表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

548/772

番外編 計画始動

 


「今夜、私達で夕波城の本丸を落とすわよ」

里へ戻ってきたとたん、お母さんがそんな事を言い出した。


「ちょっとお母さんの言ってる事が理解できない」

「オレは花と鳥、月にも声をかけてくる」 

お父さんまでそう言って走り去った。

せめて説明をしてほしい。


「朱様、我々忍びは、夕波王国を裏切るということですか?」

「違うわ。主を諌めるのも忠臣の務めなの。忍びを軽視する陛下に、本当の忍びを見せてあげるのよ」

「それでもし、陛下のお考えが変わらず裏切り者として捕まることになったら…俺達はどうなるのですか?」

「その時は…アスカ様に頼りましょう!」

確かに何とかしてくれそうではあるけど、何という他人任せ!!



「陛下が忍びを軽視するのは、忍びの本質を知らないからよ。何ができるのか、忍びとは何かをね」

そう言って、笑うお母さんは楽しそうだった。

私達風の一族って脳筋だったわ…。私もワクワクしてるし。

ましてや今なら全力でいくらでも動ける!


「白は陣屋へ忍び込み、お客様が帰られたら報告を! 絶対に巻き込めないわ」

「はい! 私、白は今から朱の部隊へ参加いたします」

「お願いね」

私を白と呼んで指示を出すということは、お母…いや、朱は本気だ。

お世話になった人を巻き込むのは私も避けたいし、何よりもあの人達がいて、陛下に助太刀したらこの作戦は絶対に成功しない。

朱もそれをわかってるからこその指示だろう。 


朱は翠と蒼にも指示を出してる。

私は急いで本丸の陣屋へ忍び込む。

陛下の作ってくれた”忍びうぉーく”とやらもこんな使われ方するとは思いもしなかっただろうな…。


陣屋の屋根裏にあちらこちらへ張り巡らされた”忍びうぉーく”を使い、陛下とドラゴライナ王国からのお客様を探す。

居るとしたら当然客間。



食事をしながら談笑してるのを隠れながら聞く。

陛下がアスカ様を口説こうと必死だけど、周りの妨害が激しく上手くいっていない様子。

でも障害が大きいほど燃えるのか、陛下は更にアタックをする。


「ママは陛下を守るために残るの」

突然背後から声がして振り向くも誰もいない。でもこの声は…。

「こっちの事情わかってるの?」

「お城落とすんでしょ?ママは事情をわかった上で陛下の護衛につく」

「どういうこと!?」

「誰も守る人が居ない状態で攻め落とされても、忍びの本質は理解できないだろうからって…」

確かにそれはまずい。本末転倒だ…作戦そのものが失敗に終わる。

そもそも、兵は別として陛下を護る最後の砦は私達”忍び”だから、それがいないとなると…。


「全面的にそちらへ協力するから全力できて! って」 

「…わかったよ。ありがとう」

アスカ様が護衛につくのは誤算だけど、こちらの事を理解した上での提案なら信じていい気がする。

朱に報告しなきゃ。



私は急いで朱の元へ戻り、報告。

「…こちらの意図をわかった上での提案なのね。誤解とはいえ攻撃した私達を助けてくれたり、白にしてくれた事を考えても信頼するには充分ね」

「私もそう思います」


暫くしてお父さんが花、鳥、月のお頭を連れ立って戻ってきた。

それぞれ作戦への参加理由はバラバラだったけど…。

「なんや、おもしろそうやからウチも一枚噛ませてもらいますえ」

花のお頭。狐獣人であり、王島で一番人気の花魁。 


「久しぶりに全力で飛び回れそうだからな。鳥も当然参加するぜ」

鳥のお頭、隼の獣人で、一族イチの速度を誇る。


「陛下への意趣返し…では無いですが、月の能力を知っていただけるのなら、参加する意味もありましょう」

月のお頭、詳細は知らない。初めて見たし。わかるのはうちのお父さんより少し年上かな?ってくらい。

耳とかも隠してるから何の獣人かさえわからない。さすが月…。


それからは朱が作戦の説明と役割分担。

普段なら、忍びが他家の、しかもお頭でもない人の指示に従うことなんてありえないけど、今はみんな楽しそうに団結してる。


「必要な資金ならウチが出しましすよって…調達は鳥に任せてもよろしおすか?」

「おう、任せとけ」

「我々はどうします?」

「月はお客様のお帰りを見届けたあと、巻き込まないためにお城へ来ないよう足止めをお願いします!」

「御意」

そう言うと音もなく月のお頭は消えた。 すご…忍者だ! 

…私もか。



あっという間に集められた武器や防具、薬や雑貨類。それに城を包囲するための資材。

武器や防具、薬は皆へ配られる。


そうこうしているうちに、月からお客様のお帰りが報告される。

「数名を残し、ユリズ・シーへお戻りになりました。手練をつけてあります」

「城には誰が残ったの?」

月の報告を聞くかぎり、アスカ様は当然として、蒼を殴り飛ばした二人組と、真っ白の犬と、真っ黒のカップルか…。


蒼は怯えていたけど、朱は迷い無く作戦の開始を宣言。


街中から花の資金力を使い、鳥の機動力で集められた資材は、皆によって凄まじい速さで城を包囲するモノへと姿を変えた。


簡易とはいえ木製の塀が張られ、馬防柵や土塁で補強される。

動きに気がついた兵は月により、音もなく気絶させられ無力化されていく。


「城の守備兵、全ての無力化完了」

「ありがとう、助かるわ。攻め込むとはいえ、死傷者は出したくないから」

一応、味方の兵だもんね。


「さてと、行こうか」

お父さんはそう言うと、立ち上がり、支給された刀を腰に差す。


「ウチらもたまにはコッチで身体を動かさな鈍ってしまうよって…頑張りますえ」

花のお頭は花びらに包まれたかと思うと、花魁姿からえっろい忍び姿になった。

背後にはいつの間にか同じような姿の忍びが沢山。

みんなでっけー!! うらやま…


「俺たちは上から偵察と奇襲だな」

鳥はそう言うと一斉に飛び立っていった。

はやっ!


「花と朱の部隊は陽動よ。とにかく大騒ぎするから。白、翠、蒼、あなた達が落とすのよ、本丸を!」

「「「御意」」」


私達は、真夜中の夕波王国を一斉に動き出した。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ