力の一端
未亜ちゃんがユウキから、前衛の基本となるスキルや効果を教わってる。
「例えば、僕の力のステータスは数字にするなら580くらい。
一般の人が30あれば取り敢えず冒険者にはなれる。って言ったらわかるかな?」
やっぱりユウキは強いね。
「凄いのは何となくわかるけど…」
「じゃあ…」
そう言ってユウキはストレージからシンプルな剣を出す。
「これが一般的な鉄の剣。未亜姉ちゃん、持ってみる?」
「うん。 ぐぅぅ……重っ!」
剣を鞘ごと受け取るが未亜ちゃんでは持ち上がらない。
ユウキが支えてはいるけど。
「力が30あったらこれを振り回して戦えるよ。 で、僕の力くらいだと…」
鞘から剣を抜き、抜いた刀身を掴むとバキッとユウキはへし折った。
「嘘…」
美亜ちゃんはびっくりしてるけど、まぁそうなるよねぇ…。
「普段は僕も姉ちゃんも、力をセーブしてるから、ちょっと力あるかな?程度だね」
「そっか、触るだけで色々壊しそうだもんね」
この辺の力の加減とかは特に気にしなくても出来るものだけどね。
じゃなきゃ普段の生活ができやしない。
「で、次これ…」
そう言ってユウキが出したのは装飾のされた美しい剣。
「アスカ姉ちゃん、これ折れる?」
そう言って渡された剣は明らかに魔法の効果が乗った剣。
「折れるけど、これ魔法剣だよね?しかもかなり良い部類の」
「いいよ、それに姉ちゃんならすぐ直せるでしょ?」
「まぁ…直せるけど。 ほんとにいいんだね?」
「うん」
「(未亜姉ちゃんみてて)」
「(うん)」
こんなキレイな剣なのにいいのかな? まぁ直して返せばいっか。
魔剣を鞘から抜き放つ。 折ればいいんだよね?
その刀身の半ばくらいを指先で摘むとパキーンと澄んだ音をたたて折れる。
あれ、思ったより脆い?
「(未亜姉ちゃん、あれ僕が全力で使っても折れない魔剣でね。
さっき召喚された時にドラゴンを真っ二つに切って、それでも傷さえつかなかった剣だよ)」
「(………)」
「ユウキ、これ直せば良いんだよね?」
「うん、お願い」
「リペアー」
折れた刀身を合わせながらそう呟くと剣はもとの姿に戻る。
脆かったし…私の魔力をのせて…指先で刀身をなぞる。
うん、これなら。 まぁまだ折れると思うけど…さっきよりはいいね。
「はい、ユウキ直したよ」
「ありがと、ところで今なにしたの?」
直して少し強化しただけだけど…。
「意外と脆かったから刀身に私の魔力添わせて強化したよ」
「え?」
「ん?」
まずかったかな?
「アスカ姉ちゃんこれ…今僕が持ってるどの武器より強くなってるんだけど…」
「そうなの? よかったよ。ユウキの役に立てたかな?」
「う、うん。ありがとう」
「(未亜姉ちゃん、あれがアスカ姉ちゃんの力の一端、わかった?)」
「(わかったけど、わかんない…)」
「(得意としてる魔法なら…更に更に上を行くよ)」
「(うちのお姉ちゃん、元魔王…理解がついていかないけど…カッコイイ)」
「(あはは、普段のポンコツっぷりからは想像もつかないでしょ?)」
「(だね)」
「む、また二人で内緒話してる…」
「力の一端について話してただけだよ」
なんか怪しいけど…未亜ちゃんの私を見る目が違うし。
「実際には力のステータスに上乗せされる感じでスキルの効果が乗るから。例えば片手剣のスキルで攻撃力上がったりとかね」
「なるほど…?その辺は魔法と同じ?」
「そうだね、アスカ姉ちゃんの魔法が強いのもそれだね」
さっきの魔法の話ちゃんと覚えててくれて嬉しいよ。
「後は、身体強化とかね」
「それはどんなの?」
「うーん、そうだね…さっき未亜姉ちゃんが剣持ち上がらなかったのが、一時的に持てるようになる感じ」
「へぇぇ…お姉ちゃんも使うの?それ」
え?私?
「私は魔法主体だから、魔力強化とかなら使ってたよ。前は…」
「前は?」
「アスカ姉ちゃんが今、魔力強化して魔法使ったら威力があり過ぎるって事だね」
「加減できるからね!?」
未亜ちゃんからの幾つかの質問に答えてたらそこそこ時間も経った。
ユウキも少しは休めたかな?
「そろそろ、お昼近いし出発する?」
「うん、僕はもう大丈夫だから行けるよ」
「私も大丈夫、緊張するけど…」
初めての異世界だもんね。
「私達がいるから大丈夫だよ。ね?ユウキ」
「うん、未亜姉ちゃんは守るから」
「ありがとう、二人とも」
そう言って笑顔を見せる未亜ちゃんは少し落ち着いたようだ。
「じゃあこないだみたいに手をつないで〜なるべく私の側にいてね」
「わかった」
「お姉ちゃん、くっついてたらダメ?」
ちょっと怖いのかな?魔力循環させるならそっちのが効率はいいからいいけど。
「大丈夫だよ。おいで」
「うんっ」
そう言って抱きつく未亜ちゃんは安心できたみたいだね。
「ユウキもなるべく傍に、くっついていいから」
「う、うん だけど…」
嫌がらなくてもいいのに…
「範囲から出ちゃうと危ないから、ね?嫌かもだけど耐えて」
「別に嫌なわけじゃ…わかったよ」
そう言ってユウキも身を寄せる。
「じゃあ魔力流すから気をつけてね、いくよー」
飛ぶ時間は前回行った一月後くらいで。
時間は午前中。
「魔力が循環するから激しくなるよ!」
「くぅぅっ!」
「ひぅっ…!」
よし、二人に魔力循環完了。
「飛ぶよ!」
淡い光を残し三人の姿は消えた。




