グリシア王国到着
「さあ、アスカお嬢様、お召変えを」
「はい…お願いします」
ドラゴライナ王国、王族としての衣装は準備されていると聞いてはいたけど…。
やっぱり色は白銀なんだ…。
着せてもらったのは、ふわふわのドレス…とかではなく、例えるなら軍服風なワンピース。
ふわふわなのはスカートの裾部分から覗くフリルくらいで、抵抗感もなく着やすい。スカートも膝くらいまであるし。
それに、金と黒の刺繍やベルトがアクセントになってて格好良い。
「こちらがドラゴライナ王国の正装で、王族の方のみが着ることを許された衣装になります。陛下と巫女様が共同でデザインされたと伺っております」
「母さんもですか?」
「はい。後はこちらも…」
羽織らせてもらったのは、これまた白銀に金の縁取りのされたクローク。
背中には大きなドラゴライナ王国の紋章が。こっちも金で縁取りされてて、正直に言って…
「すごくキレイですね…」
「そうですね。アスカお嬢様に大変お似合いですよ」
「…ありがとうございます」
髪はポニーテールに結ってもらい、化粧は薄め。髪留めも紋章の入った豪華なものをつけてもらった。
「おー、ママすごいかっくいい!」
振り返ると、私の衣装をまんま、ちまっこくした衣装を着たティーが!
「ティーもカッコよくてかわいいよ!」
抱き上げたいけど、我慢… (ピナさんに怒られちゃう)
だね…。
あれ? よく見ると色が違う…? (白銀なのはママとユウキだけ! あとは白だよ)
あぁ…継承権か。 (そうそう! 刺繍もほら)
ティーがくるっと回ってクロークの背中にある紋章を見せてくれた。
縁取りが青いのね…。 (うん!)
最後に膝下まである編み上げブーツを履いて、アキナさんに頂いた剣を履く。
よしっ、これで完成だね。
別室でそれぞれ着替えてるリア達も終わったかな? (うん、リビングにいるよ)
わかった。
ピナさんにお礼を言い、リビングでみんなと合流。
ユウキも軍服みたいだな。男性用衣装もカッコいい。
「うわぁ! お姉ちゃん…カッコいい!」
「私達と同じデザインのはずなのに…なによアスカ…ヤバいカッコいいわ!」
「これは…惚れ直しちゃうよー」
「お姉様はこういう衣装も似合うの…覚えておくの」
うちの子達にも好評のようで。
「みんなもカッコかわいいよ。よく似合ってるね」
満場一致の希望で写真を何枚か撮った。
「姉ちゃんはなんか、あれだな…魔王感が増したと言うか、カッコいいよ」
「それは褒めてる?」
「うん。自慢の姉ちゃんだよ」
「それはありがと。ユウキも似合ってるよ」
「スピネルが着せてくれたからね」
「あぁ…」
そのスピネルは、メイド姿で一歩下がった位置に待機しててプロ感がすごい。
レウィは召喚獣になりきってるから撫ぜておく。
「スカーフよく似合ってるよレウィ」
「わう!」
「ごめんね、無理させて…」
「わうう!」
首振ってるから、大丈夫って事かな。 (たぶん?)
「時間もそろそろちょうどいいね。ティー、着陸お願い」
「さー! いえっさー!」
なりきってて可愛いわ。
みんなも衣装に気持ちを引っ張られてるのか、緊張してるのか…普段よりピシッとしてる。
さほど時間もかからずドラツーはお城の庭へ着陸。
「ママ、お迎えが来てる」
「わかったよ、ありがとう」
アキナさんに言われた通り魔力隠蔽は解除してっと…。
ドラツーの扉を開けると、両脇に並ぶ騎士。どこかで見た光景だな…。 (ドラゴライナ王国で)
あぁ! あったね。 それにしても…騎士の人達の衣装が独特だな。なんて言うか…スチームパンク?
鎧一式とかじゃないから違和感がすごい。カッコいいけど…。
「アスカちゃん! みんなもようこそグリシア王国へ。待ってたわ」
「王妃様、お久しぶりです」
数名の女性騎士を連れた王妃様も迎えに来てくれた。知ってる人が来てくれてホッとしたよ…。
「堅苦しい挨拶は無しでいいわ、さぁこちらへ」
「ありがとうございます」
騎士の人がカタカタと震えてるのは…私の魔力のせいかな? (うん。魔力に怯えてるみたい)
大丈夫なのかな。
「アスカちゃん、前に会ったときは何か細工してた?」
「はい…魔力が高すぎるので抑えてました。抑えたほうが良いですか?」
「いいのよ。それだけで威圧になるのだから。鍛え足りない者がいるのもわかったし。 それにしても…あれが噂のドラツーね?後でまた見せてもらえる?」
「はい、もちろんです。このまま置いておいてもいいんですか?」
「構わないわ。そのために用意した場所だから」
念の為扉だけは閉めておいたけど…。 (みとくー)
お願いね。中にはメイドさん達もいるから。
王妃様に案内されて城内へ入り、そのまま案内されたのは豪華な応接室といった感じの部屋。
城内も所々スチームパンクっぽさがあるのは何なのだろう。 (結構オシャレ)
だね。嫌いじゃないかも。
「寛いでね。陛下も仕事が終わり次第来てくださるわ」
やっぱり非公式の謁見っぽいな…。
メイドさんにお茶とお菓子も出してもらい、ソファーで寛ぐ。
アキナさんから預かった学園長宛の書類を渡しておく。
「女王陛下からね。ありがとう」
中の書類を確認した王妃様は、近くにいた騎士にいくつか指示を出す。
入学に関する書類だと聞いていたけど、それだけではないのかもしれない。
「そうだわ、今のうちに制服の話をしておきましょうか」
「制服ですか?あるのは聞いていますが…」
「後で全員採寸して、既存のサイズで大丈夫ならそれを渡すけど、合わない子がいたら調整しなきゃいけないから」
「お手数おかけします」
「いいのよ、みんなが同じことしてるんだから」
うちの子達は、学園長との会話は私に丸投げすると決めたらしく、大人しい。
学園内のルールとかは予め聞いていたもので大丈夫そう。
「待たせたか?すまないな…」
「大丈夫よ。お話していただけだから」
振り返ると確認するまでもなく国王陛下だろう。立ち上がろうとしたら、そのままでいいと止められた。
「此度はうちの学園の者が失礼した」
非公式とはいえ、謝罪してくれる国王陛下は優しそうな人だった。