シエルと
遺跡調査の合間に、みんなの正確な魔力を見せてもらい、隠蔽するか相談をした。
特に、ドラゴン姉妹とティーは、魔力量的に街へ行くと一般の人の恐怖対象になりかねないから。
「アスカに貰った力を隠すのはイヤよ…」
「私はいいよー。実は隠してたけど強いんですって展開かっこよーだし」
「そう言われたらそうね…」
「ティーもおっけー!」
他のみんなも自分本来の力程度に偽装してほしいっていうから、前に渡した魔道具の指輪の方に追加した。
シルフィー様達も以前プレゼントしたアクセサリー類に追加で刻む。
これで余計なトラブルも避けられるかな。 (ママは?)
私は制御してるよ。 (え!?)
だって、さすがに桁がおかしくなる…。 (じゃなくて! 制御?)
称号の効果だけをオフにしてる。 (ママはママだった…)
そうだよ?ティーとリズのママですから。あと精霊の子達のママでもあるかな。
また会いに行かないとなー。 (そういう意味じゃないんだけど、まぁいっか)
うん? (ティー達のママはすごいーってこと)
それは嬉しいね。
精霊の子たちにも会いたいな…。
師匠の所でツキにも会えたし、ルナシアさんに報告と挨拶に行った時に、ニレとフィアには会ったけど、リコには会ってないから…。 (そうだったね)
これには理由があって…シエルをご両親に会わせてあげたいし、報告もしたいからなんだけど、どうしたものかと思ってね。 (いっそ直接エルフの里に掛け合うとか…)
それも考えたのだけど、他種族の掟に踏み込んでいいものか…。
「アスカー難しい顔して、また悩んでるでしょー?」
「ティア…。 うん。ねぇ、ドラゴンのティアとリアに相談してもいいかな?」
「まかせてー」
「いいわよ?ドンと任せなさい!」 (シエル達はこっちで引き止めておくね!)
本当にありがとう。助かるよ。 (ふふーん!)
リア、ティアに相談した結果、悩んでたのが無意味なくらいすぐに解決法が…。
「私達を連れてシエルの両親のところへ行けばいいよー」
「というか、そもそもアスカもエルフにとっては救世主なのよ?会わせたいから連れてきたって言えばそれで済むわよ」
えー…。どうしようか凄く悩んでたのに。 (すぐに行く?)
そうだね、まだ時間的にも迷惑ではないし、行くよ。
急遽、シエルを連れてツリーハウスへ転移。
ーーーー
ーー
興味を示したリズと、ティーも同行してる。
「ママ?こんな時間に珍しいわね?また何かトラブル?」
いつも私がトラブルを持ち込むみたいに言わないでほしいな…。
「あら…その子。連れてきていいの?」
「うん、なんか大丈夫みたい。 ルナティアと、ルナリア、アスカが来たからって伝えてもらえる?」
「ええ。少し待ってて」
「ありがとうリコ」
「いいのよ」
直ぐにツリーハウスへ沈むように消えていった。
「お姉様…?どうしてここに…」
「あのね…話してなかったんだけど、この森にシエルのご両親がいるの」
「……! でもうちは…」
「大丈夫よシエル。私が誰か忘れたのかしら?」
「アスカがいるから霞むけど、これでも世界最強の一角を担うドラゴンだからねー」
「でも…」
「シエルが私の大切な人になるからって、ご両親に報告しなきゃいけないでしょう?」
「お姉様…! はいっ…!」
「ママー、リズに最上階のペントハウス見せてあげていい?」
「いいよー」
「ティー姉、どこに行くのです?」
「すっごいきれいな部屋! いくよー」
「はいなのです!」
ありがとね、ティー。 (なんのことかわかんないのー行ってくる!)
はーい。
暫くしたらツリーハウスの扉を開けてリコが帰ってきた。
「ほら、私が許可するから入りなさい」
「は、はい…」
「畏れ多いのですが…」
すごく緊張した様子で入ってきたシエルのご両親。
お二人はドラゴンのリアとティアをみてかなり驚いてる。
直接対面したら仕方ないね。
シエルは…私の後ろに隠れてるのは無理もないか。
「アスカが貴方達二人に大切な話があるのよ」
「私達は見届けるために来てるだけだから、あまり気にしなくていいよー」
「「は、はいっ!」」
そんなに緊張されるとこっちまで…。
「シエルはいつまで隠れてるのよ?せっかくの再会なのよ?」
「…で、でもうち…」
「…シエル?」
「私達が許可するから、気にしなくていいわ」
「娘なんでしょー?ほら」
「シエル!!」
「…お父様、お母様…。 うち…ごめんなさい…」
シエルがご両親になにを謝っているのかはわかる。
それでもシエルを抱きしめるご両親が嬉し涙を流してるんだから、シエル自身も過去の罪から開放されてもいいんじゃないかって思う。
暫く再会を見守り、本題へ。
こういう時なんて言えばいいんだ!? (娘さんをください!)
間違ってはないけど…。
「お父様、お母様…うち、お姉様…アスカお姉様のものになります」
「…うん?」
「シエルは今、幸せ?」
「はいっ…!」
私がまごまごしてるうちにシエルが話を進めてしまった…。情けないねこれじゃ。
「シエルにはいつも助けられてきました。私もこれからずっとシエルを大切に守り続けます。許していただけますか?」
「不束かな娘ですが…よろしくお願いいたします」
「…無礼を承知で一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「貴方!!」
「構いません」
シエルのお父様が聞きたいことがあるというのなら、答えるのは私の果たすべき責任だろう。
「娘はすでにアスカ様にお預けし、処遇はお任せした筈です…今になってどうして、このような…」
そういえば、最初にシエルを好きにしろって言われたっけ…。
「まず前提として、私はシエルを大切な家族として引き取りました」
「「えっ!?」」
そんなに驚くことかな!?
「バカね…貴方達エルフの里や森を救ったアスカが、シエルをひどい扱いすると本気で思っていたの?」
「い、いえ…そんな滅相もありません! しかし、娘は大罪を犯し里を追放され、癒やし手様に捧げられたのですよ?」
「ほんっと堅いよねーエルフは。アスカは最初からシエルを気にかけてたし、好きな事をできるようにしてあげてたんだよー」
「そうよ?だからシエルもアスカに惚れたのよ! そうよね?」
「…はい…お姉様はうちの恩人でかけがえのない人です…」
「まぁシエルはエルフとしてはまだ幼いから、正式に嫁ってわけではないけど、いずれそうなるからその報告をしにきたのよ。アスカは律儀なのよ?」
「うちの娘が…」
「癒やし手様に嫁ぐ…!?」
大切な事をみんなに言われてしまってカッコつかないけど…。
「シエルを…娘さんをこれから先も私に預けてください。必ず大切にします」
「「は、はい!!」」
ご両親は何が何やらって感じで混乱してる様子。突然だもんね…申し訳ない事をしちゃったな。
でも伝えなきゃいけない事はリアとティア、シエル本人の力も借りて伝えた。
「エルフには貴方達から伝えておきなさい。これで貴方達の立場も回復するでしょう?」
「だよねー回復なんて言葉じゃ収まらなさそうだけど!」
「リア、ティア、それはどういう意味?」
ご両親がエルフの里で肩身の狭い思いをしなくなるのはいいのだけど、それで留まらないって言い方よね!?
「当たり前じゃない。アスカは里の救世主。祀られてるのよ?つまりは私達ドラゴンと同じような扱いなの」
「そんな相手に嫁ぐってなったらーわかるでしょ?」
あー…うん。それはそうね。
「シエルのご両親に不都合はないのよね?」
「ある訳ないわ」
「精霊を覚醒させてママと呼ばれてるアスカだよー?下手したらドラゴンの私達より信仰されててもおかしくないんからー」
頭痛い…。
でも、シエルや、シエルのご両親にプラスになるのならいっか…。
「それなら私から証拠になるような証を二人にあげるわ。言葉だけじゃ信じない者もいるでしょう」
「リコ?」
「任せてママ」
リコは二人に何か精霊魔法をかけたらしい事はわかった。
「こ、これは…」
「大精霊様!?」
「私からの加護よ。エルフならみんな気がつくはずよ。大精霊リコの名において、シエルとその一族の罪を赦します」
ご両親もシエルも泣いてる…。当たり前か。大精霊ってエルフにとって特別な存在だものね。
そんなリコから”赦す“って言われたら…。
「ありがとうリコ」
「いいのよ。私だってママの力になりたいもの」
私は本当にみんなに助けてもらってばかりだよ。
私からも形のあるものを渡したくて、ご両親に魔道具を作ってプレゼントした。
畏れ多いとか言われて中々受け取ってもらえないのは困ったけど、リアやリコが口添えしてくれた。
私がしっかりと話せたか?と言われたら全然そんなんではなくてカッコつかないけど、シエルをご両親に会わせてあげられたし、みんなの力を借りてちゃんと挨拶もできたから良しとしよう。




