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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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番外編 朱の部隊



蒼を殴り飛ばした二人組が、同じ様に朱の部隊を素手で殴り飛ばすわ、真っ黒のカップルは真っ白な大きな犬に乗って走り回り、部隊を分散させて連携させないよう立ち回る。

あの犬あんな大きかったっけ…?

犬に轢かれる忍びとか初めて見た…。


武器を使わないのは舐めてるのかとも思ったけど、必要ないからか。

完全に手加減されてる。


未だ最強と言っても過言ではないお父さんがアスカ様に斬りかかるも、銀髪の小さな子にキレイな刀で受け止められて、たった一度の反撃で白桜の太刀もへし折られて吹き飛んだ。

それ今は私の太刀…。使ってないけど。 ん?最上大業物が…折られた…!?

追撃とばかりに銀髪の子が振った刀から紫色の斬撃が飛び、直撃したお父さんはボロ雑巾状態で転がった。

それを見て、更にブチギレたお母さん…いや朱が必殺の居合いの構えでアスカ様に狙いを定めて飛びかかる。


なんで二人ともその人を狙うの?私、その人に助けてもらったのに。

朱が鯉口を切るかという、その刹那…アスカ様を守るように巨大な海竜が現れて、尻尾でハタき飛ばされた朱は本丸の城壁をぶち破り、消えていった。

海竜!?港に出たら島をすてる選択肢も上るような相手だよ! まさか使役してる!?


もう意味がわからない。

お母さんってば、丈夫だからあれくらいなら大した怪我はしてないだろうけど、絵面はひどいから大丈夫か心配になる。ブレスを放たれてたら間違いなく生きてなかっただろうけど…。


そう思っていたら凄い速さで復帰した朱は、自分の空けた城壁の穴から飛び込んできた。

「セアを離しやがれーーー!」

その瞬間、また凄まじい威圧で動けなくなる。

「ひぃぅっ……」

あまりの威圧に太刀を落とした朱はお母さんに戻り、ガタガタと震えてる。

あんなお母さん初めてみた…。


また伝説のドラゴンがキレた?そう思ったら…

「ごめんなさい、ちょっと落ち着いてもらえますか?」

アスカ様ですか…。もうホント怖いこの人たち。

今日、たった数時間で武闘派と謳われる風の一族の最強が上から順に、朱の実戦部隊も含めて全滅。

しかもたった数人相手に。


「わかったでしょう?私の主様の御力が」

そう言うメイドはキラキラした目でアスカ様をみてる。

気持ちはわかるよ?強い主に仕えたいのは獣人の私達にとっては本能みたいなものだからね。

このメイドも月の一族なら獣人だろうから。…そういえばコイツうまく変装してるな。



今度はハルナ様の指示で全員縛り上げられ、朱の部隊は城壁沿いに正座させられた。

お頭の黒も呼び出されてかなりの騒ぎに。

うちのお頭って、頭はいいけど強くはないからなぁ。あまりの事態に顔面蒼白。

風の一族では、元々お頭にだけは強さより頭のいい人が選ばれるのが通例だけど、これは流石に処理できなさそう…。



今回の襲撃は陛下の指示でもなく完全な独断。

本来忍びにあってはならない事だ。

それでも私は、忍びの掟より私を優先して助けにきてくれたのが嬉しかった。

気を失ったまま、簀巻きにされて木に吊るされた両親を見上げながらしばし現実逃避。


ハルナ様とアキナ女王様は戦闘に一切参加しなかったけど、事後処理で主犯と確定された両親は、ハルナ様の指示により吊るされた。

止めようとするのをわかってるからかアスカ様は既に連れ出されていなかったし。


朱の部隊が暴れたから、当然海鮮バーベキューも中止。

今は陣屋内で、難しい話でもしてるんだろう。

ドラゴライナ王国の後ろ盾とか陛下は言ってたけど…。うん。無理。

政に疎い私でもこれはわかる。


「くそっ、縄抜けできない! 白は?」

翠が暴れようとするも、それすらできずに悪態をつく。

「無理だよ…手首どころか各指も縛られてるんだから」

後ろ手に縛られ、親指同士、人差し指同士…って手間をかけて縛られてる。

しかも普通の縄じゃないから蒼の馬鹿力でも切れやしない。


「私達どうなるのかな」

「さあね。忍びなんて必要なくなったら切り捨てられるんだから」

「月一族の話?」

「そうだよ。あたし達だっていつ切り捨てられるか」

「しかも今回はこっちに非があるからな…俺なんていらんってはっきり言われたぞ」

一応気にしてたんだ蒼。

私と翠は陛下の指示だったけど、蒼とうちの両親、朱の部隊が動いたのは独断だ。


ため息しか出ない。

忍びって何なのだろう…。

幼い頃から教えられてきたのは主のために生き、主のために死ぬ。それが忍び。

第一は主で、次が任務。その次が仲間。

それを失ったら? 月一族の気持ちが今ならわかる。

この生き方しか知らない私はどうしたら…。


「解きますね」

突然音もなく現れたのはアスカ様。

縛られていたはずの縄が触れられただけで一瞬で消え、開放される。

吊るされている両親も、魔力で包んだ後、おろしてくれて…お父さん達の怪我も治されてた。

「なんで…なんで助けるの!?」

翠は意味がわからないって感じで叫ぶ。

私も同じ気持ちだからわかる。


「事情は国王陛下から伺いましたから。それに、娘さんを助けようとしたご両親をあのままにしておきたくはないです」

「でも私達は敵対行動をしたのに! なんで…」

「そうですね…。 助けるのにどうしても理由が必要なのでしたら…私にも大切な家族や子供がいるから。それで納得してもらえませんか?」

「ありがとう…ございます」

「感謝する」

「両親を治してくれてありがとうございます」

「これはお返ししますね」

手渡されたのは没収されてた私達の各種装備類。

後、白桜の太刀…。


「うちの子が折ってしまったので直しておきました」

直した?白桜の太刀を?

中程からポッキリいった刀は、たとえ鍛冶師が接いだとしても、元の刀には遠く及ばない。

そんな事をするくらいなら脇差や短刀に仕立て直したほうがマシ。


ましてやそれが最上大業物みたいな名刀になればなる程、如実に性能が落ちる。

見た目だけならある程度は直ったと言えるかもだけど…もう実戦で使うことは無理だろう。

そう思いながら受け取った太刀は、前より手にしっくりくる。重さも前の様には感じない。

鞘から抜き放つと、折れていたとは思えないほどキレイで、接いだ跡さえない。どういうこと?


軽く振ってみたら、更に馴染む…。

「白、どうしたの!?そっちは重たいからって使わなかったくらいなのに。素の状態で軽々と…」

それは私が知りたい。

「直した時に、持ち主に馴染むように細工しましたから、例え次代に引き継いだとしても、その人に馴染むはずです」

ちょっと何言ってるのかわかんない。

でも実際手にしてるのだから信じるしかないのがなんとも…。


「あとはコレを。着けていれば、スキル使用による反動の痛みも来ないはずです」

そう言って渡されたのは私がいつも両腕につけてた手甲?いや、同じデザインだけど別物だ。

反動がなくなる?スキルって何?


「なぁ、そのスキルってなんだ?本当に白は苦しまなくて済むようになるのか?」

「スキルを知らない…? 白さんの爆発的な身体能力は、身体強化という生まれ持ったスキルです。正確にはそれの最上位、プラス効果はかなりのものです。相当身体が丈夫でなければ、負荷が強すぎて耐えられません」

「それって特性の事?それならあたしも持ってるよ?」

「呼び方が違うのかもしれませんね…」

「それがこの手甲でなんとかなるのですか?」

渡された手甲を握りしめる。あの苦しみがなくなる?そんな事…あり得るの?


「はい、大丈夫です。私の作った魔道具ですから。 えっと、魔石はご存知ですか?」

「それならあたし達も知ってる! 魔狼とか倒すと持ってるキレイな石だよね! 売るとお金になるんだよ」

前はキレイな石、くらいの認識しかなくて、面倒な時は回収さえしなかった。食べられないし。

最近はハルナ様が買い取りしてるからね。魔道具に使うとか言って…あ、それか!


よく見ると、いつも棒手裏剣をいれてる所に透明の棒が入ってる。

「これが魔石ですか?」

「はい。それだけは外せなくなるので棒手裏剣を入れるなら他の所へお願いします」

棒手裏剣を知ってる!? あー、メイドのせいか。


透明な棒…魔石か。それに触れて魔力を流すように言われて、何やら道具を出して細工した後、私専用になったからと言われた。

よくわからないけど、私しか使えない道具って事らしい。


アスカ様から、私達の知らないスキルというものについて更に詳しく話を聞くことができた。

身体強化っていうのは、一時的に自身の能力をすべて底上げしてくれる。

魔法にも同じものがあるけど、私のは生まれつき持ってる先天的なもの。

ただ、私のは強力すぎて、筋肉や骨など、身体に多大な負荷がかかる。

高熱とかもそのせいらしい。

貰った手甲をつけていれば、身体に返ってくる反動を肩代わりしてくれる。

しかも、反動がない分、スキルを使っていれば身体が慣れてきて、いずれはこの手甲が必要なくなるとも…。

年単位の、気の長い話ではあるらしいけど…修行と思えばなんのことはない。


「ありがとうございます…この御恩は決して忘れません」

「気にしないでください。見てしまったら放っておけなかっただけなので…」

あのメイドがこの人を主に選んだ理由が、今ならハッキリとわかる。

他人、しかも攻撃までした相手にここまでしてくれる人が仲間や部下を大切にしないわけがない。


お母さん達は、まだ気を失ってるけど、しばらくしたら起きるから、そうしたら帰っていいと言われた。

ちゃんと許可ももらっているからと…。

それだけ言うと陣屋へ帰って行ってしまった。



私達はしばらく去っていく後ろ姿を眺めてぼーっとしてた。

思い出したように翠が…

「白は信じるの?」

「え?なにが…?」

「その手甲だよ!」

「うん、あの人が嘘をついてると思えないんだよね」

「一度、全力で動いてみればいいだろ。今なら俺達もいるから、もしもの時は担いで帰ってやるから」

「そうだね! おかしな事が起きてもあたし達がいるならなんとでもなるし」

それもそっか、使ってみないと何もわからない。



結果は、言うまでもなかった。

まず前より速く、思い通りに動ける。しかも、前なら感じた限界を感じない。

蒼と翠に止められて、初めて動きを止めたほどだ。

「大丈夫かよ! いつもならもう痛みで転げまわってるぞ!」

「まだわかんないよ! 止まった後にいつもきてたし」

それは、限界ギリギリを把握して、直前で止めてたからだよ。

今回はそれすら感じないんだから…。


当然どれだけ待っても反動が来ることはなく、目を覚ました両親にも出来事をすべて報告。

私以上に喜んだのは両親だ。幼い頃から苦しんでたのを見てたから…。


そしてその両親はとんでもない事を言い出した。











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