謁見
「異世界から来られたアスカ様をお連れしました」
大きな扉がゆっくりと開く。
相変わらず城の扉ってでっかいわー。
アリアさんに付き添われ国王の元へ進む。
左隣にはドレスを着た女性もいるな。
ん?あれ、あるある王子か?玉座の右の床に王子らしきモノが。
なんか自分が殴ったときの比じゃないくらいボロボロなんだけど。何があった…。
「こちらが異世界からバ、コホン。王子様が召喚されたアスカ様です」
この女騎士、今国王にバカ王子って言おうとしたな。
「うむ、すまなかったな。うちの息子が迷惑をかけ…おぬしワシの側室に…いや正妻にならぬか?」
「陛下!? 何を言い出すのかしら…?」
「ひっ」
うわぁ…やっぱりあの王子の親だよ。
てか隣で怒ってる女性って王妃様だよね?その目の前で側室はまだしも正妻て…大丈夫かこの国王。
「いや、すまぬ。あまりに美しくてつい。まずは我が息子の不始末の謝罪をさせてくれ。制裁もこの通り」
あれ王様がやったんだ。あるある王子ボロ雑巾みたいだけど大丈夫なんだろうか。
「ごめんなさいね。この子今までも色々やらかしてて。流石に今回は厳しくお仕置きしました」
ぐっと拳を握る王妃様。
やったの王妃様かよ! 王様まで真っ青なってるし。
あー、さっきの発言のせいできっと後で怒られるんだろうなぁ。 拳で。
「でも本当に美少女ねぇ〜後で私とお茶しましょう?ね?」
んーまぁお茶くらいならいっか。話も聞きたいし。
「はい。お願いします」
「母上ずるいのである。彼女は我のお友達なのである」
「できるならワシも…」
ほんと復活早いなあの王子。というか王様まで乗っかったら…
「おだまりなさい! 二人には後でゆっくりお話が必要ですね?」
「「ひっ」」
うん、王妃様は怒らせないようにしよう。
「事情は息子から聞いたけど、あの魔法陣…。ノリと勢いで書いたみたいで複雑になりすぎてて二度と再現できないらしいのよ。仮に一つ一つの構造がわかって、再現できたとしても重なって発動したものとは別物になってしまうし…」
マジですか王妃様。というか何してくれてんだバカ王子…。
「今、我が城の精鋭魔道士たちに魔法陣の痕跡を解析させておる。何かわかるかもしれん。終わるまで王国に滞在されるがよかろう。城に部屋も用意させている。街を観光したり自由にしてくれて構わないぞ。滞在費も渡す」
「ありがとうございます」
行く宛もないから嬉しいです王様。でも城にいるのは何か身の危険感じるんだけど気のせいかな?
「一つだけお願いしてもいいかしら?」
何やら思案顔で王妃様がお願いをしてくる。
「自分にできる事なら…」
「貴方に鑑定かけさせてもらえるかしら?」
それくらいならいいか。高いステータスやヤバい戦闘系のスキルは偽装してあるし。
自分では鑑定使えないんだよね。王妃様は使えるんだ〜いいなぁ。
「大丈夫です。やってください」
「ありがとう、ちょっと気になった事があったから」
なんだろ…そんなこと言われたら気になる。
「じゃあ失礼するわね」
王妃様が近くに来て手をかざす。近くで見るとかなりの美人さんだなぁ。
金髪碧眼でスタイルもいいのに王様は何が不満で自分に求婚してきたんだ?
と言うかこの人からあの王子が産まれたとか何の冗談だ。
王様だってダンディなイケメンだぞ?
「あーやっぱり…おかしいと思ったのよ。息子はともかく陛下があんな事言うなんて…」
ん?鑑定終わったのかな?
「えっと言いにくいのだけど、街へ行くのはオススメしないわ」
「どういうことでしょう?」
「周りへのかなり強力な魅了と誘惑の効果のあるスキルが常時発動してるのよ」
なんだって? でもそう言われたら心当たりが。女騎士アリアさんにメイドさん。
王様と王子はわからんけども。
「その反応、心当たりはあるけど知らなかった感じかしら?」
「はい。今までそんな事は無かったので。でもこちらに来てからは少し心当たりが」
「そのまま街へ行ったら大変なことになるわよ?
求婚されるくらいならまだいい方、酷いと攫われて大変なことになるわよ?」
何それ怖い。まだ女の子の身体に慣れてないし、上手く戦えるかも不安なのに。
「対策できるまで部屋から出ないくらいのがいいかもしれないわ」
観光したかったけど攫われたりとかはシャレにならない。
そう言うと王妃様は自分のもとを離れ王子の元へ行くとおもむろに胸ぐらを掴む。怖っ…
「心当たりあるわよね?言いなさい。今すぐ」
「ひぃ…」
悲鳴を漏らしつつ説明を始める王子。
「魔法陣に我の理想の女性となるように細工をしていたのである。お友達、いずれは我が妻になるなら周りを魅了するくらいでなければいけないのである。それでこそ周りに自慢できるのである」
何してくれてんだよ。
はぁ〜っとため息を付きながら王妃様は心底呆れた様子で胸ぐらを掴む力を強める。
うわ、王子持ち上げてるよ王妃様。
「どこまでバカなの?アスカちゃんが悪女だったら国中の人間魅了して国そのものが傾くわよ」
「まさかそんな…」
やだ怖い。そんな事したくないし、しない。
「私にしか関心がなくて側室も断り続けたあの人まで魅了したんだからあり得る話なの!」
マジか! 王様はマトモだったらしい。疑ってごめんなさい。
「取り敢えずそれくらいは私でも何とかできるとは思うから、アスカちゃん。申し訳ないけど対策できるまで部屋でおとなしくしててもらえるかしら?」
王子を持ち上げたままこちらに振り返り有無を言わさぬ様子でそう言う王妃様。
知ってる、これ逆らったらだめなやつ。
「わかりました。自分としても魅了など不本意ですし、その方が安心なのでお願いします」
「ありがとう。わかってくれて嬉しいわ。アリアはもう魅了されてるみたいだけど意思は強いし、いい子だから大丈夫でしょう。そのまま護衛につけるわね。暫くは不自由させるけどごめんなさいね」