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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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事後報告



一週間程あった学園の休みも、みんなと出かけたり、お屋敷でお菓子作りをしていたらあっという間だった。

途中、シャーラが遊びに来てて…。

前回、私達が転移で帰った後の師匠とメリアさんの様子を聞く事ができた。

「お二人とも膝から崩れ落ちてたよ。暫くして立ち直ったら、次こそは! って気合入れてたから、お姉ちゃんは次にこっちへ来る時は覚悟しといたほうがいいよ?」って怖いことを言われて。

何を覚悟しろと!? 私は暫く行かない事を固く決意したのだった。 (それが賢明)


お休みの最終日には学園長がお屋敷に来てくれて、事後報告を受けることができた。

公爵家は当主本人の重罪が発覚した事で、身分の剥奪。長期の禁固刑、その間にドラゴライナ王国へ報告もされて、それにより刑罰も変わるらしい。

「公爵本人が怯えて全てを話してくれたわ。アスカちゃんのおかげよー」と、学園長は上機嫌だった。


サラセニアも貴族籍は失うけど、今回の事の功労者という事で、暫くの謹慎処分で済むと。

公爵もいなくなり、両親も他界していて一人ぼっちになるから、一応親類ということで王家預かりになるそう。

取り巻きも似たような処分らしい。


ただ、親が公爵家との繋がりが深かく、罪の重い家は幾つか潰れたと。

魔法学園の生徒も何人か親の道づれで退学や、謹慎処分。

あまりに行いの酷かった生徒は本人自身も逮捕されているそう。

そういう生徒が召喚科に固まっていたのはあの教師のせいもありそうだな。

魔封じの枷をつけられるから、召喚獣も喚べなくなると…。

そんな奴らに喚ばれてた子達は大変だっただろう。


「召喚科の教師が召喚獣から契約解除された方法って、生徒には使えないかしら?」

「あれは色々重なった結果なので…」

「戦意の喪失、魔力の枯渇、召喚獣側の希望だったかしら…」

「はい。厳密には主が仮死状態に近くないと無理です」

「わかったわ、それはこちらで何とかするわ」

何する気だろう…。ちょっと心配だ。


召喚科の教師、副教師も当然捕まって重い罪に問われてるそう。

私が来る前から色々とあったみたいだし、仕方ないね。

新しい教師もそろそろ学園へ来る目処がついたと教えてもらった。

「それまでの短期間だけアスカちゃんお願いねー。報酬も出るから!」

モルチアナのせいで既にそうなってるからなぁ。今更断れない。


そのモルチアナも、家が降格処分になって子爵家になったと。

賄賂を受け取っていた程度の家は、それくらいの処分らしい。

「ムダで邪魔だった貴族家が幾つも潰れたから、バサルア共和国からの留学生も以前の様に受け入れられるわ」

以前はバサルア共和国からも留学生は来ていたんだ。


どうやら公爵が獣人嫌いで、それに同調してた貴族家が幅を利かせていた事で難しくなっていた獣人の子供達の留学受け入れが復活するらしい。

だからレウィは獣人なのを隠すように言われてたのか。タダでさえ目をつけられる可能性の高い私達の中にいたら…公爵家やその取り巻きから何をされていたか。

レウィに何もなくて本当に良かった…。



「獣人の子供で魔法が得意な子は稀だから、最近は留学の打診も無かったのだけれどね。またコチラから声をかけてみるわ。一人、二人くらいなら来るかもしれないし」

「物理的身体能力のが高くて、魔法は得意としない…でしたっけ」

「そうそう。よく知ってるわね」

「はい…似た人が知り合いにいましたから」

厳密には、詳しいのは獣人ではなく魔族の事だけど。

外見は獣人とよく似た種族も多い魔族の場合は身体能力だけでなく魔力も高いから魔法も得意とする。

前知識として、獣人は魔法が苦手だと思っていたから、魔王になってすぐの頃にびっくりした覚えがある。こっちも同じか…。



最後に気になっていた魔道具関係。

主に、魔道具店”デザイア”関連について。


「デザイアの起こした魔道具の暴走事故は、公爵家に仕組まれたものだった事がハッキリしたわ」

「証拠があったんですか?」

「ええ。実行犯はデザイアオーナーの妻よ」

「図面も盗み出していたんでしたっけ」

「ええ。サラセニアの話の裏が取れたわ」

ティアねえ様に証言してもらう手間が省けたなら良かった…。こんな事にうちの家族を巻き込みたくはなかったし。


デザイアのお店や系列店は、全部サウザンド・ドリームに併合される。

これは、オーナー夫婦が逮捕されたから。

娘二人、つまり魔道具科の先生二人が全ての権利を放棄して、サウザンド・ドリームへ譲渡すると宣言したかららしい。

その方が職人やお店の人も安心だろうからと。

「サウザンド・ドリーム側もそれを受け入れたから、これから魔道具界隈も大きく動くわよ!」

「それは良かったですね」

「ええ。魔道具の技術の停滞は何よりも優先して手を打たなくちゃいけない事だったから」

国が力を入れてきた部分が停滞していたのは痛かったのだろう。

幾つもの技術を独占して、公開していなかったのがかなり影響してるそう。

「うちは魔道具の技術は基本公開してるのよ。当然開発者や発案者に損が無いよう、その技術を使った魔道具が売れれば、売上から決まった額が支払われるから損はないはずなのに…」

確かに広く技術を広めるにはいい方法だし、開発者もお金が入ってくるから新しい事に手をだす余裕もできる。

それを抱え込まれてたら停滞もするよなぁ…。


私も魔界では全部公開してたし。幹部の中から直接職人を育てたりもした。

その人達から街の職人へ…と広げていったからよくわかる。


「二人とも、これからは教師として頑張ってくれるそうよ。今までの挽回もしたいって」

「そうですか。それを聞いて安心しました」

また教師がいなくなる事態になったらどうしようかと思ったよ…。



「アスカちゃん達はまだしばらく学園に在籍してくれるのよね?」

「はい。その予定です」

「嬉しいわ。ようやく落ち着いた学園を楽しんでほしいもの」

「ありがとうございます」

「じゃあ、はいこれ」

ドサッとテーブルに置かれたのは大きな革袋が三つ。

「なんですかこれ…」

「お金よ!」

またこんなに…。

詳細な内訳の書類も渡された。使いみちどうしよう…


学園長は”また明日ねー”と、元気に帰っていかれた。

忙しかったはずだけど、前みたいにぐったりしてないのは憂いが晴れたからかな。


よしっ、私も明日からまた学校頑張ろっと。 (ママは明日授業無いよ?)

……。 (ママが派手にコケた。 第六話は、新生! 魔法学園。お楽しみにー)











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