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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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花鳥風月



拗ねてしまったリズは、今夜はティーと一緒にシエルの部屋に泊まるらしい。

年の近い子同士、仲良くなるのも早かったな…。


私は今夜一人ぼっちで寝るのかと寂しく思っていたら部屋に訪ねてきた人が。

「お嬢様、少しお話をよろしいですか?」

「いいよー。こんな時間にピナさんが来るのは珍しいね?」

「…内密な事ですので」

ふむ…そういうことなら。


ピナさんを部屋に招き入れて、遮音魔法で包む。

念の為ティーとは繋がるようにはしておく。前のことがあるし…。 (おとなしくしとく!)

ありがとね。リズの事お願い。 (任されたー)



「私が夕波王国の貴族家の娘だというお話は致しましたよね」

「うん。借金の肩代わりをしてくれたアキナさんについてきたことも聞いたよ」

「はい。実は、父が慣れない事業に手を出したのには訳がありまして…」

「普通は貴族だと、そんな事をしなくても税収やらで収入はあるはずだものね」

「うちは、元々領地を持たぬ、特殊な貴族だったのです…」


ピナさんは夕波王国の現状や、国について教えてくれた。


幾つもの島からなる夕波王国は、島ごとに島首がおり、その島を奪い合う海戦国時代があったと。

その戦いを制し、夕波王国を立ち上げたのが先代の国王様。

「ドラゴンのユウナミ様です。奥方様が、妖狐のシラユリ様です」

「今は娘さんの夕波白波様が国王様なんだよね?」

「はい。私の家は代々、夕波家に仕える忍びの家系でございました」

忍び…?忍者って事!? 本物だー! いや、でも過去形? (……!)


私がアニメやら時代劇で知った知識の忍者をイメージしてたら、ボヮンっと煙が上がり、その中からはイメージに近い忍者姿のピナさんが。

着物に刀装備なんだ…。

唯一びっくりしたのがピナさんも獣人だった事。変化…、私達で言うなら魔法を使い変装していたらしく、耳と尻尾も隠していたらしい。

変化を解いた忍び姿のまま、話を続けてくれた。

「忍名は睦月といいます。ですが今まで通りピナと、そうお呼びください」

「そう?わかったよ」

忍名は呼ばれたくないのだろうか…。



「島が統一され夕波王国となり、平和な世が続くにつれて忍びの活躍の場も減り、仕事がなくなってしまったのです…」

「あぁ…忍びって言うと、諜報、偵察、暗殺…確かに平和になると必要なくなるものもあるね」

「…御詳しいですね?」

「知識としてだけね」

いくつかある忍びの家は、事業を始めたり、個人なら冒険者になったりと、それぞれ平和になった世界を生きていると。

同じように事業を起こしたピナさんのお父様は失敗してしまった訳だけど…。


「我が家は、花・鳥・風・月とある忍び一族、その月の一族でして、基本は諜報を専門としております」



花は、表に出ることの多い一族で、色街で働き色仕掛けで情報を得たり、潜入する土地にお店を持ち地固めをする一族。忍名は花からつけられる。桜花、紫陽花など…。

今はその知識を活かして商売をしているらしい。


鳥は、つなぎ役。つまり、集めた情報を現地から主へ届ける。隠密性と速度に特化した一族。忍名は鳥からつけられる。隼、鷹など。

今は手紙や荷物の配達など能力を活かしてうまく立ち回っていると…。


風は、一番の武闘派。戦場を駆け回り、罠を仕掛けたり、時には兵に混ざっての戦闘もしていたそう。忍名は色からつけられる。黒、白など。

今は有事に備えての軍扱いで、普段は冒険者などになり、戦いを生業にして生計を立てている者もいれば、漁師などの危険な仕事をしている者もいるそう。


月は、完全な裏仕事。潜入、諜報、暗殺…決して表に出ることの無い一族。

忍名に月が入る。ピナさんの睦月や、皐月、結月など。


「そんな訳で、我が一族は一番地味で、認知もされていませんから、表立ってのツテも何もありません」

「裏方ではあるけど、地味ではないでしょう。ありとあらゆる情報を持ってるし、一番敵に回したら危ない一族では?」

「本当にお嬢様は…さすがですね。 しかし忍び一族の中でも特に目立たない日陰者という立場は、平和な世の中で要らぬものとなりました…」

やっぱり、この言い方だとすでに切り捨てられてるって事?貴重な諜報部隊を?

国王様、大丈夫か…。 (まずいの?)

平和だからこそ情報は大切だったりするんだよ。平和を脅かす可能性を先に知る事ができれば潰せるでしょ? (あぁ! なるほど)



「…確かに暗殺とかみたいな物騒なのは必要なくなるかもしれないけど、情報って何においても一番重要な要素じゃない?商売するにしてもそうでしょう?」

「はい…しかし情報を集めたところで、それらを精査し、次の手を判断し、指示を出す主がいなくては…」

「なるほど、それで事業に失敗したと…」

「ええ。今は、一族の者はハルナ様の元で諜報活動という仕事をしており、安泰なのですが…」

「そっか、商売人のハルナさんなら集めた情報も有用に扱える訳だね」

「はい」

それはわかったのだけど…なんでピナさんはこの話を私にしたのだろう?


「私は、主としてお仕えできるお方をずっと探しておりました」

「アキナさんの事?」

「陛下には既にそういう役割を果たす奥様が何人もおられます」

忍びもお手つきか!! (忍者はいなかったよ?諜報部はある)

そうなのね…。


「私はアスカ様にお仕えしたく、すべてをお話しさせていただきました」

「ちょっと待って…。 私は一国の主とかでもないし、忍びを必要とはしないよ?」

「それは存じております。ただ、今まで通りメイドとしておいて頂ければ…。その上で何かあれば命じてください」

「アキナさんに求婚もされてるのに、ダメでしょう。借金を返したら奥様になるんじゃないの?」

「…えっと…まさかアスカ様も私にそういう事をお望みですか?嫁、或いは夜伽をせよと?」

「違うから!! 奥様になるのならちゃんとアキナさんの傍にいなきゃダメじゃないって言ってるの!」

「陛下の妻としての役割と、主様に仕える仕事は別ではありませんか?それに私は陛下から、アスカ様達王族の方を守り、助けるようご指示をうけております」

「いや、まぁそうなんだけどね? と言うか、アキナさんの指示で動いてるのならやっぱり主はアキナさんでは?」

「忍びとして正式な主従関係を結んでいる訳ではありませんから。あくまでもメイドとしてです」

うーん…どうするべきなのこれ…。



「アキナさんは忍びの事は知ってるの?」

「いえ、仕えるべき相手を見つけた時、そのお方にしかこの話しはしません」

ピナさんの戦闘力が高い事とか色々と繋がりはしたけど、本当にどうしたものか。

魔道具科でのフラッグ戦での活躍も納得だよ。


「この話は、私がアキナさんにしても平気なの?」

「主様のご随意に…」

もう主様になってるんだよなぁ…。


私では判断しかねるし、アキナさんと相談するまで待ってもらうって事で取り敢えずは落ち着いた。

それでも、メイドとしては今まで通り働いてくれるから頼ることになるのだけど…。



悩んだ末、私は早くなんとかしなければと思い、夜だけどピナさんを連れてドラゴライナ王国へ転移し、アキナさんのご自宅へお邪魔することにした。






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