閑話 妹と弟
未亜Side
朝、目が覚めて背伸びをしてたら、昨日の事を急に思い出した。
魔力循環の練習。魔力が何かまだわからないけどお姉ちゃんへの抵抗感は全くない。
だから平気。
お姉ちゃんとユウキ君と手をつなぐ。そこから何かが流れてきて身体中を巡るのがわかる。
温かい、心地よくて気持ちいい…。
なにこれぇ…優しいお姉ちゃんに包まれてるような安心感…癖になっちゃう。
これがお姉ちゃんの魔力…?
お姉ちゃんの魔力が身体から抜けていくのが寂しく感じるほど…この満たされた感じはなに?
なにか話しかけられてるけどわかんないよ…
お姉ちゃんに抱き上げられてソファに寝かされたのはわかった。
昨日の記憶はそこまで。
あんな安心感は初めてで、ますますお姉ちゃんが好きになる。
私のお姉ちゃんがアスカお姉ちゃんで良かったって。
早くに目が覚めたけど、頭はスッキリしてるし。
今日はお弁当作るって話だったから、下ごしらえでもしておこうかな。
台所にいきエプロンをつける。
半分くらい下ごしらえが終わったとこでお姉ちゃんが起きてきた。
起きるの遅かったかって心配してる。
私が早く目が覚めちゃっただけだから、お姉ちゃんは遅くないよ。
え?顔が赤い?それはお姉ちゃんが側にいて昨日のことをまた思い出しちゃったから。
待って待って、近い近い。普段は高い位置にあるお姉ちゃんの顔が目の前に来たら…もう許して…。
体調の確認してくれたんだけど、それは大丈夫。顔が赤いのはお姉ちゃんのせいだから!
何とか気持ちを落ち着けて、一緒にお弁当を作る。
お姉ちゃんは素早いのに失敗がない。あっという間に3品、4品…と、流石だなぁ…。
ユウキ君も起きてきて、みんなで温かい食卓。幸せ。
お姉ちゃんの髪を結ってあげるのが朝の楽しみ。
姉弟揃って登校。
今日のお昼は、明ちゃんと約束してるからお姉ちゃんとは別々かな?
そういう時もあるよね。家に帰れば一緒にいられるし。
お昼休みにお弁当をもって明ちゃんと中庭に行ったらすっごい人。
何かあったのかな?
明ちゃんは、「今日は仕方ないかぁ」とか言ってるけど…。
明ちゃんの勧めで屋上へ行くことに。
普段は屋上もそれなりに人がいるけど、あれだけ中庭にいたらきっと少ないよね。
階段を上がって扉を開けたら
あの後ろ姿はユウキくん?と誰だろ…。
あ、お姉ちゃんだ! 偶然会えるとか嬉しいって思ったら…。
急に吹いた風でお姉ちゃんのスカートが捲れて。
「お姉ちゃん! スカートーー!!」
思わず叫んだけど手遅れだった。
しかもなんでスパッツ履いてないの…。
私にも見えたんだから前にいたユウキ君と、もう一人の男子にも見えたんだろうな…
記憶消せないかな?
とか思ったら鼻血出して倒れた。
私のせいじゃないよ?
あぁもぅ…お姉ちゃん涙目で座り込んじゃったし。
ユウキ君はその鼻血連れてって。
みんなで隅っこへ行ってお昼ご飯にすることに。
お姉ちゃんの親友って人に自己紹介されて私も名乗る。
奈々さん。覚えた。
明ちゃん、緊張してないで話さないと!せっかくお姉ちゃんに会えたのに。
奈々さんがお姉ちゃんに結婚しようとか言い出した。
あの目は本気。
奈々さん。ライバル。覚えた。
ユウキSide
朝、姉ちゃん達から手作りのお弁当を持たせてもらった。
二人とも料理上手だから嬉しい。
外食するより美味しいもんなぁ…。
昼休みにお弁当をもってどこへ行こうか考えてたら悪友に呼び止められた。
「ユウキは今日弁当なのか?」
「うん、姉ちゃん達が作って持たせてくれたから」
「なっ!マジかよ! 少し、少しだけでいいから分けてくれ!」
「別にいいけど」
「やっほーい! これ会員初じゃね?」
また訳のわからんことを…。
「どこで食べる?中庭?」
「いや、今日は中庭はやめた方がいいぜ」
「そうなの?」
「ほら、昨日アスカさんが目立ったんだろ?中庭で」
「あぁ…。でも今日も姉ちゃんが行くとは限らないんじゃない?」
「そこはほら、聖地巡礼的なやつだよ。ご本人への過度な接触は許されないからな」
ごめん、この悪友が何言ってるのかこれっぽっちもわからない。
「で?279はいかなくていいの?」
「ご本人の手作り弁当に勝るものがあると!?」
もうホント自重して…。姉ちゃんにも多少責任がある気もするけど。
昨日の不安そうな様子を見てるしなぁ。兄ちゃんだった時と違って、守らなきゃって思うし。
実際は僕より遥かに強いのに…。
「ユウキ、屋上行こうぜ。今日は絶対空いてるって」
「わかった。購買はいいの?」
「朝コンビニ寄って来た」
袋を持ち上げて見せてくる。ならいっか。
早く早くとうるさい悪友にひっぱられ屋上へ上がる。
で、まさか姉ちゃんがいるとは…。中庭には行けないだろうけどさ。
ガッチガチに緊張した悪友は自己紹介の途中で鼻血吹いて倒れた。
それはそっか…手作り弁当で舞い上がるような奴が姉ちゃんのあんな姿を目の前で見たら…。
なぜか未亜姉ちゃんもいるし。
あぁ…アスカ姉ちゃんまた涙目でへたりこんじゃったよ。
前回僕の不注意でその顔をさせてしまってから、その顔見ると罪悪感と…
庇護欲なのかなこれ。もうそんな顔させたくないって思う。
未亜姉ちゃん?え?その鼻血連れてって?
あ、はい。すぐ撤去します。
仕方ないから担いで保健室へ連れてった。
先生いないんだけど…お昼ごはんかな。
「黒…黒…うへへ」
何かイラッてしたから殴っといた。
起きたら悪友からは記憶が飛んでてなんかホッとした。




