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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第七章

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ティー到着



「ママ!」

転移と同時に飛びついてきたティーを抱き止める。

「アスカ! 大丈夫!?」

転移してきたのは、分体の方のティーとティア姉様だね。 予想通りだ。


「ママ! 心配したの…何があったの?」 

「説明してあげるから。 その前に紹介しておくね。この方がアルディエル母様だよ」 

「ママの恩人?」

「そう。 母様この子がティーと、ルナドラゴンのルナティアです」

「ふむ。よく来たな。アスカの身内なら妾の身内も同然。歓迎する」

ティーとティアねえ様も挨拶。


二人に事情の説明。

「びっくりしたよーティーがめちゃくちゃ慌てて私のところにきたからねー」

「だって…転移した筈のママがちっとも帰ってこないから! 行ける範囲の何処にもいないし」

「ごめんね。心配かけて…」


ティーは私の元へ転移できる魔道具を持ったティアねえ様を頼ったんだろう。

だからこそ、アクシリアス王国にいた分体で来たんだろうし。 (あたりー!)

一人しか転移できない筈の魔道具にどうやってついて来たのか…たぶん、魔道具の安全装置の術式として潜り込んだんでしょ? (おーさすがママ!)

そこに気がついて実行しちゃうティーも凄いよ。 (ふふーん)



母様は興味深そうにティーを見ていたかと思ったら突然抱き上げた。 (わわっ…)

「可愛いな…アスカとの子が産まれればこんな感じなのだろうな。これは楽しみだ!」

母様…やっぱり本気なんだ。 (どゆこと!?)


あー、んとね…

…………

………

……

というわけでね…。どうしようかと。 (ママ、また?)

人ぎき悪い言い方しないでよ…。私も突然の事で混乱してるのに。 (帰れそう?)

しばらくは難しいんじゃないかな。


「何を内緒話しておるんだ?」

「すみません、もう癖でして…」

「まぁいい。 二人はどうする?滞在するのなら部屋を用意させるが」

「私は突然の事で何も言わずに来ちゃってるから帰らないとー」

「ごめんねティアねえ様。ティーを連れてきてくれてありがと」

「いいよー。でも早めに戻るんだよ?みんな心配するしー」

「そうだね…」

ティアねえ様は私にハグをしたら転移していった。




アルディエル母様は、私とティーの為に城内に部屋を用意したからと案内してくれた。


懐かしい…前にお世話になってた時の部屋だ。あの頃のまま…。 (ここにいたの?)

うん。母様に保護されてからは、ユウキとここでお世話になってたよ。


「懐かしいだろう? どうしてもこの部屋は片付けることが出来なくてな…あの頃のままだ」

「はい。 あの後色々ありましたから…余計に懐かしく感じます」


「おかえりアスカ…」

「はいっ…」

やっぱり母様は温かい。あの頃と変わらない…優しいハグ。

私とユウキはどれだけ母様のこの温かさに救われたか。


「まずはゆっくりするといい。服はあの頃の物が着れぬだろうからすぐに用意させる。ティーのもな?」

「ありがとうございます」

母様は少し所用を済ませてくると言って部屋を出ていった。


本当に懐かしくて、部屋を見て回る。記憶の曖昧な部分も補填されるだろうし。

洋服タンスには当時、母様が用意してくれた服がきれいなまま仕舞われていて、テーブルには私とユウキが使っていた食器類もそのまま…。いつでも使えるようになっている。

状態保存の魔法が部屋中にかけられていて、母様にどれだけ大切に思われていたのかを実感してしまう。


「ママ、どうするの?」

「……どうしたらいいのかな。母様は私とじゃなきゃ跡取りを残さないって言ってるし。私が断って、アルディエル母様の力を途絶えさせてしまうわけにもいかない…」

「すぐに?」

「ううん。ここでは私は母様の子として登録されてるから、それを書き換えるのに時間はかかるみたい…」

「イヤではないのー?」

「わかんない…。母様は母様で…憧れで恩人で…私にとっては師匠と同じような存在だからね。 …多分イヤではないかな。母様に必要とされるのは本当に嬉しいから…」

「そっかー」

「ただ…私にその覚悟がないだけなのかも。母様だけじゃ無くこの国の未来に大きく関わることだから。本当に私でいいのか、役不足では?ってね」

それに…私には帰る場所も、守りたい物も、守りたい人達もいる。


「アスカ、お邪魔するわよ」

「ウェルチ姉様…」

「悩んでるわね?まぁ当然だろうけど」

「はい…」

「一つ忠告よ。今のアスカでは魔王様の御子を身籠ったら力に耐えられないわ。いくら魔王様と同等に近い力を持ってはいても、今はあくまでも人の身。間違いなく命を落とすわよ」

「…やっぱりそうですよね。魔力体ではないですから」

母様だってわかってたはずなのに…そこには触れなかった。


「ええ。 そうなると、魔王様に身籠って頂くしか方法はありません。いくらアスカが魔力体をつくり、意識をそちらに移していても、仮初の身体で受け止められるほど魔王様の力は甘くありませんから。他にも方法は無くはありませんが、アスカへの負担が大きすぎます」

「………」

「なので…これに全力で力を込めなさい。恐らくギリギリ耐えられるはずです」

そう言って渡されたのは卵のような形をした魔道具…? (なにそれ!?)

魔力というか、力そのものの入れ物ってところかな。

相変わらずこの国の魔道具のレベルは桁違いだ。 (ママより?)

うん。だって私が基礎を学んだのはここだよ? (あー…)



卵型の魔道具を懐かしそうに見ながら、ウェルチ姉様は説明をしてくれた。

「魔王というのは古来では相手を選べませんでした。魔王に次ぐ力の強いものが必然的に相手として選ばれます。それは必ずしも人の姿をしていない事もありました…」

「え…?」

「私の時なんて相手は黒龍でしたからね。そういった場合、当然普通の手段で跡継ぎを残すことはできませんよね?」

「はい。ではこれは…」

「ええ。相手の力そのものをここへ入れ、それを私は受け取りました」

「つまり、魔力と魔力で跡継ぎを…昔の方法を取ったと?」

「そういう事です。一つ違うのは、この器から受け取るとしっかり子供として身籠るということです」

「どうしてそんな手間のかかることを…?魔力から跡継ぎを作るのなら、直ぐに力を持ったものが…」

「魔王とて親になりたいのですよ…子を身籠り、産み育て、慈しみ…子と共に成長する。それは何にも替え難い経験になります。それは慈愛という、上に立つ者として必要なものを与えてくれます。今ならアスカにもわかるでしょう?大切にしている子がいるのなら…」

「はい…」

私はお腹を痛めて産んではいない。

それでもティーと出会って経験したこと学んだこと、それは何にも替え難いものだ。

もしそれが無かったら…?もうそれは今の私とは違う、別のだれかだろう。

今はリズもいる。あの子も大切な私の娘だ。

だからウェルチ姉様の言いたい事はよくわかる…。


「近年では、そういう跡継ぎの残し方よりも、想い合う相手との間に生まれる子の方が、力の強くなることが証明されたので、使うことの無くなった魔道具です」

単純な力より、想いの力のが強い…。それは、素敵なことだよね。 (うん! ママ好きーってのと同じ!)

そうだね。想いの強さは時に思いがけない力を発揮したりするから…。



「アスカはまだ幼い。責任を負わせたくはないのです。でも、魔王様の希望は叶えたい。そこでコレです」

「……それは…無責任にはなりませんか?母様の想いに対して不誠実にはなりませんか…?」

「そういう所、変わらないわねアスカは…。大丈夫よ。魔王様もご承知の上なんだから。もう何年かしてアスカが大人になったら改めて二人目を頼むと仰ってました。その時はアスカ自身で魔王様に答えてあげなさい」

「…はい」

私はウェルチ姉様から器を受け取った。

力を込めるために…。



〜〜〜〜〜〜〜



「これで良かったのですか?」

「ああ。アスカを見ているとな、あの頃の記憶が蘇る…いくら少し大人になり強くなって戻ってきたとて、やはり愛すべき我が子なんだ…」

「ええ…」

「そんなアスカに…妾を母様と呼び、笑いかけてくるアスカに手を出せるか…?いくら表面上は取り繕って迫ってはみても、愛しく想う気持ちはあの頃のままなんだ…」

「普通に手を出すと思いましたが?」

「ふんっ…確かにアスカは魅力的ではあるがな。今は無理だ。まだまだアスカは成長する。妾を母様と、そう呼ばなくなれば妾も気兼ねなく手を出すさ」

「アルディエル様は子供への想いを先に知ってしまわれたからですかね」

「ああ。そうだろうな…」

「では、アスカが力を込めた器はどうなさるおつもりで?」

「大切に妾が保管する。こんな話を持ち掛けてしまった以上、ああでもしなければアスカは気にして帰ることもできんだろう?」

「あの子はそういう子ですからね…」 

「まぁ、寂しくて我慢がならなくなったら使うがな?」

「いつまで我慢できるやらですね、それは…」






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