便利なものはうまく使おう
食後の休憩中にやっておきたい事があって部屋へ来た。
メイクしてもらった姿をトレースしておいたからそれを術式化して魔石に彫り込んで、魔道具をつけたらトレースアウト出来るようにしちゃおうかと。
メイクのパターン変えて幾つかトレースできるようにしておけば変化もつけれるし。
複雑でもないし、小さな魔石でいいからピンキーリングにしよ。
お馴染みの魔刻刀〜!
「お姉ちゃん、ちょっといいかな?」
「うん?大丈夫だよ、入って」
「お邪魔しまーす。って、お姉ちゃんまた何してるの?」
「ナイショ!」
「えーいじわるだー」
「出来たら教えてあげるから」
「むぅ、わかったよ。 ね、お姉ちゃん、一緒に写真撮って?」
そういえば未亜ちゃんと撮ったことまだなかったね。
「いいよ〜。でもなんで今?」
「せっかくお姉ちゃんがキレイにメイクしてるから落としちゃう前にと思って」
なるほど…でもご飯食べたからちょっと落ちてるよね?
「んーじゃあちょっと待ってね。すぐ終わるから」
「うん?わかった」
術式を彫り込んだ魔石をリングに埋め込んで…小指にはめたらサイズ調整。
うん、大丈夫。
一度メイク落としてからリングをはめたら落ちないメイクの完成。
「未亜ちゃん、ここで少し待ってて、すぐ戻る」
「うん」
急いで下へ降りてきたけど、洗うより魔法のが早いか。
「クリーン」
全身にかけたけどまぁいいよね。
「相変わらず姉ちゃんはデタラメなことしてる…」
ユウキ見てたのね。
「ちょっとメイク落としただけじゃない」
「ソウダネ」
なんだよぅ。
まぁ今はいいや。未亜ちゃん待ってるし。
部屋に戻ったら未亜ちゃんが
「お姉ちゃん! なんでメイク落としちゃったの?写真撮りたいって言ったのに…」
「大丈夫だから、ちゃんとわかってるよ。すぐメイクするから」
「え?」
「見ててね?」
さっき作ったリングを小指にはめる。
「…え?えぇ!?」
リングを外す。
「どうなってるの?」
「えっとね、メイクしてもらったのを記録して魔道具にしたってとこだね」
メイクする手間も落とす手間もないし。
「お姉ちゃんすごい! そんな便利なのできるの?」
「ちょっと思いつきで作ってみたんだけどなかなか良くない?」
「良すぎるよ…羨ましい」
ふふんっ。魔道具の事なら任せて。
「そんな手間じゃないし欲しかったら未亜ちゃんのも作るよ?」
「いいの!?」
「もちろん。上手くできたら、そのつもりだったし」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「じゃあ今度またあのお店で、今度は未亜ちゃんのメイクしてもらおうね」
「やった!」
一緒にスマホで写真撮って、せっかくならとユウキも呼んで三人の写真も撮った。
「お姉ちゃん、今ふと思ったんだけどそのリングを私がつけたらどうなるの?」
「ん?多分メイクの位置がズレて大変なことに…」
「どういうこと?」
「私と未亜ちゃんでは顔の輪郭や目の位置って違うよね?」
「うん。まさか…位置がズレるってそういうこと?」
「まぁ、私の魔力波長にしか反応しないから、何も起こらない。が正解だけどね」
「それを先に言ってよ、怖い想像しちゃった」
その日から未亜のスマホの待受が三人で撮った写真になってるのをアスカが知るのはだいぶ先。
お風呂上がりにリビングのソファーで寛いでて、思い出したから二人に提案してみた。
「ね、二人とも。異世界行くための魔力循環出来るか試してみない?」
「そう言えばそうだね。ぶっつけ本番もどうかと思うし…僕はいいよ」
「私も。魔力がどんなのかわからないから気になる」
二人が乗り気ならいいけどね。
「本当に大丈夫?落ち着いて抵抗しないようにするんだからね?」
「大丈夫だよ」
「うん、平気」
「なら私と…そうだなぁ、わかりやすく手を繋ごうか。
未亜ちゃんは左手、ユウキは右手ね。あいてる手で二人も手を繋いで」
三人で輪になるように手を繋いで床に座る。
「それじゃあいくよ。まずはゆっくりいくね」
二人の手を意識してゆっくり魔力を流していく、二人ともびくってしたから気がついたかな。
「これが姉ちゃんの…つよっ…くっ」
「なにこれぇ…んんっはぁ…」
二人から抵抗は感じない。なら…
「ここから循環して巡らせるから、激しくなるよ。気をつけてね」
魔力が二人を巡り自分に戻るように…
「くっ…はぁ…はぁ…姉ちゃんの魔力桁違いだよ…」
「ぅあっ…んんっ…く…はぁ…ヤバいっ…くせになりそ…」
ちょっと二人とも…声も表情も大変なことになってるからね?
後で怒らないでよ?
でもこれ…二人の魔力もわかるなぁ。
ユウキが私の2%くらいか…
未亜ちゃんは…3%超えてる?現時点でユウキより多いの?鍛えたら凄い事になりそうね。
あれ? いや、今は集中。
抵抗なく魔力循環したね…。そっか。ふふっ。
「ゆっくり循環切るからもう少し我慢してね」
二人から私の魔力を抜き出していく…。
「くっはぁ…はぁ…」
「んっ、あぅ…はぁ…」
「大丈夫?二人とも…ごめんね、ツラかった?」
「…いや、アスカ姉ちゃんの魔力温かかったし。姉ちゃんの強さを体感したよ…」
「お姉ちゃん、私これしゅきぃ…」
ユウキはまだいいとして未亜ちゃん大丈夫かな…。
魔力に慣れてないしおかしな事になってない?
「未亜ちゃん、身体におかしなとこ無い?どこか痛いとか」
「大丈夫〜幸せだよ〜?」
魔力酔いかなこれ…少し休ませないと。
未亜ちゃんを抱き上げてソファに寝かす。
念の為見とくか。
未亜ちゃんに手をかざして体調チェック。
大丈夫そうだね。
「ユウキは平気?」
「うん、魔力には慣れてたけど…流石に姉ちゃんのは桁違いだった」
「私もまさか本当に二人が抵抗しないとは思わなかったよ」
「まだそこを心配してたんだね」
「それは…そうだよ」
「未亜姉ちゃんは?」
「多分慣れない魔力で酔ってる感じかな。体調に異常はないよ」
「確かに慣れないところにあの強さはヤバいよね」
「うーん、でも未亜ちゃん、現時点でユウキより魔力は強かったよ?」
「マジで!?」
「うん、ユウキが私の2%くらい、未亜ちゃんは3%超えてた」
ユウキは元々魔力が強いとかではないけど、それでもステータスとしては高い。
「いや、姉ちゃん。そっちより僕の魔力姉ちゃんの2%!?」
「うん。循環してた時に感じたのはそれくらい」
「これでも僕は普通の冒険者の十倍以上はあるのに…姉ちゃんどれだけだよ」
でも、力とかのステータスはユウキのが高いはずだしなぁ。
「物理的なステータスだったらユウキのが高いでしょう?」
「…姉ちゃん?それいつの情報?」
「一緒に異世界で測ったとき?」
「あぁ…うん。わかった。この話はやめよう」
「…?わかったよ」
姉に叶わないにしても鍛えようと誓うユウキだった。
未亜ちゃんはあのままリビングのソファで寝てしまったので部屋のベッドへ運んで寝かせてあげた。
明日はお弁当作るために早めに起きるから私ももう寝よ。




