雲を引く
私が思いついたのは航空ショーとかでやる、飛行機が雲を引くやつ。
うまく言葉では説明できなくて、実際に作成して実演してみせた。
水と炎の魔法を使って水蒸気を発生させて、それを氷の魔法で冷やして強制的に飛行機雲を作る。
厳密には航空ショーのスモークとは違うけど、イメージとしてはそれ。
身体に固定しやすいよう角筒状の魔道具にして、レウィに背負ってもらい、走ってもらった。
うまく筒に空気が入れば擬似飛行機雲ができる。
燃焼による色はつけられないけど、そこは魔法でね? (魔法便利!)
イメージ次第で割と何でもできるからなぁ。
「レウィが雲を引いてるわ…」
「まさかこれをドラゴンがつけるの?」
「そう。短時間ならああやって残るから空に簡単な絵もかけるよ。 レウィ、飛び跳ねたり自由に動いてみて!」
「わう!」
まっすぐ走ってたレウィが、ジャンプして空中で回転したり…。
それが雲の軌跡として残る。
「面白い面白い!」
「すごーい! きれー!」
フィアとニレにも好評だね。
「リア、どう思う?」
「カッコよすぎるわよ。これをたくさんのドラゴンがつけて、空に雲を引くんでしょ?」
「そうだね。色も希望に沿うよ。ただ、風が強いと流されて消えていくけどね」
「それでもよ。早く使ってみたいわ」
「私、長老様に話してくる! レウィ、ちょっとついて来て!」
「わう? 主様?」
「いいよ、ついていってあげて」
「わう!」
レウィは雲を引いたまま翔けていった。
「お姉様、この辺モクモクになったの…」
「そのうち消えるから大丈夫よ」
とは言え、さすがに真っ白だな…。
「ティー消せるよ!」
そう言うとティーは風魔法で吹き飛ばしてくれる。
「ありがとう、ティー」
「ふふーん♪」
オンオフ付けないとダメだな。 (常にモクモク)
ここは山の上で風があるから余計にだね。筒の中を風が抜けると雲ができちゃうから。 (じゃあ蓋する?)
うん。それがいいかも。
しばらくして戻ってきたティアねえ様曰く、長老様の所へ行く間にも雲を引くレウィを目撃したドラゴン達で話題になって、結構な騒ぎになってるらしい。
それはごめんなさい!
「みんなつけて飛んでみたいって盛り上がってるよー。私達もたまに飛んでると翼で雲が出来るけど、理由はわからないし」
「あぁ…ドラゴンでもなるんだ?」
「アスカ知ってるの!?」
「詳しくは省くけど…ヴェイパー現象っていって、これと似たような物だよ。普通は一定の条件が揃わないと出ないから。この魔道具はその一定の条件を強制的に満たしてるんだよ」
「へぇー。 アスカ、それちょっと借りていい?」
「うん、レウィ、ありがとう。外すね」
「わう…」
「そんな楽しかった?」
「わう! 主様につけてもらったから」
「そっか、でも常につけてると大変なことになるからごめんね」
「わう」
レウィから外してたら、ティアねえ様がドラゴン姿になってた。
「アスカ、付けて!」
「ねえ様ズルいわ!」
「フィアもー!」
「順番ね? ティアねえ様、ぐるっと回ったら降りてきてね」
「わかったよー!」
胴体にベルトで固定してあげると、ティアねえ様は空へ飛び立った。
イメージ通りのスモークだな。
飛行機よりドラゴンのが小回りが効くから複雑な軌跡を描けるのかー。
「アスカー私も欲しいわ。 ねえ様がちっとも降りてこないもの!」
「おねえちゃん、フィアもー」
今飛んでったとこだけど!?
まぁこの際だ、量産するか。 (ママ…)
ティーも? (うん!)
それならもう少し小型化しないとだね。
今のは直径が30センチ以上あるし…ティーのは半分くらいにしないとな。
ドラゴンなら自身から魔力の補充をしつつ飛んでも大丈夫だろうけど、一応魔力電池はつけて、使わない時はエアインテークを蓋できるように…。
とりあえず大小どちらも3つ作成。色は水色、緑色、紫色の三色を各2つ。
魔道具のサイズは違っても引くスモークの太さは同じになるようにしてある。
リアは小型の水色スモークのをドラゴンハーフ姿で抱えて飛んでいった。
ドラゴン姿になったティーにも小型のを背負わせてあげた。こっちは紫色のスモーク。リアを追うように飛んでいく。
フィアはドラゴン化したら、大型のをつけれるだけの大きさに成長してる。
ドラゴンになったら、もう2メートルは超えてるから。
前はティーと同じで抱きかかえれるサイズだったのに…。
ドラゴン姿を見るのが久しぶりなのもあるんだろうけど、成長って早いなぁ…。
フィアもティーと同じ紫色の大きい方を背負わせてあげた。
「ニレ、乗って!」
「わーい!」
フィアは背中にニレも乗せるとすごい速さで上昇していく。
せっかくだしカメプロで撮影しておくか。
飛んでる当人達も見てみたいだろうし。 (みたーい!)
ドラゴンより更に小回りのきくハーフ姿のリアがクルクル円を描きながらトルネードしていき、その円の真ん中をティーが飛び抜けていく。あんなストローあったな…。 (ちょーたのしー!)
それはなにより。極力、魔力の消費は少なくはしてあるけど、枯渇に気をつけてね。 (はーい!)
「すごいの…空に模様が…」
「わう! 飛べるの羨ましい」
確かになぁ…私も飛べないし。
フィアはティアねえ様と並んでキレイな編隊飛行を見せてくれた。
それに感化されたのかティーとリアも合流して4本の飛行機雲がきれいな等間隔で引かれていく…。
これは壮観だ…。 (ふっふ〜♪)
「アスカー私のも色つけて!」
そう言いながらティアねえ様が降りてきた。
「緑なら大小、と水色なら大があるよ?」
「緑色!」
プロトタイプのを外して緑色に交換。またすぐに飛んでいった。
撮影をシエルに変わってもらって、プロトタイプも同じ仕様に。 (ママ、これ蓋の開け締めはどうしたらいいの?)
魔力流してイメージすればいいよ。ブラインドカーテンみたいになってる3枚の板が閉じるだけだから。
私の説明を受けてすぐに実行できるティーは流石だよ。 (でしょー!)
空にとぎれとぎれの雲が点々と出来てる。 (これなら出来そうー)
うん? (見ててー)
ティーの動きを見てたら…ママスキ…って…雲で書いてくれたの!?
かわいいなぁもう…。 ありがとうティー。私もティーの事大好きだよ。 (にひひー♪)




