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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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お仕事、お仕事…



人魚のジュンさん、レンさんと、先代様の再会は無事に果たされ、また折を見ては会いに来るらしい。

奥様へはタイミングを見計らって話すそう。 (修羅場回避?)

どうだろうね、先延ばしにするとバレた時に不味い気がするし…。


現陛下は、姉妹にあたるレンさんと打ち解けることができず、寂しそうにしてた。

やっぱり人見知りが激しいみたい。

生活環境が違うから無理もないのかもしれないけど。


人魚の二人は海岸から普通に海へ帰っていった。 (魚の放流)

違うから。



城へお帰りになる二人を見送りがてら、私達もみんなで街を見て回った。

母さんの言ってたミノウシの串焼きとか、蕎麦や天ぷらもあったから食べ歩きしたり、武具のお店ではこちらの刀を見せてもらったりした。 (いいもの?)

ピンキリだね。安いのは当然、数打ちだし。

名刀も何振りかあるね。高いけど。 (ティーはママのくれた刀がいい!)

ふふっ、そっか。 (ティーのと同じくらいで小太刀ってのがあるよ?何が違うの?)

あー…。脇差より長め、つまり長脇差サイズなんだけど、作った人が小太刀って言えば小太刀になるだけって聞いたよ。 (なにそれ…)

その辺は曖昧なんだよ。ティーのも作った私が小太刀って言えば小太刀になる。 (ほぇー)

私も聞いた話だけどね。 (誰に?)

ほら、ティーのにも使った刀装具を買ったお店のおじいちゃんに教えてもらったの。 (あぁ!)

お話好きなおじいちゃんだっから色々聞かせてくれたんだよ。お元気かな…。 (ティーも会いたい!)

今度行ってみる? (わーい!)


この国では完成品しか売ってないのかな。 (手入れ道具はあった)

それは当然あるでしょうね。

「なにか欲しいものはあったかな?」

私とティーが刀を見てるのを少し離れて見守ってたおじさんが話しかけてきた。


「えっと…刀装具は扱ってないんだなぁと思いまして…」

「珍しいねぇ、職人しか扱わないから表には出してないんだよ」

そう言って、おじさんは奥からいくつか刀装具を出してきてくれた。

どれもセットだから、統一感があってキレイ。


「まさか自分で作るのかい?」

「これママが作ったの!」

ティーがマジックバッグから出した刀を見せてる。


「……これを貴女が?」

「ええ…まぁ…」

店の人が、ティーから借りて抜こうとしたけど、当然抜けず…ティーが抜いて見せてた。


「これは普通の刀ではないね?」

「そうですね。鍛錬もしていませんし、刃は魔石ですから」

「ちょっと何を言ってるのかわからないけど…少し借りていいかい?」

「だめー! ティーしか使えないから」

「うん?」

理屈を説明したのだけど、意味がわからないと頭を抱えてる。


「魔力流さないと刃にならないの!」

「やって見せてくれるかい?」

「それならいいよー」

ティーが魔力を流すと、魔石の波紋部分が淡く光る。


「…これはまた綺麗だな。そのまま刃を上にして持っていてくれ」

「あーい」

おじさんはそこらにあったなまくらを抜くと、ティーの構える刀に振り下ろした。

当然なまくらは物打ちのところで真っ二つ。


「……切れ味も凄まじいな。これは魔刀の類か。ありがとう、いいものをみせてもらったよ」

「ティーの宝物だから」

「おそらくうちのどの刀より価値があるから大切にするといい」

「あい!」

そのまま帰るのも憚られて、刀装具を購入。

いいものを見せてもらったからと値引きしてくれた。


「もし、作った魔刀を売ってくれるのなら高値で買い取るが…」

「すみません。売る気はないです。渡すなら相手を見極めたいので」

「道理だな、魔刀など持つ者を限定しないと危ないからな。いや、すまない。作り手がしっかりしたお嬢さんで安心したよ」

試されたのか…?

「詫びと言ってはなんだが、これを持っていくといい。それで一振り打ってくれ。完成したら見せてくれるだけでいい」

渡されたのは玉鋼? (出来る?)

出来ると言えばできるけど、時間はほしいかな。 (楽しみ!)

私も少し楽しみかも。


おじさんには完成したら見せに来ると約束をしてお店を後にした。


「長かったわね?」

「待たせてごめんね」

「なにか難しい話してたもんね、お姉ちゃん達」

「姉ちゃんは昔からそういうの好きだよな」

ユウキは私が骨董市とか行ってたのも見てるからな。 




武具のお店のあとは、シエルの希望で呉服屋さんも覗いたけど、どれもトロピカル柄で。

数少ない落ち着いた柄の反物や、帯など少数購入。

きっとシエルがまた何か作ると思う。こちらに来て色々とインスピレーションを得てたみたいだし。

「お姉様…なんで反物って言うの…?」

「長さの単位だよ。一反が一人分の着物が作れる長さだったはず」

「おや、お嬢さん詳しいね」

「知識としてだけですけど…」

「最近は若い子が着物を着なくなったりしてるからね。こうやって興味を持って反物を買ってくれるなんて嬉しいんだよ」

おばさんはサービスだよって、可愛い根付をくれた。

シエルが興味を示したから、色々見せてくれて。

形彫根付って言うらしい、動物の形を模した木彫りの根付を追加でいくつか購入。

シエルは使い方を真剣に聞いてて、お店の人も嬉しそう。

帰り際に“またおいで”って言われてたから、また連れてきてあげよう。




市場では、未亜が食材を吟味してたから、いいタイミングだと思って鑑定の魔道具を渡してあげた。

「お姉ちゃんこれって…」

「食材を選ぶのなら、充分な性能があるから使ってみるといいよ」

「ありがとう!」

メガネ型にしたから、装着した未亜は随分と雰囲気も変わる。 (かしこそう!)

その、メガネ=賢いってのは何処から? (知らない!)

なんとなく言わんとするところはわかるけども。


ただ、この魔道具には一つ誤算があった。

「お姉ちゃん、成分はわかるけどそれがなにかわかんないよ…」

見慣れたものの方で成分を記憶していれば比較できるけど、こっちを先に見たらわかんないか。

一度、地球側でスーパーとかへ行って鑑定すれば記憶するから、此方で鑑定した時に似たものを見つけやすいんだけど。 (まさかママは全部記憶してる?)

うん。というか、鑑定の機能で記憶されるし、似てるものも辞書のように比較として出てくるから。

レベルが上がると情報量が増えてややこしいけどね。 (便利すぎる)

鑑定はそういうものよ。 収穫時期や産地、痛むまでのカウントダウンまであるから。 


未亜には手持ちの野菜から基本的なものを見せてあげて、それと比較できるようにしてあげた。

おもしろかったらしく、ずっと眼鏡をかけたままになっちゃったけど。 (仕方ないのー)

ま、喜んでくれたならいいよ。



ホテルへ戻った後は、戦闘に参加した子達からご褒美にとお願いされて、お祖母ちゃん達も誘って海岸でミノウシバーベキューをした。

「やっぱりアスカの手料理が一番だわ!」

「姉ちゃん、いっそ店でも出したら?」

「…それなら私ずっと店に居たい」

ユウキが寂しそうにしてるからスピネルはちゃんと傍にいてあげて。 (食べ物に釣られてる)

美味しいものはみんなに食べさせてあげたいけどね。


 


ティアも戻ってきて、シルフィー様からの伝言も貰った。

「早くこれ欲しいっていってたよー」

雫の小瓶か。

「早速見せちゃったの?」

「自慢したくて!」

みんなのもあるからいいけど…。また早めにあちこちへ渡しに回らなきゃだな。 (忙しい)

会えるから苦でもないんだけどね。アルディエル母様にも渡したいし。





その日の夜、のんびりしてたらアキナさんから話しがあるからと呼ばれて、ハルナさんの執務室へお邪魔した。

「アスカちゃん、何したの!?」

え、なんの事…。


「先代のユウナミから、正式にアスカちゃんへ嫁入りの打診が来たんだけど」

「はい? 先代様へですか?」

「違うよ! シラハに!」

何でまたそんな事態に…。


「アスカちゃんはうちの継承権一位の王女だから断るのは容易なんだけど、私は理由が知りたいの。アスカちゃんがどうしても嫁ぎたいと言うのなら私は協力するよ?」

「いえ! お断りしてください! お願いします」

絶対にやだよ…。 (うんうん!)


「陛下、理由については私が…」

ピナさんがアキナさんへ何やら耳打ちしてる。


そもそもなんでわざわざ先代様から? (自分では口説けなかったからとか…)

だからってそこまでする!?



「なるほどね…。まだ未熟なシラハに有能なアスカちゃんをつけたいってことかー」

「恐らくは。 お嬢様はこちらの陛下よりずっと統治者として素晴らしい方ですから」

もしかしてお説教したからとか? (あー…ママの話はちゃんと聞いてたし)


「想い合ってるのなら止められないと思ったけど、そういう理由なら断っておくね」

「すみません、お願いします…」

アキナさんまで巻き込んでしまって申し訳ない…。


「あ、アスカちゃん。もう一つ。 明日、賠償金の受け取りと、通信魔道具への書き込みをお願いしたいから同行してね」

「了解致しました。グリシア王国やバサルア共和国については大丈夫ですか?」

「そっちは通信が繋げるほどの魔力持ちがいないから、全部アクシリアス王国経由になるね」

あーそっか…。距離があるから難しいか。 (でもグリシア王国にはママとの称号でステータス跳ね上がったストレリチアがいるし、バサルア共和国にはファリスがいるのに?)

ストレリチアは国の運営には関わらないって言ってた。時期国王の兄がいるのに、目立つと担ぎあげようとする貴族が出てこないとも限らないからって。 (だからメイド…)

うん。 ファリス達に関しては、そもそも住む場所を提供してもらってるだけだし。 (納得)




翌日、アキナさんと登城した私は、夕波陛下と先代様ご夫婦からの正式な謝罪と、賠償金の受け取りをした。

またかなりの額なんだけどどうしたものか…。


「貴女がアスカちゃんなのね。シラハが惚れるのもわかるわ」

そう話しかけてきたのは先代様の奥様。

大きな狐耳に、フワフワのしっぽが三本。妖狐のシラユリ様。


「そうじゃろ?母上。美形な上に統治者として確かな知識と力も兼ね備えておるんじゃ!」

「…シラハでは釣り合わないわね」

「酷いのじゃ!」

「正式な打診も断られてしまったし諦めなさい」

「ううー…」

アキナさんがしっかりと断ってくれたからね。 (諦めてなさそうだけど)

それは私に言われてもなぁ…。


「シラハはまず、自身を磨きなさい。今のままでは相手にされないのは当たり前です!」

「…はいなのじゃ」

お母様が話のわかる方で良かった。


通信魔道具へ夕波陛下の波長を刻み、国の紋章も入れた。

波を連想させる紋章は家紋のようでオシャレ。

アキナさんが代金もしっかり請求したようで、そちらも支払われた。


これで後は、各国のトップの集まる会談まで私は関与することはない。

ドラゴライナ王国のお祭りが終わった後になるそうだから、数ヶ月は先の話。


これで夕波王国へ来た本来の目的も、仕事も大体は終了。

お土産とか買って帰ろう! (おー!)











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