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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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国として



「皆と共に新しき年を迎えられた事、嬉しく思う!」

陛下のその言葉に、穀倉地帯へ詰めかけた街の人たちからすごい拍手が上がる。

「そして…今年はめでたい発表もいくつかある! すでに知っている者も多いだろうが、新しく娘が生まれた!」

割れんばかりの歓声に包まれる。

すごいな…。いろいろな世界へ呼ばれたけど、ここ迄王族が国の人に愛されてるって言うのはあまり見たことがない。

まぁ…私達が呼ばれるイコール問題を抱えてるって状況だから仕方がないし、比べてもいけないのかもだけど。


「娘のお披露目の前に、いくつか話しておかなければならないことがある故、落ち着いて聞いてほしい」

ここからが本番だ…。


「先のドラゴン襲撃の折、そのドラゴンを止め、我が国を救ってくれた英雄を紹介しておこう」

私にカメプロが向けられたのがわかる。ヤバイヤバイ…緊張する!

「(アスカ様は、我が国の英雄なんですから堂々としてください)」

そうは言われても…。

「今、皆が見ている大きな我々の姿も彼女の手によるものだ」

その通りなんだけどね?恥ずかしいよ!!


陛下の紹介で、街の人たちが私にまですごい歓声と拍手を送ってくれて落ち着かないんだって! (ママ、がんばれー!)

せめてティーを抱いていられたら…。 (ティーは控室で待機だからねー!)

うん…。それより、シルフィー様はずっと私と腕を組んでるのだけど大丈夫なんだろうか…。 (さぁ?既成事実?)

恐ろしいこと言わないで!? (だって生放送で流れてるよ?)

………。


私が戦々恐々としてる間にも陛下のお話は続く。

「我が国にはドラゴンを止めれるだけの力を持った大切な友人がいる! その上で聞いてほしい…我がアクシリアス王国は二度とあの様なことが起こらぬよう、ドラゴンとの恒久的な和平と同盟を結ぶ事となった!」

街の人たちの反応はさっきとは少し違い、戸惑いも伺える。

「冒険者の中には、この方をよく知っている者もいるのではないか?助けられた者も一人や二人ではないはずだ」

カメプロが捉えるのはフレアベルナさん。


バルコニーから飛び降りたフレアベルナさんはそのままドラゴンの姿に。

フレアベルナさんの冒険者活動はこの時のためだったの? (たまたま…?)

ま、まぁでも。プラスになってるならいいよね。 (うん!)

街の人からの反応もいい感じだし。一般の人は知らなくても、冒険者から噂は広まるだろうな。


「そして…皆あちらを見てくれ!」

陛下の指差す方向からは20近い数のドラゴンが編隊飛行で飛んでくる。

もちろんスモークを引きながら…。


「…アスカちゃんでしょアレ」

小声で話しかけてくる王妃様。

「バレましたか?」

「他にいないもの! どうなってるの?あれ…」

「私はドラゴライナ王国で一度見ましたが、この数は壮観ですね…昼間でもキレイです」

飛来したドラゴンは、スモークを引きながらアクロバティックな飛行や、きれいに並んだ編隊飛行など、色々見せてくれる。

すごいな…どれだけ練習したんだろう。 (毎日やってた…移動中とかも)

マジかぁ。 (普段暇だから楽しかったみたい)

それならいいのだけど…。


漆黒のドラゴンが編隊を離れてバルコニー近くへ降りてくる。

おそらくスクリーンには一部始終が映されてるんだろうな。 (うん! すごいよ!)

私の位置からは見えないからなぁ…。 (離れた所からも撮影してるから)

なるほど…。ティーはどこから見てるの? (街の人達の傍にあちこち! ミッションも兼ねてるの)

そう…。内容は聞いても? (街の人の反応を知りたいからって王妃様が…ママの事もあるから引き受けたの)

あぁ〜。じゃあ、私からもお願い。街の人から反感がないか気にしておいてもらえる? (あい!)



「…父上、戻ったのである」

背中に王子を乗せていたノワルレイナさんは、王子をバルコニーへ降りられるように体勢を変える。

「う、うむ。 皆聞いてくれ、我が息子ジルスと、ドラゴンの姫との婚約も決まった!」

姫!?ノワルレイナさんって長老様じゃなくてお姫様だったの!? (という設定!)

…それってあれか?王族との婚約ってなると立場が必要だから…。 (そゆことー!)

ドラゴンの里で長老って言ったら立場のある人だし、人で言うなら姫相当だろうって事かな? (うん。ものは言いよう)

…確かに。


ノワルレイナさんも空中で人化すると、バルコニーへ降り立つ。

「この二人は政略結婚ではない。タイミングとしてはそう取られても仕方がないが、大恋愛の末の婚約だ。皆どうかこの二人の婚約を祝福してはもらえないだろうか!」

街の人たちからは今までで最大の歓声と拍手が上がる。


「そして…我が妻、セルフィーはかの有名なドラゴン、セイントドラゴンの血を引く者である。皆もお伽噺等では耳にした事があるだろう。白銀に輝くドラゴンの伝説を!」

カメプロが王妃様へ向けられると、王妃様は光った後にドラゴンハーフの姿に。

お祖母ちゃん、顔は出さなくても存在を印象づけてしまう事は許可したのかな。 (言わないと説明しにくいし)

それもそうか…。



「私がドラゴンの力に目覚めたのはつい最近のことでした…。ドラゴンの血を引いている自覚はあっても、覚醒するとは思いもせず…国民の皆様に隠していた事をここに謝罪いたします」

深々と頭を下げる王妃様は緊張した様子。それは当然だよね。こんなカミングアウト…。

私が奈々達に秘密を打ち明けた事とは、比べるのもおかしいくらいの重大発表だ。


「国民の皆には秘密にしていた事、我もここで謝罪する! その上で、改めて我ら王族を認めてはくれぬだろうか」

流石に陛下は頭は下げないけど、国王陛下が謝罪するなんて異例中の異例だ。

普通は非があっても謝らない。特に公式の場ではまずあり得ない。 

隠蔽するなり、有耶無耶にしておくことが殆どだ。

まぁ私の知識は、魔王の時にロウに口酸っぱく言われて、記憶してるものなんだけど。

絶対に公式の場で頭を下げたり謝罪をしてはいけないって。

魔族は力が全てっていう風潮が強いからってだけか…?



街の人たちはしばらく静かだったけど…突然国中へ響いてるんじゃないかと思うほどの歓声と、拍手が上がり、それは陛下が止めるまでいつまでも続いた。

王妃様は頭を下げたままだけど、泣いてるのはわかった。


「ありがとう。皆、ありがとう。 少しずつでいい、ドラゴンを恐れず、良き友人としてこれから先、共に歩んでいける事を願う」

歓声と拍手はまだ止まず、そのままアルフィー様のお披露目となる。

騎士様からアルフィー様を受け取ると抱き上げる陛下。 


「先日産まれた、我が娘アルフィーだ。今はまだ幼いゆえ、ドラゴンの姿だが、いずれ人の姿になれる。その時はまた改めて皆に紹介する!」

陛下に抱かれたアルフィー様は、歓声と拍手の凄さに怯えるかと思ったけど、気にするでもなくじーっとバルコニーから見える風景を眺めてるように見えた。

さすが王族…。私とはキモの座り方が違うわ。 (街の人から不満の声は全くないよー。びっくりしてたり戸惑ったりはしてたけど)

それは何より。

多分それも今まで陛下たちが積み上げてきたものなんだろうね…。

私は素敵な王族の方達と知り合えた事に感謝しないといけないな。きっかけはどうであれね。 (ママがいいなら!)

うん。もう別に王子への恨みとかなんてないし。今はむしろノワルレイナさんと幸せになってほしいだけだよ。 (ママ、王子に振られたのにいいの?)

なんでそうなる!? (だって、まずはお友達。ゆくゆくは妻にーって言ってたし)


……あったっけ?そんなこと。 (ママの記憶から消えてるのならいいの! 忘れて!)

うん。別に王子にそんな感情もないし。別にどうでもいいかな! (振られたのはむしろ王子だった)

さすがにそれは王子の立場上、不名誉になるからやめてあげて…。 (はーい!)


私がティーと話してる間も陛下のお話は続き、ドラゴン達の編隊飛行も続いている。

定期的に雲を消してるのは、またウインドドラゴンの人かなぁ。お疲れ様です…。


陛下の挨拶も大歓声の中終了し、バルコニーから部屋へ戻る。

ふぅ〜緊張したわ…。 (ママもお疲れ様!)

ありがとう。まぁ立ってただけなんだけどね。


「アスカちゃん、あれは何!? 説明してくれるわよね?」

近い近い王妃様…。今、ドレスの締付けで私の動きが鈍いから堪忍してください。

重大任務が終わったと思って気を抜いた途端にコレですか!? (ママがサプライズしたからだし)

反論できねぇ…。 (せっかく素敵なドレスなんだから口調にも気をつけましょう!)

はい。すみません…。





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