城下街
門を抜けたところでアリアさんの部下だという騎士様に挨拶と自己紹介をしようとしたのだけど。
「私はただの護衛ですので。お気になさらないで下さい…」
そうは言われてもなぁ…お世話になるんだし。
「すみません、失礼な態度で…。少々頭の堅いとこがありまして。これでも優秀ですので…」
「…わかりました」
アリアさんにそう言われて諦める。
見た目は大人しそうでふわっとした美人さんだから堅いイメージが持てなくてギャップがすごい…。
お城から出るのは以前のギルド乱闘事件の時以来かな?
苦い過去を思い出しながら繁華街を歩く。
「お姉ちゃん、手繋いでもいい?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言うと右腕に未亜ちゃんが絡みついてきた。
これは手をつなぐ、ではない気がするけど、まぁいっか。
「ユウキは?」
そう言って左手を差し出してみる。
「大丈夫だから! 子供じゃないんだし」
わかってて聞いたけどさ。プイってしなくても…。
「二人は何処か行きたいとことか見たいとこある?それともまず食事にする?」
さっきから周りに並ぶ屋台からいい香りがしてるから私は空腹が刺激されててね…。
「「ご飯!」」
二人も同じだったみたい。
ん〜どうしようかな、ここはやっぱりアリアさんに頼らせてもらおう。
「アリアさん、おすすめのお店ってありますか?」
少し後ろにいたアリアさんに声をかけると隣に来てくれて
「そうですね、ご希望のものがあるかはわかりませんがいくつか候補はあります」
なるほど、ジャンルを絞ったほうが良さそうね。
「未亜ちゃんはどんなもの食べたい?」
ここは異世界初めての未亜ちゃんの希望優先にしてあげよう。
ユウキもわかってるようで、
「肉がいいとか、そんな感じでいいと思うから未亜姉ちゃんの希望は?」
う〜ん…と悩みながら、
「食事は軽めでいいからこの世界のスイーツ食べてみたいかも」
これが女子力か…。 (違うんじゃない?)
「と言う事なのですが、アリアさん。良いお店ありますか?」
「はい、それでしたらちょうど、この通りにオススメの店があります」
「じゃあ未亜ちゃんそこにしようか?」
「うん!」
「ではご案内致しますね」
そう言って前を歩き先導してくれるアリアさん。
街へ出るときはいつもと違い私服に軽装、腰には剣。
お城で着てる鎧は目立つもんね。
後ろの騎士様も似たような感じだ。
私達もお城で準備してくれてあった服に着替えている。
私は落ち着いた色合いのワンピースタイプのロングスカート。
未亜ちゃんは明るめの色のワンピース。スカートは私より短い。
ユウキは革のパンツにジャケット。こっちも落ち着いた色だ。
かなりいい服だよねこれ…ユウキや未亜ちゃんのサイズはわからなかったからか、サイズ違いで色々用意してくれてあった。
魔道具の知識だけでお返しになるのか不安になるよ。
他にも何かできる事あったらしたいな。
そんなことを考えてたら…
「アスカ姉ちゃん、ご飯食べたらギルド行ってみたいんだけど」
左隣を歩くユウキからそう言われて、びくってしてしまう。
「私も興味ある! あー…でも、お姉ちゃんに絡んだみたいな人がいるんだよね…?」
びくぅ
「あ、いや、あの人たちは捕まったみたいだから…」
どうしよう…ギルド行くのめちゃくちゃ気まずい。
ユウキが行きたいなら連れていきたいけど…う〜ん。
「アスカ様、よろしいですか?」
「え? はい。どうかしました?」
少し前を歩いていたアリアさんが振り返って声をかけてきた。
どうしたんだろ…。
「ギルドの事ですが、お話が聞こえてしまいまして…」
あぁ…アリアさんにも迷惑かけたものね。申し訳ない。
「…弟が行きたいそうなのですが、私は外で待ってますので…。
食後にまた案内してもらうことはできますか?」
「勿論です、実は私からもアスカ様へギルドへ行っていただけないかとお願いしようと思っていたのです」
あれ?そうなの?行かないほうがいいって止められるかと思ったのだけど。
「隊長、その事でしたら私からお話させてください…」
え?後ろにいた騎士様!?
というか、隊長って今いったよね?
「わかった。しかし、ここではな…。 アスカ様、食後に少しお時間をいただけますか?」
「は、はい。もちろん」
「ありがとうございます」
なんだろ…気になるんだけど。
なんか騎士様元気なくなったし。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
未亜ちゃんも心配そうに聞いてくる。
「私は大丈夫だよ。話の内容はわからないけど…」
「じゃなくて! ギルドで嫌な思いしたんでしょ?」
「アスカ姉ちゃん、ごめん…」
え?あぁそっちの心配?ユウキまでしゅんとしてしまった。
「大丈夫、大丈夫。私は何ともなかったし。ありがとね、二人とも」
「うん…」
そんな会話をする後ろでさらに表情を曇らせる騎士に気がついたのはアリアだけだった。
少し気まずくなってしまったからか、アリアさんがお店までの道中、観光案内みたいに通りにある店を幾つか説明してくれた。
「ここの肉料理はかなりお勧めです。騎士の間でも人気で給与が入ると来る者も」
気になる! ガッツリ食べたいときは来てみようかな。
あーでも最近かなり少食になったんだよね…。
ユウキもメニュー看板を見てるね。
次は小物やアクセサリーがショーウィンドウに並ぶお店。
「ここのアクセサリーは若い冒険者に人気ですね」
冒険者にアクセサリーってことは魔道具かな?
ショーウィンドウにいくつか飾られているアクセサリーを鑑定で見てみる。
「あぁ、やっぱり魔道具だ…」
「お姉ちゃんが作るのみたいな?」
隣でまだ腕に絡みついている未亜ちゃんが聞いてくる。
「まぁそうだね(性能は良くないけど…価格はお手頃だしこんな物なのかな?)未亜ちゃん気になるなら見てみる?」
「ううん、私にはお姉ちゃんがくれたのがあるから。他のはいらないかな」
かわいい事言ってくれるなぁ。
「確かにアスカ姉ちゃんが作るのと比べちゃうとね…」
そう言うユウキもあまり興味はなさそうなのでアクセサリー屋を後にした。
それから5分程歩いたところのお店でアリアさんが立ち止まる。
「アスカ様、こちらの店です」
オープンテラスのような席まであり、オシャレなカフェって雰囲気のお店だった。
未亜ちゃんが大喜びしてる。
「わぁ〜すごい! 素敵なお店! アリアさん、教えてくれてありがとうございます」
「いえ、我々はここで待機しておりますので。何かありましたらお声がけください」
「え?一緒に食べないの…?」
あぁ…これ私も以前同じ問答したのだけど、アリアさんは絶対に譲らなかった。なので…
「未亜ちゃんの気持ちもわかるけどね、アリアさん達はお仕事できてるから無理を言ったらだめだよ?」
「でも…せっかく一緒に来たのに」
うん、すっごくわかるよその気持ち。私なんて前は一人だったから余計にね…。
「申し訳ありません、未亜様。お気持ちだけ受け取らせて頂きます」
「わかりました…」
あ、そうだ。
「未亜ちゃん、耳貸して?」
「うん?」
「(お持ち帰りできるもの買って渡すっていうのはどう?お仕事終わったら食べれるように)」
「なるほど! さすがお姉ちゃん」
「じゃあいこうか、ユウキもいくよ〜?」
外に立て掛けてあるメニューを見ていたユウキにも声をかけて店内へ。
「いらっしゃいませ〜!」
元気な女の子の声に迎えられ店内へ…




