経由地 ドラゴンの里
ドラゴライナ王国へ帰る前に会いに来てくれたアキナさんと少し話をして、今夜はアクシリアス王国で一泊。
明日中にはドラゴンの里へ移動する。
お城の新しい部屋は広すぎてまだ慣れない。
お世話係として同行してくれてるメイドさん達にも一部屋ずつ使ってもらった。
ものすごく遠慮されたけど、部屋はいっぱいあるんだから。
うちの子達が使わないし。
翌朝はメイドのピナさんが起こしに来てくれたのだけど、ユリネさんとひと悶着あったようで…。
私達の部屋で揉めるのは止めてほしい。
「このお部屋を任されたの私ですのに…」
「私は女王陛下から直接、お嬢様を任されていますので」
ピナさんが強い! ぐぅの音も出ないユリネさんとか始めてみたかも。 (カンカンカン! KO!)
格闘技じゃないんだから…。 (メイド大戦!)
なんか急に壮大になったな! (負けたら冥土へGO)
メイドだけにってか?やかましいわ! (ママにツッコまれた、わーい!)
朝から楽しそうで何よりだよ…。
朝食後、王妃様に呼ばれて、学園長宛のお手紙と…
「これなんですか…」
「お小遣いよ?」
「頂けませんよ!!」
「私もアスカちゃん達を面倒事に巻き込んでしまった自覚はあるのよ…だからね?」
「…わかりました、ありがとうございます」
王妃様の罪悪感が少しでも減るのなら受け取っておこう。
硬貨の種類や形は同じだからあちらでも同じように使えるって。
刻まれている模様が違うだけだって教えてもらった。
ただ、渡されたのはこちらでも金貨だけなんだよなぁ。 (王族はお札以外持たねぇ!)
いや、全部硬貨じゃん…。紙幣なんてないから当たり前だけど。 (そういえばお札ないね)
あれはまた特殊だから。異世界は硬貨が主流だよ。 (へぇー)
王妃様と、抱かれていたアルフィー様に挨拶をして、部屋に戻ると何やら騒がしい。
また何かトラブル!? (別にそういうのじゃないの)
うん?
「入学するのに、お土産とか買っていかなくていいのかしら?」
「持っていくなら美味しいものがいいよね! そうなるとアスカに頼むのが一番いいかなー?」
「いや、だからさ…学校に行くだけだからいらないって。そもそも王族がそんな事しないんじゃないかな」
「でも、私は転校してきた子に手土産もらったことあるよ?」
「未亜姉ちゃんのそれは特殊だと思う…」
あぁ、初めて学校に行くドラゴン姉妹が悩んでるのか…。 (うん。必要?)
いや、王族としてっていうのなら必要ないと思うよ。
基本、頭を下げることもないし、本来はこちらが話しかけない限り、同じ王族以外は、話しかける事すら不敬って言われたりするくらいだから。 (王族ヤバい)
私の知識がこちらでも通用するのかは知らないけどね…。魔獣の名前の話と同じよ。 (あぁ、納得…)
とはいえ、リア達の気持ちを無下にもしたくないから…
「ドラツーでの移動中にお菓子でも作ろうか?もし必要なかったら、仲良くなった子にあげればいいし」
「ありがとうアスカ! 何がいいかしら…渡しやすいものがいいわよね」
「そうすると、ケーキとかはダメだから…」
「お姉様、クッキーとかは?」
「いいと思うよ。ラングドシャでも焼こうか」
「なにそれ! ティー知らない!」
卵もお菓子用の無塩バターもあるし、薄力粉も砂糖もある。大丈夫だね。
チョコを挟んでアレンジしてもいいか。 (絶対美味しい…)
「まずは、ドラゴンの里へ行くよ。それからドラツーでの旅になるから、お菓子作りはその時にね」
「お姉様手伝うの…」
「うん、よろしくねシエル」
「お姉ちゃん私も!」
「未亜もよろしく」
「私だって手伝うわ!」
「私も!」
「うんうん。わかったから、まずは移動するよ。フィアにも会いたいでしょ?」
「そうね…いい子にしてるかしら」
「大丈夫だよー、かあ様がいるし」
ドラゴン姉妹は、学校へ行けるのがよほど嬉しいのかテンションが高い。
トラブルがないといいな本当に…。
チョコ達も連れて行くから、ちゃんと送還。 (向こうでよぶの?)
召喚科にも行くつもりだからね。 (あぁ…)
そこへ行けば前に喚ばれた場所かどうかはっきりすると思うし。 (だねー!)
ーーーー
ーー
みんなを魔力ドームで包んでドラゴンの里へ転移してきたのだけど…。 (空が…)
まだスモーク魔道具つけて飛んでるの!? (楽しくて仕方ないみたい)
それならいいのだけど…。
でも、飛んでるドラゴンの数に対して、地上にドラゴンが少なくない? (半分くらいはアクシリアス王国に残ってバカンス)
あぁ…。王妃様は何も言ってなかったから知らなかったよ。 (街で買い物したり食べ歩きしたり楽しんでる)
お金どうしたんだ…。 (王妃様に頼んでウロコを換金してた)
それ大丈夫なの? (大喜びしてたよ)
利害が一致してるのならいいのかな。
王妃様経由なら間違いもないか。
「お姉ちゃん達だー!」
「フィア! いい子にしてたかしら?」
「うん! ニレと仲良くしてたよ!」
「ママ、いらっしゃい!」
「お迎えありがとね」
二人揃って手をつないで迎えに来てくれたくらいだし、相当仲良しみたいだね。 (たまにケンカもしてるよ)
そういう時もあるでしょ。仲がいいなら余計にね。 (そうかも!)
ルナシアさんに挨拶に行ったのだけど、長老様が会いたがってると言われて、そちらへも挨拶しに行った。
スモーク魔道具のお礼を言われて”お小遣いじゃ!“と、生え変わった時に落ちたと言う角をいっぱい貰ってしまった…。 (ヤバいの?)
私の知る限り、武器にでも防具にもなるし、粉末にしたら薬にもなるよ。
人間にはお金には変えられないくらい価値のある物だね。
ほら、前にユウキが冒険者を助けに行く時に持たせた、どんな傷でも治る薬。あれの材料になるの。 (すげー!)
ドラゴンの強い魔力をいっぱい含んでるからね。 (その理屈だとママの一部でも作れそう)
怖いからやめてよ…。
角を鑑定したけど、同じように使えそうだからありがたく貰っておこう。 (ママがいればお薬いらず)
そうなんだけどね、別行動する時とかにあると便利だし。
ただ、作るのにかなり手間がかかるからすぐには出来ないね。 (そっか…)
長老様に直接会って、ドラツーを出す許可も貰えたし、明日には出発するよ。 (今日ここに泊まり?)
うん。ドラツーでだけど。
リア達もたまには家族とのんびり過ごしたいでしょうからね。 (うん! 喜ぶの)
長老様にお礼をいってお暇したから、ドラツーの準備とかしようと思ってたんだけど、みんなどこにいった? (フィア達と遊び場)
じゃあ私もそっちへ行くか。 (ツリーハウスにいるよー!)
わかったよー。
フィアもニレも、あげたステッキを大切にしてくれてて、そのおかげか魔力の扱いも上手くなってるってルナシアさんから聞いてはいたけど…
「まさか魔力ドームまで使えるようになってるとは…」
「ティーが教えたらすぐに覚えたよ!」
ありがとねティー。 (ふふーん!)
「二人ともすごいよ。頑張ったねー」
「お姉ちゃんが得意ってティーに聞いたから!」
「ママの得意な魔法、ぼくたちも上手くなるよ!」
ヤバい可愛い…。 (ママにやけてる…)
仕方ないよこれは!
「どうしよう、ねえ様! 私達より上達が早くない!?」
「知りたくなかった事実だよー…あーでも、二人ともアスカの魔力貰ってるし当然といえば当然?」
「「「「あぁ…」」」」
そこでみんな揃って納得しないでほしいな? (事実だし)
属性の違う精霊同士だけど、ニレとスピネルは相性が悪いといった様子もなく、スピネルが可愛がってくれてる。
「ユウキ、私も子供ほしい…」ってとんでも発言をしてたくらいか…。 (流石にユウキも戸惑ってた)
無責任な事はしないって言った以上ちゃんと考えてるんじゃない? (かもー)
私はユウキを信じてる。 (ある日突然叔母さんになるママ…)
………。
だ、大丈夫。その時はその時だよ…。
二人がお昼寝するまで一緒に遊んで、私は広場へドラツーを出し、今回の旅に合わせて調整。
ドラツーの外見はリアでは無くアキナさんに似せてある。
王族の色は白銀だから、そうする様にってアキナさんに言われてるし。
内装も、人数に合わせて調整したり、コクピットの船長みたいな椅子と、スピーカー魔道具は撤去した。
また必要ならつければいい。
ピナさん達メイドさんは、居ないものと思っていいとか言われたけど、流石に部屋は用意したい。
一人一部屋用意しようとしたら、三人で一部屋あれば十分といわれて、結局私が折れた。
さっそくドラツー内を見て回ったり、仕事を探してくれてて有能すぎる。 (普段存在感消してるのに…)
うん。有能すぎて困る事ってあるんだね。世話を焼かせてくれない…
「姉ちゃん、なにか手伝うことある?」
「大丈夫だよ。 あれ、めずらしい、一人なんだ?」
「なんだよそれ…」
「最近常にべったりだったじゃない」
「うっ…まぁ…」
この感じ、なにか話かな?
「…どうかしたの?」
「いや、こんな事姉ちゃんに聞いていいのかわからないんだけどさ」
「うん?相談なら乗るよ」
「いくつになったら子供作っていいんだろう?」
「ぶふっ…ちょ…ユウキ!?」
「真面目な話だからな? スピネルの事大切だし、契約もした。精霊にとって対等の契約って人で言うなら結婚みたいなものでさ。早くってせがまれてて…」
「…うん」
「でもほら、僕はまだ学生だし」
「そうだね。 うーん…ユウキが将来、どこに住むつもりかによって変わってくるんじゃないかな?」
「あぁ…そうなるかぁ」
「異世界で暮らすつもりなら、その世界の決まりに従えばいいと思うよ?」
「そうだよな。 姉ちゃんは…今後どうするつもり?」
「正直、今は決められないって言うのが本音。学校には親友もいるし、師匠達にも会いたいし、この世界も好きだから」
「優柔不断…」
「そう言われても仕方がないけどね。どの世界にも大切なものがある以上、すぐに決めてしまう事はできないよ」
「大切なものか…」
「ユウキだって、親友もいるし、おじいちゃん師匠やシャーラもいるじゃない」
「シャーラは関係なくない?」
「そう?シャーラの気持ちを知っててそう言ってるのなら、ハッキリさせないと可哀想だよ」
「…そうだな。姉ちゃんには言われたくないけど。今度、姉ちゃんがあっちへ行くときに連れてって」
「わかったよ。因みに私もちゃんとみんなと話し合ったからね?」
「マジかよ! それでこの状況って事は…ハーレム…?」
「違うわ!」
なんだよハーレムって…。 (アキナさんみたいな?)
…なるほど。 イヤ、違うし!
それにしてもユウキはちゃんと考えてるみたいだね。 (それだけ大切なのかな)
かな。出会って間もないけど、契約ってそれくらい重いものだからね…チョコ達だって同じだから。 (そっか…)
命を預かってるのと同義なんだよ。ティーだってそうでしょう? (うん!)
それこそ私が死ぬようなことがあれば、ティーも、チョコ達も同じ運命を辿るからね…。 (うん…)
まぁ、魔王は死なないけどな! (シリアスな雰囲気吹っ飛んだ)
私はシリアスな展開なんてやだよ。
家族みんなが楽しく幸せに! が目標だね。 (おー!)
ん〜、それにしても、ユウキとスピネルはすでに結婚したようなものかぁ…。 (お祝い?)
それは、ユウキがちゃんと気持ちの整理をつけたらかな。今そんな事をしたら焦らせちゃうよ。 (さすがママ)
大切な弟だからね…。
ゆっくり考えて、決めてほしいかな。
今は相談に乗ったり、見守るくらいしかできないけどね…。




