ようやく戦える人だけが残った。
「アスカ! 助かったぜ…」
「父さんもお疲れ様。ケガはない?」
「もらった魔道具があるからな!」
渡しておいてよかった…。
ハルピュイアもワイバーンも、うちの子達が魔剣の斬撃で次々に撃ち落としていくけど、なんせ数が数だ。
探索で見ても、数百単位で飛んでるし、森の奥からまだまだ飛んでくる。
しかも、地上にも大量の魔獣が群れをなして向かってきてる。
拡声魔法で周りにも伝え、魔法防壁で西側の防御を固めた。
これで地上側の足止めはできるけど…。
「姉ちゃん、これどう思う?」
「大量発生とか、異常繁殖…。 そうだ、ユウキは二回目の狩猟大会で西側を受け持ってたよね?なにか見なかった?」
「ダンジョンは見つけたけど、中に敵は居なかったよ」
「最深部まで?」
「流石にそこまでは…。ギルドへ報告はしたし、調査隊も行くって聞いたけど」
そこから溢れた?
根本を絶たずにここだけ乗り切ればいいのならそれでいいけど…。 (増え続けてるの!)
だよね…。
どうする…どうする…!?
「お姉ちゃん、キリがないよ!」
わかってる! ちょっと考えさせて…。
「アスカちゃん! 遅くなってごめん、お待たせ! 凌いでくれてありがとね」
「アキナさん!」
到着したアキナさんは的確に指示を出していく。
「救護部隊はケガ人の移送を急げ! 兵士はもっと広範囲まで民間人の避難誘導を優先しろ!」
さすが女王陛下…。
「親衛隊はここで殲滅戦だ! アスカちゃん達も力を貸してもらえる?」
「勿論です! 地上は魔法防壁で防いでますから」
「じゃあ空に集中できるね!」
アキナさんはドラゴン部隊に指示をだすと、クッキー達との連携を命じた。
私もうちの子達に連携してもらえるようにお願いしておく。
「さて…どこまで把握できてる?」
「地上も空も同じ方向から大量に向かってきています」
「数は?」
「どちらも数百単位で、未だ増え続けてます」
「…そっか」
アキナさんが凄くつらそうな顔をしてる。
国の一大事だからかとも思ったけど、なんか違う気がして…。 (森の遺跡ダンジョン近くに、奥様達がケガして隠れてる!)
え!? (遺跡からもまだ溢れてきてるの!)
わかったよ。
「アキナさん、現地にいる奥様達はまだ無事です! 私に行かせてください!」
「…ダメだよ。危険すぎる」
「でも!!」
「アスカちゃんは継承権一位の王女なんだよ! それでなくてもお姉ちゃんの大切な娘なの!」
「私はアキナさんのように、大局を見て指示を出す力はありません。でも戦う力はあります。こんな時に動けなくなる肩書なら必要ありません!」
「…アスカちゃん…」
心配してくれるアキナさんの気持ちは嬉しいけど、私が行かなきゃ。 (ママ…)
「わかった。 行ってくれる? でも絶対に無理はしないでね!」
「わかりました。お約束します」
「お姉ちゃん…」
「アスカ、行くのね?」
「お姉様…」
「ごめんね、絶対に戻る。それは約束するから」
「ママ、やっちゃえ! ここは任せて!」
「リズも頑張るのです!」
「ありがとう」
移動はどうしようか…チョコなら強いし頼れるけど、今ここで連れ出したら…ここでの均衡が崩れてしまう。
「主様、乗って!」
「レウィ! いいの?」
「わう! 任せてください!」
「ありがとうレウィ…」
大きくなってくれたレウィに乗せてもらう。
「アスカちゃん、気をつけてね」
「はいっ! 行ってきます!」
私はレウィに乗り、西門から飛び出した。




