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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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森の奥で狩りを



今日から狩猟大会が始まる。

ギルド試験の時と同じように、国中へ拡声魔法でアキナさんからの大狩猟大会の開始が宣言された。


私達が受け持つのは王国西側の最奥。

ユウキ達は北側へ向かったから、恐らく会えないだろうな…。


一番奥へ行くパーティーから順番に森へ入るから、当然私達は先発する事になる。

道中の弱い敵は、向かってこなければ無視するように言われてる。後から森に入る人たちのためだね。

森へ入ったら魔力隠蔽も解除するから、そもそも弱い敵は寄って来ないと思う。

寄ってくるとしたら、魔力のない野生動物とかその程度だろう。 (狩るの?)

いや、食べ物もあるし、わさわざ殺める必要もないからスルーで。 (らじゃー!)


西側へ私達と同時に出発すのはもう一組、Aランクパーティが一緒。

よく見知った、と言うよりは少し前に戦った相手。つまり、アキナさんと奥様達によるハーレムパーティ。

暫くしたらアキナさん本人も合流する。

さっき開始宣言をしてたばかりだし、まだ運営本部に居るんじゃないかな。


「戦った時は絶望しか感じなかったけど、味方だとこんなに頼もしいんだね…」

「最上階でのバトルは私達の冒険者人生の中でもダントツで一番ヤバかったもん」

アキナさんの奥様達からの評価が私にブッ刺さる…。 (楽しかったのにー)

対戦した方は大変だったんじゃないかな…? (かもー?)



森へ入る前に、私達パーティの陣形を相談した結果、ティーを先頭に、左右にリアとティアねえ様。

その間に未亜とシエルを守るように配置して、その後ろにレウィ。

当然、殿は私。後ろから全体を見渡すほうが守るにも動きやすいし、もしもの時は遠距離攻撃を主体にして戦える。

森の奥へ入ればチョコ達も呼ぶから盤石の体制になる。


小さいティーを先頭にするのは気が引けるけど、私を除けば一番戦闘力が高いから… (大丈夫だから任せて!)

うん。ティーの強さに関しては疑ってないし、信頼してる。

ただ、大切な私の子を矢面に立たせるのが気持ちとしてツラいってだけ…。 (心配性…)

過保護とでも親バカとでも言われてもいい。大切なんだから仕方ないの! (ティーは愛されてる!)

そうだよ。だから無理はしないでね。 (あい!)



「お待たせー。さぁ、狩るよー! こっちが一番ヌシの目撃情報が多いから油断しないようにね」

合流したアキナさんから爆弾発言。 

何それ、初耳…。 (王国最強パーティとママが一緒に配置された時点で…)

そう言われたら納得だけど。せめて先に言っといてほしかった…。



森を移動しつつ、ヌシについての情報を聞いたのだけど、どれも噂程度のものみたいで、要領を得ない。

黒くて恐ろしかった。とか…素早くてハッキリ姿は見えなかった。とか…。

突然目の前に現れたなんてのも。

ただ、遭遇した人はみんなビックリしてすぐに逃げて、交戦まではしてないようで、怪我人もいないし、生態はおろか正確な姿カタチ、強さも戦い方もわからない。

逃げても追われたり、攻撃されたって話もないみたい。

その割には随分警戒するんだなぁ。

「正体が分からないからこそみんな怖がっててね…。怪我をしたら即、生活に影響する冒険者にとって不明な相手ほど恐ろしいものはないよ」

「そうですね…。無事に生きててこそですから」

「そのとおりだよ。だから、本当にいるのか、いるなら危険性を含めて把握しておきたいんだよ」

「わかりました。確かに調べたほうが良さそうですね」

「因みに情報だけでも報酬は出るからね」

私としては報酬よりもみんなの安全のが大事だけど…。お世話になってるアキナさんのお願いだから出来るだけの事はしたい。

「目撃情報のあるエリアはAランクしか入れないようにしてあるから。魔獣はそこまで強いのはいないし、みんなも緊張しすぎないようにね」

それは有り難いかも。戦い慣れてない子もいるから。



森の奥まではいり、私達の受け持つエリアへ到達したところで、森の広範囲を捜索するためにアキナさんのパーティとは別行動になる。

私はチョコ達も召喚した。

上空からはクッキーが偵察。未亜とシエルはチョコに乗ってもらった。

私の首には小さくなったラムネが巻き付いてて、隣ではキャンディが周囲の警戒をしてくれてる。

相手がわからない以上、みんな真剣だ。


何度か大きなクマみたいな魔獣に遭遇したけど、ティーが遠距離から魔剣を振り、斬撃を飛ばして仕留めてくれて危険もなし。 (あれくらいよゆーなの!)

みたいだね。ストレージへ仕舞う時に確認したけど、見事なほどに頭だけを落とされてた。 (♪)



小さな小動物は見かけるけど、すぐに逃げていくし、ヌシの気配もない。

探索を広げてみたけど、さっきのクマくらいの魔力を持つ魔獣しかいない。

アキナさん達も出会ってないようだし、後方のAランク未満の人達も、それぞれが受け持つエリアで、各々適した強さの相手と戦闘してるだけで、特に混乱もない。


狩猟大会のルールブックには森の奥へ行くほど魔獣が強くなるって書いてあった。

更に奥へ行くしかないか…。

「アスカ、つまんないわ。全然敵が出てこないのよ」

「出てきてもティーが瞬殺だし、私達の出番がないよ!」

ドラゴン姉妹の不満もごもっとも…。

森へ入った時点で解除した魔力隠蔽をオンにしてもいいけど、どうしたものかな。 (いいよー。ティーはサポートする)

わかった。せっかく狩りにきたのに何もしないのはつまらないだろうからね。


更に少し奥へ移動してから、みんなに注意だけして隠蔽をオン。

探索には見えてたけど、遠巻きにしていた敵が一斉に動き出す。

「みんな、来るよ!」

「やっと出番?アスカ、ちゃんと見ててね」

「私だってやってやるんだから!」

まずは突っ込んできた黒いトラのような魔獣をドラゴン姉妹がうまく連携して戦った。

リアが魔法防壁で攻撃を受け止めて、動きが止まったところへ、うどんの炎とティアねえ様の風魔法が直撃。

大きな音を立てて倒れたのはトラの3倍はありそうな体躯の魔獣。

ドヤ顔の二人をまずは労う。


チョコは、背中に乗せてる未亜とシエルに危険が及ばない位置取りをしながらも、魔法を撃ちやすいように移動してくれて、未亜とシエルも大きな赤いイノシシと魔法で戦う。

お狐様のボタンはシエルを守るように傍にいて、二人が魔法を放つ。

ただ、二人の魔法は一撃一撃がドラゴン姉妹に比べてまだ弱いから、かなりの数を撃ち込んでた。

未亜は前のように怖くて動けないって事もなさそうだし、シエルも落ち着いてる。


ティーはいつの間にか大きくなったレウィに乗って、魔獣を誘導するように立ち回ってた。

サポートってそういう事ね。 (狩りだ、ひゃっはー!)

たしかにそんな感じだわ。まるで追い込み漁…。

うちの子達では手こずりそうなのは予め遠距離から私とキャンディ達とで仕留めておく。

状態異常持ちとか、大きな蛇なんかは見た目が未亜にはツラそうだし。


各種魔法や、私のあげた魔剣の斬撃が飛び交い、バタバタと倒されていく魔獣達…。

さすがになんか可哀想になってきたよ?

これはもう狩りというか蹂躙…。


ある程度狩った時点で魔力隠蔽もオフに。

一斉に泡を食って森の奥へと逃げ出す魔獣達…。流石にちょっと傷つく。 (仕方ないのー)

そうだけど…。 どちらにしても狩りすぎてしまうのも良くないから、これくらいで。

奪った命はちゃんと回収。ギルドや国が無駄にはしないでしょう。



ここまでの移動と今の戦闘で結構な時間が経過して、日も傾き始めてるから夜営をするための場所を探す。

探索で見つけてた川へ行くと、夜営に適した土地だった。

よし、ここにしよう。 (りょーかい!)

「今日はここを夜営地とする!」

急にどうした、ティー。 (一回言ってみたかっただけ)

そう? (ティーは満足!)


「お姉ちゃん、なんでこの場所を選んだの?」

「川のある方からは直ぐに攻められることはないし、もし川に入ってきたら音がするよね?」

「あぁ〜。バシャバシャ音がしそう。じゃあ森の方も理由があるの?」

「そうだね。周囲がひらけてるって事はよく見えるから、敵が接近してきたら目立つのよ。魔獣とかも自分が目立つ場所にはあまり来ないからね」

むしろくるのは、目立っても襲われる心配のない強者くらい。

探索で見る限り、ここらの魔獣は力が拮抗してるし、そもそも私の魔力を感じてるのに危険を犯したりはしないと思う。


「この辺は魔獣の痕跡もないんだよ」

「そうね〜。匂いもしないわ。さすがますたぁね〜」

「お姉様はなんでわかったの…?」

「経験ってのもあるけど、足跡や糞、毛や爪によるマーキングの跡もないからね」 

意図的に避けてるのならヌシに会えるかもって少し期待してる。 (でもいないよ?)

そうなんだよね…。それらしい痕跡すら一切ないし。


「アスカ、他にも夜営で注意する事ってあるのかしら?」

「そうだなぁ…水辺でも湿気が多く、ぬかるんだ様なところはやめたほうがいいね」

「どうして?水があるならいいんじゃないの?」

「体力を奪われて休めないんだよ。湿気の酷かった時辛かったでしょ?」

「「あぁ…」」

日本の梅雨が相当堪えたのか、思い出してげんなりしてるな。

この辺の知識は師匠が教えてくれた対人用の物だけど、応用はきくし、基本知識として知ってても無駄にはならないはず。


今夜はキャンプだから手持ちの大きなテントを出して設置。

当然周囲には遠距離攻撃にも備えて魔力ドームを展開してるし、チョコたちが警戒もしてくれてる。

私も常に警戒するつもりだし…。

「ますたぁ、周りを見てきたけど、ますたぁの把握してる以外には野生動物くらいしかいないわ〜」

「ありがとね。クッキーも上から見てくれてるけど異常はないみたい」

「ママ、じゃあヌシって…?」

「わかんない。かなり探索を広げた上で、怪しい洞窟はキャンディが直接見に行ってくれたけど、それっぽいのはいないんだよね」

「わう…?ヌシ…川のなか?」

「それもないと思うよ。この川ってそんな大きなものが潜めるほどは深くもないし。ラムネも小さいままでしか泳げないくらいだからね」

みんなで頭を悩ませるけど、答えは出ない。

見た人の勘違いとかもあり得るけど…。そう決めつけてしまうのも危ないし…うーん…。











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