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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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逆鱗



入学式翌日から本格的に始まる授業は、基本的には自分の受けたいものに出ればいい。

毎回授業に出なきゃいけない訳でもないようだから、随分ゆるい。

初日から休むつもりはないけれど…。


周りの会話から察するに、いくつも掛け持ちしてる生徒は稀で、普通は一つらしい。

先に言ってほしかった。


学園の授業がいつどの科をやっているか、ひと目でわかる予定表を貰えたのは有り難い。

幸い、召喚と魔道具の授業に被りは少なく、あまり気にしなくても良さそう。

授業はサボってても結果さえ出せれば良いっていうところは気に入った。

そもそも出席日数とかっていう概念がなさそうではあるけど。



託児所に行くティー、ピナさん達と校門前広場で別れ、次に魔法科へ行く未亜たちとも別れ、私も召喚科へ。

ユウキとレウィは学生街にあるギルドへ行ったからお屋敷で別れてる。

あっちのが楽しそうだよなぁ…。 (学生専用ギルド)

そんなのあるんだ。 (ちゃんと依頼もあるの)

それは無かったらギルドの存在意義が…。 



ティーと会話しながら移動して、召喚科の教室に到着。

大きな学園だけど、教室そのものは多くない。一つ一つが大きくて、一教室に、百人くらい入りそうな規模。

相変わらず内装はスチー厶パンク風で、天井とか壁に張り巡らされてる剥き出しのパイプやらが気になる。

蒸気でも通ってたらリアルなんだけど、魔法のある世界であり得ないか。



教室にはすでに何人かの生徒が来てて、適当に座って喋ったりしてるから、私も空いてる適当な席へ座る。

ラムネ、よろしくね。

今日も首に巻き付いててくれるラムネを撫ぜる。

「あの…」

ん…?

「昨日はありがとうございました」

だれかと思ったら、昨日顔からコケた縦巻きカール! (縦巻きカールは悪役令嬢のテンプレだろうがぁ!)

急にどうした…。 (未亜に聞いたの! 縦巻きカールは取り巻きモブの髪型じゃないって!)

そこは好きにさせてあげてよ…。 (しゃーねーの)

ティーのが最近言葉使い悪いよ? (気をつけます!)

うん。そうしてね。 (なのでお説教はもうイヤです)

言葉使いに関しては私も人のこと言えないから…。 (ほっ…)


おっと、話しかけられてたんだった。

「本当に傷痕も痛みもなくて…」

「それはよかったです。キレイな顔に傷が残ったら大変ですから」

「あ、ありがとうございました!」

再度お礼を言って頭を下げると走り去り、離れた席に座った。てことはあの子も召喚科か。

昨日はあんなに突っかかってきてたのに…。どういう心境の変化だ? (………)

なんにせよ、女の子の顔に傷があったら将来大変だろうし、よかったよ。



その後は他の生徒に話しかけられることもなく、私から話しかけることもなく… (なんで?)

苦手なんだよ! (コミュ力を鍛えましょう)

無理です! (即答…)

元々、学校でもそうだったから仕方ないよ。今も奈々や麻帆がいなかったらボッチになるし。 (そうだった、生徒会め…)

私のせいでもあるから。 (召喚されたりしてたから)

そうそう。深く関わらないようにしてきた弊害だね。



暫くして…。

昨日会った副教師と、鷲みたいな大きな召喚獣を連れた男の人が入ってきた。

チラッとこっちを見られたけど、どこからか話しが通ってるんだろうなぁ。

目線が感じ悪い…。


教師の挨拶と、召喚科の説明。

普段は学年とか関係なく混ざって授業を行うけど、新入生に行う今日の授業だけは特別らしい。

基礎を教えたりするのかな?


召喚とはどういうものかっていう、簡単な説明の後、大きなグラウンドみたいなところへ移動した。

基礎どころか、いきなり召喚させるとか本気かこの教師。

失敗したらどーすんだ。 (ママの壊したところだった?)

そうだった、確認しないと。 えっと… あー……うん。ここだね。 (やっぱり!)

ここから見える、右側の建物。アレだね…。

修復はされてるけど、周りの景色に見覚えあるわ。


「聞いているのかね?」 (ママ、また…)

ちょっと周りを見てただけじゃない。

話っていっても、授業とは関係なく自分の召喚獣を自慢してただけだし。

大切にしてるというよりは、召喚獣の存在を自分のステータスにしてるだけって感じがすごく嫌。


「なんですか?聞いてましたよ」

「…なんですかじゃない! キミも持っているのならとっとと召喚したまえ!」

「すでに連れてますけど、気が付かないんですか?」

「は?」

「ラムネ」

私が呼ぶと巻き付いてた首から離れて、ふわっと横に浮くラムネ。


「…そんな小さな雑魚で、何を偉そうに…。何もできないのではいかね?そんなのではね」

「あ?誰が雑魚だって?」

私をバカにするのは別にどうでもいい。だけど、大切な家族を…話せなくて反論できないラムネをバカにするのは許せない。

「見たまえ! 私の召喚獣を! サイズ差を! これでソイツを雑魚と言わずに何という」

何人かの生徒が同調して笑ってるのがウザい事この上ない。


「なんだね、その反抗的な目は! ふんっ、よろしい、キミのような生意気な生徒には召喚獣の戦いというものを見せてあげようじゃないか!」

「………」

バカだろこいつ。 召喚獣が小さいから弱いなんてことは決してない。

それに小さくたって有能な子はいる。そんなのは召喚者次第だ。


今はラムネもだけど、うちのクッキーがいい例だ。

むしろ、体格をコントロールできるって事がどれだけすごいか…。 (召喚獣のサイズの差が戦力の決定的差でない事を教えてやるの!)

ティーが言うと説得力すごいわ。 (うちでママの次に戦闘力高いからね!)


「なんだね?恐ろしくなったかね? 土下座でもすれば取り下げて…」

「早くかかってこいよ。御託はいらねーから」 (ひっ…)

「…っ!! 後悔しても知りませんからね! 負けたら即刻退学です!」

「上等だよ。そっちは負けたらどうする?生徒にだけかけさせるなんて事、教師はしねーよな?」

「私が負けるなんて万に一つもありませんが…」

「じゃあ、負けたら教師やめろよ?お前みたいなのがいるから、召喚獣が可哀相な目にあうんだよ!」

「ここまで侮辱されたのは初めてです! よろしい、私が負けたら教師の職を辞します。ありえませんがね」

贅沢を言うなら、あの召喚獣も開放してあげたいけど…。 

無理矢理引き剥がしたらあの子の命に関わる。


「皆も聞いたかね?彼女は学園生活を初日で辞めるそうです」

笑ってる生徒はどうでもいい。

ラムネ、そのままでも戦えるよね? そうだよ、小さいままでお願い。 (大きくならないの?)

今大きくなって、怯えて引き下がられたら腹立つし、仮に戦っても大きさで負けたとか言いかねないからね。 (あー、いいそう!)


ラムネ、あの子は悪くないから、なるべく怪我させないように止めて。

元気よく了解って意思が帰ってきたから任せる。


「見たまえ。私の召喚獣の華麗な技を!」

そう叫ぶと、鷲型の召喚獣に命令した。 ラムネを”殺せ”と…。許せない…どこまでクズなんだ!

「…ラムネ、よろしくね」


鷲型召喚獣から、羽のような形をした魔法が飛んできて、そこからさらに広がるように雷撃が飛ぶ。私を巻き込むのを気にもせずに使ってくるな。

ラムネは小さい身体を活かし、スイスイと空中を泳いで躱す。

…私は大丈夫だよ、ありがと。 

背後の私を心配してくれて…本当に優しいんだから。

魔力が減って疲弊するのを待つのね?わかったよ。


私への攻撃は当然魔法防壁で止めてるし、ラムネにはカスリもしない。

「ちょこまかと! 雑魚には逃げ惑うのがお似合いですがね!」

その割に焦りが見えてるけど?生徒の前だから強がってるな。


攻撃が当たらなくて焦れてきたのか、命令が無茶苦茶になってきて鷲型召喚獣の子の動きもおかしくなってきた。

そこへさらに教師が無茶な命令をしたせいで、鷲型召喚獣はついに見学してる生徒の方向にまで羽の雷撃を飛ばしてしまった。

「きゃーーー!!」

「あんなの当たったら!!」

いくらムカついた生徒でも怪我されたら寝覚めが悪い。逃げ惑う生徒達を魔法防壁を張って守る。


「…えっ…」

「助かったの…?」

「全体を魔法防壁で覆ったら大丈夫。安心して」

「マジかよ…」

「…ほんとだ、ここに壁がある!」

「見えない壁…すげー!」

「あの教師ヤバくね?俺たちにまで…」

「うん。守ってくれたのあの子だし…」

生徒からの評価下がってますよ?せんせ? (煽るママ)

声に出してないから許してほしい。 (言えばいいのに!)


魔力消費が激しい魔法を連発したせいで、攻撃も動きも緩慢になってきた所でラムネが動く。

今は自身の十倍以上はある鷲型召喚獣を尻尾ではたき落とすと、そのまま絞め技に…。 (ワン、ツースリー!)


えっ、そうなの? (どしたの?)

ラムネが話してくれて、降参したらしい。 (じゃあ…)

戦闘終了。 (おぉー!)

「な、何をしているのですか! 早く次の攻撃を!」

「その子、降参しましたよ?」

「は…?何をバカな! どうしてそんなことがわかるのです!」

「むしろなんでわかんないの? 召喚獣は意思も感情もあるんだよ。話しかければ答えてもくれる」

「そんな話聞いた事が…」

「よくそれで教師やってますね? あ、もう教師じゃないですね。負けたんですから」

「何を…そんな約束私はしていませんが?」

コイツ…。


「辞めるって言いましたわよね?」

「私も聞いた!」

「うーわ…教師のくせに、自分から戦い吹っかけといて約束も守らないのかよ…さいてーじゃん」

魔法防壁で守ったおかげか生徒がこちら側についてくれたのは嬉しい誤算。

「う、うるさいですよ! 私には公爵家の後ろ盾があるんです! こんな小娘一人に辞めされられたりなど!」

往生際の悪い。 (ここまでクズだといっそ清々しい)


「知ってます?召喚獣って、強くなると、体格を変えられる子もいるんですよ?」

「なにを…」

「ラムネ、この愚か者に”本当の姿”を見せてあげて」

了解って返事が伝わってくると同時に光ったラムネは海竜本来のサイズへ。


「なっ…ありえ…竜…種…だと!?」

「なぁ、あれって…」

「竜種って聞こえたけど。 それってドラゴンでさえ勝てないって言われてなかった?」

こっちではそういう扱いなんだ竜種って。 


「ラムネは海竜なんだよ。 そして… お前が! お前が…バカにしたのは私の大切な家族なんだよ!」

私の怒りに触発されたのかラムネが上空へブレスを放つ。

「私は…何を見て…」

うわ、こいつ漏らした…。 (うわぁ…)

白目剥いて気絶したし。



「ラムネ、ありがとね。 さてと、問題はこの子だね」

鷲型召喚獣の子は、怯えてはいるけど、大人しくしてる。 

確かキャンディが言ってたよね。召喚獣の主は生涯に一人、主が死ぬと召喚獣も輪廻の輪に戻ると…。

となると、切り離せないわけだよな。この先もあのクズに召喚されるのは可哀相だし、阻止したいんだけど。


えっ、どういう事ラムネ! (どしたのー?)

…召喚獣を喚んで、連れてるときって魔力を共有してるから、戦闘の後でこの子もあの教師も魔力は枯渇寸前。

しかも、主の方の教師は、完全に心が折れて、戦意喪失した上に気絶してるから、契約を切り離せられるって…。 (仮死状態?)

そうそう。本当に死んでるわけではないから、この子も無事。 (いい事ずくめ)

鷲型召喚獣の子もそれを望んでたから、既に切り離されたらしい。 (おおぅ…) 


ラムネが魔力を分けてあげて、魔召界へ戻るって。

ラムネも一度戻りたいの? わかったよ。その子の事よろしくね。

戦ってくれてありがとう。


嬉しそうに上空でくるっと一回転したラムネは、鷲型の召喚獣の子をつれて消えていった。










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