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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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ライアン



「すみません、慌ただしくて…」

「大丈夫ですよ」

何故か手を繋いで引っ張られてるのは気にしないほうが良さそう。

弟の事を大切に思い、心配する気持ちは私にもわかるから…。



学園の門に待たせてあった馬車に乗り、お城へ移動。


王城では、グリシア王国へ初めてお邪魔した時に、陛下とお会いした部屋へ案内された。

室内には両陛下に、ライアン様、ライオネスト王子様まで大集合。

それはそうか…、心配だよね。

「ライアンを治せるかもしれないと言うのは真か!?」

興奮気味の陛下を見てもそれは良くわかる。


「診てみないとハッキリしたことは言えませんが…」

「でも、同じような症状だったシルフィーちゃんも治してるのよね?」

「はい…」

「お願いします、アスカ様! ライアンを…弟をどうか」

「まずは診てみます」

緊張気味のライアン様に説明をして、魔力ドームで包みながら鑑定をする。


…………

……


うーん…。 (大丈夫そう?)

結論から言えば、シルフィー様とは似て非なる感じ… (治せないの…?)

ちゃんと確認しないといけないね。 


「どうですか?ライアンは…」

「ご説明しますね」

みんなが頷くのを待ち、詳しい説明をしていく。


「まず、身体を巡る魔力が三箇所ほど滞っています。 もしかして、幼い頃に大きな怪我などされましたか?」

この感じは、生まれつきの魔力不調だとは思えないんだよね…。 (え?)

ライアン様との初対面の時に、王妃様は生まれつき魔力不調があるって言ってたでしょ。 (あー!)

実際は怪我の跡とかもあるから、それが原因だと思う。 (なんで嘘ついたんだろう?)

うーん…なにか理由があって言いにくかったのかもね…。


「…ええ。その通りよ。あれはライアンが四歳の頃だったわ。走り回れるようになったのが嬉しかったようで、あちこち城内を駆け回っていたの。その時に、少し目を離してしまって…」

「城のバルコニーから落ちたのだ…。城中の治癒師が頑張ってくれたのだが、数日程、目を覚まさなくてな。最悪の覚悟もしたくらいの出来事だった」

辛そうに話してくれた両陛下には申し訳ないことをしてしまったな…。 (言いにくかったというか辛かった?)

そうみたいだね…でも大切な事だから確認しておかなくちゃいけなかったし、許してほしい。


「おそらく、その時に頭部と背中、左腕に怪我をされたと思うのですが、外見では傷が治っているように見えても、内部までは治せていないのです」

「治癒師の責任ということか?」

「いえ、私の魔力ドームは特殊で、体内の異常まで見ることができるんです」

「そんな話聞いたことがないわ…」

そうだろうなぁ…。私はレントゲンとかの知識があるからそれをイメージして魔法を行使できるだけだから。


「ライアン様さえ良ければお見せすることはできますが…」

「僕は大丈夫です。アスカ様、やってください」

一応、事前説明だけはして、みんなにも見えるように魔力ドームで包む。


「これは…」

「まずは腕ですが、骨折した骨が少しズレて繋がってしまっています。そのせいで魔力もうまく流れていません。左腕は、魔法を使うにも魔力が流しづらかったのではないかと思います」

「はい… 左腕では剣に魔力を流すことすらもできなかったので間違いないです」

もしかしたら動かすのにも違和感があったかもしれないけど、幼いときからそのままなら、気が付かなくても不思議はない。


「背中は骨に異常はないのですが、魔力の流れが滞っています。ちょうどこの辺りですね」

私が指差したのは左の肩甲骨の辺りから肩にかけて。

「この、キラキラして流れているのが体を流れているという魔力ですか?確かにここだけぐちゃぐちゃっと固まってますね」

「はい、今は魔力の流れも見えるようにしてます。ストレリチア様が固まってると言われた場所が滞ってる場所になります」

「すごいですねこれ…。こんなの普通は見えませんものね」

ストレリチア様は興味津々といった様子で見ている。


「最後が左側頭部。こちらも多分、強くぶつけた事で魔力の流れに異常が出ています。恐らくですが、事故の時に左側から落ちられたのでは無いかと思います」

「そこまでわかるのですか…」

「不調の箇所が左側に偏ってますから、そうではないかな?というだけなんですが…」

「確かに、出血していたのは左側だったわ…」

時々頭痛とかもあったんじゃないかな。 (あった! 遊びに来てた時に痛そうに抑えてたよ)

そっか…。魔力の流れが悪いとその場所に違和感や痛みがあるはずだからね。これだけ滞ってると、痛みも酷かったんじゃないかな。よく耐えてたと思うよ…。

しかも陛下たちにそれを言ってないみたいだし。 (ティーが心配した時も大丈夫だって…)

強い人だね…。ライアン様は。 (うん…)


「治すことはできそうか?」

「一度、ライアン様と二人でお話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ…。任せるわ」

「うむ…」


両陛下の許可も頂けたので、ライアン様と少し離れた場所で遮音魔法をかけて話をする。

「ライアン様、痛みはどうですか?」

「…そこまでわかりますか?」

「はい。皆さんには内緒にされていたようなので…」

「気を使って頂いてありがとうございます…。ただでさえ魔力不調で心配をかけているのに、痛いと言い出したら、またどれだけの心配をかけるか…」

「そうですね。ライアン様はやっぱり強いです。 ですが…そういう事はご家族には話された方がいいと思いますよ」

「心配かけてもですか?」

「はい。私も大切な家族がいるからわかります。辛いのを隠されていたら、そっちのが悲しいですから」

「………」

俯いて考え込んでしまうライアン様。もちろんその気持ちもわかるから…。


「わかりにくかったら、逆の立場で考えてみてください。ライアン様の大切な人が、心配かけたくないからと、重大な事を話さないまま隠されていたら、どうでしょう?」

「信用されてないのかと悲しくなります…」

「ですよね? 私も同じ間違いをしたからわかるんです」

「アスカ様もですか?」

「はい。それで家族に盛大なお説教をされましたから」 (あれは怒られても仕方ないの!)

うん。そうだね…。 (でも何でわざわざその話をしたの?)

これから治療をするにしても、私は常に傍に居られないでしょう?そうなると、もし何かあった時に周りに話してくれないと、私に伝わらないじゃない。 (アフターケア…)

そういう事だね。もしもなんてないのが一番だけど、王族なんだから備えておかないと。 (うん!)



「…わかりました。ちゃんと話します」

「はい。 治療に関しては皆さんへも一緒にご説明しますね」

「お願いします!」

力強く返事をしてくれたけど…魔力循環ができるかは私が信頼されているかどうかだからなぁ。 (大丈夫だよ?)

なんで言い切れるのよ。 (ティーのカン!)

それ、ものすごく当たりそうだなぁ。



ライアン様はご家族に痛みの事や、それを隠してた事を謝ってた。

まぁ、当然だけどみんなわかってたよね。

これだけ大切に思われてるのに、みんなが気が付かないわけがない。 (ママはそれ、わかってたの?)

そりゃあねぇ…。 本人が言わないから、みんな触れなかったんだと思うよ。 (そんなー)

ティーと一緒にいる時にさえ痛くなってたんだから、普段から頻繁になってる筈だからね。 (そっか…)

知られていた事実にライアン様は驚いていたけど、話してくれて良かったとみんなに言われて、ホッとしてた。

これなら治療後にもしイレギュラーが起きても、ちゃんと周りに話してくれるでしょう。 (ティーも気にしておくの!)

お願いね。



「それでなのだが…、ライアンは治せそうなのか?」

心配そうに聞いてくる陛下。順を追って説明しないといけないな。



「腕の骨に関してはすぐにでも治せます。ただ、背中と頭部の魔力不調に関しては、一つしか方法がなくてですね…」

「その方法ってなんですか!?弟は…ライアンはそれで治りますか?」

「落ち着けストレリチア。そんなにまくしたてたら説明もできないだろう?」

「すみません…」

ライオネスト様に叱られてしょんぼりしてるストレリチア様。

心配する気持ちが痛いほど伝わってくるから、治せるのなら一番いいのだけど…。


私は唯一の方法、魔力循環について説明をした。

条件も、副作用も包み隠さずに。

稀に相性の問題で魔力循環そのものが不可能な場合もあるって事も。


「魔力が跳ね上がるというのは、アスカ様の魔力が桁違いに多いからという認識で間違いないか?」

「はい。ライオネスト様の仰る通りです。今迄も魔力循環をした相手は魔力が増えてますから…。当然、元の素質によって個人差はありますが、今の滞っている状態よりは確実に増えます」

「魔力は増えたところで困る事はないじゃない。大規模な魔法も使いやすくなるわよね」

「はい。多少なり慣れるまでは魔力操作が難しくなるかもしれませんが…」

「それはそうよね。その辺りは私が見ておくわ」

王妃様は魔法学園の学園長だし、任せたほうがいいだろうな。


「羨ましいです! 私もやってください!」

いや、ストレリチア様は魔力循環をする為の条件を理解してる? (多分できそう)

やめてよ…。ご両親の前で女の人にあんな姿をさせてしまったら、私捕まりかねない。 (微エロ?)

どこで覚えてきたの!! (〜♪)


「僕はアスカ様を尊敬していますし、信頼しています。ですから大丈夫です!」

迷いなくそう宣言するライアン様。

両陛下からもすんなり許可が降りてしまってはやるしかない。



まずは腕の骨を先に治しておく。先にやっておかないと意味がないし。 (なんでー?)

魔力の通り道を作っておかなきゃいけないの。それだけだったなら魔力循環もいらないくらいだよ。 (ほえー)

例えるのなら川の堰き止められていた水の流れを正常にするって所だね。 (なるほろ…)

うちの父さんもそうだったからね。

背中と頭部は怪我そのものは治ってるのに、魔力がきちんと流れてないから魔力循環するしかないけど…。



魔力ドームで左腕だけ包んで、ズレてくっついてしまっている骨を、真っすぐになるようにイメージ。

目視での確認にも問題はないね。 (どーなってんの!)

わかりやすく言うなら、くっついてたのを一度外して、付け直したって思っておいて。 (はーい)

これで、腕に関しては魔力もきちんと流れるはず。


次はいよいよ魔力循環か…。私も腹をくくるしかないな。

「座って、私と手をつないでくだい」

「は、はいっ!」

「緊張しなくても大丈夫ですよ」

そんな真っ赤にならなくても… (それは緊張とは違いそう?)

ん…?どういう事? どちらにしても落ち着いてもらわないとやりにくいのだけど…。


仕方ない、時間かかるのを覚悟するか…。

「ゆっくり深呼吸してください」

ライアン様が深呼吸をし、落ち着くまでしばらく待ってから、ゆっくりと魔力を流していく。


「くっ…はぅ…これがアスカ様の魔力…すご…」

私の右手から流した魔力は、ライアン様の左手へ。

流れの滞っている場所は、しっかりと流れを整えてゆく。 (悶えてる!)

言わないで!?集中してるんだから! (ぷぷっ…)


ライアン様の声を意識しないようにしながら、全身へ魔力を巡らせて、私の左手へと戻して抜いていく。

「ライアン…なんて声を出すの?」

「ストレリチア! 余計なことを言うな! あれは治療だ!」

「はい…」

ライオネスト様、ありがとうございます。


私の魔力を完全に抜ききった後、ライアン様は呼吸も荒く、気を失った。

「大丈夫なのか!?」

「今は魔力酔いみたいな状態です。 もう一度、ライアン様の魔力の流れをお見せしますから確認してください」

心配だろうからね…。安心してもらうためにこれくらいしかできないけど。 (充分でしょー)


「キレイに流れてるわね…。滞ってた所も、もうわからないわ」

「うむ…これでライアンは大丈夫なのか?」

「はい。このまま起きられるまで寝かせておいてあげてください。その間に増えた魔力も馴染むと思いますので」

「わかったわ…ありがとうアスカちゃん」

「この恩は決して忘れぬ…感謝する」

陛下達も安心したようで、ライアン様を見守ってるね。 (魔力どれくらい増えた?)

多分、文字通り桁が増えることにはなりそう…。 (またかー!)

元々、滞っていたせいで本来の魔力の三割程になってたからね。 (それにしたって…)

言わないで…。


「じゃあ次は私の番ですね!」

「えっ…?」

いやいやいや…。 (あれ見ても動じないのすげー)

王女様、自重してください。お願いします。










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