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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第六章

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王城にて



お互い自己紹介を済ませ、この非公式の謁見の本題に入る。


「学園の現状は聞いているとは思うが、迷惑をかける者がいるかもしれん…その時は遠慮せずに対応してくれて構わん」

こっちでもそんな事を言われるとは…。

「そんな不安そうにしなくて大丈夫よ。学園内ではうちの息子達もサポートするから、立場が悪くなるような事はないわ」

「はい…」

息子って…王太子とかって事よね?私と違って生まれつき本物の王族。

第一王子、王女、第二王子。三人全員が学園に通っているらしい。

一番上から17歳、15歳、12歳。

学園は12歳から通えるようで、第二王子は年明けから新入学するから私達と立場は同じだと言われた。

こっちは新入学が年末年始の長期休暇明けからで、私達もそれに合わせて入学する。

時期的には2月後半ってところかな。冬休みがめちゃくちゃ長いな…。


「上の二人は既に学園で新入学に向けての準備をしているから、末っ子だけ紹介しておくわね」

メイドさんが開けた扉から、陛下によく似た栗色の髪に、大人しそうな男の子が入ってきた。

「自己紹介をしなさい」

「ライアンです。よろしくお願いします…」

見た目そのままと言ったら失礼かもだけど、本当に大人しい。

声も小さいから、王妃様に叱られてる。

私達も自己紹介をしたのだけど、無関心と言えばいいのか。こっちを見ているようで見てない、そんな目をしてた。

でも、どうやら自分より小さい子は平気のか、ティーとは仲良く話してる。


「ごめんなさいね、私達が心配になるくらい大人しくて…」

「いえ、ティーと仲良くしていただけて嬉しいですから」

年齢的にはユウキが一番近いのだけど、見た目だけで判断するとティーのが近く見えるくらい幼い。

「生まれつき魔力不調がひどくて、成長に影響が出ててね…」

また私は顔に出ていたのか、王妃様が説明してくれた。

シルフィー様と同じような状態なら治せなくはないけど、初対面の相手には無理だ。

そもそも、私が信用されてないと取れない手段だし。


「この子も今年から入学するから、余計に今の学園の現状は放っておけなくて…アスカちゃんが作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかないの」

発端は私ではないのだけど…。

とは言え、大切な王子。しかも、不調を抱えてるとなるとお二人の心配は当然だろう。 (ママ、治してあげられない…?)

魔力循環すれば何とかなるかもしれないけど、挨拶以外は関わる気はないって言いたげに避けられてる現状、不可能に近いね。 (そっか…)

ごめんね。 (ううん! ティーが仲良くなる!)

うん、そうしてあげて。


その後、お二人から気を付けるべき生徒と、教師の情報を聞かされ、私は頭を抱えてる。

魔法科、冒険者科、服飾科の教師は問題のない人達で、魔道具、召喚、っていう私が行く所だけピンポイントで教師が問題らしい。副学園長も残りの三人のうち二人が警戒対象と…。

挙げ句…第一王子の婚約者である公爵令嬢が、生徒側の…言うなれば問題児?その代表らしい。

「婚約も、公爵家からの押しつけみたいなものでね。魔法学園に一番出資してるから、断るにも難しくて」

「全く…こっちは王家なのだがな。学園を押さえられていては…。叔母上は何を考えているのか」

陛下の叔母ね…。思ってた以上に根が深いというか、厄介なところへ放り込まれた感が否めない。


話を聞く限り、公爵令嬢を嫁がせて、王家にも勢力を拡大しようとしてるとしか思えない。


問題のある教師も公爵家の息がかかっているらしく、それ故に態度が大きかったりするようだ。

公爵令嬢も、自分の家が学園を支えているっていうのを傘に着て、取り巻きを引き連れやりたい放題してると…。 (シメる?)

正直関わりたくはないけど、無理だろうね。間違いなく絡まれる未来しか見えない。 (ママ目立つし)

黒髪忍者にでもなってくるんだった…。 (白銀はドラゴライナ王国、王族の証だよ?)

そうね…。


「我々も手は打っているから、問題がなければ学園生活を楽しんでもらえばいい。敷地内に屋敷の手配もしてあるし、使用人もこちらで用意したから間違いないはずだ」

「ありがとうございます」

そこからは学園の説明を王妃様が学園長としてしてくれた。


学園は、そこだけで学園街と言われてるくらい、何でも揃う。

生徒と、その家族や関係者以外は入る事ができない閉鎖空間に近く、中にある商店も国営の物で、生徒は学園街だけであらゆるものが買える。

留学生は、学園街にお屋敷が用意されるのが通例で、私達もそこにお世話になるわけだね。


中にある商店は大丈夫なのかと確認したら、魔道具関連は大半が公爵家の息がかかってるらしい。

厄介な…。 (おーじはこっちの魔道具しょぼいって言ってたけど)

どうだろうね、前にティアねえ様に聞いたのは、乗り物とかもあるって話だったから。 (あぁ、王妃様も言ってた)

うん。空を飛ぶ魔導船があるって言ってたね。 (でも効率悪いって言ってた!)

そうだったね。



昼食はお城で王族の方々と頂いた。

ただ、思っていたような格式高い食事というよりは、ステーキに野菜、パンにスープという、ワイルドな物で、うちの子達も緊張せずに楽しめたようで何よりだった。

陛下曰く、グリシア王国では肉食が主体で、学園でも食堂で食べられると教えてもらった。

レウィやドラゴン姉妹は喜んでいたけど、私はこれが続くのはキツいな。決して不味いわけではないのだけど。 (ティーも…)

素朴なものが食べたくなるね。和食とか…。 お屋敷では自炊しよう。 (やった!)


食後は王妃様の希望で、陛下も一緒にドラツーの見学会になった。

ドラツーその物は魔道具な訳でもないから機密も何も無い。

それでも、内部に設置してある魔道具にお二人とも興味津々で、質問攻めにあった。

台所仕事をしない王妃様には、キッチンにある魔道具はピンとこなかったようだけど、お風呂にあったシャワーや、ドライヤー魔道具には物凄く食いついた。


欲しい欲しいと子供みたいに駄々をこねるくらいに…。

「私が使うだけだからお願いよー。お金は言い値で払うわ!」

「お、おい! そんなすごい魔道具を買うような予算は…」

「陛下、お願いよー」

「…アスカ殿、因みにこれは…幾らくらいなら売ってもらえるだろうか?」

「私が作ってるものなので、魔石さえ頂ければ、作りますが…」

「セルフィーの言ってたことは本当だったわ! この子ヤバい!」

何を聞いたのか、王妃様を問いただしたい。 (ママの魔道具をべた褒めして、技術も教えてもらったって自慢してたー)

何してるのよ…。 (うちのアスカちゃんとか言ってた)

ほんと頭痛い…。行動に気をつけないと王妃様の顔にも泥を塗りかねないわ。


陛下の許可も貰えたので、ドライヤーとシャワーの魔道具を作ることになった。

シャワーに関してはお風呂場へ設置しなきゃいけないので、夜にお風呂を借りる時に設置する約束をした。

あれ?王族のお風呂借りるの!? (そうなったね)

なんてこった。


王妃様付添いのメイドさんはオーブンや、冷蔵庫の魔道具に目を輝かしてて、ピナさんが説明しててちょっと面白かった。流石に欲しがる様なことは言わなかったけど…。 (欲しそうにはしてたね)

だね。でも無許可で作るわけにもいかないし。



夕食もお城で頂いたのだけど、ガッツリ大きなステーキがでてきて、私はすでに辛い。

部位や焼き加減が違っても、ステーキはステーキなんよ…。

でもそれを表に出すわけにはいかないから、黙って頂く。

未亜もシエルも同じなのか、頑張って食べてた。



食後にティーがライアン王子にカップケーキをあげて、騒ぎになったのは想定外だった…。

大人しいライアン王子が、美味しいって大喜びして叫んだものだから、一瞬メイドさんや騎士の人達が殺気立った。

笑顔で喜んでる王子の姿で直ぐに誤解は解けたのだけど…。

毒かなんかだと思ったらしい。他国の王族に毒を盛ったりするか!! (ごめんなさい…勝手に)

いいよ。仲良くなったからあげたかっただけなんだよね。 (うん…次からは聞いてからにするの)

それがいいね。


王妃様と陛下にも同じカップケーキを食べてもらった。

「ライアンが大声を出した時は何かと思ったが、これは…気持ちがわかるな」

「ええ…。こんな美味しいお菓子食べたことないわよ」

手伝ってくれたうちの子達も嬉しそう。これなら学園であげても大丈夫そうだね。



その日はお城で部屋を借りて一泊。

預かった魔石を使い、ドライヤーとシャワーの魔道具を作った。

お風呂を借りる時に、シャワーも設置してきた。

その為だけに私達が先にお風呂を使わせてもらったのは申し訳なかったけど、仕方ない。

王妃様にはメイドさんを通じて設置の完了を伝えてもらったのだけど、直ぐ様お風呂へ行ったらしい。



ライアン王子がティーと離れたがらなかったけど、さすがにずっと一緒にいる訳にはいかないからなぁ。

学園で会えるからと、王妃様が説得してた。 (ティー託児所なんだけど…)

そうだよね…。ライアン王子が託児所へ通いそう。 (大丈夫かな)

学園長として、王妃様もいるっていってたから…たぶん? (ティーが守る?)

そうだね、気にかけててあげて。 (あーい!)




翌日は朝から学園長自ら案内してくれて、学園街に用意してもらったお屋敷へ大きな馬車で移動。

街も通るのだけど、カーテンが閉められてて、外は見れなかった。


ピナさん達も今回は一緒だから、当然スピネルも一緒。そうなるとユウキにベッタリになる訳で…。

ピナさんに叱られて渋々だけど、離れてた。

ついてくる条件がちゃんとメイドとして仕事をするっていう約束だったからなぁ。

「アスカお姉ちゃん、ピナがイジメる…」

「虐めているわけではありません!」

どうしたものか…。


「ピナさん。お屋敷内で仕事のない時は自由にさせてあげて」

「…お嬢様がそう仰られるなら」

「ありがとう! アスカお姉ちゃん」

学園にはついてこられないんだし、それくらいは許してあげないと可哀想だよね。 (抱き合ってる…)

馬車内とはいえまだ外なんだけどなぁ…。 案の定、外ではやめなさいって叱られて拗ねてるわ。


事情を知ってる学園長が何も言わないでいてくれるのがせめてもの救い。 

すみませんうちの弟夫婦が… (ついに認めた!)

もうそれでいいかなと。精霊の契約なんて、簡単に破棄も出来ないしね。 (ほぇー…)


因みに私の首にずーっと巻き付いてるラムネは、誰にも指摘される事も無く…。本人もスヤスヤと眠っていた。 (強い…)










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