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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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母の横顔



無事に魔装へのカスタムも終わり、先生や生徒みんなにお礼を言われて、シルフィー様と二人で食堂へ戻る。

服飾科のみんなはもう少し授業があるらしいから、私達は終わるまで待つ。


教室にいてもいいと言われたのだけど、シルフィー様をいつまでも教室の後ろに待たせてしまうのは忍びない。

「凄かったですね…もっと近くで見たかったです」

「一番後ろからでしたもんね」

「はい。部外者ですから仕方ないのですが…アスカ様の姿をもっとお近くで見たかったです」

それは恥ずかしいからやめてほしいなぁ。



食堂はお昼より人が減ってて、くつろげそうな雰囲気。

時間はそろそろ午後のおやつタイムってところか。

少し元気のないシルフィー様の為に、食堂で紅茶をもらい、席について手持ちのお菓子を出す。

「ありがとうございます」

「私の故郷のお菓子ですから食べてくださいね」

「前にもいただいたゼリーはきれいで美味しかったです!」

「これはシルフィー様のお好きなチョコですよ」

有名な、山の幸を模したチョコスナック。たまに派閥戦争が起こるとかなんとか…。 (うちはみんな好みが同じだったから平和!)

それは何より。 私はどっちも好きだけどなぁ。 (ティーも!)


「おいひい…。 あぁ〜私もアスカ様の生まれ故郷に行ってみたいです」

「流石にそれは…。次期国王陛下のシルフィー様が異世界へ転移されるのは不味いですよ」

「私は辞退して、ドラゴンの長老様と結ばれる弟に任せようかしら…」

サラッととんでもない事を言い出した! (そんな簡単に辞退とかできるもの?)

無理だから! 多分冗談だよ…。 (マジっぽかったの)

シルフィー様は責任を簡単に放り出されるような人じゃないし。 (のぶりす・おぶりーじゅ!)

また難しい言葉を…。正にそれだね。


「というかですね?」

「はい?」

「お母様がセイントドラゴンとして覚醒して、夫であるお父様も魔力が跳ね上がったそうなんです」

「ドラゴンの契約ですか…」

「はい、ですからお父様の引退はいつになるやらですよ」

魔力が増えるってことは長寿命になるのと同義だもんね……これ大事件では? (アキナさんみたいになりそう)

さすがにそこまでは…。

陛下ならのんびりしたい! とか言われて、引退されそうじゃない? (ありそう!)


「そんな訳で、私も随分自由がきくようになりました」

「学園へ留学されたのも?」

「はい! 今迄は色々と制約がきつかった分、自由にしていいとお母様が」

「陛下は…」

「お父様はお母様に説得されてました。今はアルフィーもいますし、弟も婚約したりと頼れるようになりましたからね」 

なるほどなぁ。前はドラツーでの旅でさえ許可されなかったのに…。そんな裏事情があったのか。 (ついてくるかな?)

それは責任もてないよ…。学園への留学とは訳が違うし。 (リズ喜びそうなのに…)

……そうだとしても。継承権一位の王女様を連れて異世界へ転移する、なんていう責任は負えないよ私では。



食堂でのんびりしていたらピナさん達メイドさんと、ティーとリズも食堂へ。

「来ちゃった!」

「お母様! シルフィー母様!」

「お嬢様、よろしかったのでしょうか…。ティー様が、”ママがひましてる!“と仰られて…」

「大丈夫よ。私はもう授業も終わってるから」

「そうでしたか」

「二人を連れてきてくれてありがとう」

「いえ、私達は控えておりますので、何かありましたらお声がけください」

そう言うと壁際へ下がるメイドさん達。


「お母様、チョコなのです!」

「リズも食べていいよ、まだあるから。ティーもね」

「ありがとうなのです!」

「わーい!」

手持ちのオレンジジュースも出してあげる。


リズは託児所でのことを色々と話してくれた。 (あっ…)

「ティー姉はボスなのです!」

どういう事かな? (そーっ…)

逃げても無駄だよ? (うー。 別に何もしてないのー)


「リズ、ティーはなんでボスなの?」

「餌付けしたと言ってました!」

あぁ、持たせてあげてるお菓子か。 (そう! 別にシメたりしてないの!)

例の二人も? (あれは…)

あれは? (厳重注意した!)

…そういうことにしとくよ。 (ほっ…)


「リズはお友達できましたか?」

「はい、シルフィー母様!」

それは何より。 (魔法科の先生の娘さん!)

あの先生結婚してたの!? (大人しいスケベなのが息子…)

なんてこった…。

魔法科の先生してるくらいだし魔力も高いから、見た目年齢不詳なのか。パッと見は普通にお姉さんだったよね。 (うんうん)


魔力の及ぼす影響が大きすぎるな。 (でも…)

うん? (王子様は助けてあげてほしいの…)

ライアン様だね。 助けたいのはやまやまなのだけど、私の判断だけではどうにもならないから…。 (むー)

どちらにしても、まずは陛下と王妃様、それと本人の希望次第だよ。

その上で、診てみないことには、何もわからないし。 (はーい…)

私だって何とかしたいとは思ってるから。 (うんっ! ママならきっと大丈夫!)

そう言ってくれるのは嬉しいのだけどね…。


ティーとそんな話をしてる間も、シルフィー様はリズと話をしてくれてて、その横顔は何処かアルフィー様を見ている王妃様に面影が似てて…。少し羨ましく感じた。 (なんで?)

だって、私よりお母さんしてる感じがするもの。 (リズとティーのママはママだよ?)

うん…。そうなんだけどね。



「よかった! まだこちらにおられたのですね!」

食堂へ駆け込んできたのはストレリチア様。

もしかしてもうお城へ行って話をして帰ってきたーとかないよね? (お城そんな遠くないから有り得そう)


「アスカ様、お城へ来てください! お願いします!」

「ストレリチア様、アスカ様を連れて行かれるのならちゃんと説明しないと駄目ですよ」

「あっ…。失礼しました」

ストレリチア様は、学園におられた学園長にまずは話をして、お二人でお城へ戻られて陛下にも確認をしたらしい。


「ライアンもアスカ様に診て頂けるのなら、お願いしたいと…」

「そうでしたか」

どうしようかな。うちの子たちには、ここで待ってると言ってあるし…。 (ティーが伝えとくの!)

ティーは来ない? (本体はリズとここにいる!)

分体だけついてくるってことね? (うん!)


「シルフィー様はどうされますか?私とアスカ様についてきてもいいですよ?」

「私は遠慮します。アスカ様が行かれるのでしたら、リズの傍に居てあげたいので」

「なんですか、母親みたいな顔して…」

「母ですから!」

「シルフィー母様なのです!」

ストレリチア様は何やら言いたそうな顔を私に向けてくるけど、どうしろと!?

私の預かり知らぬ所でいつの間にかそうなってたのに。


とは言っても、今はリズが懐いてるシルフィー様に頼りたいのは確かだしな…。 (ティーもいるし)

そうだね、じゃあちょっと行ってくるね…。 (あい!)

 

ピナさんも頷いてくれてるから任せて、ストレリチア様とお城へ移動することになった。







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