長くなったお昼休み
「それで、お祖母ちゃんがドラゴンって…」
「うん、私は日本人と異世界人のハーフで、ドラゴンクオーターでもあるの」
「お母さんかお父さんが異世界の人?」
「そうだね、母親がそう」
「見たことないから知らないけど…アスカちゃんに似てるのかしら?」
「そっくりなのー! ママと髪の色も目の色も同じ!」
「なるほどねーどおりでアスカはキレイな髪してる訳だー」
日本じゃ銀髪なんてまず見ないもんなぁ。
「アスカはティーちゃんみたいにドラゴンになれたりするの?」
「それは無理」
覚醒する可能性はわからないし。
「そうなると、弟さんはお父さん似なんだねー」
「そうだね。ユウキは髪の色も父親と同じだから」
「なんかもう非現実過ぎて理解が追いつかないわ…アスカちゃんを隅から隅まで調べたいくらいよ」
「それはやめてほしいなぁ…」
「させないから大丈夫! 麻帆は難しく考え過ぎだよ」
「でも! 勇者に魔王、ドラゴン…情報量が多すぎよ」
それは申し訳ない…。
「…話さないほうが良かったかな?気持ち悪い?私の事…」
「それは無いわ。信じて話してくれたのは嬉しいもの。単に理解が追いついてないだけよ」
「私はアスカが何者でも気にしないよ」
「ありがとう…」
こんな事普通は信じられないのにね…。 (急だし仕方ないかも)
「それよりさ、アスカ! 帰る前に少しでいいから外に出てみたい!」
「そうね、そうしたら私も実感が湧くかもしれないわ」
「でも、ここからだと街は遠いしなぁ…周りの森とか見ても実感わかないよね?」
「ママ、チョコに乗って隠蔽して飛べば?」
「それくらいしかないか…」
「チョコ?」
「ママの召喚獣! おっきなグリフォンなの!」
「マジで?見たい見たい!」
「なら、それで空から街を見ようか…二人とも高い所は平気?」
「私は平気だよ! ジェットコースターとか大好きだし」
確かに奈々はそんなイメージだわ。
「私も飛行機なら大丈夫だったから問題ないわ」
麻帆はちょっと心配だな…。 (ティーがみとくの)
お願いするよ。
二人と、ティーをつれてツリーハウスの外へ出る。
さっきは急いでて気が付かなかったけど、ツリーハウスの脇に祭壇があるな…。
あれがリコを祀ってる儀式用の祭壇…? (そうそう)
エルフ達は… (もっと森の奥だから大丈夫!)
…みたいだね、チョコを出すなら探索でみておいたほうが良さそうだ。
「今からチョコ…グリフォンを出すけどかなりのサイズだからね」
「ワクワクが止まらねぇ!!」
「襲ってきたりは…」
「大丈夫。優しい子だから」
「わかったわ…」
奈々は興奮しすぎて口調が…。
「チョコ、おいで」
光の中から出てくるチョコ。
「うわっ…すっご…でっかいよ! うわぁ…フワフワじゃん!」
即、駆け寄って抱きつく奈々は怖いものなしか! (ママ!)
ん? あーやっぱりか。 ありがとねティー。
驚きすぎて倒れた麻帆はティーが受け止めてくれてた。 (予想済み!)
助かったよ。 (ふふーん)
魔力を整えてあげて、恐怖心も抑えた上で覚醒させる。
「…んっ…何よアレ。大き過ぎるわよ?」
「そう言ったはずだよ?」
「なんで奈々は平気で戯れてるのよ…」
それは私も聞きたい。
チョコには伏せてもらって、私が先に乗り、まずは麻帆を引っ張り上げる。次に奈々。
ティーはぴょんっとひとっ飛び。さすがうちの子。 (ドヤァ)
心配な麻帆を奈々と私で挟んで、ティーは殿で二人を見てくれる。 (任せて!)
チョコを含めてまるっと、完全隠蔽。
「じゃあ飛ぶよ。風圧とか何も感じないから安心して」
「行っけーチョコー!」
「…わかったわ」
テンションの差よ…。
チョコお願いね、アクシリアス王国の上空をぐるっとお願い。
グオォー!
ふわっと飛び上がったチョコはかなりの速度でアクシリアス王国の王都へ向かって飛ぶ。
「ひゃっほーー! ヤバっめっちゃ速いじゃんー!」
「ひぃぅ…」
麻帆、私に捕まるのはいいけど変なとこつかまないでね…お願いだから。
「ふにゃぁ! 麻帆そこはダメ! お願いだから…」 (フラグ回収早い…)
うぅ…もぅ…。
あっという間にアクシリアス王国の見える位置まで来たことで、奈々は更に興奮。
「麻帆! 見て見て! お城だよ! すっげーでっけー!」
「…えっ? ほ、ほんとだわ…すごい…。街並みもすごいわね」
麻帆が景色に気を取られた事でようやく鷲掴みから開放された私はホッとする。
気を張ってないと力が抜けそうで大変だった…。 (意外なママの弱点…)
これ私だけじゃないと思うけど。 それともまだこの身体に慣れないのかな…。 (知らなーい)
………
チョコは、私のお願い通りに王国の上を回ってくれる。
お城が更に近くなった事で麻帆もかなり興奮。
「なんてキレイなのかしら! こんな景色が見られるなんて…映画の中みたいだわ」
「すごいよねー街もおっきい! ねぇアスカ! アレあるのかな?アレ!」
「アレって?」
「冒険者ギルド!」
「あぁ。もちろんあるよ」
「ママが暴れたの!」
「すっげーマジ異世界じゃん! その話後で詳しく!」
ちょっとティー! (つい…)
「…こんな景色を見たら実感してまったわ。ありがとうアスカちゃん、見せてくれて」
「いいよー。チョコも私を乗せて飛ぶの好きだし」
グォー♪
ありがとね、チョコ。
ぐるっと3周、二人のリクエストに答えて追加で周った。
ギルドの真上にも行き、ティーがギルドでの乱闘事件を話す。
定番イベントだ! って、奈々は爆笑してたけど…。
予定より長くなった遊覧飛行を終えてツリーハウスへ帰還。
「お疲れ様、チョコ。ありがとねー」
ハグしてあげて送還。
「マジすごかった! あーっ、しまった! スマホで写真取ればよかったー」
「そうね、でも…そんな事すら忘れる体験だったわ」
楽しんでもらえたなら私もチョコも嬉しいよ。 (奈々が身を乗り出すから危なかったの)
一応意識がしっかりしてればチョコからは落ちないけどね。 (そうなの!?)
うん。ただ気を失ってると危ない。 (チョコすげー!)
旋回する時に傾いても平気だったでしょ? (そういえば!)
ま、原理は知らないんだけどね! (ズコー)
未だ興奮してる二人を見守りつつ、ティーとそんな会話をしてた。
一度ツリーハウス内へ戻り、三人とも制服へ着替える。
「あの…ね? この事は…」
「言わない。誰にも。私達の秘密だよ!」
「そうね…話たって誰も信じやしないわ。当然話すつもりもないし」
「ありがとう。秘密をもたせる事になってしまうけど…」
「いいよー。ファンクラブでさえ知らない超極秘情報とかヤバくない?」
「ええ。優越感よね」
そういう考え方なんだ?
「一応、出発したお昼休みに戻るから、そのつもりで」
「わかったわ」
「はーい!」
「奈々はちょっとテンションに気をつけてね?」
「すーはー…よしっ!」
ティー、リコは? (森へ行ってるの)
そっか…忙しいなら呼ばない方がいいね。 (伝言しとくの!)
じゃあ、 ”ありがとう、また来るから。精霊のお仕事頑張るのはいいけど、無理しないように“って。 (承ったー)
魔力ドームで包む。
「じゃあ帰るからね」
「ええ。それにしてもすごいわねこれ…」
「だよね。シャボン玉に入ってる気分」
そのまま転移
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お昼休みの空き教室。念の為二人をチェック。体調に問題はないね。
あれ…? (どしたの?)
いや、スキルも消えたし、ステータスも戻ってる…。どういう事!? (向こうに呼ばれた訳じゃないから?)
でも未亜は…ってあの子はハーフか。 (うん! 奈々達は向こうにいる時だけ有効になるかと)
VRゲームみたいだな。 てことは奈々は苦手な英語を克服できないわけだね。 (うん!)
私はある意味チートだなぁ。 (その分、世界を救うのに苦労したから)
それくらいは恩恵がもらえると…。 (そうそう)
「すごかったね!」
「奈々、それはもう言わないの」
「そうだった! ありがとうアスカ!」
「ううん。私こそ…二人を信じて良かったよ」
「こんな大切な事を打ち明けてくれたんだもの。この秘密大切にするわ」
「うんうん! 二度と出来ない様な体験だし!」
「そうよね。貴重な体験だったわ」
あら…また行きたいっていうかと思った。 (簡単には行けないって思ってそう)
そっか、それならその方がいいね。こちらと比べたら危険性は大違いだし…。 (確かに)
二人には遊園地で買ったお土産をようやく渡すことが出来て、長い長いお昼休みは終了した。




