女王様の懐かしい思い出
翌朝転移してきたアキナさん御一行が、拠点を見て固まった。
「スノウ、私が報告受けてから転移して来るまでに数カ月経過した?」
「してない…報告は昨日の夕方…」
「だよね…うちの王女が優秀すぎない?」
「さすが陛下の姪っ子」
「私は切り開いた森にテントが並べられてる、くらいを予想してたよ」
アキナさんの魔力を感じたから迎えに来たのだけど声を掛けづらい…。
「陛下! 王女様のお迎えですよ」
「え? アスカちゃん! これどうなってるの!」
「えっと…ご案内しながら説明しますね」
前哨基地というか、もう温泉旅館となってる内部を案内して回る。
「はぁーもうほんとにこの子は…家より居心地いいとかどうなってんの!?」
「…私こっちに住みたい」
「スノウだけずるいわよ!」
「…みんなも住めばいい。陛下も転移して来ればすぐ会える…」
一応ここって森の奥深くで危険地帯…。 (ここだけはどこより安全)
そうなるようにはしたけども。
「みんなは少し黙っててねー。 アスカちゃん、遺跡は?」
「ここから道を開いてもらってますからすぐに行けます」
「助かるよ。本来の目的はそっちだからね」
一度拠点を出て、遺跡に向かう。
「報告だと地下三階までは把握できてるんだよね?」
「はい。キャンディとクッキーが制圧してくれました。地図はこちらに」
「ありがとう。 やっぱりダンジョンかぁ…」
「あの、こういう遺跡って何かわかってるんですか?」
「うん? あれ、話してない?」
「はい、私は塔のダンジョン以外は知りませんから」
「そっかー…。 これはね、私の祖父母の時代の物だよ」
「お祖母ちゃんのご両親ですか?」
「そう。今はもうこの世界に居ないけどね」
そういえば…お祖母ちゃんもそんなこと言ってた。”セイントドラゴンは自分しかもういない“って…。
「この世界に飽きたとかいって、あちこち渡り歩いてるから、私も一回しか会ったことないけどねー」
とんでもないスケールの話だなぁ…。 (世界を渡る旅人!)
ドラゴンだけどね。
てことはまさか…
「もしかして、うちの母が父を召喚した方法って…」
「うん、私のお祖母ちゃんが作り出した魔法だよー」
私は今とんでもない事実を聞かされているのでは…? (あちこちの世界の勇者召喚も発端はソレだったりして)
うそだよね…。 (知らんけど!)
でも待って…お狐様が気になる事言ってなかった? (似た力の人を大昔に見た?)
それそれ! 身内なら魔力の質は似てる筈だし…。
「アスカちゃん、大丈夫…?」
「え、ええ…。色々とつながったような気がしました」
「そう? 当時はドラゴンって信仰対象だったらしくてねー」
今もエルフたちにはそうだったね。 (うんうん!)
「ひ弱な人や獣人を保護し、鍛えるためにって作られたのが各地にある遺跡。アスカちゃんが届けてくれた本や日記にも書いてあったはずだけど」
「私が見ていいものか判断できなかったので…」
「そっか。あれはここの記録だったり、作られた時の話だったりと貴重な資料だね。あんなにキレイに残ってたのは珍しいよ」
状態保存がしっかりかかってたからなぁ…。
「しかも! ここは、正にうちの祖父母が管理してた場所なの。 ずっと探してたんだよーありがとね。すっごいお手柄だよ!」
それはよかった…。
そもそもアキナさんがこの地域に国を構える事になったのも、ここを探していたかららしい。
そのために争いの平定をしたり、結果として拠点とした場所が国になったりと、全ての始まりというか原点はここを探すためだったんだとか…。
「だからね、本当に感謝してる…やっと、やっと見つけられた…」
「そうだったのですね…」
「今や目的が通過地点になってしまうくらい国が大きくなったけどね…」
そう言って笑うアキナさんはどこかホッとした表情をしてた。
「どうしてここを探されていたのですか?」
「小さい時にね、一度だけ会った祖父母にここの話を聞いてて…いつか自分で見てみたかったの。それ以降祖父母が戻ってくる事はなかったから、大凡の場所しか聞いてないし、小さな時だから記憶も薄れててね」
ここは、幼い頃のアキナさんの思い出を辿るための場所なんだ…。
「クッキーでは届けられなかった小物や生活雑貨もお預かりしてますから、お渡しします」
「ほんと!? ありがとね…」
渡した物を大切そうに見ているアキナさんがすごく印象的だった。
寂しそうな、でも嬉しそうな…そんな表情だったから。
「よしっ! アスカちゃん達のおかげで目的の場所も、拠点も確保できたし、少しずつここを探索していくよ! アスカちゃんも協力してくれる…?」
「はいっ! 手伝わせてください」
「助かるよー。 もちろん遺跡の発見者でもあるアスカちゃんにここの権利はあるからね!」
「…あの、その権利って、国にお返しすることは出来ませんか?」
「えぇっ!? ダンジョンだよ! 宝の宝庫! 未知の発見の山なんだよ!」
「私には過ぎた権利です。アキナさんに持っていて貰いたいです」
アキナさんが探してたものなんだから。
「あんな話を聞かせたから、遠慮してる?もう私もここに執着するほど子供では無いよ?」
「いいえ。そんなつもりはありません」
「そっか…うん。わかったよ。じゃあ後で書類は用意するね」
「はいっ!」
この狩猟大会の終了後、私はアキナさんから、ドラゴライナ王国で最高のセイントドラゴン勲章をもらったり、参加したみんなもドラゴン勲章をもらった。さらには多額の報奨金も頂くことになった。
アキナさんの許可をもらい、報奨金は参加したみんなで分けたり、受け取らない子がいて揉めたりと色々あったけど、それもなんとか無事解決。
うちの両親は二人ともなんだかショックを受けてた。
そういえばなんか隠してたしなぁ…。
「私達でお金を稼いで、この国に家を買いたかったの。みんなで住むための大きな家を! なのに…」
「子供達が先に意味のわからん額を稼いでくるとか、親の立場がないぜ…」
なんかごめん…。
「そんな事考えてたの!? このお屋敷があるのに!」
「ここは娘のアスカが貰ったものでしょ? 私達居候じゃない!」
そんなつもり無かったけど…。親の思いは複雑らしい。
「たしかに今はアスカちゃんも大勢の嫁がいるし、お姉ちゃん達も自分の家がいるよねー…」
まだ嫁では…。 (称号が認めてるのに?)
それはそれ! (ママも細かい…)
…うるさい。ちゃんと順序は必要なの! (ママらしいけど!)
結局両親は当初の目的通り、資金を貯めて家を買うって話で落ち着いた。
お祖母ちゃん達はこっちに居てくれるって。
「娘より、孫たちと一緒に居たいわ」
「お母さんの好きにすればいいよー。私は夕夜と新居で新婚気分を味わうから!」
「ふんっ、せいぜいそのポンコツを守ってやりなさい」
あ、父さんってまだポンコツ扱いなんだ? (ママ達が強さ跳ね上がったから…)
ティーもでしょ。 (うんっ!)




