論功行賞
天守から出ると、ティーが倒れた二人を前に余裕のポーズ。
「修行が足りないのー。そんなんじゃ大切なもの守れないよー」
「うぅっ…悔しいけどその通りだよ…」
「二人がかりで近づく事すら出来なかったな…」
怪我をさせてないのは流石だよ。 (当たり前ー!)
「ママーお疲れ様!」
「ティーもありがとう」
駆け寄ってきたから抱き止める。
問題はこの先だな。
クッキーとチョコの報告から大凡はわかってるけど、あまり見たくない…。
二の丸。
地面に倒れてる翼のある人達は鳥の一族だな。
加減してくれたからか、酷い怪我はないけどみんなグッタリしてる。
郭内にはあちこち戦闘の跡があり、大きな穴の中には半裸の女の人が。
何でこんなことに…? 服のせいか。
元々かなり露出があったんだね。こんなの激しく動いたらこうなるよ!
大丈夫か忍び…。 (お色気担当)
壁に刺さってたり、木からぶら下がってたりする人もいるけど、とりあえず見てないことにしよう…。
「うわぁー…なにこれ。全滅?」
「だろうな。二人でこの人数をか…。とんでもねぇな」
二人ともドラゴンだしなぁ。いくら獣人でも勝てないよね。 (ママのおかげで更に強いし)
うん…そうね?
「アスカー頑張ったよー」
「私だって怪我させないよう加減したのよ?」
「そ、そう…。お疲れ様。ありがとね」
惨状には触れないほうがいいね…。
頑張ってくれた二人を労わないと。
それに、月の一族が救助を始めてるから、ここは任せたほうが良さそう。
二ノ丸から目を背ける様に三ノ丸…。
真っ黒になったって聞いてたけど、これは…。
何メートルあるの?っていう巨大な穴に黒い煙みたいな渦が充満してて、中に人が倒れてるのがチラチラと見える。
大惨事じゃないこれ…。
「何があったの、ユウキ! 加減してって言ったよね!?」
つい叫んでしまった…。だってあまりにもあんまりだ。 (絵面ひっど!!)
「いや、それがさ…。 加減して気絶させても、目を覚ますとすぐに戦線に復帰するんだよ…」
「…面倒くさくなってまとめてどーんってした…」
何したのよ…。
「スピネル、どんな魔法使ったの?精霊魔法よね?」
「うん…一瞬で意識を刈り取った。当分起きない…頑張った」
褒めてほしそうに言われるとなぁ。
「ありがとね、怪我させないようにはしてくれたんだね」
「そう…」
「あの黒いのに触れれば気絶するからさ、みんな放り込んだよ」
「わう!」
結構深いよね!?大丈夫かそれ…。
黒い煙の渦巻く巨大な穴が、もう闇鍋に見える…。 (魔女の食卓)
やめよう…?ホントにそう見えてくるから。
白さん達も心配して騒いでるし、ここは私が助けないと…。
触れたら気絶する煙なんて月一族でも手が出せないでしょ。
そもそも煙がいつ消えるかもわからないし。
白さん達にも注意しておく。
「すみません、ちょっと離れててください」
魔力ドームで穴をすべて覆い、煙を消去。
地面に魔力を流して穴を隆起させて均す。
最後に全員を気付け。
魔力ドーム内で鑑定したけど、大きな怪我をしてる人もいないし、本当に気絶してただけか…。
スピネルの魔法が真っ黒で禍々しく見えただけで、本質は私の使うスリープとさして変わらない。
覚えておこう…。スピネルの魔法は見た目だけは禍々しいって。 (根はいい子だし)
だね。ちゃんとお願いは聞いてくれてたんだから。
ここからはこの国の問題だろう。
私は陛下に忍びの人たちが伝えたかった事を伝えられた…ハズ。多分…。 (大丈夫!)
だといいけど。 (みんな心配して起きて待ってる!)
わかったよ。
お城を出て、夜の街を歩く。
トロピカルな服装の人がいないから、完全に時代劇の江戸の街。
「みんなありがとう。お疲れ様! お願いを聞いてくれたみんなには私からご褒美をあげるから、何がほしいか考えてね。所謂、論功行賞ってやつです」
「やった!」
「なんでもいいのー?」
「もちろん私にできる範囲だけどね?」
「じゃあ…ユウキとの子供」
「それは私には無理だなぁ…」
スピネルは無茶苦茶言うね!? 私にどうしろと? (ユウキの説得?)
それも無理。ちゃんと考えてるユウキに口出しはしません! (信頼がすげー)
弟だからね…。
「ま、まぁ…スピネル、姉ちゃんに頼むなら魔道具とかがいいよ。あとはアクセサリーとか武器かな」
「そうだね、そういうのなら希望に添えると思うよ」
そんな話をしながら、ホテルへ向かう。
行きは昼間で明るかったから、わからなかったけど…島への大きな橋がライトアップされててきれいだった。
ここから急に江戸じゃなくなるのすごいな…。 (江戸の街にイルミネーション)
もう意味わかんないねそれ。
橋を渡り切ると、うちの子達が総出で出迎えてくれて…その気持ちが嬉しくて。
「ただいま」
「お母様おかえりなさいなのです!」
「お姉ちゃん…みんなもおかえりなさい」
「お疲れ様ですの…」
「お嬢様、お疲れ様です。お風呂にしますか?それともお食事ですか?」
「それともティー?」
「ふふっ、じゃあ全部!」 (ふふ〜)
お風呂に入ってる間に、ピナさんが用意してくれた夜食を頂く。
当然ティーとリズは隣。 (ふふー)
「お嬢様、陛下への報告は既に月からされております。ですので皆様はこのままお休みください」
「わかったよ、ありがとう」
さすが月…。
ひと仕事終えた私達は、明け方近い時間だけどベッドに潜り込む。
明日は何も起きないといいな…。 (フラグ?)
違うから。




