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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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母とドラゴン



「お腹の仔ドラゴンはもう産まれても大丈夫な状態?」

「…そうね。あのサイズなら卵から孵った時よりも大きいくらいよ」

「じゃあ、お腹から出してあげても問題はない?」

「ええ。ドラゴンの仔は人よりも遥かに丈夫だから。だからこそ母体が保たないのよ…」

「お祖母ちゃん、私は魔力ドームで包んだ中の人を転移させられる!」

「っ! そうよ! じゃあ母体へのダメージも与えずに…」

「うん、外の世界へ出してあげられる」

「よかったわ…アスカちゃんが居てくれて」

「お祖母ちゃんも居てくれなきゃ無理だったよ。私じゃドラゴンの事はわからないもの…。

それに、転移させるとしても座標として登録した場所…ここだとさっきの客間へしか無理なの」

「じゃあ私がそこで待機して、魔力反応を感知して仔を抱きとめればいいのね?」

「うん! 陛下へ説明して許可が下り次第転移させるから、お願い」

「任されたわ」


客間へ向かうお祖母ちゃんと別れ私は室内へ戻る。

「アスカ様、お母様は…お母様はどうなってしまうのですか?お願いです…お母様を…うっぅ…お母様…」

「シルフィー様、大丈夫です、今から説明しますから。 陛下も聞いてくださいますか?」

「無論だ…頼むセルフィーを、我が子を…頼む…」

心配してるシルフィー様と陛下の辛そうな姿が胸に刺さる…。絶対に何とかしなきゃ。


「…今、王妃様のお腹の中にはドラゴン姿の赤ちゃんがいます」

「それは…どうしてそんな事に!?」

「王妃様は妊娠されてからドラゴンとして覚醒し、進化された。それが影響しているのではないかと祖母は…」

「それで胎内の子にまで影響が出たと言うのか…」

「はい、恐らくは…。そしてここからが本題です。お腹の仔ドラゴンはもう産まれても問題のない大きさまで成長しているそうです」

「では、弟か妹はすぐに産まれてくるのですか?」

「いえ…普通に産み落とす事は不可能です。祖母の言っていた、母体が耐えられないという事になってしまいます…」

「なぜ、なぜ産めない! ドラゴンの姿であろうと我が子…それを見殺しにしろと言うのか…!」

「陛下、落ち着いてください。王妃様もお腹の仔ドラゴンも助ける方法があります」

「真か!?」

「はい。 陛下、今から私が出来る処置の説明します。その上でよく考えてください。許可できないと言われてしまったら、現状は他の方法を思いつきません…ごめんなさい…」 

これが最善か、それはわからないけど…他に良い手段は思いつかない。 (それしかないのー)

うん…陛下次第だよね…。


「…話してくれるか?」

「わかりました。 私は魔力ドームで包んだ中の人を転移させる事のできる魔道具を持っています。ただ、座標の登録をした場所へ飛ばす事しか出来ません」

「それは、アスカ様がいつも来てくださるあのお部屋ですか?」

「そうです、シルフィー様。 ただ、今回私は外から確認しながら仔ドラゴンだけを転移させなければならないので、一緒には転移できないんです」

「それだと幼い我が子だけが放り出されてしまうのではないか…?」

「そこは祖母にお願いしました。祖母は魔力感知レベルが高いので、転移してくる相手を待ち構えることができます」

「なるほど…アスカ殿が転移させた我が子をセイナ様がキャッチされる…とそういう事だな?」

「はい」

「失敗する可能性は…」

王妃様へ負担をかけずに転移は…間違いなく出来る。お祖母ちゃんが受けとめ損なうはずもない。だから…

「ゼロです」

「やってくれ。 我が子と妻を頼む」

「わかりました」

まずは王妃様を魔力ドームで包む。

それから徐々に小さくしていって胎内の仔ドラゴン。その仔だけにフィットさせて魔力が体表を巡る様に魔力ドームを変形させる。

王妃様の身体の一部すら巻き込むわけにはいかない。

身体の一部だけ転移、なんて事にはならない。大丈夫だという確信はあるけど、やらないに越したことはない。

魔力で仔ドラゴンだけを包んだのをしっかりと確認。 (お祖母ちゃんも準備おっけー!)

ありがとうティー。ナイスアシスト! (ふふん!)

転移。


ーーーー

ーー


(お祖母ちゃんが無事キャッチ!)

流石だよ、お祖母ちゃん。

王妃様も、荒かった呼吸が落ち着いて眠ってる。

念の為、最終確認もしたけど角や翼による胎内へのダメージはまだ少ないから治癒ですぐに治せる。 (さすママ!)

多分、突然ドラゴンに変わったんじゃないかな…。そうじゃなかったら角や翼でもっと傷ついててもおかしくない。 (魔力体だった?)

かも…純粋な魔力の塊でまだ形がなかった可能性もあるね。

治癒をして魔力ドーム解除。


「終わりました。仔ドラゴンも祖母が無事、受け止めてくれました。王妃様も現在は異常はありません」

「お母様! 良かったです…お母様…」

「おぉ……」

陛下と王妃様にすがるシルフィー様が泣いてらっしゃる…。無理もないよね。

治癒師の方がすぐに王妃様を診てくれてるからここからは任せよう。


あれ…アリアさんは? (こっちにいるの!)

いつの間に…。 (お祖母ちゃんのちょっと後)

そっか…。話を聞いた後ダッシュしたのかも。 (今そっちに走ってったー。お祖母ちゃんも赤ちゃん抱いてゆっくりそっちに向かってるのー)

わかったよ、ありがと。


「今、祖母が赤ちゃんを抱いてこっちへ向かってくれてますので…」

「アスカ殿、この恩は決して…決して忘れぬ…心から感謝する」

「私だけでは無理でしたから。 祖母と、ティーのおかげです」


アリアさんはお祖母ちゃんがドラゴンを無事にキャッチした事を伝えに走ってきてくれたけど、ティーのお陰ですでに伝わってたと知ってちょっと落ち込んでしまった。

なんかごめんなさい…。 

それでもアリアさんはすぐに復活して、すっごいお礼を言われてしまって…余計にいたたまれない…。


少しして、仔ドラゴンを抱いたお祖母ちゃんも戻ってきた。

お祖母ちゃんは陛下にその仔を渡した。 

仔ドラゴンを抱いた陛下はすごく嬉しそう。覗き込んでるシルフィー様も…。

「本当なら産んだこの子に真っ先に抱かせてあげたかったのだけど、ぐっすり寝てるものね…」

苦しい思いをしてたのは王妃様だもんね…。


落ち着いた後、王妃様をドラゴンへと覚醒させる原因になった私は、今回の事への罪悪感に襲われた。

それに気がついたのかお祖母ちゃんは抱きしめてくれて…。

私が落ち着くまでそうしてくれてた。 (ママのせいじゃないのに)

お祖母ちゃんもそう言ってくれたけど…タイミングが違えば王妃様がこんなに苦しまなくてもよかったんじゃないかって思っちゃって。 (それもタラレバ!)

ユウキが言ってたやつね。 (うん、赤ちゃんも王妃様も無事! それが一番)

そう…だね、うん。ありがとうティー。


お祖母ちゃんは王妃様の様子見と、ドラゴンの子育てを教えるために、しばらくはこちらに滞在してくれる事になったから、一度ドラゴライナへ戻ってお祖父ちゃんを迎えに行った。

陛下がお城に部屋も手配してくれたし。

うちの母さん達には置き手紙をしてきた。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんが揃っていきなり消えたら驚くだろうから…。

近いうちに、ドラゴライナにも来ないとだな。

アキナさんへも説明しなきゃいけない。



お祖母ちゃんとお祖父ちゃんを送り届けた後、私は帰ることを伝え、お別れを言って、一旦いつもの客間へ戻ってきた。

シルフィー様に呼ばれてたから…。


「アスカ様、この度は本当にありがとうございました。お母様と妹を助けてくださって…」

「お役に立てて良かったです。 赤ちゃんは妹さんだったんですね」

「ええ。セイナ様が確認してくださいました。お母様の魔力のが強くそちらに引っ張られたんだろう、と」

そっか、イレギュラーとはいえドラゴンとして産まれたってなると、そうなるのか…。


「アスカ様はもう行ってしまわれるのですか?」

「友達二人を待たせてしまってるので…すみません。 それで、一つ確認なんですが…昨日こちらにお邪魔してる事を王妃様へティーに伝言してもらったのですが…」

「はい、私もその場に居ましたので存じています」

「そうでしたか。 顔を出すようにと言われていたのですが、理由はご存知ですか?」

「それは、せっかくこっちに来られたのにお城へ来てくださらなかったからです!」

「用事があったとかでは…?」

「いえ、お会いしたかっただけです。私もお母様も…」

会いたいって言ってもらえるの有り難いけど、用事はなかったのね…。


「そういえば…王妃様の緊急時に王子様は?」

「あの子は今、長老様のノワルレイナ様とグリシア王国へ短期留学してます」

「魔法学校のあるという?」

「はい、お父様のお姉様が嫁がれてますので、そのツテで…」

だからいなかったのか。薄情者とか思ってごめん…。 (あいつはもっと反省するべき)

それは私のことでかな? (当然!)

それはもういいよ。だってお陰でティーに会えたんだから。 (ママ好きー!)

私もだよ。 


それにしてもすごい組み合わせだな。長老ドラゴンとあるある王子…。 (仲良くなったのかなー)

どうだろうね?それなら良いことだろうけど。


「あれ…?そうなると、残ったフレアベルナさんは?」

「街で冒険者登録をされて無双していらっしゃいます…」

いや、何してんのよ…長老様。 (自由すぎるの) 

楽しんでるなら何よりだけども。本当、自由だなぁ。



渋るシルフィー様をなんとか説得してようやくツリーハウスへ戻れたのはお昼も過ぎた頃だった。

「ごめんね、おまたせ」

「あ、おかえり! アスカ大活躍だったね」

「え?」

「この子…ティーちゃんが話してくれたのよ。ママすごいよ! って」

「そういう事ね、ありがとうティー説明の手間が省けたよ」

「ふふーん!」


「甘いよアスカ! 聞きたいことはまだ山ほどある!」

「そうね…どういうことよ。お祖母ちゃんがドラゴンって…」

あーそっかそれも話さざるを得なかったか。 (そうー、ダメだった?)

いいよ。今更二人に何も隠すつもりもないし。 (スリーサイズは?)

そういうのは無し! (境目がわかんない…)

それはそうかもだけど…。

ティーって利発だし、頭の回転も早いのに、その辺の事には疎いよね? (がーーん!!)

別にいいんだけどね。完璧じゃなくたって。分からないことは聞いてくれればいいから。 (はーい!)


「取り敢えずお昼ごはん作るから食べながら話そう?その後は帰らないとね」

「えー! ここから一切出てないのにー」

「お城、見たかったわね。今は大変そうだからお邪魔するのは避けたいけど」

ずっと待たせてた手前、申し訳ないけど…どうしたものか。 (街に行く?)

ここからだと距離があるし、流石にね。また次回って事で諦めて貰うしかないかなぁ。












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