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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章
445/758

投票



今度はシエルが案内してくれるって言うから、シエルと手を繋いで服飾科の教室まで歩く。


到着した服飾科の教室も、かなりの広さ。

唯一違うのは後ろの方に寄せられてるミシンとかみたいな機材類がある事。

通りすがりにちらっと見てみたけど、やっぱり魔道具だった。


入口で投票用の札をもらい、衝立の奥へ案内される。

「おぉ…これはまたすごいね…」

「どのチームがどれを作ったかは解らなくなってるし、私達も言えないのよ」

「お姉様がいいなって思ったのを選んで欲しいの…」

「わかったよ」

鑑定とかも使わないでほしいって事だね。


やっぱりどれもがゴシック調や、スチームパンク風なのはお約束なんだろう。

細かい装飾も手が込んでるし、どれも本気の一点物。

全部で十着ほど展示されてたけど、私がピンっときて惹かれた一着。

しっかり見たくて近づく。


スチームパンクな基本は同じなのだけど、よく見ると要所要所に見慣れた細工がある。

だから私はこの服に惹かれたんだ。魔道具をつけて欲しいだろう場所も明確にわかるし…。

うん、私はやっぱりこれが好きだな…。

迷う事も無く、その服の前に置かれた投票箱に札を入れた。


「お姉様、どうしてそれを選んだの…?」

「うん。他のもすごくてキレイだったし、素敵だった。でも…私はこれが一番好き。だってほら、こことかちゃんと魔道具を付けることを前提にしてあるもの」

「へ、へぇーいい趣味じゃない! (やったわ!)」

「(リアちゃん、しぃーだよ!)」

聞こえてるけど聞こえないふりしとこう。 (やっぱりママにはバレた!)

ティーも口止めされてた? (うん! でもママなら見破るって言ったの)

そう。でもね、見破ったからコレにしたんじゃないんだ。 (そうなの?)

私はこれが一番素敵だと思ったんだよ。着るならこれが良いってね。 (さすママ!)




上機嫌なみんなと服飾科を出る。

「ママー騎士科も行きたいのー!」

「いいよー。みんなもいい?」

「もちろんだよー。私は今機嫌がいいしねー!」

「ねえ様!」

「なんだよー」

「待って! リアちゃんとティアさんはこの後、服飾科の当番だよ」

「あっ…忘れてたわ…!」

「えーせっかく幸せ気分だったのにー」

「それならうちも手伝うの…」

「だね! 私も一緒に行くよ。 そういう訳だから、お姉ちゃん。ごめんなさい!」

「いいよー。頑張ってね」

いつの間にか未亜もティアねえ様の事ルナティアじゃなく愛称で呼ぶようになってたね。 (ルナティアが許可してた!)

ティーは変わらず? (ううん、好きに呼んでいいって言われてる) 

そっかそっか! (ユウキはスピネルが拗ねるから変わらないまま) 

あーなるほど。



騎士科へ向かうのは私とティー、それにピナさん。 フラウさんとラフルさんは服飾科に残ってくれた。

「ティー、騎士科って言うと、ライアン王子様?」

「そう! 見に来てほしいって。できればママも一緒にきてほしいって言ってたから!」

「それは行かないとだね。うちは騎士科に誰もいないから情報が全くないけど…」

「剣舞とか組手を披露するって言ってた」

「なるほど…」

「ママも出来る?」

「まぁ…組手なら。武器は一通り使えるからね」

「じゃー大丈夫なの!」

どういう事だ?


「お嬢様、武器が一通り使えるというのは…」

「鬼畜な師匠に叩き込まれたからね」

「簡単なのはありましたか?」

「とんでもない。どれもが奥が深くて…使いこなすってなると、本当に苦労したよ」

「そうですか…お嬢様はホンモノですね」

「え?」

「いえ…こちらの話です」

何だったのだろう? (さぁ?)



騎士科は他の教室と比べてキチッとしてるというか、しっかりとした規律を感じる教室だった。

整理整頓がしっかりしているというか…。


教室には各種武器が展示されていて、触れる様になっている。

危ないから刃物は刃引きがしてあったり、鎖で繋がれて持ち出せない様になってたりはするけど、普段触れない人には珍しいのかもしれない。

剣を持って、鞘から抜いてみる。

「バランスはいいね。ただ、私には軽いな…」

「ママ、あれ変なのある!」

「うん? へぇ〜。鎧を着てないここの騎士の人もメイスは使うんだ…いや、実践なら着るとか?でも、普段から着てなきゃ重さになれないし…」

「すっごく重そう! …ママ聞いてる?」

「え?うん。 そうだよ。鎧ごと破壊するのが目的だからね。実際に持つと、重さで自分も振り回されるから体重移動に気をつけなきゃいけないし、扱いは難しいよ…何でもそうだけど、単に”使う”のと、本当に”使いこなす”は意味が違うからね」

「ふぇーさすママ!」

「………さすがですね」


「持ってみたい!」

「いいよ、支えてあげるから」

そう言ったのだけど、必要なかったわ。

「ひゃぇっ!?」

ティーがメイスを片手でひょいっと持ち上げたものだから、ピナさんが驚きすぎて変な声を出した。

「お、お嬢様、それ…もしかしてハリボテですか?」

「いえ…」

「お借りしても?」

「いいよー」

片手でほいっと手渡すティーから受け取ったピナさんは本物だってわかってぷるぷるしてる。

まぁ、そういうピナさんも軽々と持ってるんだけどね…。

「お嬢様方の規格外はよーく存じてるつもりでしたが…さすが陛下の…」

とかブツブツ言っててちょっと怖い…。



教室から訓練場へ出ると、何人もが踊るような剣舞を舞ってる。

模擬戦もしてるし、本格的だ。


「おや、アスカ様、ティー様も。ようこそ騎士科へ」

「お邪魔します王子様。ティーからライアン様が誘ってくださったと…。なので寄らせていただきました」

「そうか、ライアンなら……あそこにいるな。きっと喜ぶから呼んでこよう」

「ありがとうございます」

少し離れたところで、身体は小さくてもキレイなフォームで剣を振ってる。 (すごい?)

そうだね、ライアン様はすごいよ。 (ほぉー)


しばらくして王子様に連れられてライアン王子もこちらへ来てくれた。

ティーの姿を見て嬉しそうだから、本当に来てほしかったのだろう。

「アスカ様も来てくださってありがとうございます…」

「いえ、誘ってくださりありがとうございます」

「あの…!」

「どうしました?」

「兄様と、手合わせをしてくれませんか…?」

「ライアン、どうしたのだ急に…。 すまない…突然こんな事を言う子では無いのだが…」

「理由をお尋ねしてもよろしいですか?」

「…兄様は…強いんです。誰よりも…。だから憧れなんです。でも、誰も兄様に敵わなくて…アスカ様ならもしかしてと…」

「そうでしたか…。 ライアン様、強さって何だと思いますか?」

「それはもちろん相手を倒せる事です!」

「確かにそれも一つの強さですね。でも…先程のライアン様の動き。あれも強さですよ?」

「…え?でも兄様にはとても叶わなくて…」

「それはそうですよ。経験の違い、年齢の違い…色々ありますからね?」

「じゃあやっぱり強くなんて…」

「いいえ。御自身の体格をわかった上で、速さを突き詰めようとしておられますよね?」

「どうしてそれを! 兄様にも話した事ないのに…」

「自分に足りない物を自覚し、弱点を補い、強みを伸ばす…諦めたりせずにそれが出来る精神力は、間違いなく一つの強さです。ライアン様はかっこいいですよ」

「……はいっ!」 

このまま突き詰めていけば、兄王子様にだって匹敵するよ。 (ほえー!)

私も同じだったから。ほら、師匠より私のが小さいでしょ? (うん!)



「…アスカ様。剣のみで手合わせ願えませんか?」

「えっと、理由をお尋ねしても?」

「今のを聞いて、アスカ様の”強さ”を見てみたくなったからですね」

「私のですか…」

「どうかお願いします!」

「わかりました! わかりましたから! 王子様が頭を下げたりしないでください!」

「ありがとうございます!」

結局こうなってしまった…。 (え、まさか戦いを避けるために話をしたの!?)

…………。

でも、ライアン様に言ったことは本当だよ? (もー!)













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