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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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和食が恋しい



帰宅後、買ってきたお土産をみんなに配った。

お土産を貰ったのは初めてだとメイドさん達は喜んでくれたし、レウィも嬉しそうに食べてくれた。



そろそろ夕方だし、夕食を作るため、早速キッチンに各種魔道具を設置。

今回も、未亜とシエルは手伝ってくれる。

「…お姉様、ミイラの手が入ってて、未亜姉様が倒れたの」 

「えっ…?」

あっ、シイタケか! (見ちゃったかぁ…)

「それ、美味しいキノコなんだよ」

「ミイラじゃ…」

「ないよ! そんなもの料理に使わないよ!」

いくら私が魔王だからってそんな事しない。 (ふふっ…魔王料理)


倒れた未亜も起こして、説明。

恐る恐る香りを確認してようやく納得したらしい。

「びっくりしたよ…何かゾンビの素材かと思った」

「そんなものを料理に使うと思う?」

「思わないけど、あの見た目はダメだよ!」

まぁ、私も”呪われた手”とか言ってたくらいだしな…。


「お嬢様、悪魔の手を買われたのですか?」

名前もまんまかよ! (あの見た目だし!)

「料理に使おうかと思って…」

「お菓子だけではなく、お料理も得意と伺っていたのも納得です。その食材は素人だと見た目から敬遠しますから。プロには欠かせない食材なんですよ。さすがですお嬢様!」

キッチンへきたピナさんに褒められてしまった。鑑定しただけなのに…。 (まぁまぁ…)


料理するのを見ててもいいか?と言われたので、別に秘密にするような事もないし居てもらう。


手持ちの昆布と鰹節で出汁を取って、下茹でした濃い緑色の大根を一口大に切って炊く。

鍋を魔力ドームで包んで圧をかけてたら、ピナさんがびっくりしてた。 (それはそう)

未亜達も最初は驚いてたもんね。今は慣れたもので何も言わない。

二人は里芋の皮を剥いてくれてるってのもあるけど…。 (集中してるー)


今のうちにシイタケ…もとい悪魔の手も刻んでしまおう。

一口サイズに切ってしまえばただの食材キノコ。 (もとの見た目を知らなければ…)

まぁね…。


皮を剥いてもらった里芋も下茹でして、炊いた大根と、シイタケ…でいいやもう。

それらを、甘味噌を絡めながら炒めたら完成。

みんなで少し味見。 (ずるーい!)

ティーはここにいないから仕方ないよ…。ちゃんとみんなの分あるから。 (はーい…)


「優しい味だね、ホッとするよ。お姉ちゃんはやっぱり料理上手」

「お肉じゃないの…美味しい…」

シエルは肉が続いたのが相当堪えてたみたいね…。

「口に合って良かったよ。家庭料理だから豪華さはないけどね」

「…いえ、ものすごく美味しいですよ!」

ピナさんのお口にも合ったのなら、和食もこちらでうけるのかもしれない。 (ご飯欲しくなりそうなの!)

おにぎりならあるよ。夕食に出してあげるね。 (わーい!)


とは言え、リア達はコレだけじゃ物足りないだろうから、似たような味付けで下処理したミノウシもブロックのまま煮て、味噌角煮に。 (絶対美味しい…)

あとはあっさりしたものが欲しくて、ストレージから出したほうれん草のおひたしとか、緑大根でサラダも作った。

「よし、運ぼうか」

「お嬢様、それは我々にお任せください。食堂へお持ちしますから」

「わかった、お願いするよ」

メイドさん達の分も作ったから、食べてほしいと言ったらピナさんが喜んでくれたのはいいのだけど…。 (ママへの忠誠度爆上がり)

あー、確かにそんな感じかも。ピナさんのテンションにちょっとびっくりした。


ずっと首に巻き付いてるラムネは、魚を食べるかな?と思ったけど、寝てただけで何もしてないからお腹が空いてないらしい。

遠慮してるわけでは無いみたいだからいいけど…。動かないとエネルギー消費してないみたいな事? 

…そうらしい。小さくなってると尚の事エネルギー消費しないって伝わってきた。

何かしたいって言われても、今は何もすることがないからごめんね…。 (ママの傍で護衛はしてる!)

そうだね。居てくれるだけでいいんだよ。 

ふふっ、嬉しそうにしてくれてるわ。



食堂で、おにぎりだけストレージから出して準備してたら、ピナさん達が夕飯を運んできてくれた。

ティー、リア達と食堂においで。 (はーい! ママのごはんっ〜♪)

屋敷内ではレウィも、普通に食事をしてもらいたいから、食堂へはピナさん達、ドラゴライナ王国から付き添ってくれたメイドさん達しかいない。

屋敷にいるメイドさんには一応、話は通っているらしいのだけど、慣れるまではお互いの為にそうしてもらった。


「アスカの手作りご飯?」

「うん。未亜とシエルに手伝ってもらったけどね」

「言ってくれれば私達だって手伝ったのよ?」

「ありがと。でも私が食べたくて作ってただけだから大丈夫だよ」

和食が恋しかったっていう私のワガママだし…。

それにキッチンがそこまで広い訳でもないから、大人数になると動きにくくなる。


ユウキもレウィとスピネルを連れて食堂に来た。

「レウィ、テーブルで大丈夫だよ」

「わう…?」

「お屋敷内は話してもいいから」

「主様のご飯の匂い!」

「うん、レウィも食べてね」

相変わらず律儀に召喚獣になりきってくれてて心苦しいから、せめてお屋敷での食事は落ち着いてしてほしい。


「アスカお姉ちゃん…」

「スピネルのもあるから」

「私達のも用意して頂いてます。後でいただきましょう」

「はい…」

スピネルも食事は一緒にって言ったのだけど、ピナさんがそれだけは譲ってくれなかった。

「他のメイドへ示しが付きません。申し訳ありませんが、ご容赦を…」そう言われて取り付くシマもなかった。

スピネル自身も、メイドとしてついてくるって言った以上そのルールを守るって言うし。 


夕食はどれもみんな喜んでくれて、ミノウシの味噌角煮はかなりの量を作ったのに、キレイになくなった。

シエルも焼いただけのステーキじゃないのなら肉も大丈夫だったみたい。

「お姉様のご飯が一番好きなの…」

「ありがとシエル」

「わう! うまぁ…」

レウィがとろけてて可愛い。 



食後の休憩でのんびりしてたら、ピナさん達も交代で夕食を食べてくれたらしく、わざわざみんなでお礼を言いに来てくれた。 (ママの戦力にメイド部隊が!)

私は桃太郎か! 餌付けしたみたいで反応に困るよ…。 (キビダンゴじゃないけどね!)



「お嬢様、一つ連絡事項です。サイズ調整の必要なアスカお嬢様以外の制服が届きましたので、確認してください」

「ありがとう。みんなに着てもらえばいい?」

「はい。多少の手直しならこちらで致します」

それぞれ、専属のメイドさん達に連れられて、着替えに行くみんなに、アキナさんから預かった紋章も渡しておく。


「お姉ちゃん、これは…?」

「制服に貼るんだよ」

「私達が把握しておりますのでお任せください」

相変わらず有能過ぎる。スピネルも教えてもらってるから大丈夫みたいだし、ユウキの分を渡した。 (ティーは制服ないの)

そうだね。学生じゃないから…でも、ちゃんと紋章入りの服は預かってるから。 (おぉー)

ピナさんが毎朝着せてくれるよ。 (はーい!)



三十分程だろうか、リビングでティー、レウィとのんびりしてたら着替えたみんなが見せに来てくれた。

やっぱりスチームパンクっぽいわ。

白いフリルのついたブラウスに、ブラウン色のコルセット。三重のフリルスカートは、短くて膝上だけど、更に重ね着するスカートは後ろだけ長くて、裾はこちらもフリルになっててボリュームもあり、踵まである。

ブーツは膝下までの編み上げタイプ。

コルセット部分の左側に紋章をつけてて、右の腰にはウエストポーチがベルトで留められてる。

「可愛いね。みんな似合ってるじゃない」

「小物をアレンジして、色々なところにつけるのが流行ってるって教えてもらったの…」

そう言うシエルは、確かにベルトやアクセサリーが追加されてておしゃれだ。


「さすがシエルはセンスがいいね。みんなとの差がちゃんと出てる」

「お姉様のも、うちがアレンジしていい…?」

「うん。私からお願いしたいくらいだよ」

「ありがとうなの…!」

リア達もやってほしいって、騒いでる。


「姉ちゃん、ガンベルト作れる?」

「確かに似合いそうだけど。 本気?」

ユウキの制服はもう完全にウエスタン。カウボーイハットがないのが悲しくなるくらいに。

ガンベルトかぁ…。出来なくはないけど。

「何を装備するつもり?」

「形だけ。銃なんてないし」

それならいっか…。


「明日までに作っておくよ。ガンベルト風のポーチとかにする?」

「いいね。男子の制服は鞄がないから」

シエルが気になってるようだし、一緒につくろうかな。 (喜びそう!)













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