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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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想い出とお酒



ツキに直接会いに行こうかと思ったのだけど、大人しい子だったのを思い出して、リコを呼んだ。

「ママ、こっちは久しぶりね?あの子の頑張りみてくれた?」

「うん。凄かった…そのお礼も伝えたいし聞きたいこともあるから付き合ってくれる?」

「ええ。でもどうして私まで?」

「ほら、ツキって大人しい子だったから…お母さんのリコが居てくれたほうがスムーズかなと思って」

「そう…でもあの子もママに会いたがってたから行けば喜ぶはずよ」

「それなら嬉しいけどね」

城下街から門を抜けて外へ出るとそこはすでに大草原で… (すっごいきれー!)

本当ね…。見える範囲には戦いの面影さえないほど。


「ツキー! ママが来てくれたわよ」

リコがそう呼んだ瞬間、ぽふっと抱きつかれた。

「…ママ」

「ツキ、頑張ってくれてたのに来るの遅くなってごめんね」

ふるふると首を振りながらもくっついて離れなくて。

そのまま、草原に座り、ツキを抱きかかえたまま話を聞くことにした。


「まずはお土産だよー。食べてね」

ストレージにいれてたプリンを渡してあげる。

「ありがとう…」

「リコとティーもね」

「ありがとう」

「ママのプリン!」

相変わらず美味しそうに食べてくれるなぁ。ゆっくり食べてる姿が可愛い。


再生のお礼を伝えて話を聞きたかったのだけど邪魔したくないな。

リコも美味しそうにプリンを食べてるツキを見かねて、現状の報告は代わりにしてくれた。

お城周辺から始めたのは食料事情を考えてくれての事だった。

「私達は、ママから美味しいものを貰ってるから、食べ物の大切さは良くわかってるのよ」

「ありがとう、本当に助かったよ。作付けしてるのは?」

「知ってるわ。ものすごく遠慮がちにしてるようだけど大丈夫なの?」

「再生してくれたものを壊しすぎないよう考えてくれてたみたいでね、どれくらい広げてもいいのか、図りかねてるみたい」

「そうなのね、じゃあ、目印になるよう一定間隔で低木を生やしておくわ」

「助かるよ」

作付けしていい範囲は低木で囲んでくれるらしい。

それならわかりやすい。



「…ママ、これ美味しい。お友達にもあげていい…?」

「他の精霊の子?」

「うん」

「それはツキのだからツキが食べて。みんなの分は別に渡してあげるから」

「ありがとう…!」

残して渡そうとするとか、優しい子だなぁ…。



リコが言うには、他の国、他の地域も少しずつ精霊が戻ってきて再生が始まってるらしい。

自然の再生力の凄さって何かで見た気がするけど、精霊はその上をいく。

上手く共生していければ一番なのだけどな。 (心配?)

そうだね、人の欲って言うのは際限が無いから。

この子達が不幸にならないよう私も気をつけないと。

リコは、気に入らなければ精霊はすぐにその土地を離れるだけって言ってるけど、そうなったら豊かな土地を奪おうとする奴が現れるから…。 (やれやれなの…)

本当にね。


「あ…いつもの人くる…」

「いつもの人?」

頷くツキの視線の先には誰もいない。あ…そういう事か。

「シャーラでしょ?」

「やっぱりバレちゃったか…今日は知らない精霊様もいるねー」

スーッと姿を表すシャーラ。


「シャーラもこの子達が見えてるの?」

「うん?精霊様でしょ?当たり前だよ、ボクも契約してるもん」

「初耳!」

「闇精霊様に力を借りてるよ。精霊様と当たり前に会話してる、今のお姉ちゃんには隠す必要ないし?」

まさかの闇精霊! でも職業柄納得だわ。 (またややこしい事に!)

シャーラは契約してるとはいえ、あくまで少し力を借りられる程度らしい。

前に母さんに聞いた契約と同じだな。

精霊の姿は見えても、会話等は出来ないと。


「話せるの羨ましいよ…お礼伝えてくれる?こんなにキレイにしてもらったから」

「わかったよ。でも声は聞こえてるから伝わってるよ」

「そうなの!? ありがとう、精霊様」

「…お仕事だから」

「お仕事だからって」

「そっか! ボクも頑張らないと!」

「あのね、シャーラ…少し大切な話があるんだけど…」

「うん?お姉ちゃんがそんな改まって話とか、どうしたの」

お姉ちゃん…か。ほんとゴメン…



ツキ達と少し離れて、ユウキとスピネルについて一通り説明。

「ごめん! シャーラの気持ちわかってたのに…」

「………」

「闇精霊の子がシャーラと話をつけるってこっちにきてるの」

「闇精霊様と話せるの!?」

「え? う、うん。そうだけど…」

「ユウキはやっぱりすごい! そんな上位の闇精霊様と対等な契約してるなんて!」

これは一体…どうなってるの!? (予想外の展開にママ混乱中!)



早くユウキとスピネルに会いたいって言うシャーラを取り敢えず落ち着かせて…。


まずはツキに、他の精霊の子達用にプリンやお菓子をたくさん渡してあげた。

みんなに渡してくると言って、リコと一緒に手作りの木籠に入れて持っていった。

枝ですぐに籠を作れるのはさすが樹の精霊だなぁ。 (器用!)


見送る余韻もなく、急かすシャーラに引っ張られて、お城へ帰還。

修羅場になるのかどうなるのか…私は恐ろしいよ。


ユウキの元へ案内したら、部屋から締め出された。

「自分の事だから、ここからは姉ちゃんに頼らず、ちゃんと決着をつける」

って、一丁前に男の顔して言うものだから逆らえなくて…。 (ママが…負けた…?)

勝ち負けなの? (一生言わないセリフ第一位)

今言ったじゃん。 (はっ…)


部屋の外にいたのだけど、落ち着かなくて…城内をフラフラ散歩。

メリアさんに報告しにいったら、忙しいみたいで…取り次いでもらえず、魔剣師団の人に謝られてしまったし。

する事が無くて手持ち無沙汰。

「あら?貴女この間の!」

「お久しぶりです。あれから身体は大丈夫ですか?」

「全然平気! 長めに休暇も貰えてるからね」

前回、皇太后様と一緒に帰還した魔剣士団の人。

私が気持ちの整理をつけるきっかけをくれた…名前聞いてないや。 (ママはいつもそうだよ?)

だって、走り去られちゃったし…。 


「まさか勇者様だったとはねー。帰ってきて話を聞いた時はみんな大騒ぎだったのよ?」

「あはは…」

「あれから団長とはどうなったの?お姉さんに話してみて」

「どうにもなってません! 久しぶりに今日こちらへ来た所ですし」

「なーんだ…」

つまんなさそうにされても…。


暇してるなら〜と、魔剣士団の食堂で一緒にお茶をする事になった。

「旧騎士団の食堂も開放されるようになったからそっちでもいいよ?」

「いえ…思い出があるのは魔剣士団の食堂ですから」

「そうよね。狭くてもこっちのが落ち着くからわかるわー」

思い出と言っても酔った師匠に絡まれた、とかばかりだけど。 (お酒弱いのに)

本当によ。でも…大切な場所なんだ。


食堂には、他にも前回治療した人達がいて、またお礼を言われたり、勇者様にと、色々もらってしまった。

ティーなんて、みんなに大人気で、好きなもの好きなだけ頼めーって言われてる。 

「フフフっ、じゃーメニューのここからここまで貰おうか」

またどこで覚えてきたのやら…。

「おう! 頼め頼めー」

みんなもノリがいいな。まだ昼間なのに酔ってる人もいるし。

長期休暇の人もいるんだっけ。


「誰!?アスカちゃんにお酒持ってきたの! 酔わせてお持ち帰りしようとか考えてるなら私が許さないよ!」

そんな大声で怒らなくても。私酔わないから…。

「あ、私です。団長といつもそれを飲んでたって聞いたので…お好きなのかと」

「私は飲みませんよ。師匠が一人で飲んでただけです」

「そうなの?相変わらずね、団長は…」

「でも団長ってばアスカちゃんにだけはデレッデレになるんだよ?」

「あ、それ聞いた! 実際に見てみたいよね!」

あ、この気配は… (噂をすればー)


「…お前達、言い残す事は?」

「「「「ぎゃーーー」」」」

「誰が私のアスカを酔わせてお持ち帰りするって!?あぁ!?」

「誤解! 誤解ですから! 団長ストップ!」

「やかましいわ! どいつだ?正直に言えば他は見逃してやるかもしれんぞ」

一斉に一人を見る魔剣士団。見捨てるの早っ!!


「みんな酷い! 団長、本当に誤解なんです!」

「あぁん?言い訳なら訓練場で聞いてやる」

「ひぃぃぃ!」

「師匠、待ってください」

「あぁ?お前もコイツを庇うのか?」

「師匠はいつも訓練が終わると、私とここでのんびりとお酒を飲んでましたよね?」

「あぁ。お前は飲んでくれなかったが…」

「見てください。このお酒、師匠がいつも飲むお酒です。つまり、思い出のお酒だからって持ってきてくれたんですよ?」

「……それがどうした?」

「その、のんびり一緒に飲んでた”思い出のお酒”を怒った師匠、なんていう違う記憶で上書きさせないでください…」

「…飲むか」

「はい。注ぎますね」

「ああ、頼む」

良かった…止められた…。 (師匠こわっ)

誤解なのに、泣きながら師匠に引きずられていく女の人とか見捨てておけないよ。


お酒を注ぐと機嫌の良くなった師匠は、いつも通り2杯ほど飲んで寝てしまった。

「…助かった…」

「命の恩人! 魔剣士団の勇者様だ…」

私は魔剣士団の勇者になったらしい。 (あれはそうなるの!)


 







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