表彰式とプレゼント
結局レースは、リアがニ位、ティーが三位という結果に終わった。
「惜しかったね二人とも…」
「うあぁ…悔しいの!! ママぁ!!」
「頑張ったもんね。悔しくて当たり前だよ」
まさかティーが泣きながらすがりついてくるとは思わなかった。 (えぐ…えぐ…)
抱きしめながら泣いてるティーを慰める。
「あんなに悔しがられたら、私はアスカに甘えられないわ…」
「あーよしよし。リアは私が甘やかしてあげるからー」
「むー、ねえ様で我慢するわ」
「はいはい」
悔しそうにしていた二人だけど、表彰式に呼ばれて、ホームストレートに作られたステージへ上がる。
せっかくのうちの子の晴れ舞台だし、カメプロで映しておく。
表彰式ではストレリチア様から直々に優勝者へ景品が渡されて、受取った男の人は嬉しそう。
あれ使うの…?あの人が?
考えるのはやめよう…。
リアと、ティーも商品として、それぞれ新品のマジックボードをもらっていた。
二位、三位に景品が何もないのも寂しいって考えたんだろうな。全員に参加賞もあるみたいだし。
ボードのがステッキより高いのでは?と思ったんだけど、悔しそうな二人にはとてもじゃないけど言えない。
多分、景品がどうとかじゃないのだろう。
表彰式が終わり戻ってきた二人を抱きしめてあげる。
「お疲れ様。頑張ったね?ご褒美何がほしいか考えてある?」
「…え?でも、ティー勝てなかったの…」
「そうよ…負けてしまったわ」
「そうだね。でも私は勝ったらご褒美を上げるって言ったかな?」
「……言ってない! 頑張ったらって言ってた!」
「そういえばそうね…じゃあ!」
「うん。二人とも少し危ない事はしたけど、本当に頑張ってたからね。何がほしいかよく考えてね」
二人はようやく笑顔になってくれた。
イベントに参加して悔しい思いをするのも経験だ。私はそれを頑張った楽しい思い出にかえてあげられるよう手助けすればいい。
家族達も当然二人を労って、いっぱい褒めてくれてる。
レースは勝てなかったかもしれない。でも、あれだけの参加者の中でニ位と三位になれただけでも充分凄いんだから。
「お姉ちゃんが本当にお母さんみたいに優しい目をしてる…」
「お母さんだからね。未亜もなったんじゃないの?」
「そうだった!」
リズの為にも未亜達の存在は大切だろうし、これから頼る事も多々あるだろう。
ティーとリアのお願いは”景品で貰ったボードをフィアとニレにプレゼントしたいから二人の好みにカスタムしてあげて欲しい”だった。
それは勿論するつもりだったから、二人のお願いは別に聞いてあげると言ったのだけど断られてしまった。
「今、お店にパーツもないから、作ってあげてー。それも待たせるのは可哀相」
「そうよね…今も楽しみにしてるから、お願いよアスカ!」
「んー、里で乗るんだからいっか…こちらで乗るってなると色々とまた手続きが必要そうだけど」
「あとね、コース作ってあげて! 危なくないように」
「それは長老様に許可取らないとだね」
「アスカ、そっちは私に任せてー。妹達の為だからね」
そういう事ならそっちはティアねえ様に任せよう。
里のドラゴン達も欲しがってたから、コースは有ると良いだろうし。
今、サウザンド・ドリームに頼んである分は全部ドラゴンに渡してあげればいいか。
リアとティーに、早く早くと急かされて、お屋敷へ帰るなりドラゴンの里へ転移することになった。
同行するのはティー、リア、ティアねえ様、それに二人の服を作ってくれるシエルだけ。
リズも来たがっていたのだけど、興奮して疲れたのか眠そうにしていたから、未亜に預けてきた。
また後日連れていってあげよう。
「お姉ちゃん、リズちゃんは任せて。夕食もピナさんたちと用意しておくから」
「ありがとね、未亜。さすがお母さんだね?」
「ふふっ、そうだよ。みんなで大切に育ててあげるんだから」
「頼もしいよ。 じゃあ行ってくるね」
ピナさんも頷いてくれてるし任せよう。
ユウキ達もいるし、何かあればファミリンで呼んでくれればいい。
魔力ドームでティー達を包み転移。
ーーーー
ーー
ドラゴンの里へ到着したらすぐにフィアとニレが駆け寄ってきた。
今日は、二人をがっかりさせずに済むからありがたいよ…。
ボードをずっと欲しくて待ちわびていたフィアとニレは、ティーとリアにプレゼントされて大喜び。
「ありがとうリアお姉ちゃん!」
「気をつけて乗るのよ?」
「はーい!」
リアから受け取ったフィアは、早速乗ってみてる。
「ティー、これ本当にぼくの!?」
「うん! ニレのだよ。カスタムはママに頼んでね」
「ありがとう!」
ティーもリアも、それぞれ自身がレースを頑張って貰った物をプレゼント出来て嬉しいのだろうな。
「私はコースの許可もらってくるよー」
「お願いね」
「まっかせてー!」
交渉はティアねえ様に任せて、私はその間に二人の希望を聞きながらカスタムする。
フィアのはリアによく似ているけど、乗り手を守る翼がドラゴンのもの。白銀に輝くそれは、フィア本人の翼を連想させる。
エフェクトは白銀のキラキラが舞う。
ニレは完全にティーの影響を受けてて、見た目はバイク。
エフェクトは紅葉した葉っぱが舞う。樹の精霊らしいものになった。
当然二人のにも安全対策はしてあるし、怪我をしたりしないように保護してある。
カスタムパーツは一応、お店で買った物とは術式も見た目も、似て非なるものにしてある。権利とかあるだろうし…。 (ティーもママのパーツがいい!)
わかったよ。組み替えてあげるから。
そのせいか、ますます見た目がバイクになってしまったのは仕方ない。 (ワイルドに行こー!)
はいはい。気をつけて乗りなさいね。 (はーい!)
当然リアもそれを見てて黙ってる訳はないからカスタムした。
嬉しそうだしいっか…。
ティーとリアに乗り方を改めて教えてもらい、二人は遊び場を走り回ってる。
「ありがとね、二人とも」
「なにがよ?」
「二人がレースでもらった景品だし、お願い事もあの子達のために使ってくれたからね」
「二人ともティー達の妹だから!」
「そうよ。それにあの二人の嬉しそうな顔を見れたのだから満足だわ」
いいお姉ちゃんしてるわ。
一通り走り回ったあと、シエルが二人の希望を聞きつつ服のデザインを描いてるのを見守る。
こちらもリアとティーの影響を受けまくってて笑ってしまった。
「シエル、ありがとね」
「お兄様のお店で素材も買えたからそれも使うの…」
値切ってたやつか。
デザインが決まり、シエルが作り始めたところでティアねえ様が戻ってきた。
「許可もらえた?」
「貰えたというか…里を全部使って好きに作っていいってー」
「そんな規模で!?」
「長老様達も楽しみにしてたからねー」
リアはシエルの手伝いをしてるから、ティーとティアねえ様と相談しつつ、コースを決める。
「スタート位置は、遊び場がいいと思うよ。ここ広いしー」
「そうだね。 じゃあ…ここをスタートとして…」
「ママ、ガードレールとかは?」
「一応つけるつもりだよ。ここ、高い山の上だからね」
いくらドラゴンとはいえ、人の姿で乗るボードで大きくコースアウトして、山から落ちていったら大変だ。
ティアねえ様曰く、それでもハーフ化して戻ってくるって笑ってたけど…。
ガードレールの要所要所に魔石を仕込んで魔法防壁を展開するようにしておこう。
最終的に、コースは里の大外を周り、山頂にあるドラゴン達の洞窟ハウスを囲むようなものになった。
山の上だし、かなりの起伏やカーブもあるからテクニカルコースになるな。
地面を土魔法で均しながら、前に長老様に沢山頂いた、余ってる木材とかも使い、ガードレールもつけていく。
途中、ティーの提案で大きなバンクカーブや、まさかのループまで作成。
ティアねえ様は”信じられない”って怯えていたけど、乗り回してたティーの意見だしな。
一時間程でコースは完成し、ティーのテスト走行も無事に終わった。
カメプロをつけて走ってくれたからそれを確認したんだけど、かなりの迫力で、ティアねえ様は震えてた。
「無理無理…これ乗ってる人目線だよね!?ありえないよー! 飛び出したら山から落ちるんだよ!?」
「ハーフ化して戻るから大丈夫って言ったのティアねえ様だよ?」
「みんなはそうだろうけど、私は無理!」
私の腕にしがみついて震えてるから余程こういう乗り物が苦手なのだろう。
バスや、エスカレーターでさえ嫌がってたくらいだから仕方ない。
フィアとニレは、早速シエル作の服を来て、ティーとリアも一緒になってコースを走り出した。
私達はティーのカメプロ映像をライブで見てるんだけど、フィアもニレも乗りこなしてるのが見える。
「…怖すぎるの」
「だよね!? やっぱりあの子達の感覚がおかしいんだってー」
確かにフィアもニレもループを怖がりもせず、むしろブースト加速して回ってるもんな…。
見てるこっちのが心配になる。 (大丈夫! 二人とも上手だから)
そうだね…安全対策もしてあるし。楽しそうなのを邪魔したくもない。
走り回るみんなを見てドラゴン達が早くほしいって騒ぎ出してしまったのは申し訳ない事をした。
そろそろ入荷しそうな気はするのだけどな。




