プロポーズ
ドラゴライナ王国へ転移して、お隣のアキナさんのご自宅を訪ねた私は、ちょっと意味のわかんない状態になってる。
だって、すっごい数の奥様が…。 (これが本当のハーレム…)
そうね?何人いるのよ…。
お茶を持ってきてくれたり、お菓子を出してくれたり、次々と部屋に人が増えてる。
ピナさんが結婚するのを悩む気持ちが少しわかるかも…。
今のところ見知った顔は一人もいないし。
せめてスノウベルさんがいてくれたら気持ちに余裕が持てたかもしれないのに…。
「陛下の姪子様かぁー。髪色だけでも納得だよね」
「そうね〜陛下と同じキレイな色で羨ましいわ。触ってもいい?」
「…はい」
「うわっ、サラサラ…」
「どれどれ!」
くすぐったいからみんなで触るのはやめてほしい…。
「ほら、お菓子もあるから食べて食べて」
「ありがとうございます」
なんか子供扱いされてると言うか、親戚のお姉さんに構われているような、不思議な感覚。
奥様達に構われ、質問攻めにされて…ぐったりしていたら、ようやくアキナさんが来てくれた。
「ごめんねー、今日の報告を受けてたから」
「いえ、こちらこそ夜に押しかけてしまい、すみません…」
「だから固いってー。家族なんだからいつでも遊びに来ていいんだよ」
「ありがとうございます」
「それで、なにか話があるって?」
「…はい」
私の雰囲気を察してか、奥様達は部屋を出ていき、私とピナさん、アキナさんだけにしてくれた。
「なにかあった?」
「ピナさんの事でご相談が…」
ついさっきピナさんから聞いた話をアキナさんに伝える。
…………
……
「ピナの一族の事情はハルナお姉ちゃんから聞いてるよ。だからこそアスカちゃんにメイドとして付けたのだし」
「そうだったのですか!?」
ピナさんも意外だったようで驚いてた。
アキナさんは全て分かった上で、ピナさんが役に立つと思って同行させてくれたらしい。
きな臭い状態だった学園に私達を送ることになるから、考えてくれてたみたい。
本当にありがたいね。 (さすが女王様)
「まさか、仕えたいと言い出すとは思わなかったけどね。借金に関してはもう充分働いてもらってるから気にしなくてもいいんだけど…」
「それなら奥様に?」
「ピナがなかなか同意してくれないんだけどね? 私にとっては嫁で、アスカちゃんは主かぁ。それもいいんじゃないかな?」
「アキナさんはそれでいいのですか?」
「アスカちゃんが、ピナを嫁にほしいって言うならライバルになるけどね?」
「言いませんから!」
いたずらっぽく笑ってるアキナさんはどこまで本気なのか。
ピナさんは改めてアキナさんに求婚されて、少し悩んでたけど”はい”と答えて無事に奥様の一人に。
私の目の前で突然プロポーズがおこなわれたよ! (わぁ…すごい!)
こちらは結婚式の習慣がないようで、お互いの承認のみ。
ただ、落ち着いたら身内でパーティーはするらしく、その時は私達も参加してほしいといわれたから、お邪魔する予定。
お祝い用意しないとな。
今夜はピナさんと過ごすってアキナさんが抱きしめて離さないから、明日の朝迎えに来る。 (初夜だー)
どこで覚えてきたのか本当に気になるけど、ヤブヘビになりそうだからやめとくよ…。 (未亜だよ?)
…私は一人で学園のお屋敷へ帰る!
ーーーー
ーー
忍びの仕事に関しては、結局は私の答え次第か…。 (ママは忍び持ち?)
ピナさんの希望だからね。アキナさんも後押ししてくれてるし。
ただ、地球へ帰る時にまでは連れて行けない。 (そうなの?)
あっちではメイドさんも忍びも必要ないってのもあるけど、アキナさんと離れ離れにしてしまいたくないでしょう。 (そっか!)
時間の流れも違う訳だし。
はぁ…学園祭の最中だったのに色々と起こりすぎでしょう。 (一日目からイベント盛りだくさん!)
私はもう疲れたよ…。
ゆっくり休もうと思っていた矢先、ピナさんがいないのをいい事に、未亜、リア、ティアねえ様、プラスでシルフィー様までが私の部屋へ押しかけてきて…
「アスカ、ベッドが狭いわ」
押しかけてなんて言い草!
「それはシングルベッドだからだね…」
「ベッドひろげてよー!」
わかった、広げるからみんなしてそんな目で私を見ないで…。
拡張魔法でベッドを広げたら満足してくれた様子。
たださ…
「シルフィー様はだめじゃないかな?」
「…酷いです。私だけ仲間はずれですか…?」
その言い方はズルい。 (諦めも肝心)
相手は王族なのに大丈夫かこれ…。 (ママも)
あー…もうその肩書は、事ここに至っては何の意味もなさない気がする。
「お姉ちゃん、ピナさんはなんでドラゴライナ王国に残ったの?」
「アキナさんと結婚したからだね」
「それって…今夜が初夜って事!?」
未亜もその反応か! (ティーの情報源だし…)
そうだったわ…。
「未亜、初夜ってなにー?」
ティアねえ様、そこ食いつかなくていいから! (手遅れー)
大丈夫よね? (リアとシルフィー様も興味津々)
よし、先に寝てしまおう!
「明日も学園祭なんだから、私は先に寝るからね」
こっちをチラチラみながら話し込んでる四人はもうほっとこう。 (ママおやすみー)
おやすみ。リズはあれから大丈夫? (もうシエルと寝てるのー)
そっか。明日には機嫌直ってると良いけど…。
翌朝、目を覚ましたらセクシーな下着姿の四人に抱きつかれてて、一瞬焦った。
私自身はちゃんとパジャマ姿でホッとした。
みんなが起きる前にピナさんを迎えに行こう。
そう決意してベッドから直接転移。
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ーー
ドラゴライナ王国のお屋敷で私服に着替える。
まだ早いし、程よい時間にお隣へピナさんを迎えに行けばいいから…それまではのんびりしようかな。
朝だからまだ両親も屋敷にいて、急に帰ってきた私にびっくりしてた。
話もそこそこに、屋台の仕込みだーって忙しそうにしてるから二人を手伝う。
お店のメニューを変えたとかで、父さんはイカント焼き。
なんだろうと思ったら見せてくれた。
「大きなイカ?」
「そうだな。王国の南側にある港で暗いうちから仕入れてきたんだぜ」
南側に港あるんだ…。
あ、王妃様がアクシリアス王国へ渡る船に密航したのがその港か!
父さんの話を聞く限り、荷揚げをする船や、漁をする船が出入りするかなり規模の大きな港みたい。
早朝から父さんは、その港へ行き競りに参加してイカントって言う大きなイカを大量に仕入れてきた訳だね。
「母さんはなんのお店に変わったの?」
「じゃーん! 材料はこれだよ!」
母さんがストレージから出したのは、大量の鶏肉。
「唐揚げ?」
「せいかーい!」
うちも学園祭で出してるから、考えることは同じだな。
ただ、私と漬け込みダレのレシピが違って、塩ベースだった。
私はにんにく醤油だし。
お互いレシピの交換をして、母さんは屋台でどちらも売るって張り切ってた。
「私とアスカのどっちが売れるかな?」
「うちも学園祭でだしてみていい?」
「いいよー」
どちらが売れるか勝負だ! って張り切ってたけど、ごめん…私はお店にずっと居るわけじゃないから把握できないよ。
両親の仕込みを手伝っていたら、いい時間になったのでピナさんを迎えにいって、学園のお屋敷へ帰る。
「お嬢様?私が居ない間に皆様に部屋へ押しかけられたりしませんでしたか?」
「………」
「やっぱりですか!」
お嬢様にはやはり私がついていないと…って呟いてるピナさん。
ご心配おかけして申し訳けないです。
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