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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第七章

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奈々の想い



ほとんど眠れないまま夜が明けて、私と麻帆は変に気まずいのに、当の本人はいつも通りすぎてこっちが戸惑う。

「ねぇ、アスカちゃん、なんで奈々はああなの?」

「…私に聞かれても」

あまりにもいつも通りな奈々に私は違和感を感じた。

無理してるような…そんな違和感。


「今日はなにするー?どこいくー?」

……。 (待ってて! 原因みつけるから!)

手間かけてごめん。私もできる事をするよ。 (えっ?)

ちょっと二人と出かけるからみんなの事お願い。 (わ、わかったの!)


落ち着ける場所がどこかないかと悩んで、イメージして転移したのはお祖母ちゃん達の住んでいた森。

もちろん魔力隠蔽はしてるから、即座に魔力ドームで安全の確保をした。


「えっ!? な、なに!?」

「ごめんね、何も言わずに連れてきて…二人に大切な話があるから誰も来ない場所へ移動したよ」

「………アスカ」

「麻帆には衝撃の話になるかもしれないから覚悟して」

「アスカ!!」

「奈々は知ってるみいだけどね」

「……」

「え、なによ…そんな前置きされたら怖いわよ」

奈々が睨みつけてくるけど、私には他に方法が思い浮かばない。

奈々が知ってるのに、麻帆にだけ黙っておく、なんて事はしたく無いし、ようやく本当の事も分かったのだから話すなら今だと思う。


「はぁ…負けたよアスカ。ごめん…私が焦りすぎたからだよね?不安にさせた?」

「な、なによ…二人だけでわかった様に話さないで」

「ちょっと待ってね、念の為に護衛を呼ぶから」


チョコ達を喚んでハグ。周囲の警戒をお願いする。

「ますたぁ…。 私は何も言わないわ〜周りの事は任せて〜」

「ありがとうキャンディ…」

いつも通り私の記憶から事情を察したキャンディは周囲の警戒に向かってくれた。


今回はチョコ達を見ても麻帆は気を失わずにいてくれたけど、かなりビックリはしてる。

「意味のわかんないことばっかりだけど、二人の事が気になってそれどころじゃないわ…早く話して」

こめかみを押さえながらそう言う麻帆。

ちゃんと話すから…。



「私の血筋については話したと思うけど、地球で生まれる時に、母親が私に偽装魔法をかけてたの」

「偽装?」

「うん、ほら今の私の姿を見ればわかると思うけど、髪の色とか目立つでしょ?」

「ええ、それはそうよね。あまりいないし、キレイだもの」

「それを目立たないようにって母親が偽装したの。”私みたいにならないように、目立たない様に”って」

「アスカちゃんのお母様もそっくりだものね」

「うん。 その、私みたいにならないようにってかけた偽装魔法の影響で、つい最近まで私は男の子だったんだよ」

「はい?私そんなの知らないわよ?」

「異世界に喚ばれた時にその偽装が解けちゃってね。戻ってくる時に、強制力ってのが働いて色々とおかしな事になったの」

みんなの記憶、友達やファンクラブまで世界のすべてが書き換えられた。


「………」

「信じられないわそんな話…」

「その強制力ってのを司ってて、私を助けてくれてるのがティーなんだよ」

「待ってね…そうすると、アスカちゃんは元々女の子だった筈なのに男の子として最近まで育ってきた?」

「うん。こう考えたほうがわかりやすいかも。私は生まれる前に男の子になる魔法をかけられてて、それが解けたことで全ての魔法も解けた」

「お伽話とかにあるやつね…。夢から覚めたように…。 何事もなかったかのように…。って」

「そう。これを知ってるのはうちの家族だけ。 だった…」

「だった…?」

「奈々は何故か知ってて、昨日それを初めて言われてね」

「……」

「どういう事よ…奈々!?」

奈々はニコリともしないし、怒ってるのか悲しいのか、それもわからない様な表情をしてる。


「ちょっと奈々!」

「うるさい!」

…奈々がこんな怒ったの初めて見た。

感情が豊かだけど、怒るってことはあまりしない子だから。


「…アスカ一つだけ聞いていい?」

「うん…なに?」

「そんなに…そんなに私とそうなるのが嫌?だからこんな事したの?」

「…?」

「ごめん、忘れてた…アスカってこういう事に鈍かったね。ごめん忘れて」

えー…。



「私は奈々がどうして知ってるのか知りたかったし、奈々が知ってるのなら麻帆にも話しておかなきゃって思って…」

「うんうん、アスカはそういう子だったよ…はぁもう! これをネタにアスカを脅して私の物にしようとした〜なんて、すっごい悪者じゃん私!」

「そんなこと考えてたの!?」

「私は奈々がそんな風に頭を使ったって事実に驚きだわ」

言われ方…。


「開き直った私は怖いよ…?絶対に理由教えないから! アスカが私のものになるって言うまで教えない!」

「別にいいよ。こっちで調べるから」

「うわっ、ズッる!!」

「脅してる奈々が言えたセリフじゃないわね、それ…」

ほんとよ…。



「麻帆は怒らない…? だって、記憶とかも作られたものなんだよ…?」

「そう言われても私にはどこからが?ってくらいこれが当たり前なんだもの。それとも作られた記憶だから親友じゃないとか言っちゃうわけ?」

「いわないよ! 私にとっても麻帆は親友で…だからこそ、この事を麻帆にも話さなきゃって思ったし…」

「ならそれでいいわよ。今までが作られた記憶だって言うなら、これからは私達で作ればいいじゃない」

「うん…ありがとう麻帆」

「親友でしょ?」

「うん…うん!」

「えっ…なんで二人で盛り上がってんの?私は!?」

「弱みを握って相手を手に入れようとする親友なんて私は聞いたことないわね。アスカちゃんは?」

「私もそれはないかな…」

奈々に悪意があるとは思えないけど、どういうつもりなんだろう。


「謝る! 謝るからぁ! だって…ずっと片思いだったんだよ?それなのに、いずれ違う世界に行っちゃうとか、彼氏できたら知らないけど〜、とか言われたら不安にもなるし悲しくなるよ!」

「片思い…?」

「そうだよ! アスカが男の子の時からね」

「奈々がアスカちゃんのことを好きなのは知ってたけど、軽いノリじゃ無く本気の恋愛系だったのね?」

「うん…」

これは、なんてコメントしていいかわかんないぞ…。

しかも何気なしに言った言葉が奈々を傷つけてたんだから。


「奈々…」

「謝ったら泣くよ私!」

どうしろと!?


「私のものになれー!」 

そう言って飛びかかってきた奈々は私にぶつかり、反動でコケた。


「何しようとしたのよ…」

「押し倒して襲っちゃおうかと!」

いきなりそれは堪忍して欲しいなぁ。


起き上がると懲りもせずに飛びかかってきたから今度は抱き止めた。

「えっ!?」

「奈々はどうしたいの?どうなったら満足?先ずはそれを聞かせてよ」

「…私と付き合って! 恋人になって!」

恋人かぁ…。


「ダメ?」

「ダメではないのだけど…」

ここでハイって言ったらとんでもない事になりそうな予感が…。

正直まだ私は色恋についてよくわからない。

でも奈々の気持ちは嬉しく思う。


「別に私は女同士でもいいとは思うけど、奈々は少し冷静になったほうがいいわよ?」

「冷静だよ! この上なく本気だよ! 本気と書いてマジだよ!」

「そうじゃなくて…アスカちゃんの周りって恋人候補みたいな女の子、沢山いるわよ?抜け駆けしたらどうなるかわからない?」

「アスカ! どういう事!?」

「えーっと…確かに奈々みたいに好意を向けてくれてる子は沢山いるね…」

みんなからの想いも嬉しいし、私も大好きだって言える。


そっか…私みんなの事大好きなんだ。離れたくない、失いたくない…って。これがそうなのかな?



「じゃあ昨日のも初めてじゃ…」

「…ないね」

この世の終わりみたいな顔してるな。


「私は初めてだったんだよ! 責任取れー!!」

「いや、襲ってきてそれはないよね!?」

「ちょっと待ちなさい! え?昨日、私が見たのは事後?」

「事後とかゆーな!」

「事後だよ! 既成事実は済んだ!」

えー…。


ホントどうしようこれ…。 (ママー、報告ですっ!)

ありがとうティー。 (えっとねー…)

うん?










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