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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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ツキ



気持ちを切り替えて館へ戻ろう。 と、そう思って歩き出したら呼び止められた。

「少しいいかしら…」

振り向くと、そこに居たのはピンク色の髪に、スタイルのいい美人なお姉さん。にしか見えない…

「皇后陛下…」

「あら、私はもう普通のおばさんよ」

それは流石に無理がある。先代様の奥様であり、現皇帝陛下の母親なのだから。なんていうんだっけ?皇太后様?

それに…

「お姉さんにしか見えない見た目で”おばさん”はないですよ」

「あらあら…嬉しい事言ってくれるわねぇ。貴女よね?アリッサちゃんの愛弟子って」

「愛弟子かはわかりませんが…弟子ではあります、師匠には色々な事を教えてもらいましたから」

「ふーん…えいっ!」

!? 突然抱きつかれて意味がわからない。

この人は何をしてるのだろうか。


「私がアリッサちゃんとこうしていた時、怒ってたでしょう?ヤキモチ?」

「っ! ……かもしれません。ですが、まだ自分の気持ちが良く分からない、が正直なところです。ただ…師匠に、必要とされなくなるのは悲しいです…」

「ふふっ。それは大丈夫よ。あの子、私と再会してからアスカちゃんの話ばかりしてたから」

「出来の悪い弟子で迷惑ばかりかけましたから…」

「あははっ。アリッサちゃんも随分手強い子にご執心ね」

笑い事ではないのだけど。


「あの、そろそろ離してください…」

「えー。 …まぁいいわ。 あっ、大切な事いい忘れてたわ!」

「はい?」

「この世界を救ってくれてありがとう、勇者様!」

そう言うとさっさと館の中へ行ってしまった。

なんだろうあの人は…。見た目以上に幼いというか。

世界の事をついでのように言ってるし。

掴みどころがないとでもいうのか、何を考えてるのか全くわからない。



館へ戻ると、師匠は領主代行と打ち合わせをしてると言われたので、私は怪我人の最終確認をして、いつでも転移できるよう騎士団の人達に転移について説明を済ませた。

心配そうな顔をしてるティーを抱き上げると、ようやく気分が落ち着いた。 (よかったー)

いつもありがとティー。 (どういたしましてー)

騎士団の人達も師匠からの指示があるまで待機らしい。



しばらくして、帝都へ帰るために師匠が騎士団を大広間に集める。

元々師匠の部下で、皇太后様の護衛騎士として随伴していた、全員が元魔剣士団らしい。

合流した以上、指揮系統は団長である師匠に集約される。

「アスカ、頼む…」

「…はい」

師匠の腰に抱きついてニヤニヤしてこっちを見てる皇太后様は何がしたいのだろうか。

師匠も嫌がる節もないし。いいけどね別に。


「ママ、大丈夫?」

「うん?問題ないよ。魔力も充分」

「…そう」

ティーが元気ないほうが心配だよ。 (元気無いのはママ。心配なの)

私は大丈夫。なんとなくだけど、気持ちの整理はできたからね。 (ならいいのー!)

「魔法陣から出ないでくださいね」

全員が魔法陣に入っているのを確認して転移。


ーーーー

ーー


旧騎士団の訓練場で、メリアさんが数人の魔剣士団を護衛に待機していた。

「お母様! よくご無事で…」

「メリアちゃん! ただいま! …大きくなったわね」

よく分からない人だけど、私にとっては恩人でもあるメリアさんのお母様だし、再会の手助けが出来たのなら良しとしよう。


「ママ、後は精霊!」

「そうだね。チョコと一緒に行こうか」

「あい!」

「アスカ、少しいいか?」

「…はい。なんですか?師匠」

「いや…あのな?」

「はい?」

「……………」

何?用事なし?

「あの、大切な用事じゃないのなら私は精霊の確認に行きますよ?メリアさんに報告しなければいけませんから」

「あ、あぁ。頼む…」

何なのよ。こんな師匠、らしくない。

いつもならこっちの都合なんて気にしないし、一方的で…。遠慮なんて絶対しないのに。

やりにくい…。



「メリアさん、私はティーと精霊の確認に行ってきます。長くはかからないと思いますから、戻ったら報告します」

「は、はい! お願い致します!」


みんなの邪魔にならないように広い訓練場の端へ移動し、チョコを呼ぶ。

「チョコ、またお願いね、ティー行くよ」

「あーい!」

私達がチョコに乗ると、大きな翼を羽ばたかせてふわっと飛び上がる。

「チョコ、前に行った森までお願い。速度は任せるよ!」

背中を撫ぜると、グォーーっと嬉しそうに吠えたチョコは一気にトップスピードまで加速。

今回は私と、私の前に座るティーだけだから。

たまにはチョコにも自由に飛んで欲しい。


「すっげーはえーー!」

「チョコだしね。召喚獣の中でも一番付き合いが長い子だから」

「一番強い?」

「うーん、一概には言えないけど、乗せてもらっての速さや力強さならチョコが一番かな」

「ほかはー?」

「魔力と単体での移動速度ならクッキーだし、単純に一撃の強さならラムネのブレスだろうね」

「キャンディは?」

「あの子はやっぱり、隠密や諜報に向いてるね。戦い方はみんなと違うから比較はしにくいかな」

「みんなすごい!」

「うん、そうだね」

上空から見る景色は、聞いた通り、森の大部分は木々が生い茂り青々として、伐採されたりとボロボロだった面影は既にない。

対象的に、平原側は変わらず戦場跡地のまま。森の際ギリギリには草も生え揃ってきてるけど…。



さすがチョコの全速。

あっという間に廃村を越え、以前降りた池のほとりに着陸。

「せっかくだし、みんなも呼ぼうか」

「おー! 喜ぶの」

「クッキー、ラムネ、キャンディおいで」

出てきたみんなと先ずはスキンシップ。


「ますたぁ〜なにか用事かしら〜?」

「ううん。私がみんなに会いたかったのと、少しの間だけどここで自由にしてていいよ。ラムネの好きな水辺もあるからね」

「そう〜わかったわ〜」

池の周辺で思い思いに寛ぐみんなとは対象的に、私の腕に絡みついて離れないキャンディ。

「自由にしてていいんだよ?」

「してるわ〜」

本人がいいのならいいけど。


森を歩き、以前リコの枝に魔力を注いだ場所まで移動する。

前はこの辺も開けていたけど、森に飲み込まれたな…。

「まさか村も森に飲まれた!?」 (樹海に沈む村…)

「大丈夫。村はへーき」

スーっと地面から現れたのは名前をあげる前のリコによく似た姿の精霊。

リコより色が薄く、春の新緑のように鮮やか。

「再生ありがとね、大丈夫だった?」

「おかぁさんが手伝ってくれた」

「おかぁさんって、リコ?」

頷く精霊。 呼ぶか。その為にチーズケーキも用意してきたし。


「リコ、おいで」

魔法陣からピョコっと顔を出す。

「ママ、やっと来てくれた。頑張ったのよ?この子」

「そうだね、リコもありがとう」

「なまえー」

横から服をくいくいっと引っ張る精霊の子。かわいいかよ…。


「今回はちゃんと決めてきたよー。君の名前は”ツキ”だよ」

例の如く魔力を吸われ、眩しく光ったと思ったら蔦のようだった髪がサラサラヘアーに。

そこまではリコと同じだったのだけど…

「ありがとうママ…」

またママと呼ばれるのね。ただ、リコの時のように幼さが抜けたりしないな。 (話し方も変わらないのー)

だよね。

「リコ、ツキはどうなったの?」

「どうなったって…最上位精霊になってるわよ?」

「その割に、なんというか幼いままじゃない?」

「うーん、多分それはこの子の希望。私をおかぁさんと呼ぶくらいだから」

「本人の意識も絡むのか…じゃあ、あの時のリコは…」

「…反省してるわ」

「力が欲しかった?」

「そうね…精霊なら誰もが望むことよ?でも、この子には私がママから教わった事を教えてきたから」

「そっかぁ。偉いねリコ、ちゃんと面倒見てて」

「これでも樹の精霊を束ねる立場なんだから当たり前よ」

「じゃあ、そんなリコと、頑張ってくれてたツキにはご褒美だよー」

ストレージから、今朝用意したチーズケーキをだして食べやすいサイズに切り分けてあげる。


「おかぁさん…?」

「いいわよ。ママにお礼を言って一緒に食べましょう」

「うん。 ありがとうママ」

「いいよー」


仲良く食べる精霊親子を見守る。

「ティーも食べていいからね?」

「ありがとうママ!」

チーズケーキの乗ったお皿を渡してあげると嬉しそうにしてる。

いいね、幸せだ。


「可愛いものよね〜私もますたぁとの子供ほしいわ〜」

「サキュバスって子供産むの?」

「知らないわ〜聞いたことないわね。試してみる〜?」

「残念でした。私も今は女だからね」

「む〜じゃあ私がますたぁを…」

「だめだよーティーが許しません!」

「いいじゃない〜」

「なら戦うー?」

「それは無理〜ますたぁの大切なティーに攻撃なんてできないわ〜」

「優しいねーキャンディは」

「だって私はますたぁの召喚獣だもの〜」

そう言いながらすりついて嬉しそうにしてる。


「ずるいーティーも!」

「はいはい。ティーもありがとう」

「〜〜♪」

私はやっぱりこうしてる時が一番幸せだなぁ。

色恋はよくわからないよ。



平原に関してリコに確認したら、リコもツキも樹の精霊だから平原は管轄外。

土や草の精霊に働きかけることは出来るけど、そっちの精霊はみんな下級らしく二人のように大きな力はないらしい。

「土地も荒れてるからあの子達が成長するのにも時間がかかるわ」

「そっかー」

「一つ方法があるとすれば、ママね」

「魔力をあげればいい?」

「そういう事。待ってね、良い子を連れてくるから」

そう言うと、リコは溶けるように地面へ消えていった。

私、リコとツキしか見えないのだけど?


ツキはおとなしい子なのか、ゆっくりとチーズケーキを食べてる。

「美味しい?」

こくこくと頷くツキ。

味わってるようだし、邪魔するのも可哀想か。



「ママ、連れてきたわ」

「…見えないんだよなぁ」

「あぁ…。 みんな、この人は大丈夫。私のママだから姿を見せてあげて」

リコがそう言うとスーっと小さな小さな精霊が三人。精霊側が姿を見せようとすれば私でも見えるのか。


「この子が土の精霊、こっちの子が草の精霊で、そっちの子が水の精霊」

「よろしくね」

警戒しているというよりは、怯えているようで、三人固まってくっついてる。

無理矢理みたいで可哀想になってくるのだけど…。


「大丈夫だから。 ママ、手を出して」

「こう?」

両手を広げて差し出す。

そこへリコが三人を乗せる。

「そのまま魔力を分けてあげて」

「わかった」

手のひらへ魔力を集めて三人へ渡すようにイメージ。

同時にビクッてした三人はキラキラと光りだす。

「おーすげー。キラキラー」

「なんか神秘的ね〜」

二人にも見えてるのか。


「ママストップ! それ以上はこの子達耐えられない!」

慌てて魔力を遮断。

手のひらでグッタリとしてしまっている。

「大丈夫なの!?」

「ええ。魔力が馴染むまでは仕方ないわ。後は私達に任せて」

リコが三人を抱えて、連れて行った。

任せたほうがいいんだろう。


「リコ、その子達が成長してどれくらいで再生が始まるの?」

「急いでるの?」

「ううん。報告義務があるから確認してるだけ。リコもツキもその子達も絶対に無理しないで」

「わかったわ。 魔力が馴染むまでに数日、それから再生を始めるけど、あの広さだから…」

「森より時間がかかると思っておけばいい?」

「そうね…無理しないのなら気長に考えておいてほしいわ」

「わかった。ゆっくり、自分たちのペースでいいって伝えておいてね。私達人間や魔神軍がボロボロにした物をなおしてもらうんだから…絶対に無理させたくない」

「ええ…」


報告するべき情報も得られたし、帰りますか。 (はーい!)

ティーはまたクッキーに乗りたいって言うし、キャンディはもうしばらく一緒に居たいって離れないからそのまま連れて行く。

「ラムネはどうする?」

悩むような仕草をした後、光ったと思ったら小さくなって、私の首にマフラーのように巻き付いてきた。

「ラムネまで小さくなれるようになったの!?」

「その子一番大きいから〜ますたぁと一緒にいる為にってクッキーから習ってたのよ」

「そうなんだ…頑張ったね。凄いよラムネ。 クッキーもありがとね」

「おーちっこいラムネかわいいー!」

ティーが撫ぜてあげるとうっとりしてて可愛いわ。


「よしっ、じゃー帰ろう!」










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