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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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お祭りをまわろう



「母上、アスカ殿が困っているのである」

「だって! ジルスはいつから知ってたの?」

「我も知ったのは今朝、合流した時であるな。ツリーハウス近くの森の傍で待機していたら飛んできたドラゴンが…」

「アスカちゃん、お願いよ! 説明を早く!」

魔道具の事になると王妃様は止まらないんだった。王子の説明もぶった切るくらいに…



王子の婚約のお祝いに私も何かしたくて、サプライズをした事。ドラゴンのみんなが協力してくれたから実現できたサプライズだったと説明。

その上で、手持ちに一つ残してある小型のスモーク魔道具を手渡す。

「これが今回使用した魔道具です。ドラゴン達の背中に固定されてます」

王妃様は興味深そうに見てる。

構造自体は至極単純だ。難易度も高くないから王妃様も問題なく作成できると思う。

使うかどうかは別として…。


「これだけであの雲ができたの!?」

「はい。みんながそれを一つずつ背負って飛んでるだけですね」

「…どういうことよ…意味がわからないわ」

王妃様は考え込んでしまう。

これは単純に私が多少なり科学知識があるからってだけの話なんだけど、説明しにくいな。


「セルフィー、それよりも今はやらねばならん事がある。アスカ殿からの素晴らしいサプライズだった、それでよいのではないか?」

「だめよ! それで済ましてしまったら魔道具を作る者として成長できないのよ…」

「…こうなっては動かんか。 アリア、落ち着いたら連れてきてもらえるか?」

「はっ!」

「アスカ殿、手間をかけた。それと素晴らしいサプライズ、感謝する」

陛下はそれだけ言うと、陛下付きの護衛と部屋を出ていかれた。

王妃様は行かなくていいのだろうか…。



アリアさんも困ってるし、スモークの魔道具は王妃様へプレゼントして、説明はまた後日ちゃんとする約束をしてなんとか納得してもらった。

「ティーちゃん、お願いしてた事だけど、それも一緒に報告してもらえる?」

「ママ…?」

「ティー、私からもお願い」

「はーい!」

元気に返事をしたドラゴン姿のティーはアルフィー様と一緒に王妃様に抱かれて部屋を出ていった。



「アスカ様、私達もお部屋へ戻りましょう」

シルフィー様にそう言われ、部屋へ戻る。


「この後の予定は御存じですか?」

「私達はひとまずここまでです。何かありましたか?」

「はい。一度、祖母と祖父に会いに行きたくて…」

「そういう事でしたら…。 ユリネ、アスカ様をセイナ様のお部屋へ」

「畏まりました。 アスカ様、ご案内致します」

シルフィー様にお礼を言って、ユリネさんについていく。


お祖母ちゃん達も客間を借りているらしく、そこへ案内してもらった。

ユリネさんがノックするより早くお祖母ちゃんは扉を開けてくれた。

「やっぱりアスカちゃんだわ。魔力隠蔽してても孫に気がつく私すごくない?」

お祖母ちゃんは嬉しそうにお祖父ちゃんに向かってそう話してる。


「セイナは流石だね。 いらっしゃい、アスカちゃん」

「お邪魔します。お祖母ちゃんもお祖父ちゃんも久しぶり」

「ええ。来てくれて嬉しいわ。 挨拶は終わったの?」

「うん。私の役目も終わったから、会いに来たよ」

「そう、ゆっくりしていくといいわ」

「ありがとう。 それで、えっとね、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんをお祭りに誘いに来たよ」

「お祭りってアキナのところの?」

「うん。私達家族もお店を出してるから見てもらいたくて…だめかな?」

「アナタ、仕度して! 孫達の晴れ舞台を見に行くわよ」

「この国の偉い人に話していかなくていいのかい?」

「それでしたら私がお伝えしてきます」

ユリネさんがそう言ってくれたので任せた。

お祖母ちゃんがこんな即決してくれると思わなくて、すごく嬉しい。



お祭りへ行くことは王妃様から快諾してもらえて、お祖母ちゃん達も一緒にドラゴライナへ転移する。

ただ、アルフィー様の事もあるから、お祖母ちゃんも心配みたいで、今日の夜には送ってくる。

半日ほどしか一緒にいられないけど仕方ない。

わがまま言うつもりはないし。


王妃様達は、ティーからの報告をまとめたりしてるらしく、こちらのティーとはこのままお別れ。

寂しいけど、戻ればティーの本体がいるし。 (うん! 向こうであうのー)


 

部屋へ戻るといつの間にか着替えてるシルフィー様とアリアさん。

「アスカ様もお召変えを!」

と、ユリネさん。

「脱ぐだけなら直ぐですから大丈夫です!」

鼻息荒いんだよ! 着付けてくれた時はあんなにできるメイドさんで格好良かったのに…。


着替え用の衝立の裏で、ドレスをストレージへ仕舞い込んで、私服に着替える。

「お待たせしました」

「早くないですか!? ドレスですよ?しかも祝賀用のものです。それを一人で…」

ユリネさんもシルフィー様もびっくりしてる。

ストレージへ仕舞ったって言ったらびっくりされた。

そう言えばシエルも驚いてたけど、マジックバッグでもできるのに、みんなやらないの?

私がそう聞いたら、頭を抱えてた。その発想はなかったらしい…。楽なのに。


クリーンをかけて返そうとしたドレスはシルフィー様に受取りを拒否されてしまった。

私のサイズに合わせて作ってあるから、私しか着れないし、そのまま貰ってほしいと。

いいのかな。こんな高そうなドレス…。 (ママ専用に特注してるから!)

ひえっ…。なんとなく慎重にストレージへ仕舞われたドレス。 (また使うことあるのかな?)

そういえば思い出した…。王族とか高位の貴族は公式の場では同じドレスを二度着ない…。 (勿体無い!)

うん。確かこれも師匠から習ったはず。こちらも同じかはわからないけど。



しばらく談笑しながら待ってたら準備のできたお祖母ちゃんとお祖父ちゃんも合流して、ドラゴライナへ。



ーーーー

ーー



「ここに来るのも久しぶりね」

「そうだね。せっかくのお祭りだし、楽しもうかセイナ」

「ええ!」

「うちのお店は夕方からオープンさせるから、それまではお祭りをみんなで回ろうかと思うけど、いい?」

「勿論よ」

お祖母ちゃんとお祖父ちゃんを連れて、私達の部屋へ行ったらみんな集まってた。


「お姉ちゃんおかえり! お疲れ様。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんもいらっしゃいませ」

「ありがと未亜。みんな集まってどうしたの?」

「いや、そろそろ戻ってくるかなと思ってさ。そしたらみんなでお祭りまわろうかと思って待ってたんだよ」

考える事は同じか。 (さすが姉弟!)

ほんとね。


「そうだわ。みんなに渡さないと!」

お祖母ちゃんはそう言うとみんなにお小遣いをくれた。

せっかくのお祖母ちゃんの好意だし、素直に受け取る。

初めてお祖母ちゃんからもらったお小遣いがなんだかすごく嬉しい。

両親にもらうのとはまた違う。なんて言うか特別な感じがした。

ルナシアさんまで渡されて、困惑してたけど、お祖母ちゃんが”いいから受け取りなさい“って遠慮するルナシアさんに無理やり渡してた。

ニレはお祖母ちゃんと初対面だったけど、フィアと一緒に平気で甘えてる。

お祖母ちゃんも抱き上げて嬉しそう。

大物になるなあの子達。 (親バカ?)

そうかもしれないけど…。



お祖母ちゃん達とめぐるお祭りは本当に楽しかった。

うちの店みたいなゲームとかはないけど、力比べとか、この石を破壊できたら賞金! みたいな言ったらあれだけど、脳筋なお店が多かった。


力比べはうちのドラゴン姉妹が無双して賞金もらったり、めちゃくちゃ硬いとか言ってた石は、何してもいいって言ったお店が悪いよね。

ティーが私のあげた魔剣で細切れにした。あまりにも落ち込むから魔力ドームで包んで修復。

あれが無いとお祭り期間何もなくなるって言うし…。

物凄く感謝されて、食べ物エリアの割り引き券をもらった。

マッチポンプ感がすごいわ。 (何してもいいって言ったもん!)

たしかにね?でも加減しよう? (ママに加減するように言われるとは……)

そこまで驚かくてもいいじゃない。ほら口閉じて。 (驚きすぎて口が塞がらなかったの)

さすがに失礼よね? (ふふっ。でもママ楽しそうだよ?)

まぁそうね…。楽しんでるみんなを見てるのも嬉しいし。



食べ物は多種多様。大きな肉の丸焼きから、各種スープに、果実の搾りたてジュース。

「食べ切れたらタダだよー!」

って言ってた丸焼きを、レウィがあっさり完食してお店の人を泣かせたり…。

ニレがお祖母ちゃんにもらったお小遣いで、初めてのお買い物をできたから褒めてあげた。

フィアもニレの真似をして一人でお買い物ができて、姉二人が感動してた。 (ハラハラして見てたのに)

私も心配する気持ちはわかるけどね。

ルナシアさんは笑顔で見守ってたのはさすがお母さん。



面白かったのは大きな魚の解体ショーかな。

解体したものはその場で調理してもらえた。

「これ上手い! 焼いただけなのに…」

「ユウキが絶賛するほどなんだ? 食べてみようかな」

私もお店の人から受け取り、食べる。


「…美味しい。こってりしてるのに、しつこくなくて旨味はしっかりしてる」

「ティーもー!」

欲しがるから食べさせてあげたんだけど、何であーんして待ってる子が何人もいるのかな?

フィアとニレはわかる。まだ小さいからね。ふーふーして口に入れてあげたら美味しそうに食べてて可愛い。


「リアとティアねえ様も?」

「いいじゃない! 今日も頑張るから…」

「うん。昨日だって私達がんばったよ?」

それを言われてしまったら…ね。でも、流石にシルフィー様はだめだと思う!

「私だけ仲間はずれですか…?」

その言い方はずるいよ…。

嬉しそうにあーんしてるシルフィー様もお祭りを楽しんでくれてるみたい。

その分、アリアさんとユリネさんは気を張ってる。お疲れ様です…。


結局シルフィー様と、ドラゴン姉妹にも食べさせてあげた。

「美味しいでしょ?」

「はい…格別です!」

「え、ええ…そうね! 美味しいわ」

「これ、アスカが調理したらもっと美味しくならない?」

どうだろう…。蒲焼きとかにしたら美味しいかも?


「お姉ちゃん、切り身の販売もしてるから買っていこうよ」

「いいけど…未亜、なんか不機嫌?」

「…別にそんなことないよ」

いや、ムッとしてるんだよね。まぁ私も流石にわかるようにはなったけど。


「未亜、ほらあーんして」

「えっ、お姉ちゃん…」

「いらない…?」

「…食べます」

真っ赤になっちゃったけど、ムッとしてるよりはいい。 (ママは罪つくり…)

言わないで。恥ずかしいことをしたのは自覚してるから。

ただ、せっかくのお祭りだからみんなに楽しんでほしい。


「見て。うちの孫達がとっても仲良しなのよ…。いいわぁ〜」

「セイナも柔らかく笑うようになったね」

「えっ…」

お祖父ちゃんにそう言われて照れてるお祖母ちゃんが可愛い…。



母さん達の屋台も見に行った。

せっかくだから買いたかったのだけど…隣同士で並ぶ巫女焼きと勇者焼きそばは長蛇の列。

見かねて私達が助っ人に入った。

下準備くらいならできる。

野菜を切るにも、巫女焼きの生地を混ぜるにも魔力ドームへ放り込めばいい。

同時進行で魔力ドーム3つを展開させて、サポートはうちの子たちがしてくれる。


仕上げはやっぱりそれぞれ勇者と巫女が作らないと駄目だろうけど、裏方くらい手伝ってもいいでしょ。

かなりの量を仕込んでたらしいけど、足りなくなってきてヤバかったみたいで両親に感謝された。

準備期間に手伝えなかった分、少しは役に立てたかな。


「しっかりしなさい。せっかくお祭りを楽しんでる孫たちに手伝わせるなんて…」

「厳しいよ、お母さんは…。ほんっっっとに忙しいんだから!」

「店にそんな名前をつけた時点で予想できたのに、見通しが甘いのが悪いのよ」

見通しが甘い、か…。なんだろう、私にもダメージが入った気がするな。 (親子だし?)

ナンカツライ…。 (まぁまぁ)


あまり手を貸しすぎると、お店の名前が嘘になってしまうから程々で退散。


時間もちょうどいい。私達も自分のお店の仕度を始めないと。

着替えた後、設営するまでの間、お祖母ちゃん達には取り敢えず控室で休んでもらった。







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