先生の私室
今朝も登校中に奈々と麻帆が合流。
また遠回りして来てくれたのね。
「今日だよね!食事に行くの」
「アスカちゃん、本当にお金払わなくていいの?」
「大丈夫。麻帆だって被害者なんだからね」
「…ありがとう」
「どんなお店だろ、すっごい楽しみー」
「放課後に案内するから、楽しみにしてて」
「ふふふー。私は私服持ってきたんだー」
「私も一応。奈々がしつこいから」
「そうなの?」
私もストレージに何着か持ってるからいいけど、どこで着替えるつもりなんだろう。
公園のトイレってあまり着替えには適さないよ?ストレージのある私だから問題ないだけで…。
「奈々、どこで着替えるつもり?まさか教室とか言わないわよね?」
「まさかー。保険のせんせーに頼んで、部屋を借りて着替えればいいし! アスカも持ってるよね?着替えくらい」
「うん、持ってるけど。保険の先生か…」
「何かあったの?」
「いや…あの先生顧問なんでしょ?」
「バレてたかー。だから着替えくらいさせてくれるよ。多分…」
確証はないのか…。
お昼休みに三人で保険室へ行って先生にお願いする事にした。
「せんせーいるー?」
「いるわよー奈々ちゃんまた腹痛? それにしては声が元気よね」
保健室のデスクで作業をしてる先生が顔を上げずに返事をする。
「待ってね、すぐ終わるから」
「はーい!」
5分も待たずに作業の終わった先生は顔を上げてびっくりした様子。
「アスカちゃん!? 麻帆ちゃんまで…どうしたの?だれか体調不良?」
「すみません、先生。少しお願いがあって…」
麻帆が真面目な顔でそう言うから、先生もなにか察したらしい。
「…わかったわ、場所を変えましょうか」
先生に案内されて、例の私室へ。
私はこの部屋にいい思い出がない。
「みんなお昼は?」
「持ってきてますよー。この後食べるつもりですから!」
「ここで食べていっていいわよ」
「やった! ここ落ち着けるから好きなんだよねー」
奈々は頻繁にきてるんだろうか…。
先生もお弁当らしく、みんなでテーブルにお弁当を広げる。
「アスカ!」
「わかってるってば。食べていいよ」
「………」
すっごい顔で先生が見てくる。
「先生もよかったらどうぞ。私が作ってるので、お口に合わなかったらすみません」
「いいの!?ありがとう!」
「アスカちゃんの手作りで口に合わない人とかいるのかしら…」
「そりゃあいるでしょう。誰にだって好き嫌いはあるし」
「それもそうよね」
「んんっっ〜〜〜おいしい!」
「そうでしょ?うちのアスカが作る料理は絶品なんだから!」
「はぁ〜。こんな幸せあっていいのかしら…」
先生の口にも合ったみたいでなにより。
「麻帆も食べていいからね」
「ありがとう。いただくわ」
私もみんなからいくつかおかずをもらって食べる。
先生のお弁当も美味しいな。
美人で料理上手な保健室の先生とか…そりゃあモテるわ。 (ママなら女医さん)
なんでそうなる…。 (魔法で何でも治せるし…)
それはそうだけど。
「それで、お願いって?今なら大体の事聞いてあげるわよ!」
「マジで!?じゃあ好きなときにベッド貸して!」
「奈々、ちょっと黙ってて」
「ちぇー」
「今日の放課後に着替えたくて、ここを貸してもらえませんか?」
「そんな事? 別にいいけど…なんで着替えるのか聞いてもいい?」
麻帆が順を追って説明してくれて。保険の先生だし、当然奈々の事情も知ってるから快諾してくれた。
「いいわねー私も行きたいくらいだわ」
「残念! 先生はお断り!」
「酷いわ奈々ちゃん…うぅ…」
「その嘘泣き、男子にしか通用しないよ?」
「バレたかー」
奈々と先生は仲いいなぁ。
「アスカちゃん、ここに来てから大人しいわね?どうかした?」
「そういうわけでもないよ」
まさか保険の先生がちょっと苦手とか言えるはずもなく。 (そなの?)
交換条件でお姫様だっこさせられたんだから仕方ないじゃない。 (あぁ、お姫様抱っこ強要事件!)
事件性はないと思うけど。
「…先生、アスカに何かした?」
「そ、そんなことは…私は何もしてないというか…」
「じゃあ、アスカちゃんに何かさせた…?」
「うっ…」
「どう思いますか、麻帆さん!」
「有罪だと思うわ、奈々さん」
ここでも断罪イベントか…。
奈々と麻帆に詰め寄られて、最終的にクラブへ報告すると脅されて先生はすべてを吐いた。
「悪気はなかったの! ちょっとした出来心で…」
「これは報告しなきゃいけないよね?」
「お願い許して! そんな事になったら顧問外されちゃう!」
「仕方ないなぁ! その代わり時々ここ貸してね?」
「うぅ…わかったからぁ」
「はぁ…アスカちゃんもそれでいい?」
「私は別に…どうでもいいかな。用事が無きゃ来ないし」
「せんせーアスカに嫌われたね?」
「そんなぁ…」
苦手なだけで嫌ってはないけど…。
「そろそろお昼休みも終わるわ。先生、ありがとうございました。放課後、お願いしますね」
「…うん」
メソメソとしてる先生を残して午後の授業を受けるために私達は教室へ戻る。
「ふっふっふっ…あの部屋が自由に使える!」
わっるい顔してんなぁ奈々。
確かにあの部屋って、学校内にしては居心地が良さそうだけども。
先生の部屋だよね?まぁ私は行かないからいっか…。
放課後、着替える私達を…
「JKの生着替え…アスカちゃんの…」
とか言い出した先生は、奈々に頭から布団を被されて縛られてた。
「大丈夫なの?先生に…」
「いいんだよ。最悪うちのお母さんに言いつけるから」
ん?どう言う事だ…?
「先生って奈々のお母さんの従姉妹なのよ」
「そうなんだ」
親戚なのね。通りで仲がいいわけだ。
着替え終わった後、私と麻帆が先に部屋から出て、それからようやく先生は奈々によって開放されたらしい。
「やれやれ…せんせーにも困ったものだね」
「じゃあ行こうか?あまり私服で校内をうろつくのも良くないだろうし」
「そうね。一応校則で禁止されてはいないけど、目立たないほうがいいわ」
「アスカがいる時点でそれは無理じゃね?」
ひどいなぁ…。
仕方ない、これでどうだ!
「フードかぶったくらいで誤魔化せないから」
ダメか…。
「それにしてもアスカ可愛い! 白い半袖パーカーにショートパンツっていうシンプルなのに。なんかズルい」
「スタイルがいいのは羨ましいわよね」
「だよねー」
そんな会話をしつつ、何人かの生徒と遭遇しつつも学校をでて、予約してあるお店へ向かう。
場所を知ってるのは私だけだし、案内しないと。
この日の出来事が大きく学校へ波紋を広げる事になるのを、この時の三人は知るはずもなかった。




