遺跡調査
狩猟大会初日に遺跡を発見し、翌日にはアキナさん達が合流。
私達はまず、拠点を中心に周りを探索しながら安全の確保。
アキナさん達はその間に遺跡の浅い部分を徹底的に調査してた。
夜にうなされるかと心配した奈々と麻帆は特にそんな様子もなく、翌日からは狩りに参加。
ティーが言うには、魔王の加護プラス、私の魔力ドームで包まれていたのが大きいんじゃないかって。
実際、二人にはしっかりと耐性スキルもついていた。
眠る時、傍にいて見守っていた私は拍子抜けをくらったけど。
リズも当然うなされたりもせず、すやすやと寝てて安心した。
一緒に見守ってくれてた未亜もホッとしてた。
予想外だったのは、まさかのユリネさんまで狩りに参加したことか…。
「私は戦うメイドになります」
「甘いです。お嬢様のお力で少し力を得たからと調子に乗ると痛い目をみますよ」
ピナさんは何故かユリネさんに厳しい…。
ただ、奈々達もそうだけど、ユリネさんも魔法で魔獣をあっさり倒して見せたから、ピナさんがムキになってた。
「くっ…一介のメイドに私が負けるなど!」
「一介のメイドではありません。私は”アスカ様のメイド“ですから」
「私だってお嬢様専属の護衛メイドですが?」
言い合う二人を止めるのに大変だった…。メイドさんにはメイドさんの矜持があるんだね…。
拠点作成後の三日目からは本格的にダンジョンの攻略が始まった。
私がキャンディと先行して危険な罠や魔獣を減らし、マップを作成。
うちの子達がそのマップを見ながら、数人毎のチームに別れて徹底的に調べ尽くす。
みんなダンジョンに入るのを楽しみにしてたからね。
流石に狭いダンジョンをみんなで一緒に動くのは効率が悪い。
チーム分けでみんなが揉めるから、リーダーだけは決めさせてもらった。
リーダーは戦力の高い順に、ティー、ティア、リアの三人。
「リーダーは、よく考えて、自分のチームに必要な人材を確保してね」
「ママも選んでいいの?」
「私はダメだよ。一番戦力の低くて、戦いにまだ慣れない人達についててあげたいからね」
奈々、麻帆、ユリネさんがその対象になる。
未亜とシエルはもう充分に戦えてるから。
ただ、私のこの発言で更に揉める結果になってしまい、已む無く全員で動く事になってしまった…。
「お嬢様、発言は慎重になさってください」
「はい…」
「皆さんはお嬢様と一緒に居たいのです」
「それは理解してたつもりなんだけどね…どうしても狭いダンジョンだと別れたほうがいいかなって」
ぞろぞろとダンジョンを進むのは余りにも…。 (マップもあるからいいのー)
まぁ、それもそっか。傍にいたほうが私も安心だし。
明かりの魔道具も設置しながら、マップ作成の過程では見逃していた物や、宝箱なども回収。
危険度が低いと判断して見逃しておいた魔獣との戦闘も何度かありつつ、一日で四階層を制覇。
拠点に戻って、回収したすべてのものを並べてアキナさんに確認してもらった。
「どれもすごく綺麗に残ってるね」
「すべて状態保存の魔法がかかってますから」
「なるほどね…」
みんなの同意ももらい、全て国へ寄贈という形でアキナさんに受け取ってもらった。
歴史的な価値のあるものや、曽祖父母の残した物なら、その方がいい。
「そういえば、お姉ちゃんのお祖母ちゃんが人化の魔法を作ったのっていつの話?」
「お祖父ちゃんに出会った後としか聞いてないね」
「私も詳しい時期まではしらないんだよー。この遺跡の資料を見る限り、うちの祖父母も人化してたみたいだから、この遺跡の作られた時にはもうあったんだろうね」
「お祖母ちゃんに聞いたらわかりませんか?」
「年齢に直結するから絶対に教えてくれないよー。それにここの事も知らないと思うからね。うちのお母さんってドラゴンの元を飛び出していってからは一度も戻ってないから。そのせいもあって、私も祖父母には一度しか会えてないんだよ」
世界を渡る前に会いに寄ってくれた、その一度きりらしい。
恐らくは何千年って規模の、私からしたら途轍もなく長い時間を遡るこの遺跡は歴史的にどれほど大切なものか… (アキナさんには思い出の一つ、くらいみたいだけど)
長い時を生きるドラゴンにはそうなのかもしれないね…。
それでもアキナさんを見ていると、大切な場所なんだとは思うよ。 (うん)
「私達ってもしかしてこの世界の歴史そのものに触れてるのかしら…」
「興味あるー?」
「はい! 私は歴史が好きなので…ここで当時どのような人が住み、生活を営んでいたか…考えるとワクワクします」
そういえば麻帆って歴史好きだったな…。 (そうなの?)
うん、だからお城とかにも詳しかったでしょ。 (あー初めてこっちに来た時の!)
そうそう。
「じゃあ、これ読み解いてみる?」
「いいんですか!?」
「似たような資料は沢山あるし、いろいろな意見を聞きたいからね。アスカちゃんもいい?」
「私は麻帆の判断に任せます。 麻帆、やってみたいのなら受け取るといいよ」
「ありがとうございます!」
これが麻帆のこの先の運命を決めるとは、この時の私は思いもしなかった。 (それは未来のお話)




