御山のサーキット
学園から帰った後は、みんなと一緒にドラゴンの里へ転移した。
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「ここがドラゴンの里…。本当にドラゴンがたくさんいますね! すごいです!」
初めて訪れるシルフィー様は少々興奮気味。
幼いリズのが落ち着いて見えるくらいに。
フィアとニレは、初めて会うリズに興味津々。
見た目の歳が近いからかな。
紹介してあげたら早速一緒に遊びだした。仲良くしてくれるのはありがたい。
リア達に小さい子を任せて、私はティアねえ様と長老様の元へ。
「長老様ー! お待ちかねの物をアスカが持ってきてくれたよー」
「本当に!?みんなを集めなきゃ!」
そう言うと走り去る長老様。
「慌ただしくてすまんの」
「そんなに楽しみにしてたのー?」
「毎日のように二人が乗り回してるんだからな、当然だろう」
残った長老様達もソワソワしてるから相当だなこれは…。
集まったドラゴン達の希望を聞きつつカスタムもして、当然安全対策等も追加した。
完成した先から、里にあるコースへ走り出していく。私がピットクルーみたいになってるな。 (楽しんでるのー)
数も足りたから良かったよ…。
お礼にと、みんな角や鱗を置いていくものだから、私の前にドラゴン素材が山になっている。 (どーするのそれ…)
いや、厚意だから受け取っておくけど…。 (換金していいって言われてたよ?)
そうなんだけど、お金もなぁ。 (余ってるの)
うん。せっかくだし、なにか使い道ができるといいな…。
今やサーキットになってしまったドラゴンの里。
未亜、シエル、ティアねえ様と、シルフィー様はボードを持ってないから、走り回るうちの子達を一緒に見守る。
リズはティーのサイドカーにレウィと一緒に乗ってるし、ユウキとスピネルは自分達で買ってきたとか言って持っててびっくりした。
学園祭の翌日、一日あった休日に王都の街でみつけた専門ショップで買ったらしい。
私達は学園街のお店に行ってたからな。 (鉢合わせしなかった!)
だねぇ…。だから買っていたこと自体を知らなかった。
「姉ちゃんに言うとお金出してくれるとか言いそうだから、言わなかったんだよ。プレゼントだし」
「プレゼントかぁ、それは確かに私が出したらダメだね。 ん…?てことはシャーラも?」
「シャーラはアクセサリーだよ。向こうで乗る訳にもいかないからさ」
それもそっか。 (暗部がボードで移動してたら…)
ちょっと笑えるな。 (プフー!)
でも平和そうでいいかも。 (威厳はない!)
確かにそうね。あの子、暗部のトップだからな。
当然、ボードに近づこうともしない子もいる。筆頭はティアねえ様だろう。
「よくみんな平気だよねー。ほんと意味わかんない」
「私も回転とかはさすがに怖すぎるかな…」
「…うちはみてるだけでいいの…」
うちの大人しい組かな? (大人しくはなくない?)
そう? (知らんけど!)
知らんのかい! (ちっちゃいリズは楽しそうなのにー)
ありがとね、乗せてあげてくれて。 (運転はまだ危なそうだから)
だよね…。過保護なのかもだけど、気をつけてあげないと。 (まかせてー)
シルフィー様は、走るみんなを思案顔で見てる。
「これは、うちの国でも本格的に導入を検討した方がいいかもしれませんね…」
「そういえば、アクシリアス王国は魔道具を輸入とかしてないのですか?」
「”ゆにゅう“とはなんですか?」
あ、これまた私やらかしたか? (迂闊なのは通常運転!)
はァ…ほんと駄目だな。 (でもドラゴライナ王国と夕波王国はしてるし、これから始まるからいいんじゃない?)
そうなのかなぁ。
失言を忘れてはくれないシルフィー様に、輸入について食品を例に軽く説明。
「なるほど…。交易みたいなものですね。 距離もありますし、大規模な食料品のやり取りは少ないですね…。国境付近の街限定で、特産品の売り買い等はしていると把握してます。元々国内で必要な食料は賄っていますし、備蓄の備えも充分ですから」
食料自給率100%って事か。すごいな。
魔道具の技術とかは必要に応じて購入はしていたらしいのだけど、アクシリアス王国にはそもそも専門の職人も少なく、最低限しか普及してないのだとか。
王妃様は広めようと頑張っているのだけど、まだまだ魔法で済ませてしまうことのが多いらしい。
「基本の簡単な魔法なら子供でも扱えますから、家事や生活に必要な事はそれで賄えてしまいますので…」
確かに、火をおこしたり、明かりを灯したりなんて魔法で済むもんな。
そうなると国同士の取り引きは何を基本にしているのか、これは単純。
「魔獣の素材や魔石が主な品になります。グリシア王国は大きな魔獣が少ないので、魔石がよく売れますね」
ドラゴンの里が近いからかな…。 (それはありそう)
「うちは公共用の魔道具をよく購入しています」
「公共用っていうと、街灯とかですか?」
「はい、その通りです。そちらから広めていこうとお母様が…」
なるほどなぁ。色々あるんだね。
あとは工芸品や、魔獣素材の武具等もやり取りしてるのだとか。
地域が違えば、生息する魔獣も変わるから当然か。
街の雰囲気とかが大きく違う理由もこの辺にありそうだね。 (後は好み?)
まぁそれもあるか。アクシリアス王国は派手なのは好まれないっぽいしね。 (うんうん!)
ちょっと勉強になったな。
「お姉ちゃん達が難しい話してる…」
「ほんとだよー。私達にもわかる話にしてー」
「…国同士のお買い物なの…?」
つい話し込んでしまったな、申し訳ない。
「これからあちこちの国と友好を結ぶようになると、色々と考えなければいけないことが多いということです」
「人間ってめんどくさいよねー。お互いの欲しいものを交換すればいいだけなのに」
「物にもそれぞれ価値があるからね」
「そうだよねー。慣れるまでは大変だったよー」
ティアねえ様は人の街へ行き来してたから、今は慣れてはいるのだろうけど、最初は戸惑ったのだろうなぁ。
「ティアさんは、最初お金とかどうしてたの?」
「エルフから貰った貴金属だったり、自分の鱗を換金したりしてたよ」
「薬の材料として買ってたって聞いたことがあるの…」
あ、エルフ…。 (ママに会いたがってるっていう?)
そうそう。ちょっと行ってくるか。 (ここならみんないるし任せて)
ありがとう。
みんなにはリコのところへも顔を出してくると説明して、一人で転移した。




