お祖母様
「すみません、国同士の事で簡単なことじゃ無いって、頭ではわかってはいるんですが…」
成り行きとはいえ、私も魔王として国のトップをしていたんだから、頭ではわかるんだよ?でも…それでも…
「そうね…私はまだいいとしてもお祖母様は国のトップですものね」
「はい…私が勝手にしてる事なのでアキナさんは知りません」
「大丈夫よ、陛下なら柔軟に対応してくださるわ」
「そうなんですか?」
「ええ。だって…私が惚れた人ですもの」
そこで惚気けられるとは思わなかったけども。 (アツアツー?)
だねぇ。本当に素敵なご夫婦だよ。
シルフィー様が戻られる迄少し掛かるだろうなぁ…。
「アスカちゃん、ティーちゃん」
王妃様に手招きされて、ベッドへ近づくと仔ドラゴンを見せてくれた。
白銀の姿は美しく、キラキラしてて…くぁぁ〜って欠伸して見上げてくる瞳は紫色。
ヤっバぁ…めっっっちゃ可愛いっ! (ちっちゃー! かわゆー!!)
「抱いてあげて?」
「いいのですか…?」
「ええ。アスカちゃんが救った命よ」
抱いてたティーを一度おろし、恐る恐る仔ドラゴンを受け取る。
撫ぜると硬いような柔らかいような…でも温かくて。ティーとはまた違うんだ…。 (生まれたばかりの本当の赤ちゃんだし)
そっか…。目を細めて気持ち良さそうにしてるのがもう…可愛すぎるよ? (この子…魔力高い)
それはそうだろうなぁ、確実にセイントドラゴンだろうし…。
撫ぜてたら眠ってしまったのでそっと王妃様へ返す。
「可愛いでしょ?」
「はい…物凄く。ちょっと反則レベルです」
「ふふっ、ありがとう」
ティーと一緒に、眠る仔ドラゴンを眺めてたら、シルフィー様が戻って来て王妃様へ耳打ち。
「お母様…………」
「ありがとう、助かったわ。 アスカちゃん、お祖母様を連れてきてもらえるかしら?」
「良いのですか!?」
「ええ。陛下は忙しくて手が離せないから、しばらく此方へはこれないそうよ?」
…そういう事。
「わかりました、直ぐに!」 (行こうママ! アキナさんが待ってるの!)
うん!
一度部屋を出てティーを抱いたまま転移。 (分体がつれてかれるー)
また連れてくるから!
ーーーー
ーー
「お姉ちゃん、どうだった?」
「未亜、ここで待っててくれたの?」
「うん、なんか居ても立ってもらいられなくて…ユウキ君はアキナさんを引き止めてるから」
「ありがとう、優しいね未亜…」
一緒に一階の私達の部屋へ。
こっちにもティーが! (そっちは本体)
「アスカちゃん、急にいなくなるからびっくりしたよ?」
「アキナさん、行きましょう。アクシリアス王国へ」
「だからそれは…」
「向こうの許可はもらってきました。なので…」
「わかった!」
言うが早いかアキナさんはティアラを起動して転移してしまった。
はやっ!! (あっという間…)
「姉ちゃん、ありがと。僕らは待ってるから行ってきて」
「うん、私達はあとから連れてってね」
「わかったよ、行ってくる」
ーーーー
ーー
アクシリアス王国へ転移したら、客間でソワソワしてるアキナさんが…。
「慌てて先にきたけど、居場所は魔力でわかっても勝手に部屋を出て行く訳にいかなくて!」
「ご案内しますね」
「お願い!」
アキナさんをつれて、王妃様の休まれてる部屋へ向かう。
ノックして、扉を開けて…飛び込んでいったアキナさんを見送り扉を閉める。 (いいの?)
うん…。今はこの方がいいでしょ。 (かなぁ)
廊下で室内から聞こえる賑やかな声を聞いていたら、アリアさんがカートを押すユリネさんとやってきた。
「アスカ様! 昨日は本当に…ありがとうございました」
「アリアさん、それはもう昨日たくさん言っていただきましたから」
「…はい。しかし、アスカ様はなぜ廊下に?」
「アキナさんが来てるから、ママが気を使ったのー!」
「そうでしたか…では我々も今暫く」
「そうですね…。アスカ様、私からも御礼を…ありがとうございました」
ユリネさんまで深々と…。
「アスカ様、どうして入って来てくださらないのですか?」
アリアさん達と廊下で雑談してたら、扉を開けて顔を出したシルフィー様がふくれてらっしゃる…。
「せっかくのご家族の対面ですし…」
「忘れておられるかもしれませんが、アスカ様も身内ですよ?親戚です!」
それを言われたらそうかもだけど…。 (というかママ、王妃様のママはよかったのかな?)
……忘れてた…。 (だよね!)
今からでも連れてきたほうが?
「アスカ様、早く入ってください! アリア達も」
「は、はい…」
引っ張られるようにシルフィー様に手を引かれて室内へ入ってしまった。
続いてアリアさん達も。
「可愛いっー! うちはドラゴンで生まれた子が居ないから…あぁ〜可愛いよ…」
部屋の中ではアキナさんが仔ドラゴンを抱いてデレデレしてた…。
「お祖母様、私の子なんですからそろそろ返してください」
「えーもうちょっと…」
「もう…」
呆れたようにため息をつく王妃様は、それでも笑顔だから…
良かったよね?会わせてあげられて。 (うん!)
「王妃様、すみません…王妃様のお母様の事まで気が回らず…」
「えっ? あぁ…うちのお母様はいいのよ」
「そうだよね、あの子は女遊びばっかりしてるもん」
アキナさんからの評価があんまりな事になってるけど!? (……)
「お母様は子離れした後は干渉しないの。自分が好きな事をしたいからってだけなんでしょうけど」
苦笑いする王妃様はあまり気にした様子はない。
そういう親子関係もあるのね…。
「ではお父様は?」
「あら…、話してなかったかしら? うちもお母様しかいないわよ、しかも大勢ね…」
そういえば…なんか大事な事を聞いたような…? (女好き…)
それだ! (ママも狙われたのに何故忘れる…)
いや、社交辞令とか冗談かと…。 (ママ…)
ドラゴン姿でまで残念な人を見る目をしないで…。
仔ドラゴンを堪能したアキナさんは王妃様へ返すと…
「セルナ、名前が決まったら教えてね」
「はい、お祖母様」
「シルフィーも会えてよかったよ。また、来れるようにするから!」
「はい…えっとお祖母様?」
「それでいいよ!」
シルフィー様とハグをしたアキナさんは私へ向き直ると、私にまでハグをしてくれた。 (むぐっ…)
ティー、大丈夫? (ママのくっしょんがあるから…)
それはあれか?私の…まぁいいや。
「ありがとう、アスカちゃん。お陰でセルナにも可愛い仔にも会えたよ! これで安心してまた仕事を頑張れるよー」
「勝手な事をしてしまったかと心配でしたが…喜んでもらえて良かったです」
「うん! 私は先に帰るね。 セルナ、また連絡するから」
「はい。お祖母様もご無理なさいませぬよう…」
「大丈夫だよ! いっぱい元気もらった!」
そういってアキナさんは転移していった。
「お母様、お祖母様がお姉様でした…」
「あははっ…。見た目は確かにそうね。でも間違いなくお祖母様よ。正確には五代くらい上のね」
「セイナ様もキレイなお姉様にしか見えませんものね」
「あら…それはありがとう」
「お祖母ちゃん、いつの間に…」
「ふふっ、魔力隠蔽してるからかしら?」
アキナさんが騒いでたからノックも聞こえなかったっぽいなぁ。 (こそーって入ってきてたよ?)
何故に…。
「相変わらずアキナは嵐のようね」
「はい、お祖母様は本当にお元気でびっくりしました」
「シルフィーも煩かったら、アキナにそう言ってやればいいのよ?」
「出来ません! 例えお祖母様とはいえ、他国の女王様に…そんな…」
お祖母ちゃんも無茶苦茶言うよね。 (お祖母ちゃんからしたらみーんな子供や孫とかだし)
そう言われたらそっか…。
「セルフィー、体の調子は?」
「問題ありません。 この子にも、定期的に魔力をあげてます」
「そう………大丈夫ね」
お祖母ちゃんは仔ドラゴンへ手をかざすとそう言った。
ミルクのかわりなのかな?魔力… (うん! 生まれたばかりの時は魔力ラインの繋がりだけでは足りないからって)
へぇー。ドラゴンの神秘だな。
私は午後にまたみんなとお邪魔する事を伝えて、分体のティーとも別れ、ドラゴライナ王国へ転移した。




