法則…
出来上がった魔道具をユウキとシルフィー様に渡す。
現状は王子のもシルフィー様に渡しておくしかない。
二人には効果の説明をして、波長を刻み専用にした。
「王子様の魔道具は、戻られた時にこのまま渡してください。次にお会いした時に波長を刻んで専用装備にしますから」
「わかりました。 あの…アスカ様?着けていただいてもよろしいですか?」
えっ!? いやまぁ…みんなのもそうしたからいいけども…。
しっかり左手の薬指を主張してくるのはなんでだろう。こっちはそんな風習無いんだよね? (うん)
着けてあげた事で喜んでくれてるのなら良しとしよう。
左手を見てウットリしてるから今はそっとしておいたほうが良さそうね。
「ユウキのはコレね」
「ありがと、姉ちゃん。 王子様のは波長を刻まないまま渡してもいいの?」
「専用にならないだけ。作って持ってるのに、渡してなくて…その間に覚醒とかするよりはいいでしょ」
「それは確かに。問題はないの?」
「専用にしてないから他の人でも使えちゃうっていうのが一つ。あとは多少なり効果は落ちるね」
特に今回の内容だと専用にするに越したことはない。 (王子が戻ったらママに伝える?)
そうしてくれるなら助かるよ。 (りょーかい!)
「ティアねえ様」
「うん?」
「はい、これ。約束したからね。 今は、私達の自宅にいる時に万が一召喚されないようにする効果だけがつけてあるんだけど、なにか他に追加してほしい?」
「覚えててくれたんだね! んー身を守るのは前にもらったので充分だもんね?」
「うん。着けてくれてるネックレスで大丈夫だよ」
「なら大丈夫!」
そう言ってティアねえ様も左手を出してくる。うん、もうわかってた。
だから何も言わずに着けてあげる。
ただこれって、私以外の子達でペアと言うかお揃いになってるんだよなぁ…。 (…!!)
仲良し家族の証みたいで微笑ましいわ。
魔道具を作ったりしつつ時間を過ごしてたら、アリアさんが王妃様が起きられたと呼びに来てくれた。
アリアさんとシルフィー様に案内される形で王妃様のお部屋へ向かう。
お祖母ちゃんは借りてる自室に戻るからと、ユリネさんと一緒に行ってしまった。
お部屋へ入ると、王妃様はベッドではなく窓際のソファーで仔ドラゴンを抱いてのんびりと寛いでおられた。
「みんな来てくれたのね。嬉しいわ」
お元気そうだね。 みんなの挨拶の前に、まずは王妃様のお母様からの預かりものを手渡す。
「こちらへ来る前にお預かりしまして…」
「そう、お母様が…。ありがとうアスカちゃん」
受け取った手紙をサラッと読んだ王妃様は、手紙をたたむと荷物と一緒にソファーの下へ隠してしまった。
何だったのだろう…。 (なんかヤバそうな雰囲気)
うん。王妃様の顔が引きつってるし、触れないほうがよさそう。
それからは順番にうちの子達が挨拶をしていく。
「おめでとうございます、王妃様。これ、よかったら使ってください」
未亜は、ブランケットを。
「大変だったってアスカから聞いていたけど…お元気そうで良かったわ」
リアのは…あれなんだろう? (ドラゴン専用のお店でユウキ達が選んできたやつ。赤ちゃん用のご飯詰め合わせ!)
人でいう離乳食みたいなものかしら。
「おめでとうございます。赤ちゃん可愛い…ちっちゃーい」
ティアねえ様のは見たらわかる。仔ドラゴン専用のベッドだね。
見た目は地球でも見るようなベビーベッドなのはびっくりだけど…。 (頑丈さは桁違い)
それはそうだよね。赤ちゃんとはいえドラゴンだもんな。
ユウキは花の鉢植え。綺麗だけど、結構な魔力を感じる…。
「王妃様、おめでとうございます。この花は魔力を宿してるらしくて、仔ドラゴンの成長を祈るものらしいです」
なるほどなぁ。ミルク代わりに魔力を貰ってるのなら、成長を祈る花だと言われても納得だよ。
シエルは、レウィの毛を織り込んだ赤ちゃん用のケープをいくつか作ったらしい。
「おめでとうございますの…」
「わう! おめでとうございます! ボクの毛は、燃えないからブレスにも耐えれます」
そっか、フェンリルだもんね。それにケープなら羽織れるからドラゴン姿でも平気か…。よく考えてるねシエル。
フェンリルの毛ってかなりのレア素材だし。ただ、レウィは剥げてたりしないよね? (ブラッシングして抜けた毛だから)
毟った訳じゃないのね。 (ママのその発想のが怖い!)
「みんなありがとう、こんなに色々…。 アリア、ちょっとこの子をお願い」
「はっ…」
王妃様は、仔ドラゴンをアリアさんに預けると、うちの子達からのプレゼントを見ていく。
ユウキの渡した花は窓辺に飾られた。風にのって甘い香りと、心地よい魔力が部屋へながれてくる。
未亜のブランケットは早速羽織ってるね。落ち着いた柄だから王妃様によく似合う。
離乳食みたいなのは、やっぱり気になったのかリアに聞いてたけど、選んだのは未亜らしく、代わりに説明してた。
煮込んで柔らかくした肉とからしい。王妃様が蓋を開けたものだから、赤ちゃんが目を覚ました。
「あっ…暴れられては困ります! あぁ…」
アリアさんの腕の中で暴れてるな…。
「これはダメよ…すごくそそる香りだわ」
「うん、なんだろ…ヤバい」
リアとティアねえ様にまで影響してる!? 猫のマタタビかよ…。 (確かにいいによい…)
ティーまで!?
王妃様は指先で掬うと、仔ドラゴンの口元へ。
パクっと食べた仔ドラゴンは”きゅーー”っと鳴くとウットリしてる。
どれだけ美味しいのそれ…。私まで気になるわ。 (ゴクリ…)
一口で落ち着いたのか大人しくなって、アリアさんの腕に抱かれてる。
次はティアねえ様の渡したベッド。ちょうどいいから私のクッションも渡しておこう。
「私とティーからはこれを…」 (ティーも!?)
うん。デザイン考えてくれたでしょ。それに、小さいティーからは王妃様も受け取りにくいだろうからね。 (ありがとうママ!)
「アスカちゃん、ティーちゃん…ありがとう。フワッフワね!」
ティアねえ様の渡したベビーベッドにクッションを設置する王妃様。
未だアリアさんの腕の中でウットリしてる仔ドラゴンを受け取るとベッドへ寝かせ、背中にはシエルとレウィ合作のケープが掛けられる。
「みんなも見てあげて?」
ベッドへ寝かせたことで見やすくなったからみんなが覗き込む。
小さい子って何でこんなにも可愛いんだろう…。
みんなも感想は同じみたいで可愛いって騒ぎになってる。
騒がしかったのか、目を開けて見上げてくる姿もそれはもう可愛くて…。
「この子、どうしてアスカの事をずっと見上げてるのかしら?」
「お姉ちゃんの魔力が高いからとか…?」
「それはあるかも。ドラゴンは本能的に魔力の高い相手に惹かれるからねー」
それは前にも聞いたなぁ。確かにずっと目が合ってる気がする。
フィアの事があるから不安になるけど、この子はちゃんと御両親がいるし、大丈夫よね? (うんうん!)
しばらく見つめられていたけど、あくびをして眠ってしまった。
流石に寝てる子の近くで煩くする訳にもいかないから、ベビーベッドから離れる。
「みんなありがとう。私もこの子も、この通り元気だから、またいつでも遊びに来てね?」
そう言って微笑む王妃様は本当に幸せそうで…。
前以上に優しい雰囲気を王妃様から感じる。慈愛に満ちていると言うか…。母親になるってこういう事なのかな。
私もティーや、リコがいるんだから落ち着かなきゃなぁ…。 (ママは今のままでいいのー)
どちらにしても、今すぐに王妃様の様にはなれないよ。憧れるなって思っただけ。
「王妃様ーこの子、お名前はー?」
私も気になってた事をティーが聞いてくれて良かった。 (名前で呼んであげたいの!)
「今相談してる最中なのよ…候補はいくつかあるのだけどね?揉めてて…」
そっかぁ…王女様だし仕方ないのかもしれないね。
王妃様がセルフィー様、第一王女様がシルフィー様、この流れである程度は決まってくるのだろうと予想はできるけど…。
「第一候補は、アルフィー。アスカちゃんのアを貰うって案ね」
「ええっ!?どうしてそんな事に…」
「それは勿論、アスカちゃんのおかげで、この子が無事に生まれてこられたからよ?」
王女様なのにそれでいいのかしら…。 (歌は上手くなりそう…)
……ノーコメントで。 (ふふっ)
「シルフィーもそうなんだけど、これって親しい者だけが呼ぶ愛称なのよ」
「そうなんですか?」
「はい。私の名前はシルフィーア・アクリシアスです。公式な場でしか名乗らないのですけどね」
フィアに似てた! (被るとこだったの!)
あっぶねぇ…。 (ママ…)
ごめんってば。
「私も、此方での名前はセルフィーアなのよ?」
「そうなると、アルフィーアって名前になるのかしら…」
「そうなのよ、ルナリアちゃんの言うとおりね」
(歌わなくなっちゃう!)
イヤ、それは問題じゃないから。
「うちも、かあ様はシア、私がティア、それにリアに、フィア…みんなアが入ってる。これってもう運命だよー」
「確かにそうよね…ふふっ。私達にもアスカのアが入ってるのね!」
「わ、私だって、未亜だから、アははいってるよ!」
いやいや…みんなは何を張り合ってるのよ! (ティーはないの…)
ティーは元々私の一部みたいなものじゃない。それに、ティーの名前の由来は? (セーフティ…安全装置…ア入ってた!)
そうね?
「名前にアが入る人はママに惹かれる法則…」
「「「………確かに」」」
確かにじゃないから! 未亜もリアもティアねえ様も何をいってるの? (でもアリアさんもだし…)
ティーが変なこと言うから…。 (だってー)
「ふふっ、何それ。確かに私もアスカちゃんの魅力には惹かれるものがあるけど…まさか、他にもいるのね?」
「ママのししょーも、皇帝陛下も!」
「ティーちゃん、その話詳しく!」
「私も聞きたいです…」
王妃様とシルフィー様が食いついてしまったよ…。




