表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

369/771

行き先



土曜日早朝。

朝からチーズケーキを焼いてたら匂いにつられてみんな集まってきた。

そのまま今日の予定を告げたのだけど…


リビングに集まるうちの家族は一触即発状態。

主に、私VS未亜&ドラゴン姉妹が、だけど。


どうしてこんな事になってるかといったら、どこへ転移するかで揉めてるから。

師匠に会いに行きつつ、精霊の確認をしたい私と、ついてくるティー。

それを阻止したいというか、なぜか許してくれない未亜と、ドラゴン姉妹。

完全に中立で、見守るユウキ。

よくわかってない感じのシエルとレウィ。


「師匠の所からは日帰りだから、今日中には帰るよ。明日はドラゴライナへ行かないと…そのまま千年祭をお祝いするまで滞在するつもりだし」

「今からすぐドラゴライナへ行けばいいじゃない!」

「そうだよーたいした用事でもないんでしょー?」

「お姉ちゃん、お義母さん達のお手伝いしなきゃだよ」

「いや、お手伝いはアキナさんに断られてるからね?それに、精霊の確認は大切なの!」

「そんなこと言って! あの人に会いたいだけでしょ!」

「師匠だもん会いたいよ!」

「私達より大事なんだー…」

「そんなこと言ってないじゃない」

こんな感じで、私が師匠のいる世界へ行くことを許してくれないんだよ…。


「姉ちゃん、間違いなく今日中に戻るんだよね?」

「うん。主目的は精霊の確認と名付けだからね。よほどイレギュラーがなきゃ時間を戻したりもしないよ」

「行ってきていいよ。僕たちは留守番してるから、こっちは任せて」

納得してない子達が大騒ぎしてるけど大丈夫かな…。 (へーき!)

そうならいいけど…。


「お姉様、気をつけて…」

「ありがとう。シエルもいい子にしててね。おやつにチーズケーキみんなで食べて。冷蔵庫に入れてあるから」

「ありがとうなの…!」

「わう、主様の拠点は守ります!」

「レウィもありがと、お願いね」

こっちを見て頷くユウキに頷き返し、ティーを抱いて転移。


ーーーーーー

ーーーー

ーー


「やっと来たか…待ちくたびれたぞバカ弟子め!」

そう言う師匠に思いっきりハグされた。抱いてるティーが潰れるから離してー! (ぐぇー柔らかい暴力…)

まさか転移してすぐ師匠が待ち構えてるとは…。 (びっくりしたー)

こっちにも分体置いたんじゃないの? (少しだけだし、この世界のこと知りたくて情報しゅーしゅーであちこち行ってるから)

なるほど…。


「師匠 いつから待ってたんですか?」

「毎日ここにいたが?」

「暇なんですか…?」

「やかましいわ。 お前のおかげで、私が直接手を下すような事はほとんど無くてな。ここで指示を出すだけになってるんだ」

「そうですか。師匠がゆっくりできてるのなら良かったです。でも、いいんですか?陛下を放置して…」

「メリア…陛下には私の部下だけじゃ無く、シャーラを始めとした暗部も常についてるからな」

「だからって師匠がサボってていいんですか?」

「サボってたわけじゃない。 お前を待っていたんだ」

どういう事?


「まず聞きたいことが一つ、後は陛下からもくわしい話があるが、頼みがある」

「わかりました、なにやら重要そうですね」

「あぁ…まずは陛下のところへ行くぞ」

「はい!」

なんだろう…精霊の事かな? (それもありそう。かなり広範囲まで再生してるから)

そうなの? (うん、リコも時々来て手伝ってたから)

お礼、言わないとね。


師匠の案内でメリアさんの私室へと入る。

「アスカ様! ティー様! お待ちしてました」

わざわざ立ち上がって駆け寄ってきてくれるメリアさんを何故か師匠がブロック。

「…アリッサ、なんのつもりですか?」

「大切な話があるだろう。急ぎの要件が」

「っ…わかっています…! アスカ様、まずはお掛けください」

メリアさんの向かいへ座りティーを膝に乗せる。師匠も隣に。

「………」

「………」

師匠とメリアさんが睨み合ってて怖いんだけど! (火花が見える…)

確かに見えそうだけども。


「あの…メリアさん、お話ってなんですか?」

「…はい、まずは森の再生についてです。アリッサから大凡の話は聞きましたが、詳しく話していただけますか?」

「わかりました」

リコの事から始まり、精霊が生まれて再生をしてくれている事などを順を追って説明していく。


「現在、報告によると森はかつての姿を取り戻しつつあるそうだ。だが平原などの戦場跡地はほぼ手つかずらしい」

「わかりました。今回私が来たのも精霊の確認が主な理由なので、確認が取れ次第報告します」

「私に会いに来たんじゃないのか!?あぁ?」

「もちろんそれもありますが…自分のやった事の顛末は確認すべきかと」

「…まぁそうだな」

「アスカ様、私は…?」

「はい?」

「私には会いたくなかったんですか!?」

「いえ、そんなことは…。ただ、メリアさんは皇帝陛下ですし、戴冠式の後はお忙しくて、おいそれとはお会い出来ないのでは?と思ってました」

「アスカ様が来て下さったのなら、たとえ忙しくてもすべての予定をキャンセルしてでも、時間をあけます!」

それはダメじゃないかなぁ…。

「バカなことを言うな。皇帝という立場を弁えろと、先代様に叱られるぞ」

「うぅ…」

「それよりメリア、本題だ。大切な事だろう」

「…はい。 アスカ様。お願いがあります」

「私にできることでしたら」



話の発端は数年前、魔神騒動の始まる直前まで遡る。

メリアさんの母親、つまり当時の皇后様は、数年ぶりに故郷である隣国へ外交という名目の里帰りをしていた。

そのタイミングで運悪く魔神騒動が始まり、国家間の行き来がどこもストップ。

帰国できないどころか、正確な情報さえ入ってこなくなった。

というのも、魔神側が各国へスパイを放ち、民間へのデタラメな情報を流し始めて、それがまことしやかに飛び交う様になったから。そのせいで国家間の関係が悪化し始めた。

原因に気がついてから対策をした各国は、最終手段としてやむなく国境を封鎖。

情報の封殺を狙ったが結果は芳しくなかったらしい。

すべてが後手にまわっていたから仕方ないといえばそうなんだろうけど。


だから私達も勇者と云う立場をハッキリさせて、それでようやく国境を超える事ができる、というくらいには国の移動が厳しかった。

そのせいもあって、どこからか情報が漏れていたのか、国境付近では大体、魔神側の待ち伏せにあい戦闘になった。

幹部の一人と戦ったのも国境付近だったなぁと思い出す。



「私のお母様が見つかりました」 

「本当ですか! 良かったですね、本当に…」

「それがな、良い事ばかりでもないんだ。ある程度の情報は入るようにはなったが、どの国も未だ治安の回復が出来てなくてな、混乱は続いている。それに一度断たれた国交を回復させるのも一筋縄ではいかん」

「はい…元々友好国だった国も、上層部がまるごと代わっていたりと、どの国もお互いの腹を探り合っている状態でして…」

「まぁ、そうは言ってもうちは魔神を倒した勇者を輩出した国として、一番有利な立場ではあるんだがな」

私とユウキの存在がプラス効果になってるのならいいけど…。


「かなりの遠回りをして比較的安定している国を経由し、ようやく我が国の国境付近の街にお母様が辿り着いたと報告がありました。ですが、そこまでの道中で護衛の半数以上が負傷していて、それ以上の移動は危ないとも…」

「なるほど…お迎えに行けばいいんですか?」

「行っていただけますか? 本当に重ね重ね申しわけありません…」

「アスカがあと2日遅かったら、私が魔剣士団を引き連れて迎えに行く予定だったんだ。まぁ私は来ると信じてたがな! メリアが最悪の場合に備えてそういう準備をしていたんだ」

「その言い方では私がアスカ様を信じていなかったみたいじゃないですか!」

「違うのか?」

「私の立場では、ありとあらゆる可能性を考えて、策を講じておかなければいけないのです!」

「皇帝陛下ですものね。さすがですメリアさん」

「ですよね!? ほらごらんなさい!」

「フンッ」


「ママーどうするの?」

「もちろん迎えに行くよ。勇者として、できる事はするって約束だからね」

「りょーかい!」

「ありがとうございます…また頼ってしまう私をお許しください」

「大丈夫ですから。帰りは転移しますし」

「行きはどうするんだ?」

「距離にもよりますが…詳しい場所を教えて下さい」

「わかりました」

メリアさんが待機している騎士に指示を出し、地図が用意される。


相変わらず地図がアバウトすぎてわかりにくい。

ただ、この国境付近の港街は覚えがある。 (そうなの?)

うん、私とユウキもこの街を経由して国境を越えたからね。 (はっきりイメージできる?)

そうだね…こっちへ来てから記憶も鮮明になってるから。 あっ、転移か! (そう!)

ナイスだよティー。


師匠とメリアさんに転移魔道具の話をして、それを使い行き来できるからメリアさんのお母様を連れ帰るのは問題ないって安心してもらえた。 ただ…

「アスカとの旅が…二人きりの…」

「そんなことだと思いましたよ! 残念でしたわね」

落ち込む師匠と、何故か勝ち誇ったようなメリアさん。


少し時間をもらって、アキナさんに渡したのと同じ性能の魔道具を作成。

バングルブレスレットにして装着した。

当然私は、先代皇后様のお顔も知らなければ、相手側も私の顔を知らないので、師匠は同行する。

帰りは結構な人数になりそうだから、一緒に行くのは師匠とティーだけ。


護衛の人もいるから帰りは使われてない騎士団の訓練場へ転移するように言われた。


「それでは行ってきます。師匠は魔法陣から出ないようにしてくださいね」

「わかった。大丈夫だ」

「緊張してます?」

「まぁ…な。皇后様にお会いするのは久しぶりだからな…」

「アリッサはお母様には頭が上がりませんからね」

「…大切なお人なんだ。当然だろう」

「そうなんですね…」

「なんだアスカ?」

「いえ、別になんでもないです」 (………)

「あぁん?なんなんだよ…」

「行ってきますね、メリアさん」

「お願い致します…」

イメージするのは魔神軍との戦闘で、当時の私とユウキが暴れてもびくともしなかった国境の壁。

あれならまず壊れてないだろうし、死角になる場所もあるからそこへ。



ーーーー

ーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ