お休み
急遽お休み期間に入った学園。
一日目は、先ず課題として提出していた魔道具(壊)を学園長に届けて、威力過剰についての責任は私にある旨を伝えた。
でも、私に責任の追求がされる事は無かった。
既に解決済みって言われて…。魔法を撃たれたサラセニア側の証言でカタがついたと。
ライリー先生は一週間の謹慎処分になったらしい。
「根が素直だから、お咎めなしにすると、引きずりそうなのよあの子」と学園長。
私も何もないのは困ると言ったら、魔道具が欲しいと言われた。
「それ…可愛いのよ。魔石は渡すから作って?アクセサリーだしそれなら大丈夫よね?」
光る試験管、欲しかったらしい…。それとも、悔いてる私への優しさかな。
その日のうちに作って届けた。せっかくだし、王子様二人と王女様の分も。
午後は、ピナさんの勧めでアキナさんに今までの報告をしに行った。
報告を聞いたアキナさんは大爆笑。
「予想以上に早かったよー。厄介事が片付いたなら、国交もしやすくなるね! ありがとう!」
と、喜んでもらえたようで何より。
アクシリアス王国へも伝えておいてくれるとの事だからお願いした。
ドラゴライナ王国へ行ったついでにお祭りの景品も補充。
お店を見に行ったら、未だ長蛇の列。
スノウベルさんが、ステッキ魔道具の光でお客さんの誘導をしてたのはびっくりした。
「そこ…はみ出ない」
列を乱すと光の雪だるまが飛んでくるから、子供たちが大喜びしてわざとはみ出てる。
スノウベルさんもわかってて楽しんでるようだった。
二日目は健全なデートの仕切り直し。 なんせ監視にピナさんがついてるし…。
王都の街へ行く外出許可が貰えたから、今回はそちらへ出向く。
王都にあった、サウザンド・アームズの本店で、例のトロッコ、トローリーに試乗してみた。
「おっそいわね! 迫力がないわ…」
「リアはジェットコースターと比べてる?」
「違うの?似てるわよ?」
「街での移動用だから、安全第一だよ」
「私はこれくらいでいいよー。安心して乗れる!」
ティアねえ様は絶対ジェットコースターに乗せたらだめだな。
値段は、金貨十枚から。オプションやカスタムパーツの追加で天井知らず。
最近の流行りは幌タイプの屋根らしい。コンバーチブルかよ…。
マジックボードの方はデザイア系列の店が閉まってて乗れなかった…。修理等の対応だけはしてるそう。
これはまぁ仕方ないんだろうな。
劇場もあったのだけど、誰も興味を示さなくて入れなかった。
ちょっと見たかったなぁ…。未亜なら興味を示すかと思ったのに。
「冒険はリアルで十分だよ?恋愛ものならお姉ちゃんと見たかったかも…」
王妃様の魔王討伐、凄そうなのになぁ…。
「違うってわかってても、魔王討伐なんて見たくないわ…」
「うん、なんかやだよねー」
「お姉ちゃんとは違うってわかってても…ね」
私と重ねてるのか。今も魔王だもんな…ありがとう。
そしてこっちにもあったよ…ネオンっぽい看板があるお店!
「お嬢様、ダメですからね?」
「行かないから!」
前のだって私が望んで入ったわけじゃないんだから。
「陛下なら嬉々として”全員面倒見るよ!”と、行かれますから…不安です」
一緒にしないでほしい…。というかアキナさん、どれだけなの!?
そのピナさんは、実は夕波王国の貴族の娘さんらしい。
キッチンで一緒に料理をしていた時に話してくれた。
「うちは貴族家ですが、父が慣れない商売に手を出し、失敗しまして…」
どうやら母さんの姉、ハルナさんに借金をしてしまい…困っていた所を遊びに来ていたアキナさんに拾われたと。
”借金は肩代わりしてあげるからこの子は貰ってくねー”と…ドラゴライナ王国に連れてこられたらしい。
奥様の一人なのかと思ったらそう言う訳ではなく、メイドとして恩を返すと決めて今に至ると。
「陛下は素晴らしい方です、恩も返し切れないほどあります。ですが…女癖が悪すぎます!」
嫁にならないかと何度も言われたらしいけど、それは断ってるって言ってた。
ただ、嫌っているとかそういう訳ではなく…
「せめて借金の分は働いてお返ししないと、求婚をお受けしたとしても胸を張る事ができません…」
と、満更ではないらしい。女心は複雑だ。
ただ、戦闘力が高いことに関しては教えてもらえなかった。
聞いた時にピクッてして一瞬殺気を感じたから只者じゃないのは確か。
家の秘密らしい。無理に聞くつもりはないけどね。
三日目。
「姉ちゃん、頼みがあるんだけど…」
リビングでのんびりしていたら、元気のないユウキが一人でやってきてそう言う。
「どうしたの?」
「スピネルとケンカした…」
「はぁ!? 原因は?」
「昔の話をしてて…シャーラの話題になってさ」
「……ヤキモチ?」
「多分…。 話をつけるから連れてけって聞かなくて」
「ユウキに渡した魔道具だと、一人しか飛べないか」
「そうそう」
弟夫婦の一大事だ…何とかしなきゃ。 (もう夫婦でいいの?)
みんなそんな認識じゃない? (最近はピナさんも呆れてあまり言わなくなった!)
リア達にも相談したのだけど、よその夫婦喧嘩に巻き込まれたくないって一蹴された…。 (夫婦認識だった!)
でしょ?
そんな訳で、ユウキとスピネル、私とティーでシャーラに会うために転移。
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「流石の師匠も、またここに居たりはしないか…」
「前は待ち構えてたよねー」
「だね」
「…ユウキ早く」
「わかってるよ。姉ちゃん、シャーラの居場所わかる?」
「待ってね…」
探索を城内に広げて… あ、師匠とメリアさんだ。 (そっちちゃう!)
はい…。 えっと…あれ、いないな? (仕事かな?)
かなぁ。
「ユウキ、城内にはいない。任務かも」
「マジか…どうしようかな」
「……早く話つける」
「メリアさんに聞いたらわかるかもだから、そっちへ行こうか?」
「そうだな。姉ちゃんお願い」
スピネルから不機嫌オーラがすごい。会話もいつも以上に片言になってるし…。
メリアさんたちは、前にもお邪魔した私室にいるみたいだから、そこへお邪魔するか…。
廊下を歩いてたら、メイドさんや魔剣士団の人にびっくりされて、取り次いでもらえた。
「最初から誰かに頼めば早かったな」
「そうね」
「ママ…」
「ん? って師匠ぉ…!?」
「アスカぁ!!!」
物凄い速さで突っ込んできた師匠に飛びつかれてそのまま押し倒された…。 (わぁお!)
「本当にアスカだな?もう来ないのかと…心配したんだぞ!」
「すみません師匠、忙しくて…顔を出せずにすみませんでした」
「あぁ……なんだろうな?安心したら腹が立ってきた」
そんな理不尽な…。
「アスカはちょっと来い!」
「いや、師匠! せめて用件を聞いて…あぁー」
助けてー!
「ママを体当たりで押し倒せたり、引きずれるって…相当ヤバいの。 連れて行かれたよ?」
「あの人は普通じゃない。理外にいると思ったほうがいいよティー」
「ママの師匠やべー」
「っはぁ…はぁ…アスカっ様は…?」
「メリアさんそんなに息を切らして…大丈夫ですか?。姉ちゃんなら魔剣士団長に連行されていきました」
「またアリッサは!!」
「それより、メリアさん。お願いが…」
「それより!?」
「ママはティーがみてくるからーユウキのお願い聞いてあげて」
「はぁ…もう。せめてお会いしたかったです。 どうされましたか?ユウキ様」
「シャーラがどこにいるか知りませんか?」
「あぁ、あの子なら…」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「師匠、歩きますから! 引きずるのは止めてください」
「私がどれだけ寂しくて心配したか、アスカお前にわかるか?」
「…それに関しては本当にすみませんでした。あんな会話の後だったので、少し気まずかったのもありまして…」
「あぁ? それはあれか?多少なりとも意識してたという事か?」
「…はい」
ようやく馬鹿力で引っ張られてた腕が離される。
「…バカ弟子が!」
「はい…」
抱きしめてくれた師匠は少し、ほんの少し優しかった。
「忙しかったと言っていたのは?」
「それも本当です。叔母が女王になってからの建国千年祭でして、それに参加したり、今は訳あって隣国の魔法学園に通ってます」
「そういえば、お前はドラゴンの血を引いていたのだったか…千年とかスケールがおかしいぞ」
「ドラゴンスケールですから…」
お城の窓に持たれ掛かりながら話す師匠はちょっと絵になる。
「ママー」
「ティー、どうしたの?ユウキ達は?」
「ユウキ達はメリアさんにシャーラのこと聞いてたよ」
「ん? なんだ、シャーラに用事だったのか?あいつなら周辺調査にでてるぞ」
「何かあったのですか?」
「いや、見てみろ」
師匠が窓の外を指差す。
窓から外を覗くとあたり一面、緑に溢れてる。あんなに荒れてたのに…
「うわぁ…すごっ! ママ、ツキ達かな?」
「そうだろうね、まさかここまで回復してるなんて…」
「城の周囲から回復してくれたおかげでな、土が超えてるから作付け等もできるようになってきてる」
「そうですか…食料が少しでも増えると楽になりますね」
「あぁ。再生の規模と、速度を日々調査してるのがシャーラ達だ」
なるほど…。調査ならシャーラの右に出るものはいないだろうし。 (そんなに?)
うん。そっちのプロだからね。 (かっくいい!)
そうだね、シャーラは凄いよ…。
私もシャーラには謝らないとな。気持ちを知っててユウキとスピネルをくっつけちゃったんだし。
「お前は精霊と話せるんだったよな?」
「はい、確認します?」
「そうだな…国の事業として作付け等を行っているのだが、加減が難しくてな?」
「わかりました、そういう事でしたら任せてください」
「頼む。せっかく来てもらったのに仕事をさせてすまないな」
「いえ、私言いましたよ?出来る事はしますって」
「そうだったな…」
ツキにお礼も言いたいし! (ティーも行くー)