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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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変わっていく召喚科



お爺ちゃん先生と、副教師になるクローラ先生には、なんとか師匠呼びはやめてもらった。

これから授業があるのに、先生が揃って生徒を師匠呼びするのは問題があるからと、なんとか説得。


ラムネから、お爺ちゃん先生もクローラ先生も、召喚獣を大切にしているいい人だとの確認も取れた。

それなら尚更、私のわかる範囲で知っている事を伝えるのは良いことだろう。

ただ、魔召界については知られたくないって伝わってきたからそこは伏せておく。 (ティーは?)

ティーや私の家族は大丈夫だって。 (良かったー!)


午後の授業に備えて、情報の擦り合わせをしていたらあっという間にお昼になってた。 (みんな食堂で待ってるの)

すぐに行くよ。



食堂へ行くと、うちの子たちに混ざって何故かストレリチア様まで一緒にいて、またシルフィー様と口論してた。

「未亜、何があったの?」

「それがね、今日から魔法科にも王女様が通うことになって…」

「どっちがアスカから愛されてるかとか言って揉めてるわ。まったくもう! 増やさないでって言ったわよね!?」

それ、私が悪いのかな? (ビミョーなライン?)

違うって言ってほしかったよ私は。 (それはちょっと無理が?)

はぁ…。


「魔力循環って愛なんて関係あったのー?ねえ様は聞いてないよ!」

「無いから。私のことを信頼して、流れる魔力に身を任せてくれないとダメってだけだよ!」

そうじゃなかったら、この国の王族全員と魔力循環した事実がとんでもない事になる! (国の乗っ取り?)

違うから! 何よその不穏なワードは! (傾国のママ)

変な誤解を生むからやめなさいって。 (はーい)



「じゃあうちはお姉様に愛されてないの…?」

「シエル、それは違うよ。私の大切な家族なんだから」

「でも…」

落ち込んでしまったシエルを抱きしめてなだめる。

恨むよ、W王女様。シエルが落ち込んじゃったじゃない。 (W王女様て…)


未亜達も協力してくれてシエルを慰めてる間も、王女様二人は言い合いをしていて、また周りからの注目が大変な事に。 (どっちが本妻かで揉めてるって噂に…) 

どっちも違う! というか、そんな相手いないよ! 

そもそもストレリチア様は別にそういうのじゃなかったよね? (ママの力を体感したら…)

えー…。 (ママが遠い目をしてるの)


「アスカ様!」

呼ばれて我に返り、振り返ると笑顔のライアン様が。

ぱっと見た感じはお元気そうだね。


「あれからお身体の方は大丈夫ですか?」

「はい! 今日は習った魔法を思い通りに扱えました! これもすべてアスカ様のお陰です。ありがとうございます!」

顔色もいいし、大丈夫かな。 (痛みもなくなったって話してたよ)

それは何より。辛かっただろうからね。 


「身体強化までして走っていかなくてもいいだろう。まだ慣れないのに人にぶつかったらどうするんだ」

「すみません兄上、早くアスカ様にお礼を伝えたくて…」

「そうだな。僕からもお礼を…。弟の事、本当にありがとう。まさか魔法を自在に使いこなすライアンを見る日が来るとは思いもしなかった」

「いえ、大した事はしていませんし…。 ライオネスト様も魔力の扱いに違和感とかはありませんか?」

「ああ。むしろ絶好調なくらいだ。加減を覚えなければならないくらいには…」

「兄上は百人組手を無傷でやり遂げたんです!」

いきなり無茶するなぁ…。増えた魔力を使いこなせているのなら安心だけど。


ライオネスト様が王女様達を止めてくれて、ようやく落ち着いて昼食を取ることができ…ないわ!

王族大集合じゃねぇか! (ママ?)

最近はティーも言葉づかい悪いから言われたくないなぁ? (うぐっ…もうお説教は…)

お互い気をつけようね? (あい…)




午後の召喚科では、生徒と先生の顔合わせと、先生の基本的な召喚術への考え方を聞くことになったのだけど…。

毎回私に、合ってますよね?って確認をしてくるものだから、もうね…。 (師匠と呼ばなくても意味がない!)

ホントそれ。みんなも気になる事は私に聞いてくるようになっちゃったし。

ただまぁ…召喚獣の子達の為だと思えば、苦にもならないから良いのだけどね。


召喚科のみんなも、召喚獣の子達と色々とコミュニケーションがとれるようになってきたと教えてくれて、実際に仲のいい姿も見せてもらえた。


「アスカ様、私の召喚獣の子も見ていただけますかしら?」

「もちろん。仲良くなれた?」

モルチアナも召喚獣をようやく見せてくれるらしい。 (おー!)  


訓練場で広い場所を確保すると、自分の召喚獣を呼び出すモルチアナ。 (わくわく!)

出てきたのは五メートル程はある、もふもふの可愛らしい子だった。

あれ…私、よく似た子を見たことがあるな。 (ティーは知らない!)

えっと、あれは確か…支援物資を運ぶってドラツーで旅をしてた時だな。 (いたっけ?)

朝早くに森へ降りて、王妃様の馬車を作ってた時だから…ティーは寝てたんじゃないかな。 (見たかった!)

ただ、あの時の子はうさぎサイズで小さかったよ。魔獣と召喚獣の違いなのかもな。 (ほえー)


「大きくて、のんびりしているだけで戦闘とかが一切できない子でしたから…役立たずと辛くあたってしまったのですわ…」

モルチアナは申し訳なさそうに、もふもふの子を撫ぜてる。

確かに私の見た魔獣の子も敵意なんてなかったし、あげた野菜を食べたら森に帰っていったもんなぁ。 (可愛いの!)

うん。愛玩用って見た目だね。 えっ…?ラムネ、それホントなの!? (どしたの?)

この子…めちゃくちゃ力持ちらしい。 (大きいから?)

いや、小さくてもある程度は力が強いみたい。

このサイズならチョコでも真正面からぶつかったら弾き飛ばされるって… (どんだけ…)

ただ、おっとりしてて温厚だからまずそんな事はないらしいけど、大切な相手を守る時は凄いらしい。 (かっこいい…)

だね、これは教えてあげないと。


「モルチアナはこの子の事をどれくらい知ってるの?」

「まだ殆どわかりませんわ。ようやく撫ぜさせてもらえるくらいになったばかりですもの」

「そっか…。この子の事、私の召喚獣が教えてくれたのだけど、聞きたい?」

「本当ですの!? …いえ、確かに聞きたい気持ちもありますが、私がちゃんとこの子から教えてもらわなくてはいけない事ですわ」

あっ…そっか。私が教えて知ってしまうだけでは意味がないのか…。 (ちゃんと考えてる!)

そうだね。申し訳なかったな。


「じゃあ、私は仲良くなれるように応援してるよ。絶対、無駄にはならないから。この子はすごいよ」

「ありがとうございます。それを聞けただけで充分ですわ」

名前も最近つけてあげたみたいで、モルルっていうらしい。

「お恥ずかしいですが、私の名前から取りましたの…。少しでも仲良くなれるようにと思いまして」

「かわいいね。ちゃんと伝わってるはずだから、諦めないでね」

「もちろんですわ! 今までの分も大切にします!」

大丈夫そうだね。きっと、モルルはモルチアナを守る、凄い召喚獣になるよ。 (うん! ティーもいつか撫ぜたい!)

お願いしなきゃね。  


モルルは私にも撫ぜさせてくれて、見た目以上にふわふわだった。 (ママずるい!)

いいでしょー。野生の子にもまた会えるといいなぁ。 (ちっちゃいのも見たい!)

そうだね。会えるといいな。


モルチアナの事よろしくね。守ってあげて…。撫ぜながらそんな願いを伝えておく。

召喚科は新しい先生のお陰もあり、きっとこれからはいい方向に行く。そんな気がした。








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