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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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王子と王都の街へ



どうしよう。今日はリア達もお休みだからお屋敷にいる。

急遽、私が呼び出されたから、お出かけの予定が流れて不機嫌だったのに、さらに…?

ヤバいっ…だれか、頼れる人は…?

ユウキは…朝から授業でギルドか。あぁもう…

「誰か助けて…」

「アスカ様?どうかされたのかい?」

「ふぇ…?」

顔を上げると、目の前にはさっき話題に上がってた本物の王子様。ちょっと久しぶりーとか思ってる場合じゃない!

帰ったら大変なことになりそうなのに…。


「助けが必要なら力になれるかもしれんが…」

声に出てた…?

「えっと…いえ…王子様を頼るわけには…」

「遠慮はいらない。母上からもフォローするようにと言われているし、すでに学園のために功績を上げてくれたのだ。出来る限りのことはするつもりだ」

そうは言われても…。

帰ったら家族に叱られそうだら匿ってほしいと言えと?


「飲み物でも用意させよう」

そういえばまだ食堂にいたんだった。

「ありがとうございます…」

「かまわんさ」

メイドさんにお茶を頼むと、向かいの席に座る王子様。


「話しにくい事なら無理には聞かぬが…」

「はい…個人的な事なので」

「そうか…」

何これめっちゃ気まずい…。


しばらくの沈黙。

お茶を持ってきてくれたメイドさんも、そそくさと去っていった。

「そういえば…すごい魔法を使ったと聞いたが」

「はいっ…すみません…」

「責めているわけではない。ちょうど座学の最中でな、見ていないから人伝に聞いた話しか知らんのだが…、どのような魔法だったのだ?」

「氷の槍を…空に」

「空を覆い尽くすほどだったと聞いたが…」

「はい…」

「噂ではなく真実という事か…。凄まじいな」

「あの、私からも一つお尋ねしても?」

「かまわないよ」

「こちらの…、戦闘の第一線で使われている魔法の規模ってどれくらいなのですか?」

王子様は少し悩んだ後、答えてくれた。


「僕が使える魔法は、得意とする炎の魔法でも同時に2つ出すのが限界だ。サイズはこれくらいだな」

手で作ってくれたサイズは…嘘でしょ? サッカーボールサイズ!?

「同時に2つ出せるだけでも普通は驚かれるのだがな…アスカ様の話を聞いた後では霞んでしまうな」

そう言って笑う王子様は、自虐的になってる訳でも無く、ただ面白いって感じで笑ってる。


「教えて下さりありがとうございます」

「いや、少しの差で負けていると言うならプライドが邪魔をしただろうが、そんなレベルの話ではないからな」

なんかごめんなさい…。

「アスカ様がドラゴライナ王国の継承権一位の立場でなければ求婚していただろうな…。それほどの力と美貌、そして謙虚さを兼ね備えた女性はまずいない」

今その手の話題は本当に堪忍してください!  

継承権様々だよ…。助かった…。

ありがとうアキナさん。



しばらく王子様とお茶を飲みながら魔法や魔道具の話をしていたら、ストレリチア様が食堂へ駆け込んできた。

「兄様! やっと見つけましたわ! アスカ様もこちらに居られましたか! お二人とも早く来てください!」

「何かあったのか?」

「そんな悠長な…今からとんでもないことになりますよ!」

「そうか…、わかった」

いや私は何もわからんのだけど…。 (公爵家への家宅捜索が始まるの!)

はい?何でそんな事に。 

相手が王族に連なる貴族大家だから下手な事できないんじゃ? (でも騎士も出動準備で大忙しだよ)


…取り敢えずはストレリチア様について行くか。 (それがいいの)

「ストレリチア、説明してくれ。何が起きている?」

移動しながら王子様も現状の把握をするらしい。

「驚かないでくださいよ? 公爵令嬢が自白しました。その上で公爵様を国家簒奪を計画しているとして告発しました」

「なに!? まさか! そんなことがある訳が無い…」

「いえ、信じられないかもしれませんが事実です。自身が学園でしてきた事の自白も、こちらとの調べに間違いが無いそうですから」

「あの傲慢な公爵令嬢が…何か裏があるのか…?」

「そこまではわかりませんが、母上に土下座して泣きながらすべてを話したと…」


さっき言ってたのってまさかこの事!? (うん。今は家宅捜索の手引きをするために公爵家へ向かってる)

ティーは何してるの? (リアたちに報告しに行くつもりが凄いことになってきたから!)

報告されてないのは私にとって朗報だわ。 (むー。今は悪ポエが裏切らないか監視!)

そう…。 (あっ、学園長が潜り込ませてるって言ってた使用人に接触した!)

何?このティーによるドキュメンタリーLiveみたいなのは。

安易に接触して大丈夫なのかな。公爵本人にバレたら… (ちょっと前にお城に呼び出されてるよー)

妨害されないように? (そうそう。 うわっ、本当に地下に案内した!)

本気だったってことか。 (悪ポエの行動を怪しんだ使用人の人が慌ただしくなっちゃったー)

それ、ダメじゃないかな?



ティーから報告を受けてる間に私達も学園長室に到着。

「母上、何事ですか?」

「やっと来たわね! ライオネストは公爵家へ向かって! 現地で先行してる騎士に合流し、指揮しなさい。私は今から王城へ行くわ」

「母上、私はどうしましょう?」

「好きな方について行っていいわよ」

「では、兄様の方へ。アスカ様も一緒に来てくださいませんか?」

「私もですか!?」

「そうね、それがいいわ…お願いできる?」

学園長、もとい王妃様にお願いされたら断れないよね…。



今度は王子様の案内で、学園を出て…馬車に乗り、学園街も出て…。

私は初めて景色の見える馬車でグリシア王国の王都へ入った。


おぉ…本当にトロッコみたいなの走ってる! 一応二人くらいなら乗れるんだ…。 (おもちゃみたい…)

車と比べちゃうとね…。 (一人で乗ってるアレは可愛い!)

アレがデザイアの売ってるっていう魔道具かな。本当にキックボードみたいだな…。 (楽しそう!)

確かに子供ウケは良さそうなデザインだね。乗ってるのはオジサンばっかりだけど。 (通勤用みたい…)

お仕事用とかそんな感じっぽいね。 

荷物を運んでる人もいるな。 (大きな四角いカバン背負ってる人?)

うん。 キックボードに看板もつけてる。なになに…”料理の配達いたします”かぁ…。ものすごく聞いたことあるサービスだけど、突っ込まないぞ私は! (ウーパールーパー!)

それは生き物な? (キモカワ)



「アスカ様も乗り物は珍しくて気になりますか?」

「はい…そうですね」 (トロッコは珍しい)

うん。確かにリアルで初めてみた。

私が気になると答えたのが嬉しかったのか、ストレリチア様が乗り物の説明をしてくれる。


「アチラはトローリーと言いまして、通常は二人乗りです。大きいものでしたら六人ほどが乗れるものも」

めちゃくちゃでかくないのかなそれ…。 (あ、あれだ!)

どれ!? …トロッコ電車やん! 二人乗りのが三つ連結されてるだけ!

「ちょうど走ってますね。おそらく送迎用でしょう」

「なるほど…」

あれ以上繋ぐと引っ張るだけの出力も足りないし、曲がれないんだろうな。 (切実…)


「見た目のカスタムパーツなども豊富で…あ、あれなんか可愛いです!」

ストレリチア様が指差す先には… (センスー…汗)

パラリラパラリラ〜♪って聞こえてきそうな見た目じゃん! (ユウキは好きそう…)

あぁ…有り得そう。 

派手な装飾に、車体からはみ出る大きな背もたれ。ピンクのファイアパターンの塗装とか…。 (でも乗ってるのは女の人)

こちらの美的感覚なのかもしれないね。 (見ようによっては可愛いかも…?噛めば噛むほどみたいな)

そんな珍味みたいな…


「アチラがデザイアのマジックボードですね。一人乗りしかありませんが、小回りは利くので皆さん使い分けてます」

「そちらもカスタムパーツとかはあるんですか?」

「あったら、売れる筈なんですが…」

「無いんですか!?」

むしろイジるならこっちじゃないの? (儲かりそうなのに…)

だから若い子受けが悪いのかな…。つまんないし。 (なるほど!)


「公爵家がおかしな装飾は認めない! と、頑なでして…」

頭が硬いのか、美的センスの違いか…。 (どっちもありそう)

「カスタムしてレースとかしたら楽しそうなのに…」 

「レースですか!?確かに…」

あ、声に出てた…。 (迂闊…)

ごめんて。



「ストレリチア、そろそろ騎士と合流するから話はそこまでだ。アスカ様も巻き込んでしまってすまない…」

「はい、すみません兄様」

「は、はいっ」

公爵家のお屋敷近くで馬車を降りる。

「あら…、うわぁ…あれって…」 

ストレリチア様が心底嫌そうな声を上げたな…。 (悪ポエだ!)

まだその呼び方なの? (定着してしまいました)

左様ですか。本人には言わないようにね? (はーい!)











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