リゾート地で売れるもの
興奮してるハルナさんに、さっき作ったものを一通り見せながら説明。
完全に商売人の目で吟味してる…。
「お嬢様、私はこの日陰でのんびりできるセットがいいです。休む時に大変重宝しますよこれ…」
魔力ドームの日陰と、キャンディが喜んでたビーチチェアかー。
じゃあ、ビーチチェアにパラソル代わりになる色付きの魔法防壁を展開させて、日陰を作るか。
量産しやすいようにカスタムしたものを作ってみた。
「製品にするなら、こんな感じでどう?」
「お嬢様、これでは日陰がありません…」
「肘置きの魔石に魔力を流せばパラソルが展開されるから」
「は、はぁ…」
私が言ったとおりに魔力を流すと、広がる魔法防壁。カラーリングは好みで変えればいい。
「これは…持ち運びにも適してますね」
「そうね、ビーチチェアだけでいいから」
ピナさんは気に入ったのか、パラソルを開いたり消したりと試してみてる。
「また何や増えとるやん! ちょっともう待ってや…頭おっつかんから!」
なんか怒られた…。
「アスカちゃん! 私もあれ乗ってみていい?」
いないなと思ったら水着に着替えてきたアキナさんは水上バイクに乗りたいみたい。
操作方法だけ伝えて乗ってもらった。
海上を爆走する水上バイク。あっという間に乗りこなしてるのは流石としか…。
「陛下…本気で楽しんでおられますね」
「うん、楽しむためのものだし、正しい使い方だよ」
「そうですが…」
そう言うピナさんもビーチチェアで寛いでるけどね。
メイド服のままだから違和感がすごい。
「よしっ、ほなアスカちゃん交渉しよか!」
「は、はいっ!?」
「私達が聞くわよ! アスカの不利益にはさせないんだから!」
「だよねー。アスカのことだから別にいいですよーとか言いそうだしー」
「そうよね〜ますたぁへの交渉は私達を通してもらうわ〜」
「む…なんやのあんた達は! アタシはアスカちゃんと…」
「嫁だけどなにか?」
「だよねー!」
うちの子たちがガードしてくれて、すごい気迫のハルナさんから守ってくれてる。
有り難いけど大丈夫かな…。
「わかった! わかったから! こっちも商売や。信用が大事なんはようわかってる。なら嫁さんらと交渉しよか?」
「未亜、シエルも来なさい!」
「うちも…?」
「私、商売とかわかんないよ?」
「アスカに損させないためだから! アスカ、ここは私達に任せて、海にでも行って遊んでなさい」
「そうよ〜?こういうのも嫁の役目なんだから〜」
「わ、わかったよ…」
取り急ぎ魔力ドームの日陰で覆って交渉の場だけは整えておく。
みんなに丸投げしちゃっていいんだろうか…。 (ママが交渉するよりは?)
ひどくない!? (ママはティーとリズと遊ぶのー!)
…そうね。 私は遊んでるように言われちゃったし、一緒にシュノーケリングみたいな事でもしようか。
せっかく水がきれいなんだし。 (なにそれー!)
「ティーとリズも見ててね?今から遊ぶための魔法を使うから覚えて」
「はいなのですお母様!」
「わくわく!」
魔力ドームを展開して、それで顔を覆う。
本当なら風の魔法も同時に織り込んでおけば常に酸素の供給もできるけど難易度が高いから。 (リズにはまだ無理かも…)
うん。だから魔力ドームだけで、使えるのは一定時間だけ。
「リズ! 普段、掌に出してるのを顔に出すだけなの!」
「はいなのです! えっと…魔力ドームを作って、顔に…」
「そうそう。上手だよ。それを維持したまま水の中に行くよー」
集中力や魔力操作も鍛えられるからちょうどいいはず。
会話も普通にできるし。
二人を連れて海の中へ。二人の足がつくぎりぎりくらいでいっか。
「その魔法を使ったまま水に浮かんで下を見てご覧?」
「わぁ〜… 小さな魚が泳いでるのです!」
「よく見えるでしょ?」
「きれーー!!」
応用すれば全身を覆って海底散歩とかもできるけど、流石に危ないから…。 (してみたいー)
後でみんなと一緒につれて行ってあげるよ。 (やった!)
しばらくティー、リズとシュノーケリングもどきを楽しんで、魔力ドーム内の酸素が切れる前に切り上げる。
あれ…レウィは? (砂のお城の中で寝てるー!)
犬小屋かよ! (豪華だなー)
確かに…。
サンドキャッスルを覗いたら、中で丸まってた。
走り回って疲れたのかな。はしゃいでたし。
しばらく寝かせといてあげよう。
私はそろそろ一度交渉の様子を見に行くかー。
「もう私も混ざっていいかな?」
「アスカちゃん、この子ら酷いんよ! 取り分が8:2やなんて…」
「私側が2ですか?」
「そんなわけ無いでしょう! アスカが考えて作ったんだから8がアスカよ!」
「あー…嬉しいけどそれは流石に無理があるよ」
「なんでー?」
「魔石もタダじゃないし、作ってくれる職人さんにも支払わなきゃいけないんだよ」
「でも〜これ、ますたぁしか作れないわよ〜?」
いや、ドラゴンの鱗の加工なら魔族の人たちなら可能だし、術式も簡略化したはずなんだけど?
「こっちでもできそうなんは…ちょっと待ってな。あー…もうややこしいからうちの職人連れてくるわ」
確かにそれのが確実だね。
その間に塩水でベタベタしてるみんなのためにシャワー室を作って、サッパリしてもらった。
クリーンかけても良かったんだけど、ハルナさんに、こういうのもあるよって見せたかったから。
「なんなん…ちょっと離れとる間にまたなんか出来とるやん!」
びっくりしているハルナさんを押しのけるように三人の魔族の人が…
「…魔王様! 直接魔道具の手ほどきをして頂けるというのは本当ですか!?」
あ、そういう話なの? 別にいいけど…。
「私が作ったものなんだけど、とりあえず魔石を見て、術式が理解できるか見てもらえる?」
「「はいっ!」」
「わかりました…」
一人まだ幼い見た目の子がいるな。
背がちっちゃく、ファリスのように羊みたいな角のある可愛らしい子。
魔族の場合、見た目がそのままイコール年齢じゃない場合も多々あるけど。
三人は、私の作った海に合いそうな各種魔道具を見てくれた。
結論としては、シャワー、パラソル、バランサーと安全装置、ジェット水流も問題なく作れるそう。
一番幼い子はドラゴンの鱗も加工できると。
「ファリス様の術式より繊細…さすがファリス様のお師匠様」
「ファリスを知ってるの?」
「はい。僕は直接ファリス様から教えを受けましたから」
なるほど…。愛弟子か。
似てるけど子供とか親類って訳ではなく、覚えが良くて腕がいいからと、ファリスが直接指導したらしい。
他の二人の師匠でもあるらしく、当時に私が作った魔刻刀もちゃんと持ってて、ちょっと嬉しかった。
「この魔刻刀だけはどうしても再現できません…」
大切そうに持っていてくれるのは感慨深いものがあるけど…そんなにかな?
一応最初期に作ったモノよりは簡略化した物を広めたはずなんだけど。 (安全装置付き!)
勿論そうだよー。
「それ、ちょっと見せてもらえる?」
「はい…」
懐かしいなこれ。 でも、まさかのプロトタイプ…。 (え?)
最初期に作って、魔力効率とかも悪いから、ここからさらにカスタムしたんだよ。
いわゆる試作品。数個しか作ってないし、すぐに使わなくなったものだね。 (なんでそんなレアなのを…)
わからないけど、術式が複雑なのも仕方ないよこれは。
事情を説明して、今持ってる最近使ってる魔刻刀を隠蔽を解除して見せてみる。
「すごいです…簡略化されてて、これなら僕でも…」
「それ、あげるから再現してみるといいよ。この試作タイプも返しておくね。大切にしてくれててありがとう」
「いえっ! もったいないお言葉です! ありがとうございます魔王様」
最終的に開発者として私が二割、制作する魔族の職人が四割、材料費、宣伝や販売込みでハルナさんが四割で落ち着いた。
うちの子達は不満そうだったけど、丸投げしてしまう以上、二割でも多いのでは?って思ってしまう。
アキナさんも内容を確認してくれて、ゴーサイン。
こっちでも書類にサインして、正式に契約成立。
ハルナさんは、魔族の職人達と相談した結果、他国へは商品だけを販売すると。
これは仕方ないのだけど、そもそもドラゴンの鱗を加工できるような職人は一流の職人だから他国にも少数しかいないらしい。
術式も王妃様が魔刻刀を使って辛うじて書き込めるかってレベルだから仕方がない。
私も魔族の人達基準にしてしまってるし。
その代わり、希望者には講習会を行うんだとか。
当然有料だし、魔刻刀もレンタルのみ。
作成はできるけど数を作るのは大変らしいから。
今はまだ、私の手持ちから渡した十本ほどしかない。
レンタル料は全部私に入るらしい。
お金はギルドに振り込まれるからほっとけばいいのは有り難いね。 (また増える予感…)
その時は… (その時は?)
こっちでも家を買うとか。 (リゾートに別荘!)
憧れるよね! まぁ夢みたいな話よ。 (楽しみー)




