悪役令嬢は考える
翌日は、授業は無かったからお屋敷に居たのだけど、朝からまた学園長室へ呼び出された。 (常連さん)
何も言いかえせない…。今回は叱られる可能性もあるし。
ノックして学園長室へ入ると、知らない人が三人ほど…。
え、誰? (知らなーい! 服飾科の先生でもないよ)
「アスカちゃん、よく来てくれたわ。そちらへ掛けて」
私がすすめられて座った、向かいのソファーに座る三人は明らかに怯えてるから、魔力に敏感なのかな?
上座のデスクに座る学園長が、見かねて説明してくれた。
「この三人は副学園長よ」 (トップ大集合!)
これまさか、私は退学とかそういうアレ!?
三人とも挨拶をしてくれたのはいいのだけど、怯えてるせいもあり、まともな会話にすらならない。
名乗ってくれた名前すら聞き取れなかった。
魔力を隠蔽したほうがいいのだろうか。
「アスカちゃん、質問いいかしら?」
返事次第では…って事かな。
「はい…」
「ドラゴライナ王国にはアスカちゃんから見て強い人っている?」
「勿論です。 女王様のアキナさんやその奥様方、親衛隊の人達…と把握できないくらいに沢山みえますね」
学園長はその辺りのことは知ってるはずよね? (うん。王妃様に聞いてるはずだよ)
「わかったかしら?貴女達がどんな相手を敵に回そうとしていたかを」
「「はい…」」
二人の女性が震えて泣き出したのだけど…。
え、なに?敵対しようとしてたの? (バカすぎるの!)
「学園長…本当に我々は友好を結べるのですか?」
「それは私達次第よ。敵になってしまうのか、友好を結び心強い味方になるのか…」
「そう…ですね」
「貴女達二人にはしっかりと責任をとってもらいます」
「…どうなるのですか?」
「まさか…引き渡し…」
私は何を見てるのかな…。退学とかそんな話ではなさそうだけど、もっとヤバい話になってない? (うん…)
学園長が人を呼ぶと、騎士らしき人達がドカドカと学園長室へ入って来て、女性二人を連行していった。
「すみません…彼女達を抑えられなかった私にも責はあります」
「そうね…当然私にも責任があるわ。だからこそ、これからが大切なの」
「はい…」
学園長の言ってた、公爵家の息のかかった二人ってのがさっき捕まった人、残った男性がまともな人…ってことでいいのかな? (たぶん?)
「ありがとうアスカちゃん。おかげで早期に学園の掌握が出来そうだわ」
どういうこと!? (第二話がリアルに…学園征服…)
私じゃないからね? (一端は担ってるの)
そんなことは… (ない?)
とはいいきれないかも…? (ほらー! 三話は公爵家の滅亡!)
出来たら学園長は喜びそうね?
結局、何がどうなってるのか…詳細がわからず悩んでいてたら、学園長が説明してくれた。
魔法科で私が使った魔法は、学園内どころかグリシア王国全体へまで影響したらしい。 (あれが!?)
そこまで!?
”ドラゴライナ王国から来てる継承権第一位の王族はグリシア王家と懇意にしてる”その噂だけで、今まで散々姑息な妨害をしてきていた公爵家や、その息のかかった人が警戒して、大人しくなるくらいには影響が出てるそう。
副学園長の二人も私の展開した魔法を目撃して、学園長に助けを求めて来たと。
公爵家も怖いけど、それよりもあの魔法を使える相手を敵に回したくないって…。
私、魔法を展開しただけだよね? (攻撃された悪ポエの話が出ないの)
確かに。あの令嬢なら即、行動を起こして魔道具科の先生を糾弾してそうなものなのに。 (大人しくしてる)
どういう心境の変化だ…? (ちょっと色々と調べてくるの)
気をつけるのよ! (はーい!)
学園長室を出た私は、未だ頭の整理ができないままだ。
私があの時使った魔法が国を騒がすほどの威力?
こちらの魔法ってそんなに小規模?
師匠ならあれくらい余裕で躱すよ? (マジで!?)
うん。 魔剣士団長は伊達じゃない。 (ママの師匠もやべーの!)
私の師匠だしね! (会いには行かないの?)
うっ…行かなきゃ…ね…。
「あの…」
ん? 今、私呼ばれた? (ママ後ろ!)
また?
振り返ると…
なんで私この人に呼び止められた? (悪ポエきたー!)
「……」
「どうしました?」
「…昨日は、助けていただいてありがとうございました」
深々と頭を下げる令嬢。 私、助けたっけ? (結果的に?)
まぁ、そっか…。
「気にしないでください。お怪我は無かったようで良かったです」
「はい! それはもう。助けていただいたので…」
珍しく取り巻きもいないね。 (そういえば!)
お礼をわざわざ言いに来てくれた…えーっと、名前なんだっけ? (悪ポエ!)
それティーのつけたあだ名だよ! (えっと…えっと…あった! サラセニア!)
ありがとう。そうだったね。 というか、どこにいるの? (公爵家!)
何してんのよ…。 (副学園長に何をさせようとしてたのか調べたくて)
あぁ…。 (でも見つかんない! 捕まっても詳細は話してないみたいだし)
どうせろくでもない事でしょうね…。
「あの…アスカ様?」
様!?どうした! 変な物でも食べたの!? (なんかイヤーな予感)
「私に何か御用でしたか?」
落ち着け私。取り乱したら思うつぼかもだし。 (うん、それがいいの)
「……えっと…少しお話を…お時間をいただけませんか?」
話すくらいならいいか? 前の様に取り巻きを連れてて威圧的って訳でもないし。
落ち着いて話すために、場所を変えたいと言うサラセニアについて行き、移動した先は学園の食堂。
まだお昼には早いから生徒はチラホラとしかいないし、好きな場所へ座れるな。
お昼に向けて忙しく働いているメイド姿の人のが多いくらい。
窓際の席へ案内されて向かい合って座ったはいいのだけど…
「……」
うつむいたまま、何も言わないな…どうしたらいいのだろう。 (……じとー)
私はなんでティーにジト目をむけられてるのかな? (だからいったのに!)
何を? (悪ポエの、ポエムと同じことしてるーって)
それは仕方なかったからだし、そもそもあれは王子様でしょ? (ママはわかってない!!)
なんで怒られるん…。
「アスカ様!」
「は、はいっ!」
びっくりしたぁ…。突然大きな声を出すのはやめて欲しい。
「…先程、学園長先生…いえ、王妃様に王太子殿下との婚約の辞退をお願いしてまいりました」
婚約ってそんな簡単に取り下げたり出来るのかな? 王妃様や陛下は乗り気じゃなかったから喜んでるでしょうけど…。
「はぁ…それは、良かったのですか? 王子様と少し話をしただけの私に怒るくらい想っておられたのでは…」
「あの時は本当に申し訳ありませんでした…。 私は愚かで…何もわかっておりませんでした。本当の王子様が何たるかを!」
いやいや、本物だよあの方。
サラセニアは王子様について語ってくれるのだけど、なーんも入ってこない。
そもそも、なんで私は敵の中ボスみたいな人から王子様について語られてるのか…これがわからない。
「……というわけでですね、本物の王子様というのは、ヒロインのピンチに颯爽と現れて、いともたやすく助け出すのです。それでいて、力を傲ることも、恩を着せることもしないんです!」
お話とかの王子様ならそうかもね。 (はぁぁぁ…)
なんかうちの子にすっごいため息つかれた!?
「…今回、初めてわかりました。私は王子様に憧れて…理想の影を追いかけていただけだったと。 そして私自身は公爵家の令嬢という立場しかなく、それを傘に傲慢に振る舞い、他者を見下して…。とても本物の王子様に釣り合うような女ではありません…」
「そうですか…。 でも、それに自分で気がつかれたのなら変わる事はできませんか?」
「えっ?」
「”今まで”が間違っていた、そう気が付かれたのなら”今から”は、自分の理想とする女性になれる可能性があるのではありませんか?」
「こんな…こんな私にまだチャンスはあると?そう仰ってくださるのですか!?」
「間違いに気が付かないままだった時に比べたら、その可能性は高いのではないかと思いますよ?」
「…っ! ありがとうございます! 必ず! 必ず王子様に釣り合うような女性になってみせます」
「はい、頑張ってください」
元気が出たみたいだね。ここへ来たときのような思いつめた様子はなくなったし。 (しーらない!)
「もう一度、私は王妃様の元へ行ってまいります。私が正しいと、そう思える行動を取るために…一歩を踏み出すために!」
なんの事やらわからないけど、深々と頭を下げたサラセニアは食堂から出ていった。
何だったのだろう。理想の王子様とやらを語られただけなんだけど…。 (ママさぁ)
うん? (鈍いにも程があるの!)
えー…。あの会話で何を理解しろと。 理想の王子に共感しろって?
申し訳ないけど、私はそんな夢見がちじゃないよ。 (ある意味現実は見えてないの!)
言ってくれるじゃない。 (何度も言ったの! ポエムの一番最初に書かれてた王子様の行動をママはなぞったって!)
だからそれは… (惚れられたよ?)
………は? いや、はぁぁ?意味がわからないよ!
確かに助けたといえば助けたね。
ただ、それは私の作った魔道具で人が傷つくのも傷つけさせるのも止めたかったからで…。 (それはママの理由!)
それはそうだけど。 (助けられたほうはそんなの関係ない)
…言いたいことはわかるよ。 (しかも、釣り合わないからって身を引こうとしてたのを、頑張れ! 諦めんなよ! って応援した…)
相手は、グリシア王国の王子様でしょう。元々婚約者だし。もう一度婚約者にしてもらいに行ったのでは? (ママ…)
呆れたような声で呼ばないでくれる?地味に傷つくから…。 (リア達に報告してくるの…)
まって! なんかそれ絶対だめなやつ!! それだけはわかる!
ちょっとティー! ティー?
これヤバいよね…




