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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章
418/758

魔道具科



午後からは魔道具科の授業だから、そちらの教室へ向かう。

廊下で時々噂されてるのか、チラチラ見られてて居心地が悪い。 (ラムネのブレスも目立ったし…)

あれは私の感情に呼応したせいだなぁ。ラムネは悪くない。


「アスカ様、魔道具科へようこそ」

後ろから声を掛けてきたのは金髪碧眼で、学園長にそっくりな…

「王女様…」

「それを言ったらアスカ様もですよ? ストレリチアと呼んでください」

私は王女ではないのだけど、説明するのも難しい。 (似たようなものだし) 


「アスカ様は魔道具にお詳しいと母上から聞いておりますが…そのアクセサリーってもしかして手作りですか?」

「はい。服飾科へいってる妹と一緒にデザインして作りました」

「見せて頂いても?」

「どうぞ」

例の試験管みたいなアクセサリーを外して手渡す。


「………私、魔道具は解析できるはずなんですけど、これは一切解析できません…」

「明かり程度の魔道具ですが、一応隠蔽はしてあります」

こちらのレベルがわからなかったから念の為に…。


「たかが明かりの魔道具程度に隠蔽ですって?自意識過剰ではないかしら?」

出たな…。 (悪役令嬢きたー!)

嬉しそうね? (ママにケンカ売ったやつの破滅エンドが楽しみなの!)

うちの子が怖いこと言ってる…。 (追放かな?没落かな?)

やめなって…。



「アスカ様、見せて下さりありがとうございました」

話しかけられてさえいないって体で、魔道具を返してくれるストレリチア様。

「いえ、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ!」 

「……………」 (完・全・無・視!)

ストレリチア様も目すら合わせないからね。それに習ったよ。

流石に自国の王女様には絡めないのか、真っ赤になってぷるぷるして耐えてて、少し可哀想になってきた。



「はーい! 授業はじめるよ。 皆、席についてー」

今度は女教師か…。 副教師も女の人。


「アスカ様、こちらへ一緒に座りましょう」

「ありがとうございます」

ストレリチア様に誘われて、窓際の席へ。


教師の自己紹介でわかったのは、学生街にあった魔道具のお店、サウザンド・ドリームと同じような魔道具店{デザイアというらしい}の娘ってこと。因みに副教師の方が姉。

妹のライラさんは魔道具オタクと言うか、魔道具を作れればそれでいい、新しい事に飢えてるっていう、ある意味マリッタさんと似たような人。

姉のライリーさんは、魔道具を作る技術はあまりないけど、頭は切れるようで…暴走気味なライラさんを上手く制御してる。

この二人を疑うのなら姉の方が黒幕とも取れそう。 (二人とも悪い人?) 

まだわかんないな…。


そのまま、さっそく魔道具に関する講義が始まる。

「新入生じゃない子は、復習だと思って聞いててもいいし、魔道具の作成をしててもいいからね」

例の筆みたいな魔道具の使い方を教えてくれ…え? 私、それを使った課題を出されてたんだけど? (ハメられたっぽい?)

やれやれ…。


教室を見渡したら、昨日課題を渡してきた女生徒がいたけど、目を合わせたらすぐに逸らされた。

隣にはサラセニアもいるから、アイツの差し金かな。 (ムカつくー!)

今のところ別に実害もないしいいよ。 (むー。ちょっと調べてくる!)

危ない事しないでね!? (あい!)



教師のライラさんは、わかりやすく教えてくれてるし、嫌な感じはしない。

横から一々口を出してるライリーさんが、邪魔をしてるというか…授業をややこしくしてる。

新しい事をやらせたいライラさん、既存の方法から逸脱するのを許さないライリーさん。

そんな感じ。


当然、魔道具にも危険はあるから、既存の術式をなぞる方が安全ではある。

ただ、それだけだと同じもの…もしくは劣化したものへと技術は衰退していく。

時にはチャレンジをしないといけないって言う、ライラさんも間違ってはいない。

「また始まってしまいましたね…」

ストレリチア様がため息をつきながら話しかけてきた。


「お二人は揉めてますが、”また”ってことは…」

「ええ。しょっちゅうなんです。おかげで私達は見本を見ながら作る事しかできなくて」

「それじゃあ、つまらなくないですか?」

「そうなんです。安全性は勿論大切ですが、新しい事にもチャレンジしていかないと、停滞が続いてしまいます」

そういえば…王妃様も停滞してるって嘆いておられたな。


揉めてる教師をみんなは見慣れてるのか、各々魔道具を作る生徒、談笑を始める生徒、戸惑う新入生。

マトモな授業風景ではないなぁ。

「以前は魔道具界隈も日々進歩を重ねていたと聞いているのですが…」

原因と思しき話をストレリチア様は話してくれた。



十数年前。

教師姉妹の実家でもある、デザイアの作った魔道具で大きな事故が起きた。

当時は魔道具職人が日々新しい事にチャレンジし、失敗もあったけど、新しいものも生まれたりと、魔道具は進歩を続けていた。

マリッタさんのところの、サウザンド・ドリームとも仲がよく、共同開発等もしていたらしい。


そんな時、教師姉妹の父親が新しく作った魔道具が、お披露目の日に暴走事故を起こし、何人もの怪我人が出た。

その中には貴族も居たようで、賠償金がとんでもない額になり、お店は傾いた。

手を貸そうとしたサウザンド・ドリームの支援も何故か断わられたそう。

「新しい乗り物を作ろうとしていたそうです」

「箱型の…?」

「いえ、それはサウザンド・ドリームのオリジナルです。それに対抗して作っていたと聞いています」

乗り物の暴走か…。たしかに危ないな。

ライリーさんの新しい事への激しい抵抗感はそれか…?


「その時に支援したのが…」

「まさか公爵家ですか」

「はい。国が情報を得て、支援を送るより先に手を打たれたと父上が」

「国の支援より先?」

「はい、もうそこからおかしいんです。魔道具関連は全て国の管理下にあったはずなのに」

「事故が起こるのをわかってた…または意図的に?」

「…ええ。それも可能性としては…」

随分きな臭いな。幸い怪我人だけだったみたいだけど、下手したら人の命に関わってたかもしれないのに。


それから公爵家の資金と後ろ盾を得たデザイアは、一気に魔道具のシェアを広げ、例の失敗した乗り物も完全な物として公爵家が保証した事で売れに売れているらしい。

貴族大家の保証はそれだけ購買意欲にも影響があるって事か…。

ストレリチア様の説明を聞いた感じ、乗り物魔道具は電動キックボードみたいなものっぽい。


どう考えても国の一番の要でもある魔道具界隈を乗っ取るために仕組まれていたように思える。

それでも相手は公爵家、確実な証拠も無ければどうにもできないんだろうな。

しかも表向きは善意の支援なわけだし。

不正や裏があったなんて証拠が簡単に見つかる訳もない。 (見つけたよ?)

はい!? (公爵家に入り込んで見つけた! 地下の秘密の部屋に色々たっぷりと)

なんてこった…。大丈夫なの? (うん!)

ティーは何を見つけたのやら…。 (でもねー持ち出せないから困ってる)

あぁ、実体のないので見に行って見つけはしたけど、それだと持ち出せないのね。 (そう)

うーん…。どちらにしても、私達が今できることは無いから、タイミングを待つしかないね。 (あーい!)


まさかサラセニアのことを調べに行ってそんな物を見つけてくるとは。 (そっちは恥ずかしいポエムノート見つけた!)

それは触れたらダメ! 可哀相過ぎるから! (うん…あんなの広まったら…)

見たの!? (なんだろーってちょびっと見て、辛くなってやめたの)

そう…。 忘れてあげて。 (はーい! ティーも忘れたい…)

そこまでなの!?逆に気になる…。 (いつか現れる私の王子様…私の窮地を救うその姿…それはまさに本物の…)

ストップストップ! もういいよ! (うっぷ…)

ダメージ受けてやりなさんな… (ちゅらい…)

ごめんって。ちょっと興味本位だったの!



結局、殆ど教わることも無く授業時間は終わってしまった。

一応、課題の事を教師に聞いてみたのだけど、二人とも知らないと…。

「また…か」

苦々しげにそう言うライリーさんはなにか思い当たる節がありそう。


「ねぇねぇ。それ、もしよかったら見せてくれる?」

ライラさんは生き生きとしてる。なんか…この人の分までライリーさんが頭を悩ませてるんだろうなーと想像がつく。

「元々提出するつもりの物だったので構いません」

「どれどれー………嘘でしょ…」

「ライラ?」

「……これ、預かってもいい?」

「はい」

「早めに返すから!」

ライラさんはそう言いながら教室を飛び出していった。

「何を渡したのよ…」

そう言ってライリーさんは私を睨むと、追いかけるように教室を出ていった。


「アスカ様、どうされたのですか?」

「入学式の後、私だけ課題を出されてまして。それを提出したんです」

「…そんなところで嫌がらせしてくるとは思いませんでしたわ…申し訳ありません」

「いえ、別に大したことでもなかったので大丈夫です」

ティーが見つけた証拠の事を話すべきか悩んだけど、今はどこから漏れるかもわからないし、それで証拠を処分されたら手が打てなくなる。

それに、ティーの説明からしなきゃいけないから、ここでは無理だな。 (事情を知ってる王妃様に直接?)

うん。それが一番だけど…。お忙しいだろうから、時間を取ってもらわなきゃいけないね。


ストレリチア様経由で、学園長に時間をもらえるようにお願いだけはしておいた。




 





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